Rhythmic Toy World史上最も自由で最も芯を喰ったインタビュー in 居酒屋、解禁
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Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
Rhythmic Toy Worldと少し遅めの新年会。2ndフルアルバム『「HEY!」』をリリースし、全国ツアーもまわった昨年2016年を振り返りつつ、今の自分たちに対して思うこと、そして今後のリズミックはどう戦っていくのか、という話をしてきました。場所は居酒屋とはいえ取材ということには変わりないので、録音機器に向かって改めてひとりずつ名乗ってくれたり(あとで文字に起こすインタビュアーに対してのお気遣いです)、「これは画的に必要」と言いながら刺身の盛り合わせを頼んだり(これはカメラマンへの気遣い……?)、普段と変わらず、テキパキと振舞うメンバー。そんな4人がアルコールの魔力でどこまで崩れていくのかを楽しみにしつつ(笑)、「磯村貴宏(Dr)は酔っぱらうとすぐに寝てしまうタイプ」というやや心配な前情報とともに、NGなしの無礼講、スタートです。乾杯!
■『「HEY!」』のリリースと全国ツアーを改めて振り返る
岸明平(Gt):やっぱり『「HEY!」』がライブに向けたアルバムだったから――っていうか飲んでばっかりで全然話そうとしてないじゃん! ビックリしたー!
内田直孝(Vo/Gt):いや、珍しく先陣切っていったから。2017年の岸明平はそういう感じなのかな?って。
須藤憲太郎(Ba):(笑)。でも良かったよね。CDがライブ向けで、だからこそライブがさらに楽しくなったというか、みんなでワイワイできて。
内田:リリースタイミングのインタビューではあんまりこういう言い方はしなかったけど、バリバリ狙って作ったからね、いろいろなことに頭を使って。これまでの自分たちの足りなかった/悔しかった部分をみんなで話しながら、溜まりに溜まってた“自分らのあと一歩な部分”を全部克服していくというか、そういうテーマで作ったから。「ここでは絶対こういう景色になるよな」って思い描いてた通りの景色がツアー先でちゃんと広がってたから、もう素直に「ああ、やったなあ」っていう感じがあった。
――狙って作ったっていうのはつまり、お客さんが盛り上がりやすいアルバムに仕上げたということですか?
内田:そうですね。でもただ“盛り上がる”って言ってもモッシュだったりダイブだったりシンガロングだったり、いろいろなパターンがあるじゃないですか。その中で僕らが今回一番着眼したのは、“みんなで歌える”っていうところだったんですね。歌いたくなるような曲、みんなが歌えるような場所を用意する、っていうところがメインテーマであって。
須藤:ステージから見てるとうちのお客さんは口が動いていて、スゲー歌ってくれてるのがもうライブ中によく見えてたし。
磯村:ライブ終わったあとにBGM流した時も、僕らが捌けてるのにお客さんがずーっと歌ってくれてるっていうことが今までのツアー中もめっちゃあったんですよ。だったら最初っから一緒に歌える曲を作ろうと思って、そういう方向性になっていったよね。
内田:これはもう当たり前のことですけど、人って好きなことやってる時とかときめいてる瞬間に一番エエ顔するじゃないですか。例えば対バンをやる意味って、他のバンドのお客さんに、僕らのライブでときめいた顔をする僕らのファンを見せることにあると思うんですよ。自分たちのことを応援して来てくれて楽しんで帰っていく(ファンの)姿を他の人に見せられれば、その人も「この人たちのライブに来たらこういう空間が待ってて、もしかしたら自分もああいう顔できるのかもなあ」「ちょっと今度ライブ行ってみようかな」ってなるかもしれないし。それは自分たちのことを応援してくれる人が増えることにもなるし、俺らのライブに来てくれてるファンのみんなにとっては、友達や仲間を作ることにも繋がる。そういうお客さんが作った輪っかを、僕らも手伝ってどんどんどんどん大きくしていくっていうスタンスがRhythmic Toy Worldっていうバンドっぽいなあっていう――あれ、今何で玉子焼き食べたの?(笑) 写真撮る前だったのに。
須藤:ここなら見えないから良いかなって(笑)。
内田:いや、まあ良いけどさぁ(笑)。そういう中でステージからお客さんの顔を見てた時に一番エエなあと思ったのがみんなで歌ってる瞬間だったから、その瞬間を増やしたかった。だからこそ“一緒に歌える”をメインテーマにしたんです。
岸:あと分かりやすくしたっていうのもあるよね。もう誰が聴いてもすぐノれるみたいな。
内田:「uncool is cool」みたいな合言葉あったよね。
岸:そうそう。音楽を作ってるとどんどん凝っちゃうというか、自分たちのやりたいようにやっていっちゃうんですけど、そこ(のハードル)をもっと下げて、お客さんが分かりやすいものにしたのがデカいと思う。
須藤:前作『BUFFeT』(2015年4月リリースの1stフルアルバム)が幅を見せようとしていろいろ細かく考えすぎちゃった感があって、その結果、ライブにセトリとして入れ込む時に上手くハマらなくて。それを補完するために『「HEY!」』ができたんだと思う。
内田:だからO型のアルバムだよね。
岸:血液型で言うとね。その喩え、めっちゃ分かりやすいなあ。
内田:どんな人にも寄り添えるというか、合わせていける包容力みたいのがね。……ていうか、これ流行るんちゃう? 曲やアルバムを血液型で喩えるの。
岸:でも4種類しかないよ。
内田:4種類あったら十分やんか。この世の感情は喜怒哀楽で表現されてるんやから4種類でエエやんか。……まあ、O型は(メンバーに)いないけどね。
内田:あれ、いないっけ?
磯村:A型2人とB型2人。
内田:合わせるとABやん。
岸:何でOが生まれたんだろう。
内田:でもAOとBOかもしれへん。
須藤:だから酸性とアルカリ性ってことでしょ?
Rhythmic Toy World・内田直孝 撮影=風間大洋
磯村:何の話だよ(笑)。さっきうっちーも言ってたけど、『BUFFeT』がなかったら『「HEY!」』はできてないと思うんだよね。
内田:そうそうそう。
磯村:『BUFFeT』の時はすごいアーティスト目線だったというか。
岸:曲だけを見て制作してたよね。
磯村:うん、ライブをあまりイメージできてなかった。だからこそ『「HEY!」』は自分たちでプリプロしたやつを客観的に聴いて――
須藤:それを流しながら事務所で踊ったりとかしたよね。
岸:お客さんみたいな感じでね。
磯村:「ここだったらどうノる?」みたいに話し合いながらね。
内田:あとはDTMの導入がデカかったかな。
磯村:今回DTMを導入して、パソコンで一通り作ってから、客観的に聴いて修正するっていう流れで進めて。
内田:だから自分たちがライブでやってるのを想像できたんだよね。「このアレンジだとここで俺は前に出れへんなあ」「ここはみんなでバンと前に行った方が画的に良さそうなのに、このアレンジやとエフェクターボードから離れられへん」みたいなことを話しながら。
磯村:結果的に、初日からすごく良かったよね。
岸:うん。(アルバム収録曲の)ほぼ全曲をやったけど、「これ、全部ライブで使えるなあ」みたいな感覚になったし。
内田:その時何か思ったんよ、これはいけるなって。「初日良ければ全て良し」みたいな言葉あるやん。
磯村:ないな。
須藤:ないね。
岸:「終わり良ければ全て良し」な。
内田:そっか。でも初日ってお客さんとしては一番最初にアルバムの感想を体現する場所やんか。何かその日は「すごい良いアルバムだったよ!」っていう気持ちをぶつけてくれてるような気がした。他の地域にもそういうふうに待ってくれてる人がいるんやなって思うと、今回のツアーはヤバいなあって。
須藤:サッカーでも最初の5分は大事って言いますからねえ。
内田:……うん、そうだね。
岸:いや、絶対知らないっしょ。
内田:知らない(笑)。俺、須藤くんが時折言うことが全然ハマってなくて。熱量は同じなんだろうんだけど、こっちが答えられない話題を見事に振ってくるから。やっぱり足りないところを埋め合いながらバンドやってるんだなって思う(笑)。
須藤:良い話だね(笑)。
Rhythmic Toy World・岸明平 撮影=風間大洋
■赤坂BLITZで「今日は絶対この曲をやらなきゃ」と語られた曲「カルテット」にまつわる秘話
内田:「カルテット」を作った当時はBLITZなんて夢の舞台っていうか、遠すぎる場所だったよね。
岸:そうだね。
内田: 150人キャパのところでお客さん10人みたいな頃に、満員の赤坂BLITZで演奏している自分たちを想像して作ったのがあの曲だったんですよ。だからあの日やらないと意味がなかった。夢を叶えるっていうことを、みんなにもっと身近なものとして感じてほしかったんですよね。自分が「こうしたい」と思ったことを叶えるための道は絶対あるし、それに必要なのはどんだけ諦めへんかっていうのと、どんだけ頭使ってその道を選んで進んでいくかっていうことだ――っていうことを、あの時あの場所にいてくれた人と、来れなかったけどDVDで見てくれる人たち、これから俺らのことを知ってくれる人たちに直接伝えたかった。だからどうしてもあの日じゃないとダメだったし、何ならこの先一度も「カルテット」っていう曲をライブで演奏しなかったとしても良いんじゃないかっていうくらい意味があったと思う。
須藤:いやぁ、あれは本当にヤバかったね。
磯村:前日の最終リハで(須藤は)「俺、これ泣くわ」って言ってたよね。
須藤:うん。何か当時のこと思い出しちゃって。……練習して、そのあとすぐに安いビール飲んで、みたいな生活だったよね。
内田:泡麦だよね。スーパーで80円ぐらいで売ってるやつ。
須藤:そうそう。そんな時期にうっちーが「赤坂BLITZでやるような曲を作ろう」って言い始めて。でも僕はヒップホップとかラウドが好きだったから、(「カルテット」を)初めて聴いた時「良さが分かんない」って言ったんですよ。
磯村:あ~、そうだった!
須藤:で、「ちょっとごめん。俺、客観的に聴いてみるから3人でやってみてくれない?」って言って、みんなが演奏してる中、僕はスタジオの端で椅子に座って聴いてて。それでも「いや……何か違うんだよなあ」って。
岸:めっちゃ懐かしい!
内田:“須藤パンチ時代”だ! 何でもかんでも「パンチが足りない」って言ってた時期ね!
須藤:そうそう(笑)。でも月日が経って、いろいろな人と関わるようになって、ツアーもやって、仲間も増えて、お客さんも増えてきた。赤坂BLITZでやるとなったその前日のリハで、そのときのことがスゲーよぎってきて。いざ自分らがそこに立って、しかも「カルテット」をやるとなった時に何か――お客さんの喜ぶ姿を見てると俺も楽しいし、うっちーの歌ってる姿も楽しそうで喜ばしいし、きっちゃんがめっちゃギター楽しそうに弾いてるのも嬉しいし、磯くんと一緒に鳴らす時もすごい目が合って楽しいし、そういう全部ひっくるめるた上で「カルテット」っていう曲はスゲー良い曲だなって、前日になって思ったんだよね。だから感慨深い。
内田:そうねえ。でもあの時の僕は、どうしても、自分たちで作る待ち合わせ場所みたいなものがほしくて。
須藤:良いこと言うね。
内田:「カルテット」を作った時もさっき言ってたように、スタジオに酒飲みに来てるのか練習しに来てるのかどっちか分からんような感じで――
岸:クソみたいだったよね。
内田:そうそう。そういう自分たちをどうしても脱却したいっていう決意の表れでもあった。だから自分たちが普段出てるライブハウスを埋めてすらいないのに、赤坂BLITZを埋めた自分たちがそこに立った時にやる曲を作った、っていうね。DVDの編集もね、これまたカッコいいよねえ。
須藤:この前(西武新宿駅前の)ユニカビジョンで流れた時なんて、あれは本当にヤバかった。
内田:あの編集も、スタッフが「こいつらがここに込めた想いってこういうのだったから、こういう編集にしようよ」ってアイデアを出してくれたからこそだと思うんです。俺はそれがすごく嬉しかった。目まぐるしく毎日を過ごしていると、何かすごく大事なことを忘れてしまう時もあるんですよ。でもそういうことを覚えておいてくれる人たちが自分たちの周りにいて、それを形にしてまた自分たちに思い出させてくれる、っていうすごく良いループっていう感じが今回のDVDリリースを経てありましたね。僕だけかもしれないんですけど、何か最近、バンドの風が良いというか。
岸:分かるよ。
須藤:みんなのテンションが良いよね。
磯村:追い風だよね。
内田:改めて「あれ、うちのバンドやれるかもしれん」って感じてるというか、またギアが上がった感がある。
Rhythmic Toy World・須藤憲太郎 撮影=風間大洋
■昨年末に行われたミニアルバム三部作復刻ライブ&リクエストライブについて
磯村:こないだの三部作ライブとリクエストライブ(『Rhythmic Toy World大感謝祭!』)もめっちゃ良かったよね。でも緊張したなあ。
内田:俺は緊張してなかった! めっちゃ練習したもん!
岸:いや、俺もめっちゃ練習したけど(笑)。
内田:いや、こんな言い方するのもアレだけど、めっっっちゃ練習したから! ホンマに!(挙手)
岸:いや、俺の方が練習した!(挙手)
須藤:俺も俺も!(挙手)
磯村:…………(笑)。
内田:やらないんかい!
須藤:(被っていたキャップを翻しながら)くるりんぱっ!
岸:(笑)。バンドってどの曲も全部できるって思われがちだけど、やってない曲って本当にできない。忘却していく。
内田:お客さんとかに「〇〇やってください」って言われた時は「ハハハ~」とか「また今度やるよ!」とか返してるけど………ねえ?(笑)
――そもそもなぜ今、こういうコンセプトのライブを?
内田:それはやっぱり、お金儲けちゃうの?
岸:おい!(笑)
磯村:今、マネージャーがちょっとニヤッとしたけど(笑)。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
内田:元々いつかやろうという話はあったんですよ。さっきの話にもつながるんですけど、僕らには“人と人とを繋げる”っていうメインテーマがあって、“古参”“新規”っていうのはクソ食らえっていうタイプなんですよ。語弊を恐れずに言うと、昔から応援してるから偉いって思うような人は自分たちのお客さんにいてほしくない。いつでも俺らはその日が最高、いつでも自分たちを更新していくようなライブをやってるはずだし、「人と自分を比べても意味がない」「だから自分を常に更新していけ」っていうことを、俺は歌で唄ってるつもりだし。でも昔の曲とかはリリースツアーでは正直そんなにやらないじゃないですか。だから「それなら全部やったるわ」「そしたら“古参”と“新規”の差もなくなるやん」っていう感じですかね。基本的に、バンドのスタンスとしては常にお客さんと戦ってるんです。お客さんが応援してくれるからこそ俺らもやれるし、俺らも日々努力して自分たちを更新してるから、そういう姿を見て(お客さんが)「あ、頑張ろう」って思ってくれればいいと思うし。持ちつ持たれつの関係って絶対大事だなと思ってて、そのために俺らがこのタイミングで必要だと感じたのが、みんなをイーブンにすることだったんです。三部作復刻ライブとか実際やってみたらさ、やっぱりカッコええなあと思ったよね。
須藤:うん、それはもう。
内田:それが一番正直な感想じゃない? あの時は「めっちゃカッコいいやん、俺ら」と思って曲を作ったものの、自分たちの技術が追いついてなくて。
岸:結構そのパターン多かったよね。でもこの前ライブでやった時に「あ、曲に追いついたんだ」っていうのがやっと実感できた。
内田:文化祭感もあったよなあ。Rhythmic Toy WorldがRhythmic Toy Worldのコピバンやる、みたいな感覚が楽しくてしょうがなかった。しかも僕らの方が“本人”たちより上手いっていう。
磯村:あとはやっぱり当時のクセみたいなものが分かって。フレーズは一緒なんですけど、「今だったらこうしたい」っていうのがあるからちょっと手順を変えてみたりとか、そういう意味でも当時よりも楽しめたというか。
岸:そうだね。
内田:ボーカルとして言うと、言い回しが昔と今とで変わってる部分で歌詞を間違えちゃって。すごく回りくどかったんだろうね、昔の僕は。前までは「他の人が表現しないところを攻めたい」みたいな意識があったんだけど、最近は「自分がせっかく紡いで発信してる言葉なんだから一人でも多くの人に理解してもらわないと、生まれた曲がすごくかわいそうだ」って思うようになってきて。だから「よく考えたらあそこ歌詞、ああじゃなかったな」みたいな現象が昔の曲をやるとよくある。それが面白かったかなあ。あとは昔に比べたらスタミナついたよね。
須藤:確かに。
岸:リクエスト(ライブ)でやった曲は全部めっちゃキーが高かったのにね。
内田:うん。でも全然余裕だった。最近なんてマスクして寝ることすらもしないけど、それでも大丈夫だからなあ。
岸:この前なんてさ、遠征先の打ち上げで(ホテルの部屋に)3時ぐらいに帰ってきた時に、次の日もライブなのにキャベツ太郎を口に挟んだまま寝てたよね(一同笑)。でも次の日もバンバン声出てましたからね。スゲーなと思った。
内田:昔は神経質だったんだろうけど、喉のケアで一番大事なのは心をフリーにすることだと気づいたんだよね。いや、でもさすがにさ、一緒の部屋でキャベツ太郎をくわえたまま寝ようとしてるボーカルおったら、もっと大事にせえよ! 「明日声出なくなるかもしれないからちゃんと布団で寝なよ」とか言えよ!
岸:確かに。普通に写メ撮ってたわ(笑)。
Rhythmic Toy World・磯村貴宏 撮影=風間大洋
■数年後になりたい自分の姿、そして住みたい街と憧れの先輩の話
内田:俺は1秒でも早く六本木に住みたいなあ。
須藤:何で六本木なの?
内田:よくあるじゃないですか、仕事とかの休憩時間にいろいろな人と話したりして「どこに住んでるんですか?」ってなること。そこで「六本木です」って言いたいっていう、本当にそれだけ。
須藤:そもそも六本木行ったことあるの?
内田:いや、ないけど――
須藤:ないんかい!
内田:ないし、六本木っていう名前、そもそもカッコ悪くない? 六本木ってシックス・ツリーズなわけでしょ? あんなコンクリートジャングルなのに、すぐ燃えそうな名前じゃん。まあそこがかわいいんだけどね。じゃあ、みんなはどこに住みたいの?
岸:俺は渋谷か下北。ここ最近先輩とかに誘われてお酒を飲みに行く機会も増えたんだけど、みんなそっち方面に住んでるから。その辺りに住めたら、ちょっとした時間でもそういう付き合いに顔を出せるのかなって。最近すごいギタリストの方々とも仲良くなれたりして、そういう方はもちろんステージ上でのプレイもすごいし、普段もすごい面白いんですよ。そういう感じの人に憧れるし、ギターヒーローになりたいですねえ……。
内田:お世話になってる先輩たちも全員蹴落として、自分が一番のギターヒーローになりたい、と?
岸:ヤバいヤバいヤバい。でもKubotyさんから「上手くなったな」って言われるくらいには――
内田:いやいや、「俺より上手くなったな」って言わせないとダメなんじゃない? それか「明平、ギター教えてくれよ」とか。
岸:うわーーーー!
内田:今回の人生でやれる、それ?
岸:そういうレベルだね。もうKubotyさんの指を折るしかない……。
内田:暴力行為はダメだよ。それは俺が止める(笑)。
岸:(笑)。――っていう感じですかね。
内田:いや、まとまってないんだけど(笑)。とにかくきっちゃんはギターヒーローになりたいんだ。
岸:そうだね、憧れの先輩みたいになりたいです。Kubotyさんもそうだし、ウブさん(生形真一/Nothing’s Carved In Stone)、マサさん(masasucks/the HIATUS)、(菅波)栄純さん(THE BACK HORN)……めっちゃいる。キリないっすね。じゃあ須藤くんは? 数年後どうなりたいか。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
須藤:僕はねえ――
岸:板垣退助?
内田:髭の感じは板垣退助っぽさあるよね。最近スゲー思ってたんだけど。
岸:でも全然ベーシストじゃないからね。
内田:いや、国のベースを作ったっていう意味ではベーシストだよ。
磯村:上手い(笑)。
岸:田中正造にも似てるし。で、何だったっけ?
磯村:住みたい所でしょ?
須藤:下北に住みたいなあ。俺、井の頭公園が好きなんですよ。
内田:あれって“いのがしら”なの? “いのかしら”なの?
岸:“がしら”でしょ。
内田:嘘だ~。(マネージャーを呼んで)ちょっと調べてみてよ~。
須藤:僕は岸くんと幼稚園から一緒なんですけど――
岸:そうなんですよ。
内田:俺、“いのかしら”に賭けるから! あ、ハイボール2つください!
岸:本当うっさいなあ(笑)。
須藤:(笑)。で、地元の埼玉・所沢がスゲー自然の多いところなんですよ。だから自然は必要で、井の頭公園はそこを補填してくれる。なおかつ、きっちゃんも言ってたように、僕も人と飲んだり話したりするのが好きだから近場に住みたいですね。で、2017年の僕の課題としては、ライブをもっともっと突き詰めていければと思ってて。Rhythmic Toy Worldで弾いてる須藤っていうベーシストがいるんですけど――
内田:いや、知ってるけど(笑)。
須藤:でももっと何か、アイデンティティを持ちたいなって思って。自分のスキルをさらに上げていきたいし、個々の成長はバンドにも還元されると思うので、僕が上手くなってみんなも上手くなれば、バンドがボトムアップされるかなって。そういう年にしたいですね。じゃあ最後に、磯村さんどうですか? 住みたいところ。
磯村:住みたいところは江の島かな――ってこの話、本当に必要ですか?(笑) 2017年をどうしたいかっていう話とは全然繋がらないよ? ……あ、繋がるわ。
須藤:おっ、それでいこう!
磯村:自分はドライブが好きだから海が近いところに住みたいなって思ったんですけど、そこ(車内)で聴く音楽が最近偏ってきちゃってて。それが結構ドラム人生にも出ちゃってるというか、ワンパターンになっちゃってたなあって。だから自分的に今年の目標は“適応力”ですね。『「HEY!」』では初めて2ビートに挑戦したんですけど、たぶん今までは無意識に“できないから”っていう理由で避けてたんですよ。でも今年は“できない”を“できる”にしていきたい。
内田:良いこと言うねえ。
磯村:プリプロでDTMを使うようになったので、メンバーがやってほしいドラムフレーズを作って俺に聴かせてくれたりするんですよ。そういうのってやっぱり実現していきたいし、それができないとたぶん意味がないし。もちろんドラマーからの意見っていうのもあるんですけど、まずはそこに適応できないと。
岸:引き出しを多くするってことだよね。
磯村:そうそう。何でもできちゃう人って「個性がない」とか言われがちじゃないですか。でもそうじゃなくてたぶん、個性って、たくさんある中から自分で選んでいくものなんですよ。でも俺はまだそこまで行ってないんで。プラスアルファを持っておきたいし、ドラムに対してもっともっと貪欲になりたい。
須藤:なるほどね。因みに、磯村さんの尊敬するドラマーは誰なんですか?
磯村:アルカラの(疋田)武史さん。武史さんはドラムのセッティングからして個性の塊で。
岸:へえ、そうなんだ!
磯村:あのセッティングってなかなかなくて。見た目は正直汚いんですよ。
内田:「叩きにくそうだな」って思うような配置ってこと?
磯村:そう。角度とかも「この状態でシンバルって鳴るんですか?」って感じで。でもあの人にとってはたぶんその形がベストで、それを見つけたからこそ今ああいうスタイルなんだと思うんだよね。でもそういうのがまだ今の自分にはなくて。まだセッティングとかもいろいろ変えてるし、自分の叩きやすい形もまだ分からないなって。
内田:なるほどね。そういう先輩を見てるとさ、技術もすごい上に性格まで良い人なのはやめてほしいと思わない?
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
岸:それ、超分かる。
須藤:みんな良い人だもんね。
内田:「嫌いにならせて」って思う。
須藤:ハングリー感がねぇ?
内田:そうそう、そういうこと! 嫌いになったら「よっしゃ。こいつらに絶対負けねえぞ」ってなるやん。でもカッコよくて上手い先輩に近づいてみたらエエ人でした、となったら「好きです!」で終わるやん。
須藤:確かに(笑)。
内田:カッコいい先輩にはもっとワルでいてほしいっていうのが、正直な最近の悩みかな。だって俺たちって、そうじゃないところでここまでやってきたはずじゃん。甘い言葉を囁くだけの人に騙されたこともあったし、コンテストでよう分からんオッサンから酷評を受けてぶん殴りたい気持ちになったこともあったし――
岸:あの時、ずっと爪の垢イジってたよね。
内田:そうそう。オッサンの話を聞いてる時の俺の態度があまりにも悪すぎてメンバーがめっちゃカバーしてくれる、みたいな過去もあって、そういうの全部乗り越えてきてるんですよ。でもそこで得た「あんなヤツらに俺らの良さが分かるもんか。絶対ギャフンと言わせてやろうぜ」みたいな部分がどこか原動力になってたこともあって。それで今までやってきたから、好きな人や憧れの人に近づけば近づくほど心が穏やかになるこの現象はかえって毒だと思うよ、俺は。
岸:なるほどね~。
内田:「聴いてください」ってCDを渡してもバーンって蹴飛ばされて「は? お前ら誰やねん。カッコよかったら聴いてやる」って言ってくる、ぐらいの先輩がいてもエエんちゃうかなって。
岸:じゃあ僕たちにも後輩ができたら――
内田:いや、それはもちろん聖人君子のように接するよ。
岸:おい!
須藤:でも先輩になったらそう思っちゃうよね。やっぱり(後輩は)かわいいでしょ。
内田:それに、下手なこと言って化けられても困るしなあ。
磯村:小っさ!
岸:そうなると、俺たちにとってはバンプ(BUMP OF CHICKEN)がお手本じゃん?
内田:そうなんだよ。
岸:一昨年のロッキン(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』)の時に内田と2人で話しかけたんですよ。そしたらめっちゃくちゃ良い人で。
内田:9年間憧れてたからね。俺は9年間でこいつは7年間だったと思うんですけど――
岸:違う違う。俺の方が絶対長い。
内田:いや、絶対俺の方が先!
磯村:古参とか新規とか関係ないってさっき言ってたくせに(笑)。
岸:(笑)。ベースのチャマさん(直井由文)に話しかけたら「メンバーが楽屋にいるから挨拶しに来なよ」って言われたんですよ。でも行けるわけないじゃないですか。だからそこで一旦別れたんですけど、あとでチャマさんに遠くから「そこの2人、こっち来いよ!」って言われて、行ったらメンバーが全員いて。「紹介するよ。BUMP OF CHICKEN」って言われたんです。「知ってるううう!(泣)」みたいな。
内田:あれはヤバかったね!
岸:クソイケメンだった、チャマさん。
内田:「あ、王子様ってこんな感じなのかな」っていう。
岸:藤くん(藤原基央)が鮎食ってたんですけど、それを置いて抱きしめてくれたんですよ。「鮎臭くてごめんな」って。あの声で。
内田:僕の中での「オンリーロンリーグローリー」はあれですよ。
岸:――っていう経験があったから、俺らも後輩にはああいうふうに、ね。
内田:ああいう存在になりたいよなとは思ってて。だから自分たちも後輩に対しては基本的に愛を持って接するし、頼られる存在になりたいみたいなのがありますね。僕らは昔から結構先輩と一緒にライブをやってきてたこともあって、なかなか後輩気質が抜けないのが悩みのひとつでもあるんですけど、自分たちの尊敬する先輩にやってもらったことを後輩にもやっていこうみたいな感じはあります。
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
■2017年、Rhythmic Toy Worldはどう戦う?
内田:語弊があるかもしれないけど、2017年はもう一度自分と闘おうって思う。僕らはバンドとしてはもちろんやりたいこともやらせてもらって充実もしてるんですけど、充実してる人間って、自分の弱いところかダメなところをスルーしがちな気がするんですよね。「俺、ここがアカンなあ」って分かってたとしても「疲れてて」とか「時間がなくて」とかって言って見過ごしてきた部分が、4人それぞれにあると思うんですね。メンバーだけじゃなくてきっとスタッフにもあると思うんですよ。そこにもう一度向き合って、一つでも良いからそれを克服できる1年にできたら、このバンドは間違いない存在になれるという確信が俺にはあるんですよね。そこがみんなで揃ったらトントントンと跳ねて行くんじゃないかなって。
須藤:うん。やっぱり今うっちーが言ってた話の中でも、いろいろ考えさせられる部分が多かったわ。
岸:自分的にはいつハネても良いというか、そういう準備をしていかなきゃいけないなとは常に思ってて。そういう意味では2017年も変わらないかな。常に準備をしてて、でも去年以上ではある、みたいな。もし何かチャンスがあった時に行けるような準備をしてる感じですかね。
磯村:俺もきっちゃんと一緒で、今まで通りではあるけど、常に前回を超えないといけないっていうのは思ってるかな。みんなもうスイッチは入ってるから、それを続けないとたぶん意味がない。
内田:そうだね。続けるっていうことかな。続けられるっていうことに感謝しながら続けたいよね。
岸:うん、それはすごくある。
内田:「休んで映画観てえ」みたいな時も正直あるけど、みんながみんな、やらなければならないことがある毎日って、スゲー幸せだなってこの前ふと思って。星の数ほどバンドがいる中でそういうバンドがどれだけいるのかなって思ったら、俺はちゃんと現実を受け止めなければいけない、そうする責任があると思ったんですよ。自分たちの音楽を求めてくれる人たちに対する責任が、もう絶対的に発生しちゃってるんですよ、どう考えても。しんどい時もあるけど、それがなくなった時の方がしんどいなあ、みたいな。
岸:そうだね。
内田:結局俺らの表現の出口は音楽でしかないから。だから「背中を押されました」って(ファンの人が)言ってくれるその言葉がもしも嘘じゃないんだったら、絶対裏切っちゃいけないなと俺は思うよ。
取材・文=蜂須賀ちなみ 撮影=風間大洋
Rhythmic Toy World 撮影=風間大洋
~バチバチかますぜドスコイ編~
3月29日(水)
【愛知】名古屋CLUB QUATTRO
ゲスト)ヒステリックパニック
【大阪】梅田Shangri-La
ゲスト)Dizzy Sunfist
【東京】恵比寿LIQUIDROOM
ゲスト)KANA-BOON
名古屋、大阪公演 発売中
3月4日(土)~ 東京公演
~うちのお庭で勝負編~
会場:渋谷CLUB CRAWL
開場/開演: [平日公演]18:00/19:00 [土日公演]17:00/18:00
※全公演e+にて
〈1本目〉2月5日(日)
ゲスト) KNOCK OUT MONKEY
ゲスト) GOOD4NOTHING
ゲスト)LACCO TOWER
ゲスト) MAGIC OF LiFE
ゲスト) FABLED NUMBER
ゲスト) BUZZ THE BEARS
ゲスト) G-FREAK FACTORY
初回盤
通常盤
2. Team B
3. あの日見た青空はきっと今日に続いている
4. s.m.p
5. 十六夜クレーター
6. 描いた日々に
7. ライブハウス
8. Cheki-Cheki
9. カルテット
10. 8535
11. 波紋シンドローム
12. S.F
13. Dear Mr.FOOL
14. MUSHIBA
15. ミーン宣言
16. いろはにほへと
17. エンナ
18. あなたに出会えて
19. 輝きだす
en1. いつか(新曲)
en2. とおりゃんせ
en3. ファーストコール
Single「REVER-B」
M1. いつか
M2. メインアクト
M3. ユメイロ