「ここで寝てもらっても全然かまいません」春の夜、mol-74とsleepy.abの音に身をゆだねた『春眠』-東京編-

レポート
2017.5.1
mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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うららかなる春の宵。桜前線がいよいよ東北あたりまで北上しようとしていたこの日、東京は新代田のライブハウス・FEVERではmol-74主催による[『春眠』 -東京編-]が、あたかもひねもすのたりとした風情にて行われたのだった。ちなみに、このイベントはmol-74が“春眠暁を覚えず”という言葉から想起した「春の夜の心地よさを音で彩る」ことをコンセプトとしたもので、ゲストには彼らが長年にわたり憧憬の念を抱いてきたというsleepy.abが迎えられ、東京と札幌の2都市にて開催されたもの。

「こんばんは。札幌から来ましたsleepy.abです。よろしくお願いします」
というわけで、この夜まず先手を打ったのはmol-74にとっての尊敬すべき先輩である、sleepy.abの面々だ。浮遊感溢れるシューゲイザー要素満載の音像と、フロントマン・成山剛の紡ぎ出す繊細なボーカリゼイションが場内にひたひたと染みわたってゆく様は実に美しく、中でも3曲目に演奏された「アンドロメダ」で聴けた深い奥行き感のあるサウンドは、さすがの貫録と秀逸さが色濃く滲んでいたと言える。

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

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メロウでセンチメンタルな「かくれんぼ」と、その曲名よろしく映画のごときドラマ性さえたたえていた「Scene」の2曲で鮮やかに約1時間ほどのステージを締めくくってみせたsleepy.abは、このイベントの主旨に賛同しながらも自分たちの個性は個性でしっかりと打ち出す、という絶妙なパフォーマンスを繰り広げてくれた。

対して、この夜のホスト役およびオーガナイザー役であったmol-74はといえば、<いつだって春は狡いままで>なる歌詞が含まれた、まさにこの季節にぴったりの「ゆらぎ」を観衆への挨拶代わりとなる1曲として、ゆるりと投げかけてみせる。 上質な正絹のように柔らかでスムースな武市和希の発する歌声と、ギタリスト・井上雄斗の発する表情豊かなフレーズが、哀切漂う心象風景とシンクロして響いた「フローイング」。そよぐ春風のように、小気味よいリズムで坂東志洋のドラミングが楽曲の持つ季節感を見事に演出していた「エイプリル」。既に冒頭の3曲が演奏されただけで、mol-74の描こうとする春の雰囲気は場内いっぱいに充ち満ちていた。

「こんばんは、mol-74です。今日のライブ[春眠]にはタイトルのとおりのコンセプトがありまして、普段のライブとはまたちょっと違うかたちで、この春の夜に心地よく眠くなってしまうような曲たちを中心にした内容でやっていこうと思っています。ですから、今回は僕らの公認のもと皆さんにはここで寝てもらっても全然かまいません(笑)。どうか、こころゆくまで楽しんでいってください。ただし、後になって「寝ててどんなライブだったかを覚えてない!」というクレームは受け付けませんので、ご了承願います」

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

半分冗談にして半分本気のMCによって当夜の主旨があらためて説明されたあとは、武市和希がキーボードを奏でながらしっとりと聴かせた「アルカレミア」や、たゆたうような曲調や洗練されたアコギの音が我々をより静かに酩酊させていった「プラスチックワード」、はたまた来たる5月24日に発売予定だというニューミニアルバム『colors』に収録される新曲「hazel」がいちはやく聴ける場面など、今宵は幾つもの綺麗で素敵な場面が我々のために用意されていたのである。

そして。このライブにおいて最も夜が深まったのは、武市がピアノを弾き語りながら歌った「まるで幻の月をみていたような」だったと言い切っていいはずだ。mol-74のことを単なるロックバンドという括りにあてはめてしまうのはあまりに忍びないほど、このときその空間に居合わせた者たちは、普遍的で端正なこの佳曲に、どこまでも深く意識を支配されていたのだから。 

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

mol-74 photo by MASANORI FUJIKAWA

「…オハヨウゴザイマス!! いやー、今回のライブは思っていた以上に、やっているコッチ側まで眠くなってきますねぇ。参加してくれたsleepy.abに至っては、バンド名からして眠い感じだし(笑)。だけど、さすがに皆にこのまま眠った状態で帰ってもらうわけにはいかないのでね。ここからは、“アラームゾーン”です!」 武市による粋なMCをとったあとはアッパーな「%」と、これまた5月に発売される『colors』に収録されることが決まっているエモい新曲「tears」が放たれることにより、一時レム睡眠レベルまで到達したmol-74 presents[『春眠』 -東京編-]は、無事覚醒へと至った次第となる。

春が過ぎ去れば、梅雨をはさんでやがては夏がやって来る。初夏にかけ、mol-74の活動はここから速度を増して行くに違いない。


取材・文=杉江由紀

リリース情報
new mini album『colors』
2017.05.24(水)release
『colors』

『colors』

LADR-011 / ¥1,900+tax
1.hazel
2.yellow
3.light
4.complementary colors
5.rose
6.tears
 

 

ツアー情報
「colors」release tour
06.16(fri)福岡Queblick w/LILI LIMIT/Bentham
06.17(sat)高松TOONICE w/LILI LIMIT/Bentham
06.23(fri)仙台LIVE HOUSE enn 2nd w/LILI LIMIT/PELICAN FANCLUB
06.25(sun)名古屋CLUB ROCK'N'ROLL [ワンマン]
06.30(fri)大阪Shangri-La [ワンマン]
07.02(sun)渋谷WWW [ワンマン]
「colors」release tour-番外編-
07.11(tue)新潟CLUB RIVERST w/PELICAN FANCLUB/lazuli rena nicoleand/Scott of Grin
07.12(wed)金沢vanvanV4 w/PELICAN FANCLUB/and more
 
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