50代メンバーが20代と初コラボ 新生ザ・コンボイショウ『アジァパン』全国5都市で今春上演! 今村ねずみにインタビュー
『asiapan』取材会にて主宰の今村ねずみ(撮影/石橋法子)
北野武に「死ぬまでに一度は見るべきだ」と言わしめた、昨年結成30周年を迎えたザ・コンボイショウ。全員が50歳越えとなった今なお変わらぬ熱量を放出する、男性6人によるノンストップ・エンターテインメント集団だ。2017年一発目は、20代のオーディションメンバー4人を加えた新生!ザ・コンボイショウとして新作『アジァパン』を上演する。「スピード感溢れるストーリー展開に歌、ダンス、タップ、笑い、涙も詰め込んだ盛りだくさんな内容に期待して欲しい」という主宰の今村ねずみ。来年還暦を迎える今だからこそ描けたという新作について、大阪で取材会を開き意気込みを語った。
「初めて旅したアジアの国で、忘れかけていた感覚を思い出しました」
--この度、新たに20代4名が参加し新鮮な印象です。
自分の息子といってもおかしくない年齢なので、長年見続けてくれている方には、新鮮な感じて受け取られると思いますが。じつはこの『アジァパン』はもともとメンバー6人でやるつもりでした。昨年、プロデューサーの方からそろそろ新しい人たちと一緒に作るコンボイショウもあってもいいんじゃないかと話があり、昨年の『1960』再演のときにオーディションをかけました。僕としては『1960』の後にもう1本、今の6人でガツンとやり、その後オーディションメンバーのための新作をと思っていたのですが、流れのなかでもういいや、いれちゃえっと(笑)。どうせやるのは同じなので、本隊のおっさんたちが元気でいる間に30年間のDNAを直に感じてもらえたら良いかなと。今何回か向き合って、コンボイショウの作り方を少しずつ分かってもらえるプロセスとしては、今回は良かったなと思います。
今村ねずみ
--50代メンバーの反応は?
彼らを見ていますと、ちょうど自分たちがコンボイショウをやり始めた頃の年齢なので。メンバーも忘れていたようながむしゃらさとか、新鮮さを感じると思います。作品に”新しい血”が入ったことでいい刺激を受けているみたい。彼らには、初めてとか関係なく、やることはコンボイショウなので僕らも同じスタートラインに立って一緒に世界作りができたら、とは言っています。この世界、若くてもできるやつはできるし、年取ってても分かんないやつは分かんないからって。
--番外編を除き、今まで新キャストとの作品づくりがなかったのはなぜですか?
コンボイショウは「全員が主役で脇役」というスタイルなので、演出家側から言うとメンバーを育てるという意味でも、全員の演出を見ないとフラストレーションが溜まるので、今の少人数の形で30年間やってきました。その流れの中で、オーディションもひとつの出会いだなと思えたので。コンボイショウをやったことのない方たちに体感してもらうのも良いし、それを通じて自分たちもいい刺激をもらって作品に反映していければ良いんじゃないかなと。
今村ねずみ
--『アジァパン』はどんな物語ですか。
今回はアジアが題材で、遺跡群に囲まれたとある町のゲストハウスに日本人の旅行者や旅人が偶然集まって、それぞれの話が出てくるシュチエーション。若い人達にはゲストハウスで働いている現地の若者達であったり、時にはトゥクトゥク(現地タクシー)の運転手、物売り、遺跡に宿る精霊の声と忙しい役です。だったら、舞台を動かすのは若手4人にやってもらおうと、結果的になりました。
今村ねずみ
--海外を旅したことが創作のきっかけになったそうですね。
去年ぐらいから何度かアジアにいく機会がありまして、このシチュエーションが思い浮かびました。それまでは刺激を入れるために自分がやりたい世界がいっぱいあるNYやウエストエンドにいくのがパターンみたいなところがあったんですけど、この年齢になると確かに自分のオリジナル作品はやってますけど、この年齢になると、じゃあ本当の俺のオリジナルってなんだろう?って思ったときに、憧れとか夢を追っかけるのはもういいやと思っちゃったんですよ。でも基本的にどこかへ行って刺激を求めていくタイプなので。それがたまたま去年、香港や台北、そしてアンコールワットへ行って忘れかけていた感覚を思い出した。初めて訪れた国なのに、懐かしいと思う瞬間がいっぱいありました。
今村ねずみ
--中でも、印象的なエピソードとは。
例えば、遺跡に入って観音菩薩さまの顔を見たときに、どっかで会いましたか? あなたの兄弟が日本にいますよ、と思ったり。定食屋でお父さんが料理してお母さんがレジをして、娘さんが料理を運んで弟がいて。僕が食事している間に一家団欒が始まって。彼らの姿に、これ子供の頃に見た風景だなと。いわゆる原風景。俺大事なこと忘れてんじゃんって、見知らぬアジアの町で日本に近づいている感覚があった。それはアメリカ、ヨーロッパで感じられるものではなく、きっと遣唐使の時代から誰かが日本に来て、大陸から半島を抜け、日本に文化を運んでいたというイメージが自分の中でつながった。それでアジア、ジャパンで「アジァパン」。僕が日本人と強く感じたのはアジアだったんです。
「芝居、タップと10人のエネルギーが一つの点になる瞬間がすごい!」
--物語のあらすじをもう少し教えてください。
現地で僕と同じ50代の日本人のバックパッカーと会った時、会社を辞めて旅をしていると言うので、なぜですか?と聞くと、会社にいると自分の60代の姿がみえちゃうと。こんな分かりきった60代を追いかけるのなら、まだ歩けるうちに早期退職をして、見えない60代を追いかけた方がいいんじゃないかと、昔から好きだった旅をしたいと家族に頼んで旅に出たと言われた時、(作家としては)まさしく垂涎ものでした(笑)。そういう方たちに何人か出会ったので、たまたま宿で出くわした人々がそこで何を思うのかっていうお話を書けたらいいなと。
今村ねずみ
--今村さんご自身は、この旅を通してどんなご感想を?
アジアを旅しているのに行き着く先はやっぱり日本だった。旅の最後に戻るのは自分の国や故郷なんだろうなと。また、カンボジアでは戦争の傷跡がゴロゴロあるわけで、内戦から間もないという認識はしていたけど、実際に生きている人たちと接すると、戦争がないだけでこんなに幸せなことなのかと。遺跡もすごいけど、前向きに生きている人たちの迫力のほうが凄かった。日本では当たり前にコンビニがあり、当たり前に電車が動いている。そんな恵まれた国にいて僕は何を不安がって、何を不満に思っているのかと。彼らに教わったのは、本当に前向きに生きること。家族を大事にとかシンプルなことだった。改めて日本人で良かったな、日の丸も良いなと思いましたよ。なんかそんな思いが入った作品ですね。現地で出会った人たちも今回は役作りに反映されているので、観に来た方が僕らと一緒に旅している感覚になれたら嬉しいと思います。
--4人が加わったことでの一番の変化とは。
可能性は広がると思いますよ。僕らの仕事って人が作品に力を与えてくれるし、作品の未来を広げてくれると思っているので。新しい血が入れば、心身ともに新しい細胞や筋肉が動き出す。その意味では彼らがオーディションに来たということが、僕にとっての財産だと思っています。彼らと出会えて良かったと、幕が降りたときにそう言える自分でありたいですね。
今村ねずみ
--改めて、この4人を選ばれた決め手は。
コンボイのオーディションは長いんですよ、8時間やったんですけど、振付もフォーメーションを変えて何度も踊らせて、その後はタップや特技。歌ではソロとコーラスをやって、「全員が主役で脇役で」というのを刷り込みつつ、その後に長台詞と掛け合いの台詞。そして面談。全員クタクタになって、最後には「次の稽古はいつですか?」って、作品のリハーサルに来た感じになってた(笑)。長い時間いると見えてくることがある。やれと言われて休むやつ、誰かやらないか?と言えば「はい!」と手を挙げるやつ。もちろん実力はあったほうがいいですし、実際実力のない人は書類選考で落としているので。でも、最終的には1日8時間の稽古を一ヶ月、長い制作時間を一緒に楽しみながら前向きに取り組めるやつ。あとは、こいつがいたら面白そうだなとか、そういう僕の勘が決め手になりました(笑)。
今村ねずみ
--劇中では10人でのシーンも盛り込まれる?
もちろん! 歌もタップも彼らの特技コーナーもあるし、アクロバットとかメンバーの見せ場もある。「全員が主役で脇役」のスタイルは、まったく崩す気はないので。ショータイムもありますし、コンボイならではの見せ場を物語の中にもたくさん盛り込んで、今まで以上に痛快まるかじりなエンターテインメントです。
--6人と10人とでは、踊った感覚も違いますか?
それだけ人が集まるとすごいなと。セブン、エイトでパッと振付が決まったときの空気感とか、6人でも確かに俺たちなりのものがあったけど、10人がひとつの点になる瞬間ですよね。歌でもコーラスでもタップでも、芝居のエネルギーの集まった瞬間は、やっぱり醍醐味や迫力がある。だてにいるわけじゃないんだなって。
今村ねずみ
--最後に改めて、たけしさんの言葉「死ぬまでに一度は見るべきだ」について今のお気持ちを。
自分が観客として観に行ったときにこのフレーズを言える作品が、どれだけあったのかなと。それをたけしさんがコンボイショウを観て言ってくれた。当時、博品館という300人規模ぐらいの劇場でやっていた名もなき頃の僕らにとっての勲章ですから、今も言ってもらえるコンボイショウでなくてはならない。勝手な使命感というか、そうじゃないとたけしさんに対して失礼かなという思いはあります。来年還暦ですし、若い人に限らず黙っていても誰も近づいてこないので、自分らから近づいていこうかなと。その中で、30年やってきたコンボイショウをもしかして自分たちがいなくなった後もやってくれる人がいたら、自分にとってどんなに幸せなことか。好きでやりたい人がいれば一緒にやりたいですし、僕が変わろうとするのではなく、そういう人たちが変えてくれるのかもしれない。今回も絶対的なスピリッツは、伝えていきたいですね。
今村ねずみ
取材・文・写真撮影:石橋法子
■出演:瀬下尚人、石坂勇、舘形比呂一、黒須洋壬、トクナガクニハル/荒田至法、後藤健流、佐久間雄生、本田礼生/今村ねずみ
■2017年2月25日(土)〜3月1日(水)
■会場:TBS 赤坂ACTシアター
■2017年3月5日(日)
■会場:札幌市教育文化会館 大ホール
■2017年3月8日(水)〜9日(木)
■会場:東海市芸術劇場
■2017年3月11日(土)〜12日(日)
■会場:森ノ宮ピロティホール
■2017年3月14日(火)
■会場:ももちパレス