子供たちが躍動する、ミュージカル『あんず~心の扉をあけて~』稽古場レポート
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(左から)小此木麻里、清水彩花、皆本麻帆 (C)田村良太
小椋佳主宰の「アルゴミュージカル」で2000年に上演されたオリジナル作品『あんず〜心の扉をあけて〜』が四半世紀ぶりに再演される。今回の公演を企画し、演出を担当、哲也役のダブルキャストで出演するのは、子供のころからこの作品が大好きだったという西川大貴。脚本・作詞の高橋亜子、作曲の甲斐正人が作品をアップデートし、新曲も追加されている。4月にオーディションで選ばれた12人の子役たちは、5月から休みや放課後に台本を読み込み、稽古を重ねてきた。7月20日に大人キャストが加わっての稽古がスタート。初めてとなる通し稽古を見学した。
大人のあんず(清水彩花)は、よき友人の遥香(皆本麻帆)と周子(小此木麻里)の助けも借り、心に暗い影を投げかけている過去の記憶と向き合い始める。——甦ってくる子供時代の思い出。子供のあんず(柴原紗良)は引っ込み思案だけれども、あんずのことを宝物と言ってはばからない兄の翔太(髙山大喜)に守られ、仲間たちと楽しく遊んでいる。ときに女の子と男の子で対立したり、ケンカしたりの子供たちを優しく見守る真弓(田村芽実)と、その恋人である童話作家志望の哲也(西川大貴/聖司朗)。次第に成長していく子供たち。童話作家になりたいという夢をなかなかかなえられない哲也。そんなある日、真弓が病に倒れてしまい——。
田村芽実 (C)田村良太
(左から)柴原紗良、髙山大喜 (C)田村良太
病身の真弓に子供たちが童話『青い魚』の舞台を見せるシーンでは、子供が自分たちで道具を動かしたりの活躍もあり、みんなで一つの作品を作り上げようとする姿が、実際に『あんず』という舞台を作り上げようとする姿と重なってくるところがある。稽古で台本をじっくり読み込んできたというだけあって、子供たちの役作りもしっかりしている。子供のあんず役の柴原は役柄の複雑な内面表現に魅力があり、兄翔太役の髙山もきりっとした眼差しでまっすぐな演技を見せる。メガネがトレードマークのつばさ役の小鳥遊礼は、出てきてちょっと何かしたり言ったりするだけで思わず吹き出してしまうおもしろさが芝居全体のアクセントになっていて、……どんな役者に成長していくんだろう……と期待してしまうものが。子供たちみんなから、作り物ではない、素直な演技と個性が引き出されている。
清水彩花、子役たち (C)田村良太
そんな子供たちの全力を受け止める大人キャスト陣では、真弓役の田村が魅力的な演技を見せる。周囲を引き込む力があり、彼女の歌が子供たちの心に響いてみんなも歌い出すという呼応がよくわかる。子供たちと自然となじみながらも適切な距離感をもってそこに存在するところに、真弓の人物像を興味深く感じさせる。
子役たち (C)田村良太
甲斐正人の楽曲は、エキゾティックなナンバーあり、かわいらしいナンバーあり、しっとりしたナンバーありとバラエティに富む。吉元美里衣の振付も、組体操みたいな振りあり、アクロバットあり、子供たちだけでのリフトありと、キュートで楽しい。
「子供のころから大好きだった作品で、稽古場でも毎日が夢のようです。子供キャストたちには“すごい”の一言ですね。自分でちゃんと考えるし、すごく柔軟性があって、その柔軟性は大人の俳優として恐ろしくなるほど。さみしさが描かれている物語ですが、大人になればなるほどさみしさを感じたり何かを失ったりということが多くなるわけで、大人にこそ刺さる作品なのかなと思っています」と西川。
「子供たちが大好きなので、毎日稽古場に来るのが楽しいです。大人だと前回やったことをなぞってしまったりして、一段下がってまた一段上がってみたいな感じだったりしますが、子供たちは壊すことが簡単にできてしまうので、十段まで行ってぐちゃぐちゃにしたかと思ったら十二段積み上がっていたりして、すごいですよね。『心をひとつに』のナンバーでは、『青い魚』の芝居をみんなで作り上げるために感情を抑えて大人になろうということが描かれていて、美しいなと感じます。ファミリー・ミュージカルですが、過去の傷に出会ったり、忘れていたことを思い出したりする作品なので、大人の方にもぜひ観ていただきたいですね」と田村。
子役たち (C)田村良太
人間それぞれが抱える孤独、そして孤独を抱えた人間同士でつながることの大切さを問いかける『あんず』は、8月20日にタクトホームこもれびGRAFARE ホールで初日を迎える。
取材・文=藤本真由(舞台評論家)
公演情報
脚本・作詞:高橋亜子
作曲:甲斐正人
音楽監督・編曲:桑原まこ、桑原あい
振付:吉元美里衣
出演:
清水彩花 皆本麻帆 小此木麻里
西川大貴/聖司朗 ※Wキャスト
髙山大喜 柴原紗良
田村芽実
齋藤みもり 小林さくら 名畑花音 岡田雪乃 木村美桜 本木麻由花 上田菫
佐野航太郎 長谷川楓 小鳥遊礼
日程:2025年8月20日(水)~22日(金)
会場:タクトホームこもれびGRAFARE ホール(保谷こもれびホール)
※開場時間 各公演開演45 分前 ※年齢制限4歳以上入場可(膝上鑑賞不可)
※全公演アフタートークあり
司会:西川大貴
20日 17時 [ゲスト] 大山真志 / 清水彩花
21日 12時 [ゲスト] 松本千夏 / 小此木麻里
21日 17時 [ゲスト] 安藤聖 / [ゲスト] 天寿光希
22日 12時 柴原紗良 / 髙山大喜 / 田村芽実
22日 17時 小此木麻里 / 清水彩花 / 聖司朗 / 田村芽実 / 皆本麻帆
・ファミリーペア
・指定席 ¥7,800
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・センターシート ¥12,000(1階K列、特典付き)
主催:合同会社黒猫
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