ザ・フーからニール・ヤング、ルースターズまで 『ヤマジカズヒデ 対 百々和宏』で鳴らされたロックの肝

レポート
音楽
2017.2.20
ヤマジカズヒデ / 百々和宏 / 穴井仁吉 / クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

ヤマジカズヒデ / 百々和宏 / 穴井仁吉 / クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

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お楽しみ企画である。"ヤマジカズヒデ百々和宏"と、なんだか怪獣映画のタイトルみたいだが、これはヤマジカズヒデ(dip)が、いろいろなミュージシャンをゲストに招いてライブ対決をするというイベントで、メニューはカヴァー中心のリラックスしたもの。第一回ゲストは元SOUL FLOWER UNIONのうつみようこだった。第二回ゲストに選ばれたのが、今年結成20周年を迎えるMO’SOME TONEBENDERの百々和宏というわけだ。介添人を務めるのはベースの穴井仁吉(TH eROCKERS/MOTO-PSYCO R&R SERVICE/MOSQUITO SPIRAL)とドラムスのクハラカズユキ(The Birthday/うつみようこ&YOKOLOCO BAND/M.J.Q/QYB)の2人である。ヤマジとクハラは共にQYBというバンドをやっているし、ほかの3人もあちこちのライブやセッションでよく顔を合わせている気心の知れた仲である。年齢は穴井が58歳、ヤマジが50歳、クハラが47歳、最年少の百々が44歳である。穴井と百々は福岡出身。百々は同郷の大先輩である穴井に頭が上がらない風だ。

百々和宏 / 穴井仁吉 / クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

百々和宏 / 穴井仁吉 / クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

まずは百々が穴井、クハラと共に登場。百々のヴォーカル/ギターで、ザ・フーの「アイ・キャント・エクスプレイン」を皮切りに、ジ・アンダートーンズ、ビートルズ、ジョニー・サンダーズと、60〜70年代の英米のクラシック・ロックを立て続けにぶちかます。どれも定番中の定番で、彼らぐらいの世代だったら目をつぶっても演奏できるような名曲ばかりだ。妙にひねることのないストレートな選曲が百々らしい。演奏もさすがの安定感で、こういう誰もが知るような名曲は、変に崩すことなく、ちゃんとしたプロの技術で演奏することできちんと良さが伝わるのである。

百々和宏 撮影=佐藤哲郎

百々和宏 撮影=佐藤哲郎

のっけから百々のMCもくだけている。クハラや穴井とリラックスした冗談交じりのやりとりも楽しい。2曲目にやったアイルランドのパンク/パワー・ポップ・バンド、ジ・アンダートーンズの「ティーネイジ・キックス」は、途中からテンポが速くなるアレンジで演奏されていたが、それはこの日の裏方をつとめるUKプロジェクトの北島氏の提案で、かつてミッシェル・ガン・エレファントがライブで取り上げていた時のアレンジを採用したとのアナウンスも。もちろんその時のドラムはクハラだ。クハラも百々も楽しそう。そして最後は穴井が、俳優の陣内孝則らとやっていたバンド、ザ・ロッカーズの名曲「可愛いあの娘」だ。この曲自体、ザ・フーにインスパイアされたような曲だから、流れもばっちり。百々の明るいキャラには、こういう曲もまたよく似合う。

ヤマジカズヒデ 撮影=佐藤哲郎

ヤマジカズヒデ 撮影=佐藤哲郎

そして3人が引っ込み、今度はヤマジが穴井とクハラを引き連れて登場。ニール・ヤング、ピンク・フロイド、ギャング・オブ・フォー、MC5と、シンプルでアッパーなパンク/ロックンロール色が濃かった百々コーナーとは対照的に、どちらかといえばダウナーなサイケ色濃いものになったのは、実にヤマジらしい。器用に合わせていく穴井クハラのリズム隊もさすがだ。もともとステージ上でそれほど饒舌な方ではないヤマジは言葉すくなに演奏に没入しているが、ふだんのdipのライブと違い、こちらも肩の力が抜けているのがよくわかる。もともとカヴァーをやることに抵抗のない人なので、人の曲であっても彼らしいトランシーなプレイは十分に発揮される。もっとも意外な選曲はアメリカのポスト・ロック・バンド、トランズ・アムの「Play In The Summer」で、MC5の「Skunk」と途切れなく演奏され、全体にリラックスしたムードだったこの日、もっともヒリヒリとした緊迫感が漂っていた。選曲の流れもヤマジらしくひとひねりしている。

穴井仁吉 撮影=佐藤哲郎

穴井仁吉 撮影=佐藤哲郎

そして次は「ももヤマ弾き語り」と称し百々とヤマジがギターを抱えて登場。ジョニー・サンダース、ニール・ヤング、そしてヴェルヴェット・アンダーグラウンドと、これまた定番中の定番曲を披露。6歳離れた2人の会話のやりとりが面白い。過去にdipとモーサムが共演した時の思い出話などを笑いをまじえながらざっくばらんに語る。ヤマジがいろいろ問題を抱えていたころ(笑)の話も出たが、自己の世界に引きこもり決して他者と交わることはなかった10年前を考えると、ヤマジがこんなにリラックスした雰囲気でニコニコと笑いながら他のアーティストと共演するなんて、とても考えられない。よくぞ今まで生きのびて、そしてこんなライブをやれるようになったものだと、昔から彼の音楽に接していた者からすると感無量である。

再び穴井とクハラが呼ばれ、4人編成のフル・バンドになって、まずは「バットマンのテーマ」。もちろん60年代のオリジナル・バットマンの主題歌だが、ロック・ファンにとってはザ・フー、ザ・ジャム、そしてなんといっても福岡の大先輩シーナ&ザ・ロケッツのカヴァーでお馴染みだろう。これを聴いて燃えないロック・ファンはモグリである、というぐらいの定番曲だ。厚みのあるアレンジとスピード感のあるビートが心地よい最高のカヴァーだ。続いてストゥージズを2曲畳みかけるようにやり、ダムドの「ニート・ニート・ニート」でライブの興奮は頂点に。ヴォーカルは百々とヤマジが交互にとる。選曲そのものはひねりのない、いたってまっとうなスタンダードばかりだが、それだけにアーティストの入れ込み具合もハンパではない。ロックをやる者なら、歌ううち、プレイするうち、そして見るうちにスイッチが入ってしまうような、そんな楽曲ばかりなのだ。

クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

クハラカズユキ 撮影=佐藤哲郎

MCをはさみ、今度は穴井がヴォーカルをとってスケルトン・キーの「The Needle Never Ends」。ニューヨークのエクスペリメンタルなオルタナ・バンドの1997年曲で、この渋い選曲が誰のアイディアなのか確認しそびれたが、これによって演奏の深みと奥行きがまったく違ったものになったと思う。

そしてこの日、ロッカーズ以外唯一歌われたメンバーのオリジナル楽曲が百々のソロ曲「ロックンロールハート(イズネバーダイ)」だった。ライブ後に百々は「自分以外の、しかも自分よりはるかに巧いギタリストがバンドにいることの気楽さ」を語っていたが、この歴戦のメンバー3人をバックに自作曲を歌う百々はいかにも楽しそう。歌い終わったあと、感極まったように「よしこのメンバーでツアーに行こう!」と叫んでいたのは本音とみた。ぜひぜひ実現してもらいたい。

本編最後は、ザ・ロッカーズと並ぶ福岡の雄ザ・ルースターズ中期の名曲「Good Dreams」だ。穴井は末期のルースターズに参加していたが、この曲のオリジナルには参加していない。だが昨年リリースしたソロアルバム『スカイ イズ ブルー』 でカバーしている百々にとってはもちろん、ヤマジにとっても思い入れの深いバンドだけに、味わい深く染み渡るような演奏となった。

そしてアンコールは「セルナンバー8」! 映画『爆裂都市 BURST CITY』のオープニングで印象的に使われた楽曲で、ロッカーズとルースターズのメンバーが合体した映画上の架空バンド、バトル・ロッカーズの曲である。博多パンク・ロックの象徴みたいな定番曲で、ヤマジの弾く切れ味鋭いギター・リフのイントロだけで、既にフロアは狂乱の渦だ。ヴォーカルとハープは百々、そして穴井とクハラのリズム・セクションと完璧な布陣による完璧な演奏。いや、技術的な意味じゃなく、「心意気」でね。そして最後の曲、今日3曲目となるストゥージズの「TV・アイ」でライブはおしまい。

4人のメンバーの音楽的なルーツがよくわかった夜。とても楽しかった。つかこの日のライブを楽しめなかった人なんかいるのか? それはたまたま彼らと音楽的趣味が同じだったから面白がれたということではなく、ロックの肝、ロックンロールの基本を彼らはしっかり抑えていて、それを単なる自己満足やお遊びではなく、ちゃんとしたエンタテインメントとして伝える技術とキャリアを持っているということだ。それぞれ自分のバンドを持っているだけに、なかなか集まれる機会もないだろうが、第2弾第3弾を期待したくなる好企画だった。
(※この4人でサマーツアー2017を企画中らしいので、乞うご期待ください)


取材・文=小野島大 撮影=佐藤哲郎

セットリスト
ヤマジカズヒデ 対 百々和宏 c/w 穴井仁吉・クハラカズユキ 2017.2.8 代々木Zher the ZOO
[ももコーナー]
1.I can't explain/ The Who
2.Teenage Kicks / The Undertones (TMGE ver.)
3.I’m Down / The Beatles
4.Born To Lose / Johnny Thunders & Heartbreakers
5.可愛いあの娘/ TH eROCKERS(originally by 山部善次郎/坂東嘉秀)
[ヤマコーナー]
6.Cinnamon Girl / Neil Young
7.Lucifer Sam / Pink Floyd
8.I found that essence rare / Gang of Four
9.Skunk / MC5
10.Play in the summer / Trans AM
[ももヤマ弾き語り]
11.Sad Vacation (Song for Sid Vicious)/ Johnny Thunders
12.Heart of gold / Neil Young
13.Pale Blue Eyes / The Velvet Underground
[ももヤマ穴Q]
14.Batman Theme
15.Search & Destroy / Iggy & The Stooges
16.I wanna be your dog / The Stooges
17.Neat Neat Neat / The Damned
18.The Needle Never Ends / Skeleton Key
19.ロックンロールハート(イズネバーダイ) / 百々和宏
20.Good dreams / The RoosterZ
[ENCORE]
21.Cell No.8 / The Battl eROCKERS (from 映画『爆裂都市』)
22.TV 愛 / The Stooges

 

ライブ情報
百々和宏とテープエコーズ
3.12(日) 東京・代々木Zher the ZOO <Zher the ZOO YOYOGI 12th Anniversary 歌声酒場もも>
OPEN 17:00 / START 18:00 前売:3,500円 / 当日:4,000円(ドリンク代別)
e+発売中

dip(ヤマジカズヒデ)
4.16(日)六本木Super Deluxe
開場17:30/開演18:30
前売3300円 / 当日3800円(ドリンク代別)
出演:dip / Klan Aileen
映像:中山晃子(Alive Painting)
e+ 一般発売 3/1(水)12:00

MOSQUITO SPIRAL(穴井仁吉)
3.4(土)埼玉・熊谷HEVEN’S ROCK VJ-1
「PUNXX MANIA Vol.4」
共演:LAUGHIN’ NOSE、ニューロティカ、and more
OPEN 16:30 / START 17:00 前売3,500円 / 当日4,000円 (ドリンク代別)
イープラス発売中

うつみようこ & YOKOYOKO BAND(クハラカズユキ)
3.11(土)東京・代々木Zher the Zoo
<Zher the ZOO YOYOGI 12th Anniversaryワンマン>
Open18:30 / Start19:00 前売¥3800 / 当日¥4300(ドリンク代別)
イープラス発売中

The Birthday(クハラカズユキ)
「The Birthday TOUR 2017」

5月27日(土)横浜Bay Hall
6月2日(金)長野CLUB JUNK BOX
6月4日(日)新潟LOTS
6月8日(木)HEAVEN’S ROCKさいたま新都心 VJ-3
6月11日(日)柏 PALOOZA
6月16日(金)四日市Club Chaos
6月18日(日)岐阜CLUB ROOTS
6月20日(火)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
6月21日(水)小倉FUSE
6月23日(金)宮崎WEATHER KING
6月24日(土)大分T.O.P.S Bitts HALL
6月29日(木)福山Cable
7月1日(土)松山W studio RED
7月2日(日)高知X-pt.
7月6日(木)京都磔磔
7月7日(金)神戸CHICKEN GEORGE
7月9日(日)和歌山SHELTER
7月15日(土)郡山HIPSHOT JAPAN
7月17日(月・祝)酒田MUSIC FACTORY
7月21日(金)北見ONION HOLL
7月23日(日)釧路NAVANA STUDIO
and more...
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