やくしまるえつこ、世界最大の国際科学芸術賞で日本人初のグランプリに “人類史上初”のバイオテクノロジー作品で

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2017.5.9
やくしまるえつこ

やくしまるえつこ

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やくしまるえつこが、世界最大の国際科学芸術賞「アルス・エレクトロニカ賞」の『STARTS PRIZE』で、グランプリを受賞した。

「アルス・エレクトロニカ賞」の『STARTS PRIZE』は、世界中で最も優れた、科学・芸術・テクノロジーがクロスオーバーした作品を決める賞で、“メディアアート界のオスカー”とも言われている。今回、やくしまるえつこは自身の作品『わたしは人類』(英語名:Etsuko Yakushimaru - “I’m Humanity”)で、日本人初となるグランプリを受賞した。

『わたしは人類』

『わたしは人類』

『わたしは人類』は、やくしまるえつこがバイオテクノロジーを用いて制作した作品。”人類滅亡後の音楽”をコンセプトに、新しい音楽の形を探るプロジェクトとなっている。

まず、やくしまるえつこは日本に古くから生息するシアノバクテリアの一種である微生物・シネココッカスの塩基配列を用いて楽曲『わたしは人類』を制作。さらにその楽曲の情報をDNAコード化し、DNAを人工合成してこの微生物の染色体に組み込んで、『わたしは人類』の遺伝子組換え微生物を生み出した。このようにして制作された『わたしは人類』は、人類の歴史上初めて「音楽配信」「CD」「遺伝子組換え微生物」という3つの形で発表された作品となっている。

なお5月9日には、『わたしは人類』の2つの映像作品が、みらいレコーズオフィシャルYouTubeチャンネルにて公開された。1つは、『わたしは人類』の実際の遺伝子情報を基にしたビデオだ。この映像は、1970年代に登場した生命の誕生、進化、淘汰などのプロセスを再現したシミュレーションゲーム『ライフゲーム』のアルゴリズムを使って作られている。


もう一つの映像は、2016年12月に『わたしは人類』の遺伝子組換え微生物が展示された山口情報芸術センター[YCAM]での、やくしまるえつこのバンド「相対性理論」による『わたしは人類』のライブパフォーマンス映像だ。このライブでは、『わたしは人類』の譜面中に仕掛けられたトランスポゾン(ゲノム上を転移する、突然変異の原因となる遺伝子)のパートにおいて、実際に突然変異が起こるアレンジで演奏された。


本作品に関して、やくしまるえつこは下記のようにコメントを発表している。

やくしまるえつこ
人類は古来より伝達と記録によってその歴史を継続させてきた。そして音楽の歴史もまた、伝達と記録、ひいては変容と拡散の中にある。歌われ/奏でられた音楽は、口承で/楽譜で/ラジオで/レコードやCDで/クラウドで、他者に伝えられ/複製され/演奏され、その過程で変異を発生させながら時空を超えて拡散する。音楽とメディアの深いかかわりは、伝達と記録の関係性であり、それは遺伝子とDNAであるとも言える。
この音楽をDNA情報にもつ遺伝子組換え微生物は自己複製し続けることが可能である。いつか人類が滅んだとしても、人類に代わる新たな生命体がまたその記録を読み解き、音楽を奏で、歴史をつなぐことになるだろう。
作品自体は自分と切り離されているものと思っていて、それは読み解かれた時点で作品が現れるという感覚です。読み取り手がないことには、作品があってもそれはただの情報の羅列でしかないもので、逆に言うと、どういう状況でどんな人が、あるいはどんなものが、その情報をどのように読み取るのかっていうことが、作品にとってはほぼ全て。だからこそ、全方位に開いていた方がおもしろい。機械が読み取るとどういうふうに変換されるのか、人工知能がその音楽を聞くとどういう解釈を示すのか、あるいは地球外生命体のフィルターを通すとどういう色に映るのか、そしてそこにはどんな差異が発生するのか。そのような思索の一環として、人類が滅亡したのちに誕生するポストヒューマンにもこの情報の羅列を解析してもらいたいと思ったのです。(WIRED.JP『わたしは人類』インタビューより)

 

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