日本最高峰のコンクール、各部門予選が続々と始まる
日本音楽コンクール 公式サイト
第84回日本音楽コンクール
日本で最も歴史があり、権威のあるコンクールといえばやはり『日本音楽コンクール』だろう。過去に入賞したことのある演奏家のその後の活躍がそれを物語っている。
日本音楽コンクールは1932年に旧時事新報社の主催で「卓越せる実力を有する音楽家の推薦」「楽壇レベルの向上」を目的として『音楽コンクール』として発足した。以来毎年1回開催し、現在に至る。第6回から時事新報社が毎日新聞社に合併されたため、毎日新聞が主催(現在は日本放送協会と共同主催)している。
日中戦争、太平洋戦争の拡大にともない各種の文化活動が次第に衰退し、開催が危ぶまれる時もあったが開催を続けてきた。さらに第13回(1944年)は最も戦争が激しかった時で『音楽コンクール』という外国語の名称を使うことができず、『音楽顕奨』の名称で行った。1945年には終戦で社会情勢も混乱を極めていたため、第14回を翌年の春に延期、『音楽コンクール』の名称を復活していち早く実施した。したがって1946年は終戦直後の混乱の中で春、秋の2回開催。以後、急速に若い有望な音楽家が登場、戦前以上の盛況をみせて今日の国際レベルの足がかりをつくった。
近年は毎年6部門の審査が行われている。作曲、ピアノ、声楽、バイオリン部門は毎年行われ、チェロ、オーボエ、フルート、ホルン、クラリネット、トランペットの6つから2つの部門が順番に選ばれていき、今年はトランペットとクラリネットの年だ。予選はすでに8月末から始まっており、作曲はNHK内の会議室で譜面審査が2回、演奏部門はトッパンホールで声楽、クラリネット、トランペット部門は2回の予選、バイオリン、ピアノ部門は3回の予選を行う。そして、この予選を突破した数名が10月に東京オペラシティでの本選会に挑む。
日曜日からは毎年開催されているにもかかわらず200名を超える出場者が集まったピアノ部門が始まっている。日本のピアノ人口の多さを象徴している。課題曲の演奏時間は1〜3次予選合わせると最長75分。約1週間の間に3回の本番でこれだけ演奏するのだ。ピアニストたちの実力はもちろん、精神力も試されるだろう。もちろん、他部門の出場者にも言えることだ。
今年の予選はすでに約1/3が終了した。聴き逃してしまった方は、各部門の最終予選の模様が10月5日〜9日にかけてNHK-FMで放送されるのでチェックしてほしい。そして本選へ出かけてみてはいかがだろうか。演奏会では味わえない独特の緊張感を感じることができるはずだ。
余談だが、今年の作曲部門ではコンクール史上初となる双子の兄弟がそろって本選に出場することが決まった。すでに話題性十分の第84回日本音楽コンクール。スーパースター誕生の予感。