先輩、後輩、憧れ、焦り セッターたちのドラマを見よ『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“勝者と敗者”』ゲネプロレポート
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe
3月24日、TOKYO DOME CITY HALLにて行なわれた『ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」“勝者と敗者”』のゲネプロより、ステージレポートと囲み会見のコメントをお届けする。
物語の舞台はインターハイ宮城県予選。初演・再演で練習試合を繰り広げていた烏野高校と青葉城西高校の初の公式戦、そのすべてを惜しみなく描写すべくシリーズ初の三幕となった本作は、チームの中でもセッターというポジションにスポットがあてられたエピソードである。林 剛史演じる烏野高校・烏養コーチの「セッターはオーケストラの指揮者のようなもの。同じ曲、同じ楽団でも、指揮者が変われば音が変わる」という台詞にインスパイアされたメイン・イメージはズバリ、“協奏曲”。一幕・二幕・三幕はそれぞれ第一楽章・第二楽章・第三楽章と位置づけられ、いわばオーケストラがチューニングを行なうプロローグから楽器をメンテナンスしてケースにしまうエピローグまで、盛りだくさんのドラマが壮大なひとつのカタマリとして観客を呑み込んでいく、威風堂々たる構成での熱戦となった。
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe
ドラマの主軸は過去の呪縛から逃れ、ひとつ上のステージにいくためにもがく天才セッター・影山と、影山にレギュラーを奪われても試合に出ることに集中を切らさずチャンスを得た3年生セッター・菅原の思いの解放、さらに影山の中学時代の先輩で常にトップにいることを己に課す青葉城西高校不動のセッター・及川の“競演”。木村達成演じる影山は、“ただいま成長真っ只中”と目まぐるしく変わっていく内面を丁寧に描写し、その不器用な愛らしさが印象的。猪野広樹演じる菅原は、笑顔を絶やさない大いなる包容力から溢れ出る秘めた闘志をピリッと伝染させ、これまで素敵キャラで爽やかさを振りまいていた遊馬晃祐演じる及川は、スタートから“戦闘モード”にスイッチオン。隠していた牙を華麗に剥き出し、強豪校のクレバーなキャプテンとして君臨した。
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe
経験を重ね、“カラス”としての雑食性を増した烏野メンバーのパフォーマンスは、前回超えで伸び伸びハツラツ! “ハイパープロジェクション演劇”という新ジャンルを自在に乗りこなし、ステージの熱をグングンと引っ張っていく喜びに満ちている。ふたりのセッターだけでなく、須賀健太演じる主人公・日向翔陽の新たな伸びしろ、三浦海里演じる山口と小坂涼太郎演じる月島の1年生コンビの静かな覚醒など、ひとりひとりのキャラクターの成長も見逃せない。
対する青葉城西チームは、小波津亜廉演じる岩泉の及川に寄せる友情の篤さと青葉城西全体の結束の強さも見せつけつつ、いよいよエリート強豪校としての本領を発揮。猫のようにしなやかな音駒高校、ラウドで強靭な伊達工業高校といったこれまでの対戦校ともまた違う、品格のある強さが持ち味となっていた。その優雅な身体表現を例えるなら……シュッと伸びたカサブランカのよう。
両極な情熱がぶつかりあう緊迫したゲーム展開は“協奏曲”にふさわしく、「それぞれの指揮者が奏でる音楽はこんなにも鮮やかに異なるのか」とわくわくするサプライズの連続。演劇「ハイキュー」メソッド、ますます冴え渡っていた。
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe
これまでも作品を支える大きな要素であった音楽の比重がさらに重要になっているのも非常に効果が大きく、ステージ上と観客が同じビートを共有しながら物語を追いかける疾走感は、演劇「ハイキュー!!」ならではの体感。つまりこの舞台は、劇場を出る頃にふと感じる心地よい疲労までがワンセットでの嗜み。役者たちの怒濤の汗と同じくらい心の汗を存分にかきながら客席で感じる興奮は、まさに演劇、まさにバレーボール! 次の試合の予定も、ぜひ確かめておかなければ。
会見コメント
日向翔陽役:須賀健太
今回はセッター、“ボールを託す人たち”の話です。誰が誰にどう託すのかを観て欲しいですね。また、音楽との寄り添い方がさらに強まり、作品ひとつが1曲の協奏曲になっているところにも注目してください。僕個人としては日向として初めてこの作品を俯瞰で見られる立ち瞬間があって、そこが面白いなぁと感じています。WBCやサッカーワールドカップ予選など熱いスポーツの風が吹く中、僕たちも演劇とバレーボールを合わせて生み出した、熱くて新しいスポーツをお届けします。ぜひ劇場に……体育館に、遊びに来てください!
影山飛雄役:木村達成
ムダなことはなにもない、と改めて思わせてくれるのがこの作品。物語の主軸だけでなく、脇を固める人たちの心の動きだけでもシーンが描けるので……舞台上で描かれていない人たちこそ、影の立役者なんだと思います。今作の新たな見どころとしては、それぞれのセッターのいいところを吸収した影山。セッターは常に誰にトスを上げて1点を取るかを考える生き物ですので、このタイミングで誰に上げるのかというところにもぜひ注目して観てください。
菅原孝支役:猪野広樹
初演から毎回みんなの本気度が強く伝わってきていますし、自分が少し元気がないときも、みんなの力を借り、その気迫で助け合いながらやってきました。今回は菅原が初めて公式戦に出場するので……彼の緊張と僕自身の緊張が相まって、さまざまな感情が出てきています。墜ちた強豪から復活して今ここにいる僕ら3年生の強さと、1、2年生との絆、そして菅原がコートで与える影響を楽しみにしていただければと思います。
及川 徹役 :遊馬晃祐
演劇「ハイキュー!!」は挑む場所。僕ら自身不安なことも多いですが、常に新しいことをやり続け、常に挑み続けています。今回は菅原が入ってくることで焦りが生まれる青葉城西の姿を、二幕、三幕と進む中で展開が変わり、最後にはどちらが勝つか……という試合状況の緊迫感を、楽しんでいただきたいです。
岩泉 一役 :小波津亜廉
岩泉と及川の過去、及川と影山の過去、そして及川の新たな一面が垣間見れる今回、初演・再演で描かれていなかった過去のドラマも見どころになっていますのでお楽しみに。演劇「ハイキュー!!」はスタッフさんを含めて、大家族ってこんな感じだろうなと思える場所。言いたいことを言い合えるカンパニーです。
演出:ウォーリー木下
毎回“演劇でできること”を、スタッフ・キャストと一緒にトライさせてもらってます。子どもが遊び道具を発明するのと同じように、“そこにあるものでどう遊べる”かの挑戦ですね。この舞台は『ハイパープロジェクション演劇』と名付けられ早2年が経ちましたが、今作でようやく“ハイハー”から“ハイパー”に格上げしました(笑)。大きな劇場で、びっくりするようないろんな演出をやっております。ぜひお楽しみください。
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会 Photo by Shunsuke Watabe
取材・文=横澤由香
(C)古舘春一/集英社・ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会
■原作:古舘春一「ハイキュー!!」(集英社「週刊少年ジャンプ」連載中)
■演出:ウォーリー木下(ウォーリー・キノシタ)
■脚本:中屋敷法仁(ナカヤシキ・ノリヒト)・ウォーリー木下(ウォーリー・キノシタ)
宮城:2017年3月31日(金)~4月02日(日)多賀城市民会館 大ホール
大阪:2017年4月13日(木)~4月16日(日)梅田芸術劇場 メインホール
福岡:2017年4月21日(金)~4月23日(日)キャナルシティ劇場
東京凱旋:2017年4月28日(金)~5月7日(日) TOKYO DOME CITY HALL
<キャスト>
■烏野高校
日向翔陽 須賀健太/
影山飛雄 木村達成/
月島蛍 小坂涼太郎
山口忠 三浦海里
田中龍之介 塩田康平
西谷夕 橋本祥平
縁下力 川原一馬
澤村大地 秋沢健太朗
菅原孝支 猪野広樹
東峰旭 冨森ジャスティン/
■青葉城西高校
及川徹 遊馬晃祐
岩泉一 小波津亜廉
金田一勇太郎 坂本康太
国見英 有澤樟太郎
矢巾秀 山際海斗
渡親治 齋藤健心
花巻貴大 金井成大
松川一静 白柏寿大/
■音駒高校
孤爪研磨 永田崇人
黒尾鉄朗 近藤頌利/
■烏野高校 OB
嶋田誠 山口賢人/
■烏野高校 顧問・コーチ
武田一鉄 内田 滋
烏養繋心 林 剛史
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一般発売日 : 2017年2月19日(日)10時~
東京・大阪・東京凱旋公演 S席:8,800円 A席:6,800円(全席指定・税込)
宮城・福岡公演 8,800円(全席指定・税込)
■公演に関する問い合わせ:ネルケプランニング TEL:03-3715-5624(平日11:00~18:00)
■主催:ハイパープロジェクション演劇「ハイキュー!!」製作委員会(TBS/ネルケプランニング/東宝/集英社/キューブ)