『種子島宇宙芸術祭2017』今夏、宇宙に一番近い島で芸術祭が初開催 その全容を明かす報告会をレポート

2017.4.24
レポート
アート

宇宙芸術祭タイトル

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この夏、「宇宙」をテーマにした新たな芸術祭が開催される。第1回『種子島宇宙芸術祭2017』の日程は、8月5日〜11月12日の全100日間。4月21日に行われた開催概要報告会では、総合ディレクターの森脇裕之をはじめ、JAXA副理事長の遠藤守、種子島芸術祭実行委員会・事務局長の小山田裕彦が集い、本芸術祭への意気込みを語った。後半では、天文学者の縣秀彦、現代アーティストの小阪淳、天文教育普及プロジェクト「天プラ」のメンバー内藤誠一郎をゲストに迎え、「天文学とアートのファンタジーな出会い」と称したトークショーも繰り広げられた。

 

「宇宙は科学である一方で、芸術である」

はじめに、ロケットエンジニアとして活躍してきた遠藤氏は、「地球上にいて宇宙との関わりを考えること、また、宇宙に飛び出した人類が人間の存在感を考えること。それらをあらわすのが宇宙芸術ではないか」と語った。ロケットの発射場があり、宇宙への出発点でもある種子島が舞台となることで、「宇宙に対する様々な思いを増幅させる効果があるだろう」と本芸術祭への期待を膨らませた。

JAXA副理事長 遠藤守

自らアーティストとして活動する森脇氏は、「宇宙は科学である一方で、芸術である」と考える。宇宙には、数式や物理学を用いて探求する科学的側面もあり、同時に、人々の想像力を掻き立たせる夢やロマンもあわせもつ存在だと話す。

総合ディレクター 森脇裕之

JAXAでは過去に、アーティストの作品を宇宙空間に持ち運んで、無重力状態でモノの動きを表現する「宇宙芸術実験」の試みが若田宇宙飛行士によって実践された。森脇らはそうした例を挙げた上で、「我々がみたことのないような新しい認識をもたらす可能性を持っている」と宇宙芸術の魅力を語った。

宇宙が日常に溶け込む種子島

種子島の日常風景

のんびりと農作業をする島民の背後で、青空高く打ち上げられるロケット。最先端の技術と、のどかな田園風景が見られる種子島について、森脇氏は「非日常と日常が同居している場所であり、宇宙芸術発信の地として最適」と称賛した。

テーマは、自然・科学・芸術の融合

本芸術祭の一大テーマは、「宇宙」だ。その中でも、「自然」「科学技術」「芸術」の三つが種子島の地でコラボレーションすることで、より宇宙を身近に感じる体験をしてもらいたいというのが目的である。そこで、本展の見どころの一つとして、大自然の地形を活用したプラネタリウムが登場する。

星の洞窟

島の豊かな自然が作り出した千座(ちくら)の岩屋は、海岸沿いにある岩山にできた大きな風穴洞だ。その洞窟内で、プラネタリウム・クリエーターの大平貴之による、世界最高の投影星数を持つプラネタリウム装置「MEGASTARⅡ」を使った投影イベントが行われる。球体状のドームに投影するのとは異なり、ゴツゴツした岩肌に乱反射する星空は幻想的な光景を作り出す。波の音も相まって、地上にいながら宇宙空間を感じられる貴重な体験ができそうだ。

宇宙を題材にしたアーティストたちの作品

種子島宇宙芸術祭では、宇宙や地球をテーマにした作品が数多く制作される。報告会では、芸術祭に参加する一部のアーティストたちが紹介された。

中村哲也
「世界初」を掲げるフェアリング・アートに挑戦。フェアリングとはロケットの先端部のことで、実際に回収されたフェアリングに装飾を施した作品を展示予定。

開発好明
「宇宙の島」種子島の地域を見直すプロジェクトとして、住民と共に町中に溢れるロケットや宇宙に関連するモニュメントや印を探し、それらをコレクション化して地図を作る。

 

椿昇
アーティスト自らが島をめぐり、島をみつめる情報発信プロジェクトを企画。滞在中に出会った人々との交流、気付いたことなどをSNSで随時発信していく。

小阪淳
最新の研究をふまえた宇宙全体の姿を、人間を中心にして描いた「宇宙図」を展示。また、数式に基づく計算式から生み出されたシミュレーション画面の中を、鑑賞者がゲームコントローラーを使って、自由自在に内部を探索できる作品を発表。

小阪淳『宇宙図』

宇宙とアートの融合点

後半のトークショーでは、「宇宙図」の作成に携わったメンバー三名に森脇氏を交え、宇宙とアートの関係について語り合った。役目を終えた惑星探査機「ボイジャー」や「はやぶさ」が燃え尽きる前に撮影した地球の姿をスライドショーで紹介しながら、森脇氏は「科学的に重要な記録であると共に、人の心を打つもの。ドラマを感じる」と、科学者たちの記録写真にアーティストの心を見出す意見を述べた。

左から縣秀彦、森脇裕之


『種子島宇宙芸術祭2017』参加アーティスト 小阪淳

都内で定期的に天体観測会を開催している「天プラ」メンバーの内藤氏は、「科学は、いま現在、人類は「ここまで知っている」ことを示すプラットフォームのようなもの。星や宇宙を見つめる時、「ここまで自分たちの視界は繋がるんだ」と実感できる出会いを作りたい」と話す。

内藤誠一郎

森脇氏は「種子島は日本でもかなり古い時代から歴史の跡が残る島。そこに、最先端の拠点となる宇宙センターがあり、最古のものと同居している。種子島の土地に立つと、人類が積み重ねてきた歴史の中で、我々はどんな存在であるかを問われているような気がする」と言葉を続けた。加えて、種子島芸術祭では、星空を眺めながら真夜中に語りあう「星空カフェ」のイベントも企画中であると明かした。

会期中にロケットの打ち上げも

種子島宇宙センターでは、6月1日にロケットの打ち上げを予定している(2017年4月23日現在)。二ヶ月に一回のペースで打ち上げられるスケジュールに合わせることができれば、芸術祭と打ち上げの両方が見られるかもしれないとのこと。また、8月6日には島内で「ロケット祭り」が開催される。今年の夏は種子島で、宇宙と芸術にたっぷり浸かる思い出を作ってはいかがだろうか。

イベント情報
種子島宇宙芸術祭2017

会期:2017年8月5日(土)〜11月12日(日) ※千座の岩屋スーパープラネタリウム2017は11月2日(木)〜5日(日)
会場:種子島全島
主催:種子島宇宙芸術祭実行委員会
公式サイト:http://www.space-art-tanegashima.jp/
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