最新作からライブ、人間性にいたるまで――“孤高”のバンド・Hello Sleepwalkersの実像とは

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2017.2.23
Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

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まだ誰も聴いたことのない音を求めて。前作ではコリン・ブリテン、前々作ではリチャード・アーチャー(HARD-Fi)をプロデュースに起用し、英米の先鋭的なロック・サウンドを貪欲に吸収したHello Sleepwalkersが、またまたやってくれた。新作ミニアルバム『シンセカイ』は、急速に成長する5人全員のアイディアを注ぎ込んだ全7曲を、気鋭のミックス・エンジニアを使ってダイナミックにブラッシュ・アップ。邦楽ロックの常識を鮮やかに打ち破る意欲作について、シュンタロウ(Vo&G)が語ってくれる。

――今回は、前作や前々作ともまた違っていて、まず音が違う。非常にバンド感が強いというか、生々しくフィジカルに響く音になっていて。すごくいいなあと。

1曲目と他の曲では、ミックスしてる方が違うんですよ。1曲目はトム・ロード・アルジという方で、あとはショーン・オークリーという方がやってくれてる。だから、1曲目とほかの曲でけっこう違いが出ていて、面白いアルバムになったなと思います。

――3曲目、4曲目の、今までにないオールドなロックンロールの感触とか。

バンド全体が、カタマリで出ている感じがあって。今までこういうミックスしてもらったことがないんで、新鮮でしたね。

――ミックスの問題なんですか。録り音の段階で意識したわけではなく?

録りも意識したんですけど、ミックスでガラッと変わりましたね。かなり派手というか、ハイもすごく出てますし。録り音段階では、こんな感じではなかったですね。

――前作、前々作は、プロデューサーを起用してましたが、今回は自分たちで?

そうですね。今回はミックスだけをお願いしていて、曲のアレンジの面では、自分たちでやってしまおうと。前作でコリン・ブリテンという方と共同プロデュースという形でやって、彼は音の使い方だったりとか、曲の深いところまで関わってくるようなやり方だったので。それは今回、曲のアレンジを考える面でも生きたかなと思います。前作は、メンバーがもうひとりいるみたいな感じだったんで、それを自分たちだけでやったらどうなるか?ということはすごく考えました。

――貴重な経験を。

ミックスする人でこんなにも違うか?と思いましたね。「新世界」には、ギターをすごく入れたんですよ。全曲そうなんですけど、「新世界」のミックスが返ってきた時に、全部が音源に反映されていて、一個も抜いてないんですよ。確か、まとめて36とかだったんで、もっとトラックを録ってると思うんですけど。

――ええ? ギターだけで36トラック? とんでもないですね。

録ってる時も“こんなに要るかな?”と言われながら(笑)。でも、いざミックスが返ってきたら、全部クリアに聴こえて、“これがやりたかったんだ”というものが見えたのが、「新世界」という曲だったんですね。逆にほかの曲では引き算をやってくれて、この箇所はボーカルを出したいんだったらギターはちょっと抑えるとか、バッサリ削るとか、そういうやり方をされる人で。やっぱり違うんだなあって。僕はどっちも好きなんですけど。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――作品全体としては、どういうものができたと、今思ってますか。これまでの流れを踏まえて。

バンドの原動力になっているものとして、誰も聴いたことのない音を、ツイン・ボーカルとトリプル・ギターで表現していきたいということを、みんな強く持っていて。それは毎回そうなんですけど、今回はアルバム・タイトルも『シンセカイ』で――1曲目が「新世界」ですけど、全部が新世界だと僕は思っていて。どれも表現したい新しいことだったし、聴かせたい音だったので、全曲僕らの新しい表現だということを明確に伝えようと思って、アルバム・タイトルを『シンセカイ』にしました。

――それは音が作る質感であり、歌詞も含めた世界観であり。

そうですね。いつも僕個人は――みんなもそうかもしれないですけど――自分が聴いててハッとするというか、斬新だと思うものしか使いたくなくて。作曲段階で、GOかどうかの判断は全部そこにあって、そのフレーズに自分が感動するかどうか、面白いと思うかどうかが基準になっていて。今回もずっとそれはありましたね。

――たとえば「新世界」という曲も、テンポやリフはスラッシュメタルのような激しさと勢いを持ちつつ、ギターを重ねることで空間の広がりが出て、別次元の曲になる。

重ねすぎとよく言われるんですけど(笑)。重ねようと思ったわけでは全然なくて、気がついたらそれぐらいいってたみたいな。曲が必要としていると感じたフレーズは全部入れようと思っていて。でも僕は、無駄なギターは入ってないと思いますし。展開も僕らの中では、どシンプルなほうだと思ってるんですけど。……曲の骨格はシンプルだと思いますよ。いにしえのメタル感みたいなものも、濃厚に感じるし。タソコがすごいメタルが好きなんですよ。一緒に作りながらやってたんで、あいつが弾くと、メタルっぽくなるんですよね。

――なりますね(笑)。ツインリードで速弾きで、みたいな。

僕個人だと出せないアイディアとか、持ってないものがあるので。今回はそれがすごく生きたなと思います。

――それ聞こうと思ってたんですけどね。今回シュンタロウ+タソコの共作が多いじゃないですか。7曲中4曲がそうで。これは狙ってやったのか。

“こうしよう”とは毎回決めてなくて、たまたまなんです。たとえばお互いが途中まで作った曲を、「この先を作って」って投げたりとか、そういうものも多いですし。自分の脳内にないものを持ってこられるんで、斬新だなと思うことはいっぱいありました。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――前のアルバムでは、メンバー個々が作曲、演奏、歌に開花した感があって。それがさらに一歩進んだと思う。

僕がこのメンバーとやっているのは、自分にないものを、お互いに刺激しあえる新しさをそれぞれが持っているからだと思ってて。ナルミの歌い方ひとつとっても、僕が仮のメロディを歌って、いざ本人に歌わせてみたら、全然違うメロディに聴こえたりして。ガラッと世界観を変えられるボーカルだなと思うし、そういうものがほかのメンバーにもみんなありますね。ユウキも、こんな激しかったっけ?とか、僕が想像もつかないような叩き方で表現してくれたり。新鮮な発見や感動がうれしくて、曲にどんどん反映していってる感じですね。

――ナルミさんの歌、どんどん良くなってる。「新世界」のサビのスピード感とか、「YAH YAH YAH」の表現力とか。

そう言っていただけると嬉しいです。もともと、いい声してると思って誘ったので。

――自信ついたんでしょうね。歌い続けてるうちに。

どうなんですかね? お互いの歌については、ほとんどと言っていいほど話さない……話すんですけど、そこまで深くは話さないですね。どっちもプライドが高くて、お互い鼓舞しあってやってきた感があるので。

――「DNAの階段」の、ふたりのかけあいとか、すごいと思う。めっちゃスリリング。

ナルミのボーカルをここで使ったらかっこいいんじゃないか?とか、そういう狙いはあるんですけど、でも本当に意識してなくて。たまたま歌を作っている時に、かけあいにしたらどうだろう?とか、それぐらいの感覚で、“絶対一緒に歌おう”とは全然考えてなくて。

――意外と成り行きなんだ。

成り行きが面白いと思ってるので(笑)。

――全員が開花していってる。そこが今のバンドの強さだと思いますよ。

全員聴いてきたジャンルが違うんですけど、新しいものにどん欲になる感じは似てるのかな。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――歌詞で伝えたいことは? これまでとそんなに変わらないですか。

どうなんだろう。言葉にあんまり……というか、言葉の使い方にこだわりは持ってなくて。たとえばここに“水”というものがあって、これをどう表現するか?ということに関しては、何にもこだわりを持ってなくて、どうとでも表現したいし、それがかっこいいと思ったらやりたいと思うタイプで。今回もそんな感じで、この言葉で行こうという強いこだわりはなかったんですけど、元の“水”というもの――僕らの作品で言ったら内面にある気持ちとか、そういうものに芯が通っていれば、どう表現しても伝わるかなという思いはありましたね。「新世界」も、ファンタジーとかよく言われるんですけど……前に書いた「夜明け」という曲、かなり僕の個人的な曲なんですけど、「新世界」もそっちに近いのかな?と思っていて。

――ああ。そうなのか。

すごいパーソナルな曲として作り始めていて。“いつから君と旅をしていたんだっけ”とか、あとから気づいたんですけど、メンバーとの関係だったりとか、今まで一緒にライブで遊んでくれたお客さんだったりとか、そこに自然と焦点が合ってできたんだろうなって、作り終えてから思いました。

――言葉そのものというよりは、その内側にある本質を伝えたい。

言葉だけじゃないとは思ってるんですけど。水のたとえで言うと、水がうれしいと思う人と、怖いと思う人と、いっぱいいると思うんですよね。その多様性が僕は好きで、言葉ひとつ切り取っても、それぞれ聴く人の曲になればいいなって、毎回思って書いてます。「新世界」は僕らのパーソナルな曲になったんですけど、聴く人にとって、それが誰かとのものになると思いますし、なってほしいと思ってます。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――話を少し変えます。今ちょうどデビュー5年ですよね。今のバンドのポジションって、どう見てますか。たとえば対バンする時に、周りのバンドと比べて思うこととか。

同じギターロックのバンドと対バンすると、自分たちのあるべき姿というか、やっていくべき音楽性をあらためて再認識できるというか。毎回それを感じていて、それが良くも悪くも刺激になります。これで間違ってなかったとか、もっとこうしたいとか、そういうことは、ワンマンじゃないライブの時は毎回思いますね。

――うわ、やられた、と思うことってありますか。

ありますね。やられたと思いますし、思わせたいし。ただ僕たちは、思いきりシーンのことを考えているわけではなくて、別のところで新しいものを作ろうとしている感じはすごくしていて。そこはでかいですね。

――ハロスリって、あんまり誰かとつるんでるとか、そういう印象がないんですよ。孤高感があるというか。

仲良くしたいんですけどね(笑)。いや、別に仲が悪いわけじゃなくて。

――人嫌いのオーラは全然感じないですけど。ナチュラルな孤高みたいな。

つながっているバンドは、徐々に増えてはいますけど。内向的すぎなんですかね。どうなんだろうな。……そう見えますか、やっぱり。

――(笑)。たぶん音楽性が誰にも似ていないから、そういう印象を持つのかもしれないけれど。

飲み会とか、意外と行くんですけどね(笑)。でもそれも、ここ2~3年とかで、最初のころはほとんど行かなかった。ようやく人とのかかわり方がわかり始めたぐらいの感じですね。まだ全然ですけど。……難しいな、でも。仲いいバンドは?とか、けっこう聞かれるんですけど、こっちが仲いいと思ってるだけじゃないか?とか、めっちゃ考えるんですよ。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――それは考えすぎだと思う(笑)。

でもやっぱり、対バンとかやると、仲良くなりますね。

――近々やるでしょう。2月から3月にかけて『Livemasters Inc. 5th Anniversary Tour“Dreieck”』で、CIVILIANとIvy to Fraudulent Gameと対バンツアー。

ありますね。仲良くなりたいですね(笑)。

――あはは。やっぱりそこか。

ライブって結局、音もそうなんですけど、やっている人に惚れるというか、人間に惚れているんだって、最近すごく思っていて。人のライブを見ていて、いいなと思う時はだいたい、“この人の人間性が出てるな”とか。音楽をかっこよく鳴らすのはもちろんなんですけど、人としてもうちょっと磨いていかないとなって、最近すごい思います。ようやくですけど。遅いですけど。

――全然遅くないですよ。それはにじみ出るものだから。

それって、音に出るんですよね。ちょっとの不安とか、緊張がいい意味で作用する時もあって、ここで一歩前に行ってやろうとか、そういうものにつながっていくと思ってるんで。行けない時もそうですし、行こうと思う時も、自分の人間性がにじみ出る部分なのかな?ってすごい思います。

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

――このところ、いいライブはできてますか。

そうですね。このアルバムの中からも、新曲をやったりしていて。今は「新世界」「日食」「Sundown」をやっていて、「日食」は、ライブの空気を変えれる曲ができたなというか。

――「日食」は本当に、今までになかったタイプの曲。基本はロック・バラード系だけど、リズムがどんどん変わったり、プログレっぽいシンセが鳴っていたり。かっこいい。

この曲は、次につながる1曲になると確信してましたし、なってほしいと思ったんで。アルバムの最後に置くことで、そういうものを提示していけたらいいなと思ってました。やっぱりイメージってあると思うんです。“Hello Sleepwalkersってこうだろう”みたいな。そういうものに全く囚われることなく、僕らはいろんなことをやるのが好きなバンドなので、ライブでも僕らの表現を見てもらえる曲になったと思います。

――ますますジャンルがなくなりましたよ。ライター泣かせ。

難しいですよね(笑)。こだわりがないことが、逆にどう見えるのか。僕らは全部僕らの音楽としてやっていて、全部Hello Sleepwalkersだなと思うんですけど、人が思っているイメージがあって、それをどんどんぶち壊して行くべきだと思いますし、行けたら楽しくなるなとすごい思ってます。

――5月から始まる、リリース・ツアー。どんなものを見せようと思ってますか。

最初にも言ったんですけど、僕らは新鮮な音に出会う時に一番音楽が楽しいなと思っていて、人のライブでそれを感じることはたくさんありますし、僕らが作曲している中でそう思うことがとても多くて。それをひとりでも多くの人に見せたい、聴かせたいという思いでライブをやってるんです。それに値する曲が、今回は本当に作れたなと確信しているし、それをライブで見せれたらと思います。具体的にはまだ何も決めてないですけど、新しい世界を届けれたらいいと思ってワクワクしてます。


取材・文=宮本英夫 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

Hello Sleepwalkers 撮影=西槇太一

リリース情報
New Mini Album 『シンセカイ
発売中

 

【初回】(CD+DVD)
品番:AZZS-59
価格:¥2,778(tax out)

【通常】(CDのみ)
品番:AZCS-1064
価格:¥2,130(tax out)
■プレス封入特典(初回通常共通)
全国ツアー Hello Sleepwalkers 2017 “シンセカイ”先行予約URL封入
【1次受付】2/15(水)12:00ー2/20(月)23:59
【2次受付】2/21(火)12:00ー2/27(月)23:59

●収録曲
1. 新世界 
2. Sleep Tight 
3. Rollin’ 
4. YAH YAH YAH 
5. Sundown 
6. DNAの階段
7. 日食 
 
●初回盤DVD
Hello Sleepwalkers 2016 “Planless Perfection” at AKASAKA BLITZ 2016.6.25
01.百鬼夜行
02.2XXX
03.夜明け
04.天地創造
05.Worker Ant
06.神話崩壊

 

ツアー情報
Hello Sleepwalkers 2017 “シンセカイ”
5/27 (土) 広島BACK BEAT
5/28 (日) 福岡DRUM SON
6/11 (日) 札幌DUCE
6/25 (日) 新潟CLUB RIVERST
7/02 (日) 仙台Hook
7/08 (土) 名古屋Electric Lady Land
7/09 (日) 梅田AKASO
7/13 (木) 恵比寿LIQUIDROOM
 
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