新譜リリースに主催サーキット開催――2017年の音楽シーンで台風の目となるべき存在・the quiet room
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the quiet room・菊池遼 撮影=風間大洋
3月29日に新ミニアルバム『Little City Films』をリリースしたthe quiet room。数々のオーディション、コンテストで賞を総なめにし、渋谷クアトロでのワンマンも達成済みの彼らだが、これまであまり積極的にメディアには出てきていなかった。今回のSPICE初インタビューでは、フロントマンにしてソングライターの菊池遼にバンド結成のエピソードから曲作りのスタイル、そして新作についてまでたっぷりと話を訊いた。地元・水戸でのサーキットイベント主催や二度目のクアトロなど、2017年はこれまで以上にその名を耳にすることになりそうな“クワルー”。今のうちにチェックしておいてほしい。
──3月29日に『Little City Films』をリリースされますが、今回は初登場ということで、プロフィール的なところもお聞きしていこうかと。まず、どういうところから集まって結成されたんですか?
高校生のときに組んだんですけど、大体みんな受験のタイミングで解散とか活休するじゃないですか。そのときに、勉強もいいんだけどバンドも続けたいっていう人達で集まったのがthe quiet roomです。
──「俺たちは音楽でいこう!」と。
僕はそういうつもりでしたね。ベース(前田翔平)はオリジナルメンバーなんですけど、彼のベースがよかったので、「どうしてもやってほしい!」って無理矢理巻き込みました(笑)。彼はちゃんと大学を受験しようっていうマジメなタイプだったんですけど、大丈夫でしょ!!って。本当は高3の秋頃に一度活休したんですけど、ライブハウスから良いブッキングの話が来たら、一夜限定で復活したりして(笑)。結局活休してないじゃん!っていう感じでしたね。
──どういうバンドにしたいと思っていましたか?
メンバー全員の共通意識としては、歌を大事にするバンドがやりたくて。これまでメンバーチェンジもあったんですけど、そこは一貫してますね。メロディーがしっかりあって、音楽的なジャンルは好き勝手やるというか、いい意味でこだわらずにやりたくて。ただ、そうするからこそ、逆に歌だけは大事にしようって。
──楽曲はすべて菊池さんが作詞作曲をされていますけど、メンバーのみなさんに聴かせる前に結構作り込みます?
いや、全然作り込まないんです。弾き語りだけですね。ギターのコードとメロディーぐらいで、あまり固めないようにしていて。僕はあんまり楽器を弾けないし、機械にも弱いので、打ち込んだデータをメンバーに送るとかもできなくて。かなりアナログなやり方でここまで来てしまったというか(苦笑)。
──ある程度、菊池さんのなかにビジョンがあって、それをみんなで形にしていったり?
本当は自分のなかにはあるんですけど、メンバーには言わないようにしてます。敢えて言わないことによって、予想外のものが返ってくるんですよね。
──結構意外でした。曲を聴いた感じだと、デモを作りこむなりして、イメージを再現する感じなのかなと思っていたので。
いや、丸投げです(笑)。そうやってゼロから作ってもらう感じが、the quiet roomの音楽なのかなと思いますね。そういう作り方がおもしろいし、幅の広さにも繋がってるのかなって。
the quiet room・菊池遼 撮影=風間大洋
──なるほど。どんな音楽が好きでよく聴いていたんですか?
小中学校のころは、J-POPをすごく聴いてました。aikoさんとかポルノグラフィティとか。そこからバンドを始めたんですけど、(地元の)茨城って結構アングラなイベントが多かったりして、先輩もハードコアバンドとかが多かったんですよ。そういうところでいろんな音楽を聴きつつも、J-POPのようなメロディーのいい音楽を聴いていたから、日本人らしいというか、日本のシーンにうけるメロディーが作れるだろうなって思ってましたね。
──実際にどれも口ずさみたくなるメロディーの曲ばかりです。バンドを始めてから好きになった音楽というと?
今は活動休止をしているんですけど、FoZZtoneが一番好きで。昔は普通のギターロックだったのが、いろんな音楽をどんどん吸収していって、すごく壮大になっていく過程を見ていて、こういうふうになりたいなって思ったんですよね。枠にとらわれていないというか、なんでもやれるバンドになりたいと思ったのは、それがキッカケだと思います。
──活動開始以降、数々のオーディションを総なめしていったことで、かなり自信になったかと思うのですが。
このやり方で間違っていないんだなっていう自信にはなりました。『Little City Films』のリード曲になっている「Locus(M-2)」にしても、イントロがかなり激しいんですけど、元々この曲はイントロがなかったんですよ。僕としては、ちょっとおしゃれな感じのギターと歌から始めたいなと思って丸投げしたら、メンバーから「いや、こういうゴツいイントロいるっしょ?」みたいな感じで返ってきて。正直、最初はちょっと引いたんですけど(笑)、事務所の人たちも含めて相談したら、「これをリード曲にしよう」って。
──焦りますよね。言ってみれば、これまでのイメージを打ち壊す勢いのゴツさですし。
「大丈夫かな」っていう心配はあったんですけど、メンバーが「ちゃんとメロディーは残ってるから気にしなくて大丈夫だよ」って言ってくれたので、そう思ってくれているなら大丈夫かなって。そこはお互いに信頼しているし、こういうやり方でいいんだなって思うことが最近多いですね。あと、今回は「Locus」と、1曲目の「Fressy」のツインリードみたいな感じなので、かなりラウドなものと、かなりポップなものっていう幅があるのもおもしろいかなって。
──「Fressy」は、バンドサウンドがしっかりと出ているポップソングですね。
僕はこういう曲がすごく好きですね。aikoさんみたいな、おしゃれなコードにすごく耳に残るメロディーがのっているものが昔から好きだったし、こういうものをやりたいと思って音楽を始めたので。今後もこういう曲はもっとやっていきたいんですけど、メンバーは「Locus」とか「Polaroid(M-3)」みたいな激しいものが好きなので、そこはバランスをとりながらやれればいいなって。メンバーが音をどれだけ激しくしても、自分がいればポップスの面を出せるというか、守っていけるというか(笑)。僕としては、ポップソングではないといけないと思っているので。
──それはなぜですか?
将来的にはめっちゃくちゃ大きいバンドになりたいんです。国民的バンドみたいなところを、どうせならば目指したいなと思っていて。そうなるためには、老若男女、誰でも口ずさめるっていう部分は重要なポイントだと思うので。まぁ口だけになっちゃっても(苦笑)、夢はでっかく持っていたいなと。
──僕はその考え方めちゃくちゃ好きです。そんな様々な楽曲が収録されている『Little City Films』ですが、どういう作品にしようと思っていたんですか?
『Little City Films』=小さい街の短編映画集という、もうそのままな感じですね(笑)。いつもは主観的というか、自分に起きたこと、自分が感じたことを歌詞にしていたんですけど、今回は客観的に風景を切り取るというか。自分のなかに架空の小さい街を作って、そこで暮らしてる主人公たちを切り取ったり、その世界を横から見て形にしていくイメージで作りました。「灯りをともして(M-5)」と「Cattleya(M-6)」は繋がっているので、実質6人の主人公を描いているんですけど、別々の主人公なので、サウンドも一曲一曲まったく違う方向にしようと。……ただ、そういうコンセプトもメンバーには伝えてなくて(笑)。
──そこも!?
伝えなくてもバラバラになるだろうなと思ってたんですよ。メンバーが似ている曲を作るのが苦手というか、嫌うので。全部できてから、実はこういうテーマだったんだよね! ぴったりだよ!って。
──すごいですね、ほんとに。楽曲をメンバーさんがアレンジしているときは、菊池さんは別の作業をしてるんですか?
いや、セッションしてる感じですね。僕が弾き語りをしているところに、メンバーがあわせてくるっていう。だから、僕は延々歌い続けてます(笑)。
──めちゃめちゃハードじゃないですか(苦笑)。
今日もスタジオに入って新曲を作ってたんですけど、ずっと歌ってました。1コーラスをずっとループして歌っているところに、メンバーがああでもない、こうでもないってその場でフレーズをつけて、これいいんじゃない?ってやってるところを横目で見ながらずっと歌うっていう(笑)。なんかもう、「音流しとけばいいじゃん!」っていう感じではあるんですけど、メンバーのフレーズによって僕のフレーズが変わることもあって、このやり方をしていて。
──基本丸投げとのことでしたけど、ここだけは変えないでほしい!みたいなことはあんまりないんですか?
基本はないですね。たとえば、イントロだったらボーカル以外の楽器が目立つじゃないですか。そこは僕が何かを言うよりは、メンバー全員に気持ちよくやってもらったほうがいいかなって。みんな弾きたがりだし。
──そこがまたかっこいいですよね。メロディーもしっかりしている上で、各パートの個性がめちゃくちゃ強いっていう。
みんな負けず嫌いなのかもしれないです。基本、足し算バンドなんですよ。誰かがとめない限り、延々と足していくんですよね。特にギター(斉藤弦)とドラム(コビキユウジ)は弾きがち叩きがちなんですけど、それをベースが「まぁまぁ、そこら辺にしておきなよ」って言いながら、音源を聴いたら彼もさりげなくいろいろ足してるっていう(笑)。
──ははははは(笑)。音楽的なルーツはみなさんバラバラなんですか?
本当にバラバラです。そこまでJ-POPを聴いていたのは僕だけで、ベースは元々ミクスチャーが好きだったんですよ。RIZEとかレッチリとか、あとは僕が知らないようなマイナーなところを聴いていたり。ギターはオシャレな感じというか、日本のバンドでいうとthe band apartとかが好きですね。ドラムはcinema staffとか、残響系のバンドが好きなんですけど、メロディーをどうするか迷ったらドラムに聞くことが多いです。一番バンドマンっぽくなくメロディーを聴いているので。
──いいメロディーの後ろで叩きたいっていうドラマーの人って結構多いですよね。自分が旋律に関わるパートじゃないから、そこはすごくいいものであってほしいっていう。
そうかもしれないですね。“このアレンジだから、このメロディー”っていう感じではなく、単純にメロディーだけを聴いていることが多いので。まぁ、(メンバーのなかで)一番音痴なんですけど(笑)。でも、お互いがライバルというか、負けたくない気持ちがあるし、その相乗効果はあると思います。
──良い関係ですね。でも、今作は客観的に歌詞を書いたとのことでしたけど、なぜそういう方法をとったんですか?
正直いうと、前作でちょっと出し切ってしまった感があったんですよ。自分が感じたこと、自分が経験したことが底尽きてしまったというか。だから、別の作り方をしてみたいなっていうところがきっかけですね。
──なんか、個人的なイメージなんですけど、今までやっていた方法が使えなくなってから。何かが枯れてしまってからが本当の勝負みたいなことを思ったりするんですけど。
あぁ。でも、確かにそうですよね。前作を出した後のツアーファイナルが渋谷クアトロだったんですけど、そのあとに本当に燃え尽きちゃったんですよ。少し話を戻しますけど、高校生の頃に初めてライブハウスで見たバンドがFoZZtoneで、そのときにもらったフライヤーを部屋にずっと貼っていたんですよ。そのフライヤーに載ってたツアーファイナルが、渋谷クアトロで。だから、高校生の頃からあそこでやるのが目標だったので、それもあって正直ちょっと燃え尽きてしまって。自分のなかにある曲を書きたいっていう欲も出しきってしまったし、ライブも目標のところで出来てしまったし、これからどうしよう?っていう感じになってたんですけど。
the quiet room・菊池遼 撮影=風間大洋
──どう乗り越えたんですか?
自然と、頑張りたいなっていう気持ちになっていきましたね。メンバーがいいフレーズを持ってきたりすると、僕もいいメロディーを持っていかなきゃって思ったり、クアトロが終わった後も、お客さんがイベントに観に来てくれているのを見て、もっと大きいところに連れて行きたいなって思ったり。だから、はっきりと勝負っていう感じではなかったけど、心機一転頑張りたいなっていう気持ちで今回は作りました。今回のツアーもファイナルはクアトロワンマンなんですけど、前回もわりと埋まってはいたけどソールドアウトはできなかったんで、今回はきっちりパンパンにして、もっと喜んでもらえたらなと思ってます。
──楽しみにしてます。あと、今回の歌詞はラブソングの形を取っているものも多いですよね。
最近、自然と多くなってきましたね。昔はかっこいい歌詞が好きだったんですよ。文学的というか、難しい単語を使ってばかりいたんですけど(笑)、気がついたらこうなっていて。あとは、自分がラブソングを聴いたときの感じ方も変わってきたというか。たとえば、aikoさんだったら「キラキラ」の歌詞を読んだときに、そういうことだったのか!って思うようなこと、それが二十歳を超えてから増えてきて。なんか、まだ23なんですけど、23なりに歳をとっているというか、ラブソングに対しての抵抗がなくなってきたんですよね。あとは、恋愛ってそれこそ老若男女誰もが経験するテーマだから、そういう意味でもラブソングはいいなと思っていて。でも、高校生の頃だったら絶対に書かなかったです、こういう歌詞は。
──「ラブソングなんて軟弱だ!」みたいな?
「愛して愛して」ってめっちゃ言ってるじゃん!って(笑)。でも、「愛してる」とか「愛してよ」っていう言葉も、感じ方が変わったなと思いますね。昔だったら恥ずかしくて歌えなかったですけど、まぁそれなりに恋愛もしてきて……たぶん、そこは結構マジメなほうだと思うんですよ、バンドマンにしては(笑)。
──ははははははは!(笑) でもまぁ、愛を歌うこともいいんじゃないかと。
そうですね。それもある意味ロックなのかなって。
──たしかにラブソングってものすごくロックですよね。「好き」とか「愛してる」とか、そんな普段言えないことをそこまで叫ぶか!?っていう。
なかなか言えないことですからね。でも、ラブソングにみせかけて、ラブソングではない歌詞もあります。そこは、メンバーが激しい音楽をやりたいと思っているところもあるし、僕としてもなんでもできるバンドでありたいという表れでもあって。だから、ラブソングだけを歌うバンドにはなりたくないんですけど、それもしっかり歌っていけるボーカルでいたいし、バンドでありたいなと思いますね。
──そして、先ほど渋谷クラブクアトロワンマンのお話もありましたが、4月29日には初の主催サーキットイベント『New Flag Fes'17』を、地元の水戸で開催されます。以前からやりたかったものなんですか?
やりたかったです。茨城って『つくばロックフェス』を主催している人がやっている『えーじゃないか』とか、水戸のバンドだけを集めた『Mito Midtown Music』とか、サーキットイベントが多くて、すごくお世話になったというか。そういうイベントがあったおかげで、自分の音楽の幅が広くなったと思うし、僕らが全国いろんなところを廻って出会った仲間たちとか、いいなと思った音楽を地元に連れて帰りたいっていう気持ちがずっとあったんですよね。
──じゃあ、本当に念願叶っての開催と。
できれば毎年やれるような規模にしたいなと思ってます。あと、茨城っていろんな音楽が集まるイベントは他の地域より多いと思うんですけど、群馬でLACCO TOWERがやってる『I ROCKS』とか、栃木でMAGIC OF LiFEがやってる『栃フェス』みたいな、現役のギターロックバンドがやるフェスがないんですよ。それに、玄人はめちゃくちゃいるんですけど、これからバンドをやりたいと思っている若い子が、他の県よりも少ないなと思っていて。だから、音楽って楽しいな、やってみたいなって思ってもらえるキッカケになるようなイベントにしたいし、『I ROCKS』を目標にしている群馬のバンドがたくさんいるように、茨城ではthe quiet roomがそういう存在になりたいですね。地元にいろいろなものを還元できるようになれたらいいなと思います。
──それで『New Flag Fes』なんですね。新しく旗を立てようっていう。
そうですね。もう単純にそういう意味です。シンプルなほうがいいなと思っていたので。
──シンプルなぶん、想いは伝わるんじゃないでしょうか。
そうだといいですよね。日程的にクアトロワンマンと日が近いので、やめておいたほうがいいんじゃないかっていう意見もあったんですけど、ちょっと無理をしてでもやる意味があるんじゃないかって。先延ばしにしたら、もうできないなと思ったというか、単純に先延ばしにするのが嫌なんですよ。それはリリースもなんですけど、スパンを空けることなくやっていきたいんですよね。できるだけリスナーが飽きることのないような、ずっと期待していられるような活動をしていきたいなと思っています。
取材・文=山口哲生 撮影=風間大洋
the quiet room・菊池遼 撮影=風間大洋
3月29日リリース
the quiet room『Little City Films』
01.Fressy
02.Locus
03.Polaroid
04.Take me higher
05.灯りをともして
06.Cattleya
07.Twilight
2017/4/29 (土)
茨城県
mito LIGHT HOUSE / club SONIC mito /
参丁目劇場
出演:
the quiet room / アンテナ / 真空ホロウ
polly / WOMCADOLE / チーナ/
MARQUEE BEACH CLUB/
Czecho No Republic/magenta [O.A.]
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w / Amelie / マカロニえんぴつ
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