“ナイス”じゃないほうのゆるふわ系バディ・コメディ『バッドガイズ!!』#野水映画“俺たちスーパーウォッチメン”第二十回

2017.2.21
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左から、マイケル・ペーニャ、アレクサンダー・スカルスガルド 『バッドガイズ!!』 (C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015

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TVアニメ『デート・ア・ライブ  DATE A LIVE』シリーズや、『艦隊これくしょん -艦これ-』への出演で知られる声優・野水伊織。女優・歌手としても活躍中の才人だが、彼女の映画フリークとしての顔をご存じだろうか?『ロンドンゾンビ紀行』から『ムカデ人間』シリーズ、スマッシュヒットした『マッドマックス  怒りのデス・ロード』まで……野水は寝る間を惜しんで映画を鑑賞し、その本数は劇場・DVDあわせて年間200本にのぼるという。この企画は、映画に対する尋常ならざる情熱を持つ野水が、独自の観点で今オススメの作品を語るコーナーである。

巷では『ラ・ラ・ランド』が話題のようで、主演のライアン・ゴズリングは日本でもイケメン枠で人気の模様。そんなゴズリングがラッセル・クロウとバディ(相棒)を組んだ『ナイスガイズ!』が公開中だ。しかし、私が今回紹介する作品は、タイトルは似ているがちょっぴり違うバディ・コメディ『バッドガイズ!!』だ。

ニューメキシコ州のアルバカーキ。警官のテリーは相棒のボブと共に、パトロールに励んでいた。と言っても、彼らは悪人を脅迫し、くすねたドラッグを嗜むような、犯罪者顔負けのワル警官たち。そんな二人は、100万ドルの強盗計画を嗅ぎつけ横取りをしようと企むのだが、それは裏社会のドンに繋がる超弩級の計画だった!

監督のこだわりが活きた華やかな映像

『バッドガイズ!!』 (C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015

イケメンダメ警官・テリーを演じるのは、『ターザン:REBORN』(16)で英国貴族になったターザン役が記憶に新しい、アレクサンダー・スカルスガルド。そして、テリーの相棒でおしゃべりなボブを『アントマン』(15)のお調子者・ルイス役などで知れられるマイケル・ペーニャが演じている。ゴズリング&クロウの『ナイスガイズ!』に負けじと、こちらも豪華な顔ぶれだ。

本作は70年代の雰囲気やヴィジュアルを用いた、ちょっとレトロな設定で製作されている。パッと見た瞬間に目を惹く華やかな色遣いに、キャラクターたちの衣装。それらが古くてダサいと感じるのではなく、現代のオシャレという枠にしっかりハマっているのは流石である。ジョン・マイケル・マクドナー監督が目指したのは、70年代にニューヨーク近代美術館で初のカラー写真展を開催したウィリアム・エグルストン+シュルレアリスムの画家、ルネ・マグリットだそう。なるほど、日常の風景をカラフルに切り取る辺り、エグルストンの写真に近しいものを感じる。なんともこだわりのありそうな監督だ。


ガイだけじゃない、“バッドなところ”を笑い飛ばせ

『バッドガイズ!!』 (C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015

ところが、そんなこだわりのありそうなビジュアルに反し、マクドナー監督のイメージをぶち壊してくれるようなQ&Aを目にした。本作が誕生した経緯を訊かれ、マクドナー監督は「僕は酔っ払っていたんだ」と答え、役者陣の役作りは?との質問には、「僕には分からない。分かるのは、彼はキャンディーの味がしたということさ」と返す。なんとも不思議系な答えである。そして実際蓋を開けてみると、本作自体も思いもよらないゆるふわ系アクションなのである。ということで挙げてみよう、『バッドガイズ!!』のタイトルにもある“バッド”なところベスト3。そう、これは決して“ワースト”の話ではない。“バッドな部分”を褒める形式で書き出してゆく!

ベスト3は、なんとも言えないテンポ感だ。ワル警官のゆるふわな日常を紹介します!的なテンポで進んでゆく中で、絶妙な“間”を見せてくれるシーンもある。どうやら日本贔屓らしいボブが、危機一髪なところで日本の名物を片手に立ち尽くすシーン……思わず「ふへっ」と変な笑い声が出てしまった。

ベスト2は “フ○ック”の多さ。いくらテリーたちの口が悪いとはいえ、まさかこんなにも連呼するとは思わなかった。エンディングまでに何回言うか数えておけば良かったと後悔したほど。ちなみに好きな“ファ○ク”は、テリーと情報屋・レジーの、“ファッ○オフ!”合戦だ。

ベスト1は、世界中を敵に回すつもりかと思うほどのディスり。本編中で黒人や中国人などをいじっていくのだが、その大半はブラックユーモアというほどでもなく、ただのディスりではないかと思える……のだが、時折よくわからないのにハマってしまうところがあるから油断出来ない。私の推しディスりは、上司がメキシコ系のボブを指して言った“タコス難民”と、その半生が映画にもなった物理学者・ホーキング博士にまつわるネタだ。ちなみにこのホーキング博士ネタを存分に笑うために、博士の半生を描いた『博士と彼女の数式』(14)を観て、博士を模したキャラが登場する『ソーセージ・パーティー』(16)を観ておくことをオススメする(そんなバカな! )。

 

『バッドガイズ!!』 (C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015


ちなみに、グッドなところベスト1・2は、猫の可愛さとスカルスガルドの筋肉。中盤以降はテリーのイケメンっぷりとボブのおしゃべりが堪能できるが、アクションシーンはあまり期待しない方がいいかもしれない(小声)。毒になるほど過激でもないし、薬になるほどいい話でもない。だけど頭を空っぽにして観ることができる本作。監督のこだわりの画づくりに感嘆しながらノリで楽しみ、終わった後には「最高にファ○クだったぜ! 」と言いながら帰ってほしい。

映画『バッドガイズ!!』は2月21日よりヒューマントラストシネマ渋谷ほか「未体験ゾーンの映画たち2017」にて公開。

作品情報
映画『バッドガイズ!!』
 

監督・脚本:ジョン・マイケル・マクドナー
出演:マイケル・ペーニャ、アレキサンダー・スカルスガルド、テッサ・トンプソン、ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ、デビッド・ウィルモット
配給:トランスフォーマー

【あらすじ】
ニューメキシコ州アルバカーキ。酒とカントリー音楽をこよなく愛する警官のテリー(アレクサンダー・スカルガルド)は、おしゃべりな相棒のボブ(マイケル・ぺーニャ)と、日々街の“ゴミ掃除”(パトロール)に励んでいた。悪人を見つけては脅迫し、殴り、くすねたドラッグを嗜む…。バッジを盾に仕事を行う彼らは、犯罪者顔負けのワルなのだ。あるとき2人は、街の悪人共が企む100万ドルの強盗計画を嗅ぎつけ、捜査を開始。しかし、計画のバックに裏社会のドンが潜んでいたことで事態は思わぬ方向へ。

(C)Reprisal Films / The British Film Institute 2015
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