大竹しのぶが「もう一回稽古場に戻りたい」と語る意味とは!?舞台『フェードル』会見レポート
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『フェードル』
フランスの劇作家ラシーヌの代表作にしてフランス演劇の金字塔である『フェードル』が、4月8日(土)からBunkamuraシアターコクーンにて上演される。大竹しのぶを主演に迎え、栗山民也が演出を務める演劇界でも注目の作品。初日を目前にした4月6日(木)、同劇場にて、記者会見と舞台の一部披露が行われた。
『フェードル』は古代ギリシャの三大詩人エウリピデスのギリシャ悲劇『ヒッポリュトス』から題材を得て17世紀に創作された5幕の悲劇。アテネの王の後妻・フェードル(大竹)が義理の息子イッポリット(平岳大)に対して狂おしいまでの恋心に身を焦がす禁断の物語だ。
会見に臨んだのは大竹しのぶ、平岳大、門脇麦、キムラ緑子、今井清隆の5名。
初日直前の心境と問われると、「もう一度稽古場に戻りたい」と一瞬ドキッとする事を口にする大竹。だが、その言葉の真意は「本当に楽しい稽古場だったので。もっともっとお稽古をしたかった」ということ。例えば『ああ、苦しかった』というセリフがある場合、最初は文字通りに言う。すると栗山さんが次に『こう動いて言ってみて』その次は『前の段差に足をかけて言ってみて』…すごく細かく演出をつけてくださる。それが本当に楽しかったんです」と嬉しそう。
一方、フェードルの乳母であり、相談相手エノーヌ役のキムラは本作について「現代の話ではないのでリアリティがない。だからこそ演じる喜びがすごくある作品ですね。もっと遠いところにたどり着かければならないので。でもそれが楽しくて。大竹さんとは『毎日LIVEでいけたらいいね。その日その日の感覚でやれたら』と話していた」とはいえ、台本のセリフの量については「勘弁してほしい。人はこんなにしゃべらないでしょう。でもフランス演劇だから仕方がないか」と苦笑い。
フェードルに禁断の愛を迫られる平は、「やればやるほど、次のもっと大きな壁が出てくる。毎日汗だく!」大竹に愛を迫られる場面については「怖いです(笑)」と即答。これには大竹が「失礼なー!」と突っ込みつつも「でも怖がっているのがすごいわかる。(門脇)麦ちゃんとの場面を観ているとそりゃ怖いだろうと。(覗いている素振りは写真でご確認を!)」と笑っていた。
また先日急逝した父・平幹二郎の話にも触れ、「父が以前、こういう役をいつかできたらいいね、と言っていたのを思い出しました」大竹は平幹二郎と親交があり、最後に出演した舞台『クレシダ』を観に行った際、楽屋で「息子をよろしくね、いつかお芝居したいね」と言われたことを話し、故人を偲んでいた。
フェードルの夫テゼを演じる今井は「先妻の息子イッポリットも後妻のフェードルもどっちもかわいい。でも不義に対しては猛烈に怒る…実生活でこういう経験がないのでどうしていいのか、役作りに悩んでいるところです。でももう初日の幕が開いちゃうんですよね」と笑わせた。
門脇はアテネの王家の血を引く娘だが、戦争で負けて現在は奴隷の身分。平演じるイッポリットに好意を寄せられる。「自分を分厚くしていかないと。言葉をただ口から出しているのではなく、何かを通して言わないといけないので、言いながら苦しいです。仕事を始めて5年くらいですが、この5年間何をやってきたんだろうという気持ちになる」と日々悩んでいるよう。
その一方で「いかに自分が(台本を)読み込む力がないということにも気づかされた。毎回稽古をやるたびに栗山さんがダメ出しをしてくださるんですが、2週間後くらいに『ああ、あれってこういうことだったんだ』と気づく。そして1段階乗り越えると新たな事が出てきて…稽古をやるたびに一つ一つ意味があってそれを発見していくことが楽しかった」この作品を通して演じることにどんどん夢中になっている様だった。
ちなみに大竹と門脇は同じ場面にいることがないという。大竹が演じている場面は「観ていても楽しい」という門脇は、「(大竹と)一緒のシーンがあればよかったのに」と残念そう。その隣で大竹が嬉しそうにほほ笑んでいた。
自身が演じるフェードルについて、大竹は「狂おしいほど愛してしまう役。今の時代の恋愛についても、傷ついてもいい、憎いと思ってもいいので『愛せよ』と思わせてくれる作品です。人を愛するってこんなに激しいことなんだ、命をかけて愛するってなんて清々しいんだろう。古典だけどわかりやすいし観ていて気持ちがいいんです。言葉も美しいし、お芝居ってこういうものなんだ。役者の言葉を身体を使って天国にも行けるし地獄にも行ける。神様にだって会える。そのお芝居の力を信じたい…と栗山さんがおっしゃっているので、それに近づこうとしていますね」と言うと他のキャストが深くうなづいていた。
「今の演劇は、音楽とか映像などで簡単に語れてしまう中、これだけのセリフ量で感情を表すこと、役者の力がとても大きく作用するので本当にチャレンジングだけど、それが演劇の基本。そこに喜びを感じますね」
シンプルなステージで繰り広げられる言葉と言葉の応酬。役者同士の距離感や顔・目の動きで感情の微細な動きが伝わってくる。大竹をはじめ、実力派の役者でないと成り立たない魅力的な舞台。まもなく初日だ。
■作:ジャン・ラシーヌ
■翻訳:岩切正一郎
■演出:栗山民也
■出演:大竹しのぶ、平岳大、門脇麦、谷田歩、斉藤まりえ、藤井咲有里、キムラ緑子、今井清隆
【東京公演】
■日程:2017年4月8日(土)~4月30日(日)
■会場:Bunkamuraシアターコクーン
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※未就学児童入場不可
※コクーンシートは、特にご覧になりにくいお席です。ご了承の上ご購入ください。
【新潟公演】
■日程:2017年5月3日(水・祝)14:00
■会場:りゅーとぴあ
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※U25席は観劇時25歳以下が対象。当日指定席券引換。座席数限定。要本人確認書類。
※未就学児童入場不可
【愛知公演】
■日程:2017年5月6日(土)18:00、5月7日(日)13:00
■会場:刈谷市総合文化センター大ホール
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※U-25
(観劇時25歳以下が対象。当日指定席券引換。座席数限定。要本人確認書類)
※未就学児童入場不可
【兵庫公演】
■日程:2017年5月11日(木)~5月14日(日)
■会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急中ホール
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※未就学児童入場不可
■公式ホームページ:http://www.phedre.jp/