flagment edge No.2 『スフィリア』千秋楽公演を見に行ってみた レポート
-
ポスト -
シェア - 送る
オタクが世界観重視の舞台をみにいってみた。
8月30日 日曜日 小雨。少し肌寒い気候の中、私は"乙女の聖地"こと池袋に足を運んだ。というのも行きつけのアニメイトに足を運ぶ為ではなく、舞台を見に行くためである。
私はアニメでも、マンガでも、小説でも、音楽でも、そして舞台でも、コンセプトがしっかりしているものや、世界観が作り込まれているもの、尚且つ美しいものや可愛らしいものが大好きだ。
その私が、思わずぼうっとなってしまう程の作り込まれた世界観が、池袋のKASSAIホールの小さな舞台の上で繰り広げられていた。今回観劇したのは「flagment edge No.2 『スフィリア』」千秋楽公演。
物語のあらすじは、「男装を嗜好する女子高生「梧桐詠子」はある日、人形のような少女と出会う。少女に誘われ、詠子は彼女の住むお屋敷へ足を踏み入れる。そこで詠子を待っていたのは何処か虚ろな目をしたメイド、奇怪な姿をした幻覚、そして真夜中の演劇-アンテルプレテ-。お屋敷を舞台に紡がれる倒錯と錯綜の物語。―― 丸く収まろう、ここで。」というもの。
SEが鳴り響き、舞台が暗転した時から、もうそこには『スフィリア』のワールドが広がっていく。男装を嗜む主人公が、人形のような少女との出会いによって、引き込まれてしまうあまりにも「非現実」的な世界。不思議なお屋敷に住まう2人の少女、可愛らしいのにどこかおかしなメイド達によって、本来なら絶対に着ることのないフリルいっぱいのメイド服(主人公いわく「女を馬鹿にした格好」)を着させられ、真夜中の奇妙な演劇-アンテルプレテ-の主役にさせられることに。
最初は抵抗するものの、日にちや時間が経つにつれて、絶対にありえない"それ"を自分があるべき姿だと受け入れてしまう。ボーカロイドPとして有名なきくお氏の楽曲に乗せて、進むストーリー展開は、あまりにも狂気に満ちていて、おもわず目を逸らしたくな程であった。(しかし、それでも見入ってしまうのだ)
"今の自分の姿は、本当の自分?"
お屋敷の住人である2人の少女の静かなる狂気、個性豊かな4人のメイドが内に秘めている激しい狂気、そして道化役の2人が、登場人物全員を囃し立てるように所々で登場する。これだけだと、単なる"登場人物全員がおかしいだけの話"だが、この『スフィリア』の舞台で私が感じたこと、それはこの話は、"今の自分の姿は、本当の自分?"という己の存在意義への問いかけの様に感じた。
最初、主人公の梧桐詠子は「似合う、と言われたから」「皆にこの姿の自分を求められているから」という理由で男装をしているのだが、お屋敷に客人として招かれたはずなのに、メイド服を着せられ、お屋敷の住人達と狂気じみた日々を送るせいで、一度は自我すらを失いかけるが、時として大切な幼馴染と一緒に過ごす"幻覚"を見る度に、だんだんと"自分があるべき本当の姿"に気づき、大切なものを取り戻しはじめていく―。
この舞台上での展開は、決して"このお話はフィクションです"で済まされるものではなく、様々なしがらみの中で生きている私たちに対しての訴えのように感じた。家族や周りがうるさいから、学校や会社で適応しなければならないから、恋人や友達に好かれたいから-様々な理由で"本当の自分の姿"を消し去って、そう、まさに"丸く収まろう"としてはいないだろうか?またその様な人が多いのではないか? 改めて考えさせられた。
この狂気を孕んだ個性豊かな役柄を演じる役者達は全員女性ながら、(主に主人公やメイド達が行うのだが)取っ組み合いや少々暴力的なシーンなどで、こちらが息をのむほどの迫真の演技を見せてくれた。中には動きにくい衣装や高いヒールを身に纏いながらも、小さな舞台を所狭しと駆け回り、まさに"全身でぶつかっている"状態。この作り込まれた世界観を演じるのに、相応しい役者ばかりだったように感じた。
この"スフィリア"のような綺麗で狂気じみた世界観を重視した作品、そしてそれを演じる役者が今後どれだけ出てくるか―
私は期待しながらまた日常に戻っていくのである。
男装を嗜好する女子高生「梧桐詠子」はある日、人形のような少女と出会う。
少女に誘われ、詠子は彼女の住むお屋敷へ足を踏み入れる。
そこで詠子を待っていたのは何処か虚ろな目をしたメイド、
奇怪な姿をした幻覚、そして真夜中の演劇-アンテルプレテ-。
お屋敷を舞台に紡がれる倒錯と錯綜の物語。
―― 丸く収まろう、ここで。
■期間:2015/08/26(水) ~ 2015/08/30(日)
■会場:池袋シアターKASSAI
http://www.kassaikikaku.co.jp
■作・演出:淡乃晶(fragment edge)
■CAST
柳瀬晴日
新谷桃子
優月心菜
石黒夏妃
青島彩
黒須みらい
滝沢優実
朝比奈里奈
小澤瑞季
山崎萌子
■公式サイト
http://fragment-edge.main.jp/sphilia/