「またどこかで会いましょう」the quiet room活動15年に終止符、全身全霊で臨んだフィナーレは感動的な空間に
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the quiet room
the quiet room『the quiet room Tour 2024-2025「いま、偶然を抱き寄せて」』
2025.03.21(fri) 恵比寿LIQUIDROOM
the quiet roomの全国ツアー『the quiet room Tour 2024-2025「いま、偶然を抱き寄せて」』東京公演が3月21日、東京・恵比寿LIQUIDROOMにて開催された。the quiet roomは昨年10月にリリースしたニューアルバム『不時着する運命たち』を携えた本ツアーを実施してきたが、菊池遼(Vo, Gt)が体調不良のため休養が必要との診断を受けたことで今年2月よりライブ活動を休止。その期間に菊池からバンド解散の申し出があり、メンバーやスタッフ間で話し合いを重ねた結果、継続困難という結論に達し解散に至った。その後、菊池の体調が改善し、かつ医師よりライブを行う許可が降りたため、今回の東京公演をもって解散することとなった。
最後の勇姿を見届けようと、ライブはソールドアウトを記録。さらに、インターネット生配信も急きょ実施され、大勢のファンが彼らの最後のステージを目撃することとなった。
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オープニングSEに乗せて斉藤弦(Gt)、前田翔平(Ba)、サポートメンバーのぴのり(Dr)がステージに登場し、最後に菊池が姿を現すと会場は盛大な拍手に包まれる。菊池は客席に目線を送ってから深々とお辞儀をすると、「the quiet roomです、よろしく」の挨拶とともに「Fressy」にてライブをスタート。軽快で爽快感の強いビートに合わせて、オーディエンスはクラップで大きなノリを作っていき、「Twinkle Star Girl」「平成ナイトコウル」と曲を重ねるにつれてフロアの熱気は一段と高まっていった。
3曲終えたところで、菊池は「今日はみんなに謝りたいことがたくさんあるんだけど、謝罪をする日というよりは今までの感謝を精一杯伝える日にしたいなと思ってます」と改めて挨拶。続けて「とはいえ、まずは一言みんなに謝りたくて。the quiet roomは解散するんだけど、それを決めたのも僕です。今まで応援してくれていたのに、悲しい思いをさせてごめんなさい」と口にして再び頭を下げると、「メンバーにも突然こういう決意を伝えることになって……たぶん今も複雑な気持ちで横に立ってくれていると思うんだけど、それでもやるって決めたから、ちゃんといいライブをしっかり届けて後悔のないように終わりたいと思います。最後までよろしくお願いします」と涙ながらにラストライブへの意気込みを語った。
菊池遼(Vo/Gt)
菊池遼(Vo/Gt)
「悲しいだけで終わりたくないんだよな。最後、みんなでいい1日にしましょう。力を貸してください」と伝えてから、ライブは「(168)日のサマー」にて再開。しんみりした空気もこの曲で一変し、曲中のコール&レスポンス含め再び熱気が高まっていく。アグレッシヴさが際立つ「Vertigo」では、斉藤の豪快なリフワークと前田の跳ねるようなスラップが独特のグルーヴを生み出し、「Ghost Song」ではぴのりの叩き出す4つ打ちビートとともにダンサブルなノリを作り上げていく。「Instant Girl」ではメンバーの前のめりな熱演に対して観客はクラップで応え、斉藤の派手なギターソロに対して大きな声援と拍手が送られた。
斉藤弦(Gt/Cho)
斉藤弦(Gt/Cho)
ライブ中盤ではアコースティックギターを手にした菊池が、ミディアムナンバー「もう少し前から」をしっとりと歌い上げる。エモーショナルさが際立つ歌と演奏が光る「悪い癖」で会場をよりセンチメンタルなムードで包み込むと、「知らない」でその空気はさらに増幅。斉藤の情熱的なギターソロも相まって、オーディエンスはバンドの歌と演奏にたっぷりと酔いしれているように映る。そして菊地が「ちょっとしっとりしすぎましたね」とちゃめっ気たっぷりに微笑むと、「大切にしている、とっておきのラブソングを送ります」と告げて「Tsubomi」を披露。アップテンポで多幸感いっぱいのこの曲で、フロアは再び熱を帯びていった。
前田翔平(Ba)
前田翔平(Ba)
ライブ終盤ブロックに突入する前に、菊池は「話したいことはたくさんあるんだけど、別に悲しい話をしたいわけじゃなくて。でも、あえてひとつ言うとするなら……この(解散)発表があってから、みんなからたくさんお手紙をいただいたんですけど、その中には『もっと応援していれば(解散しなかったんじゃないか)』という言葉があって。全然そんなことなくて、むしろみんながいてくれたから15年間もやってこられました。本当にありがとうございます」と今の心境をじっくり伝え始める。そして「それぞれ音楽を続けるかどうかはわからないけど、別に死ぬわけじゃないし。またどこかで出会えると思うので、前向きに生きていきたいと思っています。だから、みんなも今日が終わって悲しい気持ちになるかもしれないけど、前を向いてまた一歩ずつ踏み出せるように、そんな気持ちを込めて次の曲を歌いたいと思います」と告げ、歌詞の一言一句に思いを込めて「You」を熱唱。曲中、ステージ上のメンバーもフロアのオーディエンスも感情が溢れ出す瞬間こそあったが、最後は笑顔を浮かべて互いにエールを送り合った。
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シャッフルビートが心地よい「夢で会えたら」、菊池の「全部出し切って!」を合図にクラップとシンガロングで一体感を作り上げる「パレードは終わりさ」でフロアの熱気が急加速。バンドの4人が向かい合って演奏を終えると、「最高です。ありがとう!」と観客に笑顔で感謝を伝える。そして「みんなに前を向いてほしくて、できるだけ前向きな言葉を残してきました。それは嘘とかではなくて、本当にそう思っていたから」と菊池が観客に告げると、「これからも俺らが残してきた歌をみんなの生活の中で、ふとしたときに聴いてくれたらなと思ってます。本当に今日まで応援してくれてどうもありがとう。最後に永遠の愛の曲をここに残して、全力で歌って帰ります。またどこかで会いましょう、the quiet roomでした」と伝えてから「キャロラインの花束を」を披露。全身全霊を込めて歌い演奏するバンドの姿を前に、観客もありったけの大きな声で歌い続け、クライマックスと呼ぶに相応しい感動的な空気に包まれてライブはフィナーレを迎えた。
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メンバーが深々とお辞儀をしてからステージをあとにすると、フロアからは「ありがとう」の声や拍手に続いてアンコールを求める盛大なクラップが湧き起こる。しばらくしてからステージに戻ってきた菊池は「今日はアンコールをやらないつもりでした」と口にし、「これで本当に最後の1曲。15年間いろいろあったけど、今から歌う曲がなかったらこんなに続いていなかったと思います。最後に僕たちをここまで連れてきてくれた曲を、しっかりみんなに届けて、今日は終えたいと思います」と予定外の「Hello Hello Hello」で再び会場をひとつに束ねていく。曲後半では斉藤や前田が感情を露わにし、激しく動きながらプレイする場面もあり、ライブはエンディングへと向かっていく。そして、すべての演奏を終えると菊池がマイクなしで「ありがとう!」と叫んで、ステージをあとにした。
予定外のアンコールを終え、ライブは完全終了するかに思われたが、オーディエンスのアンコールを求めるクラップは鳴り止まず、次第に大きさを増していく。すると三度ステージにメンバーが登場し、斉藤が「裏に戻ってから『もう1曲やろう!』と話しました」と話すと会場は歓喜に包まれる。菊池も「『Hello Hello Hello』は(斉藤が)加入する前の曲だから」と続き、正真正銘のラストナンバーとして斉藤のギタープレイが光る「Instant Girl」を再度披露。会場中が最高の笑顔で埋め尽くされる中、the quiet roomは15年にわたる活動に終止符を打った。
取材・文=西廣智一 撮影=白石達也
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セットリスト
01. Fressy