追いつめられる石丸幹二、堀内敬子と17年ぶりの共演に「夢のよう」、ミュージカル『パレード』製作発表会見レポート

2017.4.19
レポート
舞台

ミュージカル『パレード』製作発表会見

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石丸幹二堀内敬子の共演が話題のミュージカル『パレード』が、5月18日より東京芸術座劇場で上演される。4月15日に行われた製作発表記者会見に石丸、堀内をはじめ主要キャストが登壇し、劇中歌も披露した。

ミュージカル『パレード』
1913年にアメリカ・ジョージア州アトランタで実際にあった冤罪事件をテーマにしたトニー賞受賞作(1999年最優秀作詞作曲賞、最優秀脚本賞)。人種差別、マスコミの暴走、民衆の狂乱、そして夫婦の絆を、精密な物語とドラマティックな楽曲で描き出す社会派ミュージカルで、今回が日本初演。オリジナル版は、脚本をアルフレッド・ウーリー、作詞作曲をジェイソン・ロバート・ブラウン、初演の演出をハロルド・プリンスが担当した。
 


『パレード』製作発表会見レポート

会見には250名の一般オーディエンスも招待され、都内ホテルの会場は華やかな雰囲気。熱い拍手に迎えられたキャストたちは、左手から森新太郎(演出)、石川禅、岡本健一、石丸幹二堀内敬子武田真治新納慎也の順で壇上の席につく。 まず紹介されたのは、演出の森新太郎。読売演劇大賞をはじめ数々の受賞歴をもつ実力派で、昨年10月に急逝した平幹二朗の最後の舞台『クレシダ』が記憶に新しい。ストレートプレイの緻密で多彩な演出に定評があるが、ミュージカルは本作が初演出作となる。

森新太郎(演出) ミュージカル『パレード』

「“初”という響きに酔いしれながら思う存分やりたい放題演出させていただいています。『パレード』というタイトルのとおり、民衆の祝祭の日の熱狂をゾクゾクするほどの迫力でお届けしたいです。主人公は石丸さんと堀内さんが演じるフランク夫妻ですが、もう1人主役がいるとしたらそれは2人を追い詰める民衆だと思っています。なので、石丸さん堀内さん以外のキャストの方々全員に名もなき民衆も演じていただきます。一丸となって、恐ろしくも晴れやかな民衆のエネルギーを生み出すべく、歌い踊り、時には暴れ狂ったりしながら、このダイナミックな舞台を創り上げていきます」

石丸幹二(レオ・フランク役:女工が殺された鉛筆工場の工場長、ユダヤ人)ミュージカル『パレード』

石丸幹二は、実在した冤罪事件の被害者のユダヤ人レオ・フランクを演じる。「今、この作品でこの役を演じることに、意味を感じます。それは『パレード』が20年ほど前に作られたミュージカルであるにも関わらず、今なお世界中で起こっている問題、今こそ向き合わないといけないテーマを描いているからです。稽古場では日々追いつめられながら、『弱者はいつも肩身の狭い思いをして生きていかないといけない。では弱者はどうやって生きていけばいいのか』をあらためて考えさせられています。また『強い立場の人間は、どういう風にして自分たちをより強い存在としていくのか』も実感させられています。稽古がまさにそれを実感する場になっていまして、森さんのすさまじいエネルギーの演出のもと、もう一度言いますが、日々追いつめられています(笑)。そんな私の姿を、ぜひぜひ劇場でご覧ください」

堀内敬子(ルシール・フランク役:レオの妻)、ミュージカル『パレード』

堀内敬子は、「森さんのとても熱い演出にみんなで喰らいついていこうと、笑いあり、涙あり、ジェットコースターのような稽古をさせていただいています。人種差別という日本人には身近でないテーマをどれだけ皆さんに伝えられるか、当初は不安もありました。しかし森さんの演出が深くお芝居に入りこんでいってくださることで、皆さんにお届けできると確信した部分があります。稽古は始まったばかりですが皆で一緒にがんばりたいです」と明るい表情をみせた。

そして石丸との共演を「本当にうれしかった」と語る。

「ミュージカルの難しい役や、マルちゃん(石丸さん)のキャラクターとは違う役にも挑戦される姿をみて『がんばっているんだな。どこかで必ず一緒に何かやりたいな』という気持ちが湧き上がっていたところに、このお話をいただきました。目をみて稽古をしていると『ウエストサイドストーリー』『美女と野獣』などを一緒にがんばっていた時代が蘇りつつも、ふと“お互い年を重ねたんですよね”と感じる瞬間もあります。良い意味で肉づきが、体ではなく精神的な肉づき、深みが、ありがたいなと思います」とコメントした。頷き耳を傾けていた石丸が「(年を“とった”ではなく)“重ねた”でしょ?」とフォローし、堀内がはにかむような表情で言い直す場面もみられた。

石丸幹二、堀内敬子 ミュージカル『パレード』製作発表

岡本健一は、スレイトン知事を演じる。「ジョージア州の知事として権力と力と、名声もある、強い人間です。群衆の力によってさえも動じない、しかし自分の妻やレオの妻の言葉によって自分の信念を貫いていく、ある種、ものすごい愛の力をもった人物だと思います。キャストも、今壇上にいない方々も、歌も踊りも素晴らしいです。森さんの演出によって、観たことのない、感じたこともないような心に訴える作品になると思っています」と落ち着いたトーンでり、最後に「この物語を日本中のあらゆる知事の方に観ていただきたいなと思っています」と締めくくると会場からは大きな笑いと拍手が沸いた。

武田真治(ブリット・クレイグ役:新聞記者)

「ここから先ご挨拶させていたくのは、みんな悪役です」と切り出したのは武田真治。自身の役どころを「当時、事件の有力な情報に報奨金がかけられ憶測が飛び交う中で、発行部数を伸ばすために裏をとらず記事を書き、世相を煽り、レオを追いつめていく新聞記者」と説明した。しかし悪役然とはしていないという。「当時の新聞記者の生き様ひとつであり、世相として存在した悪であり、こういう人たちがいたのであろうという架空の(象徴的な)人物」と解釈している。「冤罪を生み出してしまう危険性は、当時は新聞、ある時代ではテレビ、今であればネットなどの誹謗中傷などにあてはまります。この物語をすべてのネガティブなネット書き込みをする人たちに観ていただきたい!」と、岡本健一の挨拶に寄せた言い回しで締めくくり、さらに盛り上げた。

石川禅(ヒュー・ド―シ―役:検事) ミュージカル『パレード』

石川禅は、検事のヒュー・ドーシーを演じる。「すっごいのが来ますよ! 僕は稽古場で、もう何度も目からウロコを落としています。その素晴らしい演出をされるのが隣りにいる森さんです。ふだんのミュージカルの稽古場とは違う、気持ちのいい緊張感がぴんと張りつめていて、脳に汗をいっぱいかいています。私は検事として、石丸さん演じるレオを不幸のどん底に叩き落とす役です。前回、石丸さんと共演した『ジキルとハイド』では親友の役でしたが、今回は目線も言葉も交わしません。『パレード』はあらすじだけをみると陰惨な話だと思われるかもしれませんが、非常に広大なお話です。アメリカそのものです。今、稽古場ではパワフルなアメリカ人をどうやって演じるか、とっくみあっている最中です。素晴らしい作品になります。を買い渋っている方たち、早く買わないと後悔しますよ!」と熱弁した。

新納慎也(トム・ワトソン役:ユダヤ人排斥主義の政治活動家)ミュージカル『パレード』

新納慎也が演じるのは、ユダヤ人排斥主義の政治活動家、トム・ワトソンだ。「皆さんは僕の役をヒール(悪役)としてご覧になるでしょうが、彼は、当時は英雄だったんです。そのくらい人種差別が一般的だったということでしょう」時代背景に触れ、「差別の少ない日本においても『世界ではこんな歴史があったのか』と勉強できる、(代)1万3000円は安い!」と独自の論理展開で作品をPRした。

さらに『BENT』に続き2度目のタッグとなる演出家・森に絶大なる信頼を寄せていることを明かし、今回の稽古場での森を「ストレートの稽古場でもミュージカルの稽古場でも、変わらず森新太郎がそこにいる」と表現した。「世界中で言えることですがミュージカルには歌や踊りがあり、お芝居は二の次になりがち。それじゃダメだろうよと感じていた」と新納はいう。その点で森の『だってミュージカルも芝居でしょ?』という姿勢、登場人物の背景や心情を繊細に作り上げていくアプローチはこからのミュージカルの現場に必要なものと称賛。ひと息つき「森さん、こんなもんで次も呼んでいただけますか?」と顔色をうかがい、新納は皆を笑わせた。

(左から)石丸幹二、堀内敬子、武田真治、新納慎也

17年で変わったこと、変わらないこと

石丸は、17年ぶりに共演する堀内について「もともと実力のある女優さんでしたが、キャリアを重ねて芝居の引きだしがたくさんある方だと改めて感じています。しかし、基本的にまったく変わっていないんです。女優としてテレビでも活躍され、研鑽を重ねていらっしゃるのに、今でも妖精のよう!」と語り、その言葉にオーディエンスから拍手が贈られた。

これに対し堀内は「褒めていただいたので褒めなくちゃ」と口を開き「(石丸も)印象は同じで変わっていません。でもすごい変わったと思うのは、フリを覚えるのが早くなったのと、ターンが意外と速くなったなということです(会場は爆笑!)。踊りが上達されて。上から(目線)でごめんなさい」とイタズラっぽく笑ってみせると、石丸が「劇団で、敬子さんはナンバーワンでしたから! ありがとうございます、先生!」と続け、さらに盛り上げた。歌う場面では「お兄さん的に教えてくださるので、ついていくだけ」と石丸を頼りにしていることも明かした。

石丸幹二、堀内敬子。17年ぶりの共演で夫婦を演じる。

20分足らずの別世界!ミュージカルナンバー披露

この日、ピアノ伴奏による制作発表バージョンで披露されたのは「♪プロローグ(歌:ソロ 小野田龍之介、安崎求+アンサンブル)」「♪洪水の時、お前は?(歌:ソロ 新納慎也石川禅+アンサンブル)」「♪無駄にした時間(歌:石丸幹二堀内敬子)」の3曲。パレードのマーチングバンドが近づいてくるようなドラミングに始まり、小野田龍之介のソロで記者会見場の空気は一変。安崎求とアンサンブルも加わり、はやくも民衆の熱狂にふれた気がした。石丸&堀内は情感豊かにデュエットを歌い上げた。衣装もセットもなく、ピアノ伴奏での歌唱披露だったにも関わらず『パレード』の世界を垣間見るドラマティックな20分だった。

新納慎也 ミュージカル『パレード』製作発表


(中央)石川禅 ミュージカル『パレード』製作発表

この日は披露されなかったが岡本健一は知事役としてダンスパーティーのシーンで、踊りながらソロを歌うことになっている(武田によれば“劇中イチのセクシーナンバー”とのこと)。また、武田真治は自身のソロナンバーに関して「アップテンポで曲調だけを聞くとても明るい、けれど中身はとても辛辣なブルース。不謹慎な表現も含まれますが、めちゃイケで培った不謹慎さで一気に歌い上げたい」と意気込む。

石丸幹二 ミュージカル『パレード』製作発表


石丸幹二、堀内敬子 ミュージカル『パレード』製作発表記者会見

森は、劇中で使われる歌を「音楽の力を信じざるをえない、陶酔感のあるすばらしい曲」と絶賛する。一方で、それに酔いしれるばかりでなく「素晴らしい台本にも真摯に向かっていかなくてはいけない」と語った。ミュージカル『パレード』は、5月18日より東京芸術座劇場プレイハウスにて開幕。その後、大阪、名古屋を巡演。

ミュージカル『パレード』製作発表 (左から)石川禅、武田真治、石丸幹二、堀内敬子、新納慎也

公演情報
ミュージカル『パレード』

■作:アルフレッド・ウーリー
■作詞・作曲:ジェイソン・ロバート・ブラウン
■共同構想およびブロードウェイ版演出:ハロルド・プリンス
■演出:森新太郎
■キャスト:
石丸幹二、堀内敬子、武田真治、新納慎也、坂元健児、藤木孝、石川禅、岡本健一/
安崎求、未来優希、小野田龍之介/宮川浩、秋園美緒、飯野めぐみ、莉奈

■日程・会場
<東京公演>
2017年5月18日(木)~6月4日(日)
東京芸術劇場プレイハウス(豊島区西池袋1-8-1)
:S席 13,000円/サイドシート 8,500円(全席指定・消費税込)
問合せ:ホリプロセンター Tel.03-3490-4949(平日10時~18時、土曜10時~13時)
http://hpot.jp/stage/parade
 
<大阪公演>
2017年6月8日(木)~6月10日(土)
梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪市北区茶屋町19-1)
:全席 12,500円 (全席指定・税込)
一般発売:2017年3月11日(土)
問合せ:梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ Tel.06-6377-3888
http://www.umegei.com/schedule/620/
 
<名古屋公演>
2017年6月15日(木)
愛知県芸術劇場 大ホール
:S席 13,000円 A席 10,000円 B席 7,000円(税込)
一般発売:2017年3月4日(土) 
問合せ:キョードー東海 Tel.052-972-7466 月~土10:00~19:00(日・祝休)
http://www.kyodotokai.co.jp/events/detail/1317
 
■主催:ホリプロ
■共催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)
■企画制作:ホリプロ
■公式HP:http://hpot.jp/stage/parade
■公式ツイッター:https://twitter.com/parade_musical

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