『デスノート THE MUSICAL』豪華鼎談! 浦井健治×柿澤勇人×小池徹平が作品の魅力をたっぷり語る!
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(左から)柿澤勇人・小池徹平・浦井健治
2015年に日本、韓国で上演され大反響を巻き起こした栗山民也演出、フランク・ワイルドホーン全曲書き下ろしの『デスノート THE MUSICAL』が装いも新たにパワーアップして帰ってくる。原作は大場つぐみ&小畑健の大ヒットコミック。これまで映画、ドラマ化のたびに話題となり海外でもその名を知られる、日本を代表するエンターテインメント作品のひとつだ。死神と契約を結んだ男子高校生・夜神 月(ヤガミ・ライト)が、殺人という究極の手段を用いて”新世紀の神”をめざす物語。命、正義、平和、家族愛、友情など様々な価値観を揺さぶられる本作で、主人公のライトをダブルキャストで演じるのが浦井健治、柿澤勇人。そして、敵対するもう一人の主人公、探偵Lを小池徹平が演じる。本公演に先駆け『デスノート THE CONCERT』で来阪中だった3人に単独インタビューを敢行。こだわりの役作りから、再演への思いをたっぷりと伺った。
「夜神 月は実在するかもしれない、という怖さが皮膚感覚で伝わる作品です」(浦井)
ーー今宵は一足先に『デスノート THE CONCERT』で作品世界を歌で表現されます。楽曲に触れることで、蘇ってくる記憶や感覚などはありますか?
浦井健治(以下、浦井) 夜神 月(以下、ライト)的にはLと対峙する場面で、「そうそう、徹平のLがそういう眼をしていた!」という記憶が蘇りました。僕とカッキー(柿澤勇人)という二人のライトが同時にひとつの空間にいるのも、コンサートならではの醍醐味だなと思います。
柿澤勇人(以下、柿澤) コンサートの稽古合わせが2日間ぐらいだったんですが、わりとすぐに戻ってきた感覚がありました。初演の時もむちゃくちゃ練習しまくっていたので、2年という月日は経ちましたが、体には入っていたんだなって。
ーー初演では、L役の小池徹平さんが猫背のままフランク・ワイルドホーンさんの楽曲を歌い上げる姿に驚かされました。
小池徹平(以下、小池) 今も癖でちょっと前屈みになって歌っちゃうんですけど、コンサートってどう歌えばいいのか分からない部分もあるので、今の歌い方がベストなのか不安もあるんですよね(笑)。でも、ただ歌うだけじゃなく、わりと台詞のやり取りや芝居パートの演出もあるので、やっぱり普通に歩くよりはLっぽさを出した方が良いのかなと思って歌っています。セットや照明も少し暗めで、カッコいい演出にしてくださっているので。
小池徹平
ーーさて、本公演『デスノート THE MUSICAL』の再演が決定しました(一斉にパチパチと拍手)。タイトルにもあるように、本作は“死”という究極の選択を突きつけられたことで、様々なドラマが動き出す様が印象的でした。死という題材や、作品のテーマについてはどのようにお感じですか?
浦井 死は誰にでも平等に訪れるものだし、それをちょっとファンタジーで味付けして「デスノート」というアイテムを拾ったことで、普通の優秀な高校生が崩壊していく様を描くというのが、すごく漫画的だなと思うんです。ただ、同時に、初演の稽古場では栗山(民也)さんが絶えず「今の日本の若者たちが抱えている葛藤」についても口にされていて。舞台では新宿駅とか我々が普通に行動している範囲内で起こることが描かれるので「あ、(ライトって)いるかもな」と皮膚感覚で伝わるものがあった。死を身近に感じましたし、この題材自体が怖いなと感じました。
ーー確かに『スウィニー・トッド』のような寓話的な怖さとは違い、日常と地続きの物語であるところに恐ろしさを感じました。
小池 ひとの命を簡単に奪ってしまうノートの存在が恐ろしく描かれていて、それを正義だと言うライトはやっぱりL側の僕から見ると、常軌を逸しているなと思いますよね。
浦井 傲慢だよね。
小池 彼にとっては正義かもしれないけど、Lから見るとただの犯罪者だし、そういうひとが僕らの身近にいるかもしれないというリアル感は、観ているひとにもすごく伝わると思います。普段、そんなに死と隣り合わせに生きているという感覚はないかもしれないけど、少しこの作品を通して感じられるんじゃないかな。
ーー栗山さんが仰る「現代の若者」の視点で言えば、柿澤さんが一番主人公たちの世代に近いと思います。この作品をどうご覧になりますか?
柿澤 すごく満たされた世の中にあっても、若者たちはどこか退屈を抱えている。ちょうど初演の稽古中に、世間でも少年による殺人事件が注目を集めるようになっていたのを覚えています。原作は第一章「退屈」から始まって、死神のリュークも退屈で、ライトも満たされた環境の中で、どこか退屈を感じていて……。もちろん、現実の事件とこの作品とは全然違う話ではあるんですけど、何か根底に流れているものは同じなんじゃないかと、栗山さんは仰っていて。この作品を舞台化することで、今の時代の「死」や「若者」といったものを描けるのではないかと。劇中に出てくる渋谷のスクランブル交差点を行き交う若者たちも、ずっとスマホの画面を見ていたり、我関せずな雰囲気であったり、現実をリアルに表現しようとしてました。漫画が原作でありながらも栗山さんマジックで、身近に感じられる作品になっている。そこが面白くもあり、怖いところだと思います。
柿澤勇人
ーーライト役に共感する部分はありますか?
柿澤 舞台ではもちろん役になりきっているので、Lが出てきたらそいつを殺そうと思わないといけないですからね。
浦井 日本に住んでいるから分かりやすいという部分もあると思います。例えば、これがブロードウェイの翻訳作品だとしたら、出てくる役名から土地の名前まで「誰?」「どこ?」となりますが、物語の舞台が日本なので、役作りにおいてもすごく分かりやすい部分がありました。
「思わず叫びたくなるほど感情を揺さぶられる、楽曲の相乗効果が素晴らしい!」(小池)
ーーセンセーショナルな内容の一方で、劇中ではビジュアル的にそれほど派手な事件が起こるわけでもありません。そういう目に見えない心理戦がメインの物語を描くうえで、「歌」という要素はとても効果的だなと感じました。
小池 ワイルドホーンさんの楽曲の素晴らしさを感じますよね。本当にLとライトが歌で対決しているような楽曲では、掛け合っていくうちにすごく気持ちが熱くなってくる。そんなことない?
柿澤 うん、あるよね。
浦井 力んじゃって、結構叫んじゃう。コンサートの稽古中にも「殺す」とかいう歌詞のときに、結構喉がすり減る感覚がありました。
浦井健治
ーーコントロールするよりも先に、感情が出てしまうんですね。
浦井 出ちゃいますね。
小池 何だか急にシャウトしたくなっちゃうときとか、あるでしょ? 「うわー!」とか言いたくなったり。それくらい相乗効果があるし、楽曲のパワーがスゴい。その分、歌うにはスタミナが必要だけど。
浦井 筋力も必要になってくるから、初演ではカッキーが稽古場でずっと筋トレしていたイメージがある。
柿澤 いや、してないです。
浦井 あ、してなかったみたいです(笑)。でも初演では、必ず稽古場には一番最初に来るっていう目標があったよね?
小池 早いよね、稽古場に来るの。
柿澤 柔軟体操はよくしていました。歌って体全体を使うものなので、疲れがたまって体が固くなると声にも影響するから、ストレッチはしまくってましたね。
ーー例えば、タイトル曲「デスノート」は、どんな心境で歌われるのでしょう。わりとライトの中で、カチッと狂気へのスイッチが入るような楽曲だと思うのですが。
柿澤 あれは、劇中でライトがどんどんひとの名前を書いていって「新世界の神になる!」と歌う決意の歌。栗山さんには、使命感を背負った“魂の叫び”のように歌ってくれと言われました。曲もカッコいいので、朗々と歌い上げたくなる気持ちも分かるけど、そうじゃないんだと。
浦井 「新世紀の神だー!」と叫ぶのではなく、「僕は神なのだろうか」というハムレット的な方向で歌ってほしいと。初演では日本とアメリカの若者の違いについて、すごくディスカッションを重ねました。別に神とかどうでもいいし、興味ないしみたいな、全ての人がそうという訳ではありませんが、そういう鬱屈したところのある日本の若者像について、栗山さんはすごく模索されていましたね。
ーーライトは次第に神のような万能感や全能感を手にすると思うのですが、おふたりは役に対してどのようにアプローチされたのでしょう。ライトとはどういう人物だと?
浦井 僕は原作のライトのファンだったので、自分が思っているライト像に近づこうと役作りしました。原作のビジュアルと、声に関してはマモちゃん(宮野真守)のアニメ版を参考にしました。
柿澤 僕は健ちゃん(浦井)とは、ビジュアルも全然違うんですよ。髪の色も黒だったし。それは栗山さんがそのように作ってくださったんですけど。もちろん原作に寄せて作るのもひとつの正解だし、それが本当だと思うんですけど、栗山さんが僕に言ってくれたのは、ライトも天才ではあったけど最初から殺意を持っていたわけではなかったのだと。僕としては普通の少年が徐々に変化して、最終的に絶望へ向かっていく様を見せたかった、というのはありましたね。
浦井 カッキーのライトはすごく痛々しくて切なくて、見ていて悲しくなるよね。
柿澤 健ちゃんのは狂気に入ったらスゴいですからね。本当に漫画を見ているような気になる。
柿澤勇人
ーー至近距離で対峙される小池さんは、おふたりの違いについてどうお感じですか。
小池 もちろん物語として行き着く場所は同じなんですけど、やっぱり持っている熱量の質が違うから、同じライトなんですけど、どこかが違ってて……。結末でLの心に残るものもやっぱり少し違うんですよね。
ーーそれは、何か言葉にしていただくことはできますか。
小池 難しいな……。でも、浦井くんのライトはやっぱり原作に近いよね。どこか人間離れした狂気的なキャラクターという感じで。逆に柿澤くんのライトはちゃんと人間らしさも残っていて生々しいという感じなのかな。でも、どちらのライトにもドラマがあるんですよね。
ーー突出したキャラクターと普通の少年が辿る物語とでは、作品を通して見えてくるものも変わってきそうです。小池さんが演じるLは、作品のなかでもビジュアルが特徴的ですが、役作りでは外見が糸口になる部分もあったのでは?
小池 そうですね。身ぶり、手振りも独特だし、ファンそれぞれの中に自分が思い描くL像があるような人気キャラクターなので。舞台は映画やドラマと違って常に全身を見られるので、とにかくLとして自然に存在していられるようにしなければいけないと、頭のてっぺんから爪先まで全身を意識してやっていました。だから、スゴい痩せたんだと思う。
浦井 初演では、ガリッガリだったもんね。最後の方は誰も話しかけられないような雰囲気があったから。
小池 今考えると、それぐらいプレッシャーは感じていたのかなって思いますね。普段はあんまり引きずらない方なので。
小池徹平
「日本が世界に誇るオリジナル・ミュージカル、間違いなく面白いとお約束します!」(柿澤)
ーー劇中ではLがライトに投げ掛ける「友達になりたかった」というような趣旨の台詞も印象に残りました。ライトとLの関係について、みなさんはどう思われますか?
小池 根本的に持っているものが少し似ていたんだけど、「似てる」って紙一重じゃないですか。相反する部分があってやっぱり全然違うものだし、対比にもなる。そんな二人がデスノートを介して出会ってしまった。出会い方が(ふたりの関係性を)決めてしまった部分もあると思います。
浦井 天才という意味で、孤独な二人なのかなと思いますね。それは、藤原(竜也)さんの映画を見たときにもスゴく感じました。二人の“孤独”という部分が、ピックアップされているのかなと。
柿澤 二人でテニスをやるシーンなんかは新鮮だし、楽しんでいる部分もあるんですよね。それは、やっぱりどこかでシンパシーを感じているから。やっと対等に同じ次元で話せる相手が出来たってことが嬉しいというか、ある意味、快感に思う部分があるからなんじゃないかなと思います。
ーー先ほど役作りのお話で、宮野真守さんのお名前が出ましたが、浦井さんはミュージカル『王家の紋章』で共演されていますね。宮野さんとライト役について、何かお話はされましたか?
浦井 マモちゃんにとってもすごく大切な役だったらしく、最後の場面が近づくにつれて、だんだんと自分が追い詰められていく感覚があったと仰っていました。ライトって憑依される役なのかなと思います。自分でも顔つきや目つきが日常でも変わってくるような、すごく侵食されていく感覚があるので。普段はオンオフの切り替えが出来る方なんですけど、ライトは乗っ取られる感覚のある役かもしれないですね。
浦井健治
ーー柿澤さんも同じ感想ですか?
柿澤 僕は乗っ取られないですね(笑)。どれだけ熱くなる芝居でも、どこか冷静でいたいタイプなんですよ。狂う芝居でも一割二割は、どこかで俯瞰して自分を見ていないとダメだなと思うので。
ーーそれは、役者の仕事に就いてからずっと?
柿澤 昨年の主演舞台(『ラディアント・ ベイビー』)で怪我を経験してからですね。それまでは、ずっと自分の能力を高く見せたいという思いが強かった。歌なら求められるよりももっと声を出せるし、振付はもっとキレよく踊りたい。ターンはもっと速く、ピルエットは2回転のところを3回転で回ったり。“上手く見られたい”という欲があるから、やっぱりどこかで無理していたんでしょうね。そこからです。無理しても俺は俺だしと思うようになりました。以前は、本番前になるとガチガチに緊張して舞台袖で震えていました。最近は自分を俯瞰して見ることで、いい意味で緊張しなくなりました(笑)。
ーー貴重なお話ありがとうございます。再演では死神のリューク役が石井一孝さんに変わるなど、一部キャストの変更も見所のひとつになりそうですね。
浦井 キャストが変わると全然別物になりますよね。脚本も栗山さんの中では、ライトが変化していく過程をもう少し丁寧に描きたいという思いもあるようです。初演からのメンバーは作品、楽曲の浸透度も深まっていると思うので、より自由に羽ばたいて、そして新しいメンバーも加わることで新しいエネルギーを伝えられるようなステージになればいいなと思います。
小池 初演から2年を経て、僕らも役者としての“うま味”が熟成されていることは、それぞれが自覚していると思うので。そこに新たなキャストさんという“スパイス”が加わることで、作品の魅力が一気に放たれると思います。それがどれほどのものかは想像もできませんが、間違いなくパワーアップしているんだろうなと思います。
柿澤 初演は、韓国でも現地のキャストによって上演されましたし、今回の再演では僕らによる台湾公演も決定したので、今から本当に楽しみです。僕は初演の感覚がすごく良くて、あのメンバーでひとつの正解を出せたという感覚があるんです。再演でもその感覚をもう一度味わいたい。日本が世界に誇るオリジナル・ミュージカルのひとつだと思うので、大阪のみなさんも楽しみにしていて欲しいですね。間違いなく良い作品をお見せできることをお約束します。
(左から)柿澤勇人・浦井健治・小池徹平
取材・文:石橋法子 写真撮影:奥村達也
■音楽:フランク・ワイルドホーン
■歌詞:ジャック・マーフィー
■脚本:アイヴァン・メンチェル
■翻訳:徐 賀世子
■訳詞:高橋亜子
■演出:栗山民也
■出演:浦井健治・柿澤勇人(Wキャスト)、小池徹平、唯月ふうか、髙橋果鈴、濱田めぐみ、石井一孝、別所哲也 ほか
【富山公演】2017年6月24日(土)~6月25日(日) オーバード・ホール(富山市芸術文化ホール)
【台中公演】2017年7月21日(金)~7月23日(日)
【大阪公演】2017年8月19日(土)~8月21日(月) 梅田芸術劇場メインホール
【東京公演】2017年9月2日(土)~9月24日(日) 新国立劇場 中劇場