新国立劇場バレエ団『コッペリア』ゲネプロレポート~瀟洒でコミカルなプティの世界へ
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コッペリア カーテンコール 撮影:鹿摩隆司
2月24日(金)~26日(日)に新国立劇場バレエ団、ローラン・プティ振付による「コッペリア」が上演される。2008/2009シーズン以来の、実に8シーズンぶりの再演となる。23日に行われたゲネプロの様子を、ネタバレにならない範囲で紹介しよう。
■久々の上演ながらも踊り込まれた舞台
ローラン・プティの「コッペリア」。実に何年振りだろう……と資料を紐解けば、直近の上演は2009年6月。今回スワニルダを演じた主演・小野絢子はその当時の4番目のキャストで1日だけの出演であった。フランツ役福岡雄大をはじめ、他日の主要キャストも全て初役となる。
またメインキャストのみならず、コールドのダンサー達も初めてこの作品を踊る者の方が多いのではなかろうか。しかし「コッペリア」のお馴染みの軽快な音楽とともに始まる踊りは実に熟達した感で、さすが難易度の高い数々の作品を踊ってきたバレエ団だと思わせられる。このバレエ団ならではの一体感あるコールドや軽快なステップで、一気にプティ独特の洒脱なテイスト溢れる「コッペリア」の物語へと誘われるのだ。
「コッペリア」(2009年公演より) 撮影:瀬戸秀美
■小野絢子のキッチュな魅力。3者が絡み合う物語
古典バレエの「コッペリア」は改めて言うまでもないが、E.T.A.ホフマンの『砂男』を原作としたもので田舎(ポーランド)の農村。作曲はドリーブだ。
今回新国立劇場バレエ団で上演されるローラン・プティの「コッペリア」は1975年、マルセイユ・バレエ団で初演されたもので、音楽は曲順の入れ替えはあれどもそのままに、舞台を昔の農村から現代に、衣装もペザント風からチュチュに移し替えている。
ストーリーはスワニルダに思いを寄せる老紳士・コッペリウスと、コッペリウスの作った人形「コッペリア」に恋するフランツ、そのフランツに振り向いてほしいスワニルダが繰り広げるコメディだ。プティ版はこの大筋は踏襲したうえに、さらに若者たちと老紳士の対比を加えていく。
それゆえプティが「一人のヒロインではなく三人の主人公がいる」(小冊子より)と語る通り、小野、福岡、指導はもとより、初演から出演もしているルイジ・ボニーノがコッペリウス役としてそれぞれの立ち地で役柄を演じ絶妙に絡む、「三人の物語」だ。
「コッペリア」(2009年公演より) 撮影:瀬戸秀美
そうしたなかで小野絢子の踊りとともに表現されるコミカルな演技はやはり目を引く。清楚なプリンセスといった役が多い小野だが、今回は町娘という役柄でもあって、彼女のコミカルな魅力が存分に楽しめる。
その福岡はこの作品でも技巧派ぶりを発揮。つま先までよく伸びた踊りの一つひとつに自信も感じられ、それが町の若者・フランツという役柄にもよく表れている。
またこの物語ではスワニルダがフランツに思いを寄せ、しかもフランツは冷たい。いつもは思いを寄せ支える側の役が多い福岡が追われ、小野が追う。これだけでも普段このペアをよく目にするファンにとっては一風変わった味わいや、新鮮な雰囲気が感じられるのではなかろうか。もちろん初見でも充分に見応えのあるペアであることは間違いない。
さらにそこにコッペリウスとして加わるボニーノはゲスト感を思わせない溶け込みよう。これは今作はもとより「こうもり」の上演などを通して積み重ねてきた信頼もあるかもしれない。
「コッペリア」(2009年公演より) 撮影:瀬戸秀美
なおコッペリウス役は今シーズンからプリンシパルとバレエマスターを兼任する菅野英男が配されている。菅野はここ最近「ホフマン物語」のホフマン、「アラジン」でマグレブ人、「ロミオとジュリエット」でティボルトと次々に物語の中核をなす役どころをこなしており、このコッペリウスをどう演じるか楽しみだ。スワニルダの友人もベテラン、中堅、新人と揃いそれぞれが表情豊か。小野を中心に舞台に花を添えている。
若者たちと老紳士。個性ある3人を中心に繰り広げられる物語の展開は……劇場でご覧になり、それぞれがそれぞれに感じるのがいい。
「コッペリア」(2009年公演より) 撮影:瀬戸秀美
※記事冒頭カーテンコール写真は2017年2月ゲネプロより。それ以外は2009年公演より。
新国立劇場バレエ団『コッペリア』
■会場:新国立劇場 オペラパレス
■出演:新国立劇場バレエ団
■キャスト
スワニルダ:小野絢子、フランツ:福岡雄大、コッペリウス:ルイジ・ボニーノ
スワニルダ:米沢唯、フランツ:井澤駿、コッペリウス:菅野英男
スワニルダ:池田理沙子、フランツ:奥村康祐、コッペリウス:菅野英男