シャープ担当者に聞く、なぜ大天使・花澤香菜さんとコラボをしたのか

インタビュー
アニメ/ゲーム
2015.8.31
シャープ担当者に聞く、なぜ大天使・花澤香菜さんとコラボをしたのか

シャープ担当者に聞く、なぜ大天使・花澤香菜さんとコラボをしたのか

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「カンカンカン言わして、奥歯ガタガタ言わすぞこらぁおまぁあああ!」

 衝撃的な言葉を放つ声優・花澤香菜さんで一躍話題となったのは、シャープ株式会社が発売するスマートフォン「AQUOS」に搭載される「emopa(エモパー)」のWebプロモーションです。

 このエモパーというのは、シャープ製の家電製品に搭載されている人工知能「ココロエンジン」をベースに開発されており、ユーザーの気持ちに寄り添ったメッセージを音声や画面表示でお知らせしてくれるという機能。

 今回、その機能のプロモーションにおいて、声優の花澤香菜さんを筆頭にデヴィ夫人や照英さん、GACKTさんやエスパー伊東さんなどが出演していますが、なぜシャープ社は花澤さんを起用しようと思ったのか。

 その疑問に答えてもらうべく、シャープ社へ取材に伺いました。


●新しいパートナーの在り方としての「エモパー」

▲シャープ・河内巌氏

▲シャープ・河内巌氏


――今回、花澤さんの衝撃的なセリフ回しで話題を呼んだ、エモパーのWebプロモーションですが、そもそも「エモパー」とはどういった機能なのでしょうか?

河内巌氏(以下、河内):エモパーは今まであまり無かった形の「パートナーの有り様」だと思っています。

パートナーでイメージしがちなのは、こちらが「何かしたい」「これ探して」と言うと、代わりに見つけてきてくれるエージェント系の機能が多くの人の中であったと思います。

しかしエモパーでは、パートナーという形ではあるものの、お客様の欲しているものを推測し、人工知能側から話しかけるものになります。

例えばパソコンは自ら入力しないと何も答えを出してくれないですが、テレビやラジオは電源をつければ勝手に情報や答えを提供してくれると思います。同じパートナーという単語でもそのくらいの違いがあると思います。

そしてスマートフォンの場合はテレビとは違い、パーソナルな情報発信メディアであるため、「この人が帰ってくる時間がだいたいどのくらい」というのがわかれば、帰ってきたタイミングで情報を出してくれます。

そうしたセンシング技術などを利用し、スマートフォンの主がどんな行動をしているかをある程度理解した上で、それに合った内容を勝手に話してくれる機能になります。


――エモパーでは、ユーザーの様々なデータを蓄積・分析し最適な応答をしていくと思うのですが、徐々に精密になっていくのでしょうか?

河内:普通は正確さを求めないといけないと思うんですけど、あまり正確さは求めてないですね……(笑)。

ある意味、エモパー自身も人で言えば人格として喋りますし、聞き手側もそれに対して過度な期待をしていない、ラフな関係性を構築できればと思っています。

もちろん、使っていくなかで「出会ってから何日目ですね」とか「戸締まり大丈夫ですか」とか、今まで思ってもなかったことを言ってくれたり、誕生日の前の日になったらハッピーバースデーと言ってくれたり……。


――なんだかお母さんみたいな関係性ですね。

河内:そうですね。なのでどれくらい深い関係になれているか、「エモパーの気持ち」というアプリの中で、パーセンテージで見ることができるようになっており、「このエモパー、俺のことだいぶわかるようになってきたな」という楽しみもあるかなと思います。

使い始めの時からものすごくこちらのことわかっていても気持ち悪くなるんですよね(笑)。


――確かにそうですね(笑)

河内:徐々にわかってきてくれるというものだと長く使い続けてもらえるのかなと思います。キャラクターは5つくらい用意しており、気分によって変えることもできます。

ただ、キャラクターを変えたからといってエモパーに蓄積された記憶はリセットされるわけではありませんので、いろんなキャラクターが自分をどんどん知ってくれるという体験をつくることができます。


●エモパー開発のきっかけ


――今回お話を伺っている「エモパー」ですが、そもそもこの機能をつくろうと思ったきっかけはなんでしょうか?

河内:技術的にはロボット掃除機の「COCOROBO」が、人と機器との間で音声コミュニケーションを取り入れるということをしていました。しかしCOCOROBOの掃除機はもともとIT機器ではなかったので、できることに限界があると考えました。

なので、スマートフォンというデバイスを活用して、我々としては某社の音声認識サービスとは違うところで、AI技術を新しい形で見せようとしました。

そして、我々がつくっているビデオを見てもらえればわかると思いますが、映像の最後でスマートフォンと別れたくなくなるようなシーンがあります。

今では携帯電話は2、3年すると買い替える流れが当たり前のようになっていますが、エモパーがあることで、「端末の記憶と一緒に移行しよう」という、長く使ってもらえるような安心感や愛着を与えられたらなと思い、開発に着手しました。


――では、開発していく過程で難しかったポイントや苦労したことはありますか?

河内:開発していく中で思ったことが、エモパーの肝は「技術」というより「中身」なんですよね。最終的にどれだけシナリオのクオリティを上げられるか。

こう言えばこういう風に感じるだろう……など、人がしっかり介在しないとできない、ある意味人間臭いところがあります。なので苦労という意味では「人」ですね。

どんな人と一緒につくり上げるのか、どういうこだわりを持って取り組むのか、時間や知恵の力の注ぎ方が一番難しかったです。

これはゲームの世界にも似ているところがあると思っており、ゲームをつくる時もユーザーの行動を見て、「ここで驚かせよう」「ここで快感を与えよう」など、ゲームクリエイターの方がものすごく考えていると思います。

そういうことから、やはり人がどれだけこだわってそのシナリオを考えているのかによって、おもしろさや興味の引き方も変わります。

技術的には、音声合成を出しているだけですので、どのタイミングで何を喋らせるかの方が、遥かに難しいと思います。


――エモパーは「一緒につくり上げる人が大切」ということですが、具体的にどういう人がどういう形で携わっているのでしょうか。

河内:開発を主導したのは、弊社の新規ビジネス開発推進部という、名前の通り「今までにないものをつくり出していこう」という専任部門になります。

その部門が「エモパー」の企画を出し、新しいインタベーションを起こそうという感じで進めていたのですが、やはり弊社内だけではできない部分もあり、今回は面白法人カヤックさんとシナリオライターの方に手伝ってもらいました。

カヤックさんと組んだことはすごくいい結果を生み、柔軟な発想のもとシャープに新しい価値を与えてくれました。


●なぜシャープは花澤さんを起用したのか


――エモパーの機能への驚きがありつつも、今回、Webプロモーションへの登場人物が非常に気になったのですが、どういった目的をもって花澤香菜さんやGACKTさんなどを起用したのでしょうか?

河内:今回、エモパーのプロモーションとしては第二弾になります。第一弾は2014年の冬からスタートし、その時はプロ競泳選手の北島康介さんとタレントの篠田麻里子さんに出ていただきました。

我々が狙っているユーザー層はだいたい三十代前半くらいの男性をメインターゲットとしてプロモーションを展開しており、そういう方達に共感していただける真価を見せていこうということで、実生活の中にエモパーが入った場合、癒やされるのか、元気が出るのかなどを試していました。

ただ実施してみて思ったことは、ただ出すだけでは全然もの足りないなと。もっと話題になるようなところまで持っていかないとダメだなと思い、北島さんや篠田さんも動画の人気は高かったんですが、SNS上で見てもらえる、動画の中身自身がフックになるものをつくって行く必要があると思いました。


――動画の内容をフックにするために、どういった工夫をしたのでしょうか。

河内:第二弾では、いろんな人に興味を持ってもらうため、あるいは話題として書き込んでもらったりシェアしてもらえるかを目標に置いて展開しました。

なので、一人のタレントの方にお願いするというよりは、個性的なタレントの方々にお願いすることで、普段見ていないその人の演技を見ることが一つの話題になると思いました。

また「エモパー」自身の話している内容も、その人が演じやすいような派手目なシナリオになっていました。

そしてネット動画をいろんな人に拡散してもらって、我々が及ばない認知力を上げていくことを第二弾の狙いになっています


――Web上での拡散力ということで、声優の中でも演技力があり、話題性のある花澤香菜さんがきようされたのですね。

河内:そうですね。花澤さんは非常にコアなファンがいらっしゃって、ネットの世界ではかなり有名且つ勢いのある方でしたので……。

また、テレビに出ている人が普通にネット上に出てきても、あまり話題が起きにくいと考えていたので、ネットの中でもあまり情報が出ていない且つファンが新しい形で演じた本人をあまり見たことがないというニーズも上手く引き出しながら作品と話題をつくりました。


●大天使・花澤さんの圧倒的な演技力とその効果


――ちなみに河内さんはもともと花澤香菜さんをご存知だったのでしょうか?

河内:僕自身、全然知らなかったです。キャスティングは広告代理店さんから提案していただいたのですが、いくつかある選択肢の中で、今回は話題を起こすという目的があったので、連鎖反応を起こせる人はどの人が一番適しているかという視点から見ました。

もちろん全員をテレビで見たことある人で揃えるのはアリだと思うのですが、ネット上での拡散の仕方って特有なものがあると思い、そういうところを期待し、花澤さんにお願いしました。

結果は期待以上でした。相当、「エモパー」の動画の再生回数も伸びましたし。


――なるほど。ちなみに撮影現場に立ち会われて何か驚いたことなどありましたか?

河内:正直、演技がめちゃくちゃ上手いことに驚きましたね。声優さんなので演技力はあんまり期待していない、そこまで演技できるとは思っていなかったので……。

実際に監督さんや脚本家の方がつくったものをある程度勉強されてきているのでしょうけど、いわゆるテイク数が少なくて終わり、演技も表情も役者さんや女優さんに負けないくらい上手だと思いました。

また、その動画の中でヤクザ映画のアフレコやってもらう話があるのですが、優しい声からヤクザ口調に変わっていき、立ち上がって「なめとんのか!」みたいに話すギャップがすごく感動しました。

「天使の声」と「野太い声」とのギャップがちゃんと出ていて、それは本当にグっときました。

さらに子供を預かってくれと友達から言われて、子供がムスってしているのをぬいぐるみであやす動画でも、いろいろな声質を使い、ぬいぐるみの声を変幻自在に瞬時に切り替えるところにも感動しました。


――今回、期待以上の成果が出たということで第三弾のWebプロモーションは検討されているのでしょうか。

河内:はい、そこについては検討中です。次は商品を選んでいただくために、どう購入まで繋げていくかが問題になるかなと思います。

スマートフォンは違いを打ち出すのがなかなか難しいカテゴリでもあるのですが、せっかく他社さんと少し違いを出すことができたので、ここをもう少し明確に打ち出して、購入契機になっていただければと思っています。


◆Webプロモーション概要
■実施期間:2015年6月4日(木)~2015年8月31日(月)
■動画公開スケジュール(予定):2015年6月4日(木)より実施期間中、随時公開)


>>エモパーmovie「エモ動」第2弾 WEBサイト

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