「また会いたいね」 つばきと盟友たち、ファンたちが新宿LOFTに描いた“正夢”
つばき 撮影=小川舞
つばき ~正夢になった夜 vol.18~ 2017.1.19 新宿LOFT
つばきが、盟友LUNKHEAD、LOST IN TIME、セカイイチを迎えて恒例企画『正夢になった夜』の18回目を開催した。当初、活動再開のスタート地点になるはずだったこの日のライブ。だが、脳腫瘍のため病気療養中の一色德保(Vo、Gt)が再度治療に専念することとなり、しばし活動を休止する直前の公演ともなった。しかも公演直前につばきのオフィシャルHPでは、当初30分のステージを予定していたものの、一色の体調が安定しないため1曲歌うにとどめ、共演バンドからボーカルを招いてつばきのレパートリーを演奏する――という発表があった。
セカイイチ 撮影=小川舞
平日の18:30開演ながら新宿ロフトには大勢のファンが集まり、一番手のセカイイチの段階で、前方のオーディエンスに「一歩ずつ前に詰めてください」というアナウンスがされるほどの混雑だ。岩崎慧(Vo、Gt)は「この曲をつばきに捧げます」と「神通力」を歌ったり、「今の僕たちも知ってほしいから」と、新作『Round Table』からファンキーな16ビートチューン「Grave of Music」を披露するなど、歌の良さに加えて新たなグルーヴを獲得した今のバンドの姿を見せていく。岩崎は「平日にもかかわらずきてくれてありがとう。セットリストにはすごく悩んだ」と言い、今日この日のことは「悲しいのか切ないのか、まだ自分でもわからない」と正直な心情を吐露しながら、<お願い ひとりぼっちの夜を 支えてくれた歌聴かせてよ>という、岩崎自身、一色、つばき、そしてこの日集ったバンド仲間、オーディエンス全員に歌い掛けるような「バンドマン」をラストに選んで、目には見えない意思を一つに束ねてくれた。
LOST IN TIME 撮影=小川舞
転換中には、お客さんの会話が自然と耳に入ってきたのだが、中には関西から遠征して来た人もいたり、世代も20代~40代まで様々なタイミングでつばきに出会った人たちであることが分かる。そんな場内に、続いてLOST IN TIMEが登場。海北大輔(Vo、Bs)が「初めまして、LOST IN TIMEです」とあいさつし、タフなトライアングルを展開させた「誰かはいらない」。<悲しい事が悲しい訳じゃなくて 悲しいと言えない事が 悲しい>と歌う「ココロノウタ」が、この瞬間に意味合いを増幅していくようで胸に込み上げるものがあった。海北は「つばきは希望です。僕らを出会わせてくれて。いい夜にしましょう」と、一色がLOST IN TIMEに提供した「雨が降る夜」を引き締まったアンサンブルで響かせ、ラストの「手紙」では海北も大岡源一郎(Dr、Cho)も絶叫に近い渾身の声で思いを届け、気迫が伝わる熱演を見せてくれた。
LUNKHEAD 撮影=小川舞
さらに続々と詰めかけるオーディエンスの熱で実際に室温が上昇していく中、LUNKHEADがステージに現れる。「前進 / 僕 / 戦場へ」のオープニングをディレイがループするギターで彩ると、小高芳太朗(Vo、Gt)はいい意味で喧嘩を売るかのよう。ガチの対バンに挑むスタンスを全身で露わにする。ノンストップで「光の街」「プルケリマ」と続け、純度の高い思いが肉体を通して4人のアンサンブルに激突し融合するようだ。「三月」は、一歩踏み出す事が困難なあらゆる人の心をちょっと不器用な小高の歌が包む名曲。ブルージィな山下壮(Gt)のソロと演奏がブレイクしたところで、小高が<傷つきながら 迷いながら>と丹田に力を込めて歌う姿は何よりの願いとして響き渡り、歌い終え小さく「ありがとう」と発した様子にも彼らしさが滲み出ていた。そこから再び「よっしゃ!次、つばきやからあっためて行きましょう!」とアッパーな「体温」「ユキシズク」と続け、さらにLOFTの温度を上げてくれた。
ここまで三者三様、どのバンドも、そして同じ歌うたいであるフロントマンたちは、今の自分のやり方でつばきにエールを送っていた。今の自分のバンドが表現できる最新のありようでしか、バンドマンとしての仲間に対する気持ちは伝えられない。それは誰もが簡単ではない表現や活動の道の半ばにあるからで、その気概や矜持そのものが、今は各々の道を行く3バンドがつばきの為に急遽集合したという事実以上に、かけがえのないものに感じられたのだった。
LOST IN TIME・海北大輔 撮影=小川舞
そしていよいよ本日の主役、つばきが登場する頃にはLOFTの最後尾まで満員のオーディエンスが埋め尽くす。急いで仕事を終えて駆けつけた人も少なくないはずだ。ステージには一色以外のサポートの二人を含む4人が登場し、小川博永(Bs、Cho)の口から、一色の体調が不安定なため、つばきフレンズの時のようにゲストボーカルを迎えてつばきのレパートリーを演奏して行く旨が伝えられた。最初に迎え入れられたのはLOST IN TIMEの海北。小川とおかもとなおこ(Dr、Cho)が作り出す力強いビートに乗り、まるで持ち歌のようにピン・ボーカルで「声の行方」を歌う。ソリッドなマイナーチューン担当という訳でもないのだろうが、続く「夜と夢の鼓動」も、海北独自の叙情性のある声とマッチしていた。簡単ではない心境で歌っていると想像できるけれど、全力で歌い出会いへの感謝を表すほか、どうすればいいんだろう?とオーディエンスである自分ですら思ってしまう。
続いてはセカイイチの岩崎が登場。カラッとした空気を作り出し「昨日の風」ではフロアにも歌わせる。そしてスケールの大きなグルーヴが醸し出された「光-hikari-」では、小川がフロント楽器のようにベースで景色を作り、二人のサポートギター、曽根巧と大迫章弘がシンフォニックな色合いを加えて行った。そして登場早々、お気に入りだというつばきフレンズの際に作られた白Tシャツを着用したLUNKHEADの小高は、「もう着すぎてほつれて来たから、再販してくれへん?」と、カジュアルなトークで笑わせる。が、一転して「月の夜にいつもの川」を絞り出すような声で歌い出すと、フロアのファンは立ち尽くしてそれに見入る。さらに朝焼けを思わせるライティングの中、静かに、でも鋭く研ぎ澄まされた「来る朝燃える未来」を、急な参加とは思えない完成度で歌いきり、つばきのメンバーとの呼吸も素晴らしい一つの世界を見せつけてくれた。
つばき・一色德保 撮影=小川舞
つばき・小川博永 撮影=小川舞
小高がステージを後にすると、大きな大きな拍手に迎えられ、一色がスタッフに支えられながら現れた。歩くのも大変そうなのだが、マイクに向かうと「嬉しいねぇ」と感謝を述べ、小川とおかもとには「元気?」と、いつもの調子といった具合で笑顔を見せる。そして「意外と元気にやってますんで、今日はパッと行きましょう」の一言と共に、つばきのファンにとってはことさらスペシャルな1曲である「花火」が、重層的なアンサンブルで丹念に鳴らされた。一色はと言えば、歩くのも困難な状態とは思えないほど、一言一言を刻み込むように歌い続けた。力強い歌唱ではなかったし、直立してマイクをつかんでいるのが精一杯に見受けられたが、それでも歌いたい、伝えたいとは何か。歌を作って自分が歌うとは何か。そこまでして何か伝えたい事があるだろうか?という、様々な思いがないまぜになって、そこに立っている一色の凄みに圧倒されていた。そして、気持ち一つとそれを100パーセント表現できるメロディの力こそが人の心に灯をともすことを、彼は自分の歌で証明していた。おそらくそこにいる誰よりしんどいはずの彼が何よりも輝きを放っていたのだ。
曽根巧 撮影=小川舞
大迫章弘 撮影=小川舞
そのままアンコールで3バンドのフロントマンを招き入れた一色は、悪友たちと他愛のない会話を饒舌に交わし、いつも通りの“おしゃべりな一色くん”に誰もが泣き笑いしていた。若い時はお互いに尖り、ステージ上でも下でも愉快な会話なんてなかったと言い、「こういう事ができるようになるから歳とるっていいよね。みんなかっこいい。また会いたいね」と、気負いのない言葉を残して、全員で「太陽」を交代に歌い、ライブを締めくくった。
かくして、『正夢になった夜』は、そこにいた誰しもにとって正夢になったのだった。
取材・文=石角友香 撮影=小川舞
つばき 撮影=小川舞
セカイイチ
1.シルクハット
2.神通力
3.石コロブ
4.Grave of Music
5.バンドマン
1.誰かはいらない
2.約束
3.ココロノウタ
4.雨が降る夜
5.希望
6.手紙
1.前進/僕/戦場へ
2.光の街
3.プルケリマ
4.三月
5.体温
6.ユキシズク
1.声の行方<LOST IN TIME海北 vo>
2.夜と夢の鼓動<LOST IN TIME海北 vo>
3.昨日の風<セカイイチ岩崎 vo>
4.光 ~hikari~<セカイイチ岩崎 vo>
5.月の夜にいつもの川<LUNKHEAD小高 vo>
6.来る朝燃える未来<LUNKHEAD小高 vo>
7.花火<つばき一色 Vo>
[ENCORE]
2/4(土)東京・下北沢CLUB251
出演:セカイイチ、ホリエアツシ(ストレイテナー / ent)、THE BOHEMIANS
MC:中村貴子
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 ¥3,800(税込/1ドリンク別)
発売中
2/23(木)東京・新代田FEVER
出演:初恋の嵐、セカイイチ
OPEN 17:30 / START 18:00
前売 ¥3,800(税込/1ドリンク別)
4/22(土)東京・渋谷La.mama
出演:セカイイチ、岡部晴彦、中村昌史、and more Bassist
OPEN 17:45 / START 18:30
前売 \3,500(税込/1ドリンク別)
:一般発売2/25より
2/4(土)名古屋ハックフィン
2/5(日)大阪梅田シャングリラ
前売 3,500円(税込/1ドリンク別)
発売中
TOUR2017 『REACT2』
前売 3,800円(税込/1ドリンク別)
OPEN 18:00 / START 18:30
OPEN 18:30 / START 19:00
OPEN 18:30 / START 19:00
OPEN 18:30 / START 19:00
OPEN 17:30 / START 18:00
OPEN 17:30 / START 18:00
OPEN 17:30 / START 18:00
OPEN 17:30 / START 18:00
『音呼知新のみかん祭ワンマン』
7/9(日)SHIBUYA TSUTAYA O-EAST
OPEN 15:00 / START 16:00
前売 3,800円(税込/1ドリンク別)