聴く者を惹きつけるamazarashiの楽曲とライブ、その魅力
amazarashi
火花を散らし、歌われる「生」。
アニメ『乱歩奇譚 Game of Laplace』のOPテーマにもなっているamazarashiの2ndシングル「スピードと摩擦」がロングヒットを続けている。これまで彼らが歌ってきた主題とシーンにおける無二の存在感を凝縮したとも言えるのがこの楽曲だ。
4000文字にも及ぶという文字を切り抜き、光によって歌詞を浮かび上がらせたトイレの個室で女子高生が踊り狂う姿が明滅するという、コンテンポラリーである種異様なMVでも話題となっている同曲であるが、楽曲そのものからも、いかにamazarashiが現在の音楽シーンにおける異形の存在であるかを窺い知ることができる。
淡々と刻まれる機械的なビートに乗せて、呪文のように読み上げられていく言葉の数々。サビでは一転して激しくなる歌唱とサウンドに、美しいピアノのフレーズが絡み合う。4分の間に目まぐるしく静と動が展開し、一聴しただけではその輪郭を掴むのがやっとだ。
歌詞に目を向けてみると、そこには日常のなかにある空虚な情景とそこに感じる居心地の悪さや違和といった内面要素が散文的に生々しく描かれており、「生きる」ということの現実と本質を抉り出す。秋田ひろむ(Vo,G)はその優れた文学性と筆力で描き出した自らの詞世界を、吐き捨てるように歌う。amazarashiをamazarashiたらしめるのは、この激情といっても良い。
それはライブでより顕著となる。「スピードと摩擦」だけに限った話ではないが、音源ではおそらくあえて抑えられている秋田の歌声と感情は、思わず「最後まで保つのか」と心配になる程エモーショナルな叫びとなり、紗幕一枚で隔てられたステージから観客席を穿つ。紗幕に映し出される文字や写真、映像の数々も、彼の言葉ひとつひとつをまっすぐ我々に届けるために一役買っているのは間違いない。
これまでamazarashiが一貫して表現してきた「生=生きる」の本質。たくさんの不条理の中でもがき苦しみ、それでもなお「前に進んでいかなければならないんだ」という悲壮な覚悟は、「生=LIVE」だからこそ激しさを増す。
そして不思議なことに、曲の題材が重くリアルな感情であり、曲調もオルタナティヴなものがほとんどであるにも関わらず、彼らのライブは決して暗いものではない。拳を突き上げて飛び跳ね騒ぐといった類のライブではないが、バンドと己が一対一で相対しているかのような緊張感と、見終えたときに一片の勇気を受け取ったような昂揚を味わうことができるのである。
日常の「生」を一時忘れて楽しみ、解放されるのが一般的なライブであるとすれば、彼らのそれはむしろ徹底的に「生」と向き合い、立ち向かう力を受け取る場だ。8月16日の豊洲PITでのワンマン公演でもそのことはありありと感じられ、とりわけ前述の「スピードと摩擦」は、サウンドと詞の両面で彼らの現在地を象徴するかのようにアグレッシヴに披露されていた。
10月22日にはZepp Tokyoにて奇跡の再結成で話題のYEN TOWN BANDと共演、2016年1月からは単独での全国ツアーが控えているamazarashi。まだ彼らのライブに足を運んだことがない方は、火花を散らす「生」との対峙を一度体感してほしい。
日時:2015年10月22日(木)
会場:Zepp Tokyo
出演者:YEN TOWN BAND
amazarashi 5th anniversary Live Tour 2016
2016年1月17日(日) 北海道 Zepp Sapporo
2016年1月24日(日) 愛知 Zepp Nagoya
2016年1月31日(日) 福岡 Zepp Fukuoka
2016年2月20日(土)広島クラブクアトロ
2016年2月21日(日) 大阪 Zepp Namba
2016年2月27日(土) 東京 Zepp Tokyo
2016年3月6日(日)東京 中野サンプラザ