go!go!vanillas ひとつの夢を叶えた夜、視線は既にこの“先”に向いていた
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go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
おはようカルチャーツアー2017 〜クライマックス今夜の僕ら編〜
2017.2.5 Zepp Tokyo
今だから白状すると、昨年2月にgo!go!vanillasがリリースしたアルバム『Kameleon Lights』を聴いた時、嬉しさ半分不安半分の気持ちになった。様々な国籍/時代の音楽に対して造詣の深い牧 達弥(Vo,G)がメインで作詞作曲を務めるこのバンドが多彩なアプローチに繰り出すことは至極真っ当。だから“何ともこの人たちらしいなあ”と思ったが、一方、その多彩さが裏目に出てバンドの核がぼやけてしまうのでは、そうなると今後回り道をし苦労することも多くなってしまうのでは、と勝手ながら懸念していたのだ。
だからこそもう一歩踏み込んだ曲が聴きたい、と思っていたところ、今年1月にリリースされたシングル表題曲「おはようカルチャー」がまさにそういう曲で。そのレコ発ツアーとして開催されたのが、同世代バンドを招いたツーマンツアー『おはようカルチャーツアー2017 ~カルチャーショック編~』と、直後に行なわれたワンマンツアー『おはようカルチャーツアー2017 ~クライマックス今夜の僕ら編~』だった。この1年の間には、自主企画にUNISON SQUARE GARDENを招いたり、THE BAWDIESと共にリリース&ツアーを行なったり、プロデュースをホリエアツシ(ストレイテナー)に依頼したり――と先輩の胸を借りてきたバニラズだが、今回のツアーには、ここからは自分たちが旗を揚げていくんだ、という意志が表れていそうだ。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
前置きが長くなったが、そんな経緯を踏まえ“良いライブになるはず”という確信を胸にZepp Tokyoへ。フクロウの顔がドンと描かれた「おはようカルチャー」アートワークになぞらえ、ステージを覆う紗幕には満月が映し出されていた。そのまま開演。照明によってメンバーのシルエットが浮かび上がると、4人は影絵を作ったりしながらフロアへアピール。そしてジェットセイヤ(Dr)のビートをキッカケに音を重ねた直後、幕落ち。牧が威勢良くタイトルコールし、1曲目のスタートだ。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
結果から言うと、やはりこの日のライブはとても良かった。その理由は、この1年を経て彼らが見出した核の部分がガツンと出ていていたから、である。それはズバリ、“声”だ。今回のワンマンでは相手の“声”を引っ張り出そうという意志も、自分たちの“声”をしっかり伝えていこうという誠実さも、まっすぐに伝わってきた。だからこそこの日のZepp Tokyoは清々しくて、自由で、誰にとっても居心地の良い空間になっていったのだと思う。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
まず、相手の“声”を引っ張り出す姿勢が分かりやすく表れていたのは、冒頭の「アクロス ザ ユニバーシティ」「ヒンキーディンキーパーティークルー」「ニューゲーム」。この3曲はどれもオーディエンスがシンガロングしやすい箇所のある曲で、フロアからは早々に大きな歌声が沸き上がる。バニラズのライブを観る時は個人的に、長谷川プリティ敬祐(B)の衣装がどれだけ汗で染まっているか、を熱気測定のバロメーターにしているのだが、やはり今日はかなりの熱量なのだとここで確認。また、牧が最初のMCで「やっとここ、Zepp Tokyoでワンマンです! しかもありがたいことにソールドアウトです!」と言っていたように、Zepp Tokyoは4人にとって念願のステージだったのだそう。そんなメンバーの心境もあって、さらにアッパーチューン続きのセットリストだったことも相まって、序盤は前のめりな演奏が続く。
そして、自分たちの“声”を伝えるという意味で印象的だったのは「ルーシア」「ビートクラブ」。前半は牧の弾き語り、後半からバンドが加勢、と歌を聴かせるアレンジで臨んだこの2曲。それまでは4人とも気合いが溢れて肩に力が入っているようだったが、このタイミングでバンドの演奏が良い方向に変わっていった。どうやら、シンプルなアレンジを通して“声”という核を再確認することによって4人ともフラットなテンションに戻ることができたようだ。アコースティックギター1本で情緒のある歌を響かせた牧をはじめ、他3人もどこかリラックスした様子。そして、オーディエンスから事前募集した独自のカルチャーを紹介するMC=“おしえてカルチャー”のコーナーを挟み、後半戦へ進んでいく。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
それ以降の演奏はもう、痛快かつ爽快であっという間。サンバのリズムと日本の愛唱歌とを掛け合わせた「あの素晴しい愛をもう一度」、4人が順番にメインボーカルをとる「デッドマンズチェイス」など、このバンドにしかできない、だけど同時にとびきり自由でもある演奏が続いたからだ。メロディにアレンジを加えまくりながら歌い好調ぶりを見せた牧は、「カウンターアクション」の曲中、「ここら辺で俺たちに最大のカウンターを返してもらってもいいですか!?」「Zepp Tokyo、他とは一味違うよな?」などと矢継ぎ早に煽りまくる。それに応えてオーディエンスが大きくジャンプすれば、バンドの演奏もさらに勢いと輝きを増していった。特に印象深かったのが柳沢 進太郎(G)。この日、自身が作詞作曲&メインボーカルを務める「12:25」も披露した彼は、“バンドのために自分がどう在るべきか”をよく考える人であるがゆえに一歩引いているように見られがちだったが、だからこそ、終盤で豪快に楽器を弾き倒す姿にはグッとくるものがあった。そんな中、視線を移せば、前方へ躍り出たプリティがくしゃくしゃに笑いながらフロアを見渡し、セイヤが何度も「ロックンロール!」と叫び、牧はやりきった表情で床に転がっている。この感じこそがgo!go!vanillasなのだ。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
しかし、クライマックスはここじゃない。「東京、ヤベーじゃん! 見たことのないみなさんの顔が見られたと思ってます」「今まではここで終わりだったんですよ。でも俺たちには、新たな場所に行ける曲ができたんや!」と牧が告げると、朝焼けのような照明が再び4人のシルエットを浮かび上がらせ、「おはようカルチャー」に突入した。明るく楽しい側面ばかりが着目されがちなこのバンドだけど、<嫌な事さえ 詰め込んでいくよ><嫌いも愛も合わさって 生きていく>と歌うこの曲は、ポジティブとは言えない感情さえもまるごと受け入れてくれる。メンバー&オーディエンスの“声”の重なりと開放的なバンドサウンドが導き出すのは、前だけ向いて生きてはいられないあなたを、あらゆる鎖から解放してくれる魔法だ。
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
「おはようカルチャー」という名曲を誕生させたのも束の間、アンコールではいち早く新曲を披露。また、ここ東京でひとつの夢を叶えたタイミングであるにもかかわらず、ここぞという時に披露してきた「オリエント」を演らなかったことからも、彼らが既にこの“先”へ視線を向けていることが読み取れた。自分たちがどういうバンドなのか。どういう音楽を鳴らしながら進んでいきたいのか。それをひとつ打ち立てることができた今、バンド自身にも確信が芽生えているはず。だからこそ、ここからまた何かが始まる、という予感にワクワクが止まらない。今はそんな気持ちだ。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=浜野カズシ
go!go!vanillas 2017.2.5 Zepp Tokyo 撮影=浜野カズシ
2017.2.5 Zepp Tokyo
2.ヒンキーディンキーパーティークルー
3.ニューゲーム
4.人間讃歌
5.スーパーワーカー
6.バイリンガール
7.12:25
8.非実在少女
9.ホラーショー
10.ルーシア
11.ビートクラブ
12.あの素晴しい愛をもう一度
13.エマ
14.デッドマンズチェイス
15.カウンターアクション
16.おはようカルチャー
17.マジック
18.ギフト
[ENCORE]
19.新曲
20.ヒートアイランド