中村 中、感謝を込めた10周年の締めくくり方

2017.4.20
インタビュー
音楽

中村 中 撮影=北岡一浩

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中という字を“あたる”と読むことは、この人の登場で初めて知った。中村 中。2006年にデビューした中村は、昨年2016年からデビュー10周年のアニバーサリー企画を進行中。10年間の感謝の気持ちを込めて、全国4カ所を巡ったツアー『TOUR 2016十の指』に続いて、今年3月には全国5ヶ所を巡る『TOUR 2017 十の指ふたたび』を開催。そして、トータル10本目となる記念すべきライブ『10TH ANNIVERSARY SHOW「天晴れ!我は天の邪鬼なり」』を5月20日(土)、東京・国際フォーラムホールCで行ない、10周年のアニバーサリーイヤーを締めくくる中村に、ファイナルライブがどんなものになるのか話を訊いた。

ステージの私は一緒に泣くし、一緒に怒るし、一緒に笑うし、一緒に楽しむから。ステージで暴れまわることが皆さんへの一番の感謝かなと思ってます。

――デビュー10周年のファイナルを飾るワンマンライブが『10TH ANNIVERSARY SHOW「天晴れ!我は天の邪鬼なり」』。まずはこの破壊力抜群のタイトルが、インパクトありすぎです。

ふはっ(微笑)。私はすごい天邪鬼な性格なので、これはもうそれを全て出し切るようなライブがしたいと思ってこのタイトルにしたんです。私の人生、全て天邪鬼だなと思ったんです。この先もきっとそうだろうし。

――どんなところが天の邪鬼なんですか?

そういう質問をされると答えたくなくなるところとかが(笑)。

――ハハハハハッ(笑)。なるほど。

私は、本当はなんにも話さないでもいい人がエンターテイナーに向いてると思うんです。だから、こうやって頭で分析しちゃってることを語るのも、本当は恥ずかしいんですけど。みんなの予想通りのことはしたくないと思ってて。

――そういうところが天の邪鬼だ、と。

でも、楽しみたいと思ってる人の期待には応えたいと思ってて。全然予想してたのとは違うんだけど、聴いて、観たら、そこに喜びがあったり“この人一緒に怒ってくれたよ”って悲しい気持ちに寄り添ってくれたり。そうして、最終的には“楽しかった”“ライブに行ってよかった”って思ってくれればいいなと思ってて。それが、私がこれまで、そしてこれからも目指しているエンターテイナー像なんですね。それをまとめて一言でいうと“天の邪鬼”かなって思ったんです。掴もうとすると逃げちゃうし、でもなんか微笑んではくれる、なにを考えているのかは分かんないけど気持ちよく寄り添ってもいてくれる。実態があるんだかないんだか分かんないけど、でも、それを観た後に現実に戻ったら“あー。あそこでいってたことは意外とためになるかも”って思うときがあったり。こんな話をするのはとても恥ずかしいんですけど、そういうものになりたいなと思ってるんです。

――中村さんがライブで、こういうエンターテナーでありたいなと考えるようになったきっかけは?

いつからなんだろう……。それをやってる人たちを見て、ですかね。最近という気もするんだけど……どうなんだろう。(すごく悩んで)でも、ここからかもしれないです(きっぱり)。10年やって、活動の幅をどんどん広げてきて。この10年いろんなものを見せてもらったし、いろんな経験をさせてもらった。だから、ここからなんじゃないかな。なんだろうなぁ……。ここからエンターテイナー像を形にできる予感がするんです。

――10周年を締めくくるライブで?

はい。というか、します(微笑)。そうなろうとしている。このライブがスタートなのかもしれないです。

――そのためには、どんなことをやろうと考えていますか?

喜怒哀楽を爆発させる感じですかね。それが、人間の生きるエネルギーなんじゃないかなと思うので。人間がなにかをしようとするエネルギーはそこじゃないですか? 私だったら曲を書くとか。私の場合、怒りや哀しみが曲を作るエネルギーになり、喜びは誰かのためになら私も喜べるし。その人が喜んでくれたら嬉しいし。相手が誰、自分が誰、みたいなことがすべて忘れられたときは楽しい感情も生まれてくるし。それを全部出して。それらを全部出し切った後に、自分のなりたかったものになってるのか、いまの自分じゃないものになっているのか。自分がなにを感じるのかも知りたいし。それを全部やるのが私の生き方だなと思うんです。すごい当たり前のコトをいってるだけですけど。でも、自分がいくら歌ったって、それを受け止めてくれる人がいないと成り立たないものだから。いつも感謝の気持ちは思ってますけど、ちょうどいいタイミングだと思うんですね。10周年って。だから、受け止めてくれた人たちへの感謝の気持ちを表すためにも、思いっきり暴れて喜怒哀楽を出さなきゃなって思ってます。どこまでやれるかな。

――そこでどんなエンターテイナーの中村さんが芽生えるのかは、中村さん自身もやってみないと分からない。

ええ。でも、すごい太々しい話になりますけど、私はどうなろうが歌は歌っていきますから。この先も。10年一区切りとかいうじゃないですか? 区切りがいいから今回も“アニバーサリー”みたいなことをやってますけど、かえって面倒臭いぐらいなんですよ。ずっと歌うつもりの私からすると。そういう気持ちも込めつつやろうかな、と。そういうところは可愛くないんで(笑)。

――ひねくれ者のところも、まさに天の邪鬼(笑)。

でも、ウチのファンは友達とかとつるまないで一人で来る人が多くて。一人で来てる子を見ると“今日も会社で嫌なことがあったのかな?”とか思うし。あがり症でうまく喋れない人たちがいることも知ってるから、そういう人たちが“生き辛いな”って思う気持ちも分かるし。例えば、そういう人が嫌な思いをするようなことがあったら、悪いけど私は“アナタに何かいったヤツにこれから会いに行ってもいいけど!”ぐらいな気持ちにまでなるんですね。そういう“力”とか“強い者”が私は嫌い。こういう生意気なところは10年経とうが変えられないから。とにかく当日のライブは暴れますんで。スカッとしたいという人にはスカッとしてもらいたいと思います。ステージで喜怒哀楽の鬼に私がなるんで。実は私自身もステージに立っている中村 中を使って自分を発散してるんですね。自分じゃ絶対にできないことをやってくれるんで。

――ステージに立つ中村 中はエンターテイナーですからね。

そうそう。だから、ライブを観に来てくれた人も、何か鬱憤があったらこれを見て晴らしてほしいなと思うんですよね。やっぱり腹立つこととか生きてればあるだろうから。友達が腹立ってたら一緒に腹が立ったりするじゃないですか? それと同じ感覚なんですけど。ステージの私は一緒に泣くし、一緒に怒るし、一緒に笑うし一緒に楽しむから。だから、ステージで暴れまわること。それが皆さんへの一番の感謝かなと思ってます。

――なるほど。

でも“天の邪鬼”っていい言葉だなと思いませんか? “天”っていわれると、いいものがありそうな気がするでしょ?

――ええ、します。HEAVENな感じがベースにある気がしますもんね。

でも、神様だっていろいろ都合があるかもしれないじゃないですか? 例えば、私たちが生きてるいまの日本でも、いいことばかり神様はくれる訳じゃないでしょ? そう思うと、天にも邪気がいるんだな、と。

――いいものだけじゃなくて。

ええ。そう考えると、天の邪鬼っていい言葉だなと思うんです。なので、今回のライブはそういうものをやろうかなと思ってるんですけどね。

――舞台やバンド活動などを通して初めて中村さんの存在を知ったという人たちには、このチャンスにソロの中村さんのライブを観てもらえると嬉しいですね。

そうですね。私が何をやっている人なのかが一番分かるのがここだと思うので。ただ、気が重いですけど(苦笑)。

――プレッシャーということですか?

誰かをサポートするというのは、私の場合、そこに“喜び”があるんですよ。例えば、インディーズ電力(佐藤タイジと高野哲のアコースティックユニット)でもDECAYS(DIR EN GREYのDieとMOON CHILDの樫山圭を中心としたユニット)でも、それが機能することに喜びを感じられるんです。でも私は、自分のこととなるとあんまり上手くないというか。自分のためだけにってなると、つまらないんですよ。だから、ソロではそれをメンバーとかスタッフ陣とかお客さんとかに委ねる。それが私の喜びなんだと思うしかないんですよね。だから、自分のソロだと“あー、フロントに立たなきゃいけないのか”と気が重いというだけです。

――今回のSHOWはどんな楽曲たちで構成しようと考えてますか?

まだ考え中です。やりたい曲はあるんですけど。でもまあこの“喜怒哀楽”っていうのを手がかりに選んでいきたいと思います。

――では、ライブに来てくださる方々に中村さんからメッセージをお願いします。

はい。観に来てくれる方々へ。私もステージ以外では器用じゃないから、上手くいかないことが多いし、腹立たしいことも多いんだけど。ステージとか歌は、それを“SHOW”に変えてくれるの。観に来てくれる人も、なぜか会場ではフラストレーションとかを出してもいいのよね。私は、それをお互いに吐き出せる場所こそがライブだと思ってるから、みなさんもそう。喜怒哀楽を全部持って、遊びに来て下さい。

――では、当日はボロボロになるまで喜怒哀楽を吐き出す姿を期待してます!

ボロボロになるまでって(微笑)。でも、そうですね。ここでしか観に来てくれた人の気持ちを昇華してあげることはできないので、私は絶対ボロボロにならなくちゃいけないと思ってます。


取材・文=東條祥恵 撮影=北岡一浩

 

ライブ情報
10TH ANNIVERSARY SHOW『天晴れ!我は天の邪鬼なり』
2017年5月20日(土)東京国際フォーラム・ホールC
開場/開演17:00/17:45
全席指定 ¥6,800 (税込)
 
<バンドメンバー>    
ギター 真壁陽平
キーボード 大坂孝之介
ベース 根岸孝旨
ドラム 平里修一

 
発売中>    
(問)キョードー東京 0570-550-799
http://kyodotokyo.com