『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ワールドプレミアレポート 上海ディズニーランドでファンたちの希望と絶望を見た!
『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ワールド・プレミア 撮影=村田 由美子
5月11日(木)、中国・上海ディズニーランドにて映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ワールドプレミアが開催され、ジャック・スパロウ役のジョニー・デップ、ウィル・ターナー役のオーランド・ブルーム、ヘクター・バルボッサ役のジェフリー・ラッシュ、キャプテン・サラザール役のハビエル・バルデム、ヘンリー・ターナー役のブレントン・スウェイツ、ヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ両監督、そしてプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーが登場した。
本作は2011年に公開された『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』に続く最新作となり、シリーズ5作目にあたる。ジャック・スパロウ(ジョニー・デップ)誕生の瞬間や、ジャックへ復讐を誓う海の死神・サラザール(ハビエル・バルデム)との激しい戦いが描かれるアクション・アドベンチャー超大作だ。
今回、ワールドプレミアの舞台に選ばれた上海ディズニーランドは2016年に開園したばかり。世界中にあるディズニー・パークの中で唯一、本作をテーマにしたエリア『トレジャー・コーブ(宝の入り江)』を持つ。
この日の上海は快晴に恵まれ、厳しい日差しが降り注いだ。1作目~3作目にてジャック・スパロウと共に最大の人気を誇ったウィル・ターナー(オーランド・ブルーム)が再びシリーズへ帰り咲くこともあり、ジョニー&オーランドという2大スターをはじめとする豪華ゲストを目当てに集まったファンたちは、日差しをものともせず、レッドカーペット・エリアへ入場するための“腕輪”を求めて列へと並んでいた。
レッドカーペットのファンエリアへ入場するための列へ並ぶファン 撮影=村田 由美子
レッドカーペットが敷かれることになったエリアは、日本のディズニーランドに例えると“イクスピアリ”のような場所。巨大なディズニー・ストアをはじめ、飲食店などが立ち並ぶ無料入場ゾーンだ。先頭のファンは朝の4時から並んでいたという。
列を横目に進んでいくと、見事なレッドカーペットが登場。
撮影=村田 由美子
ファンエリアにはすでに入場を許されたファンたちが待機しており、灼熱の日差しに耐えるため、日傘などを駆使して開始時間を待っていた。時計は午前9時を指しており、レッドカーペットの開始時間は16時~17時頃と予定されていたため、待機時間はこのあと7時間以上にも及ぶこととなる。
ファンエリアへ入ることを目的として渡航した筆者もさっそく列へと並んだ。過去に『パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト』『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の2作品でワールドプレミアを体験した際には、レッドカーペットの開始時間までにエリア近くへ待機すれば誰でも見ることができるというシステムだったため、まさか灼熱地獄に数時間も耐えることになるとは思いもよらず、日除けになるものは一切準備してこなかった。
ジリジリと体が焼けていくのを感じながら、朦朧とする意識と共に待つこと約2時間。突然、中国語でまくしたてるスタッフにより待機列は解散させられた。「並ぶな!」と言っていることがわかる。レッドカーペット観覧のための腕輪は配布が終了したらしい。どうやら、スターたちを見るための望みは絶たれたようだ。
消えた望みと暑さに愕然としながら、休憩のためにレストランへと入る。さすが中国、何を食べてもそれなりに美味しい。
ヘタつきのニンジンが良い味を出している甘めのテリヤキチキン丼 撮影=村田 由美子
「これからどうしよう」と絶望のまま食事を取っていると、ふと目に入った外の風景に再び列ができ始めていた。情報を探ると、日本語が堪能なスタッフさんに出会うことができた。どうやら「望みを失いし者たちの列」ということらしい。「このままでは帰れない」と思ったファンたちが作り始めた、最後の希望にすがるための列なのだろうか。果たしてこの列に並ぶべきなのかと悩みながらも、考えを変えてディズニーランド内へと向かってみることにした。「今日は『トレジャー・コーブ』が12時でクローズする」という情報を思い出したのだ。
トレジャー・コーブ内の海賊船 撮影=村田 由美子
12時で閉まるということをすっかり忘れていたため、エリアにたどり着いたのは11時40分頃。立ちはだかるディズニー・キャストからは「もう中に入れることはできない」と厳しく断られる。「あと20分あるから入れてくれ」と懇願すると、「仕方ないな」といった面持ちで、300メートルほど先の入口へ向かうよう指示された。
相変わらずの灼熱地獄の中、ギリギリのところで滑り込み『トレジャー・コーブ』を代表するアトラクション『カリブの海賊 バトル・フォー・サンケン・トレジャー』へと駆け込む。上海ディズニーランドに来たら必ず乗るべきアトラクションのひとつであり、パイレーツ・ファンにとって最高のライドというだけでなく、360度スクリーンや最新型の投影システムが駆使されており、現存する世界のライド・アトラクションの中でもトップクラスの体験ができると言われている。
「カリブの海賊 バトル・フォー・サンケン・トレジャー」待機列の看板 撮影=村田 由美子
いざ乗ってビックリ。まさにトップクラスの体験と呼ぶに相応しい、日本の『カリブの海賊』の興奮を数百倍にもしたような濃密さだ。『パイレーツ~』本編のサウンドトラックが存分に使用されたBGMに、超絶規模の海賊船に取り囲まれる展開などが加わり、恐ろしいくらいに完全に、劇中へと没入した感覚が味わえる。本作のファンだけでなく海賊が好きな人にもたまらないアトラクションだろう。
アトラクションを出るころには、エリアは完全にクローズ。どうやら、レッドカーペット前にジョニー・デップをはじめとするキャスト陣がこのアトラクションへ乗りに来るためのクローズだったようだ。キャスト陣も体験した『カリブの海賊 バトル・フォー・サンケン・トレジャー』、是非とも体験をおすすめしたい。
灼熱地獄のディズニーランドを後にして、再びレッドカーペット・エリアを偵察しに向かった。すると、日本から来たというジャック・スパロウ・コスプレの2人組を発見。彼らの他にコスプレをしている人は皆無に近い状態だったため、現地のファンたちから大人気で写真を求められていた。
日本人コスプレイヤーのNAOKIさん(左)、KENJIさん(右) 撮影=村田 由美子
筆者の古くからの友人でもある2人と合流する形を取り、レッドカーペットへ入場するための緊急会議を行う。望みが絶たれたことを知った上で、「望みを失いし者たちの列」へ並ぶことで意見が合致した。
再び列に並んでみると、なんと少しずつ列が動いているのがわかる。選ばれし数人ずつをレッドカーペットへと案内しているようだ。諦めずに並んでいると、15分ほどして「今すぐ解散しろ」と恐ろしい台詞が聞こえてきた。
本当に望みは絶たれたらしい。ファンたちから絶望の声が上がっている。バリケードに近づき様子を確認するも、まるで映画のラスボスに出てきそうな大きな男性が立ちはだかっている。悲しみのどん底へ突き落されたような気分で立ち尽くしていると、とある外国人男性が声をかけてきた。2人のジャック・スパロウを見て「君たちのグループはこっちに来なさい」と言っている。言われるがままについていくと、突然目の前が開けてレッドカーペットが現れた。なんとファンエリアへと案内してくれたのだ。
大喜びのNAOKIさん(左)とKENJIさん(右) 撮影=村田 由美子
心の底からお礼を伝え、ドラマチックな展開に感動を隠せないまましばらく待っていると、遂にレッドカーペットがスタートした。『最後の海賊』メイン・ビジュアルが印刷されたポスターが無料でファンに配られる。熱狂のうねりで誰が登場したかを確認しながら待つこと1時間ほど。最初に目の前に現れたのは、ヨアヒム・ローニング&エスペン・サンドベリ両監督だ。
ヨアヒム・ローニング監督 撮影=村田 由美子
2012年、海を舞台とした航海映画『コン・ティキ』にて、ノルウェー映画としては史上初となるアカデミー賞とゴールデングローブ賞の同時ノミネートを成し遂げ、今回『最後の海賊』の監督へと抜擢された実力派監督コンビの2人。丁寧にファンへ対応する姿は、スラリと背が高くまるで俳優のよう。
エスペン・サンドベリ監督 撮影=村田 由美子
続いて登場したのは、ヘンリー・ターナー役のブレントン・スウェイツ。アンジェリーナ・ジョリー主演のディズニー映画『マレフィセント』にて、フィリップ王子を演じ知名度が急上昇。オーストラリア出身、現在27歳の爽やかな若手イケメン俳優だ。彼もまた丁寧にファンへと接している。終始ニコニコとする姿に、ブレイクの予感が漂っていた。
ブレントン・スウェイツ 撮影=村田 由美子
ブレントンが去ってすぐに、これまでと違うレベルの絶叫が響き渡る。オーランド・ブルームの登場だ。
オーランド・ブルーム 撮影=村田 由美子
群衆の中でもクッキリと際立つオーラを放っている。2001年、演劇学校卒業と共に手にした『ロード・オブ・ザ・リング』エルフの王子・レゴラス役で世界的大ブレイクを果たし、「世界の王子」の異名を手にしたオーランドは、全盛期の2003年~2007年に本シリーズへ出演。ウィル・ターナー役としても、その人気を不動のものとした。
今回の復帰を喜ぶファンに囲まれたオーランドは、まるで全盛期と変わらぬ魅力を振りまいている。15年来のファンである筆者もサインをお願いすると、快く応えてくれた。
サインをするオーランド・ブルーム 撮影=村田 由美子
次に登場したのは、恐ろしい海の死神キャプテン・サラザール役のハビエル・バルデム。ハリウッドでも大活躍するスペイン出身の大人気俳優だ。前作にあたる『生命の泉』に、妻であるペネロペ・クルスも出演していることから、夫婦そろってシリーズの大役キャラクターを射止めたことになる。
ハビエル・バルデム 撮影=村田 由美子
ジャック・スパロウに扮した2人を見つけると、「君たちの好きなジョニー・デップも、もうすぐここに来るよ!」と一言。その暖かい人柄に触れたファンたちの中で、好感度が急上昇したようだ。
ハビエル・バルデム 撮影=村田 由美子
ここまででも相当レベルの豪華俳優たちに続々と遭遇しており、留まるところを知らない熱狂の波こそがレッドカーペット・イベントの醍醐味といえるが、ハビエルが去った瞬間に、もはや「異様」ともいえるほどの大絶叫が辺りを包んだ。すると、目の前にヘクター・バルボッサ役のジェフリー・ラッシュが登場。
ジェフリー・ラッシュ 撮影=村田 由美子
ブレントン・スウェイツと同じくオーストラリア出身で、アカデミー賞助演男優賞の受賞歴を持つ大御所俳優であるジェフリーの登場にもファンは熱狂していたのだが、この異様さ、どうやら同時にジョニー・デップも近付いてきているというのだ。数メートルの距離をはさんでジャック・スパロウとバルボッサが同時存在するという状況に、ファンのボルテージは最高潮へと達した。
軽やかな足取りでファンのセルフィーにおさまるジェフリー・ラッシュ 撮影=村田 由美子
ジョニー・デップのファンサービスの良さには定評があり、「ほとんど全員にサインを行おうとしているのではないか?」と思うほどゆっくりと進む。ジェフリー・ラッシュがレッドカーペットを後にすると、見えるはずの姿が見えないほどの人の波が近付いてきた。なぜかジョニー・デップの時は、レッドカーペット上で俳優を取り囲む関係者の量も急増するのだ。頂点に君臨し、ひとつの時代を作り上げたスーパースター俳優のレベルは群を抜いている。
見えないジョニー・デップ 撮影=村田 由美子
しかし、これまでの経験やファンサービスの評判から、「必ずこちらの方へも来てくれるだろう」とファンは予想していた。おそらく、その一帯にいた誰もが、国籍や国境を越えた「言葉にならない言葉」で、そう思っていたことが容易に感じ取れた。
しかし次の瞬間、ファンは地獄の底へと突き落された。少々足元がおぼつかない様子のジョニーを、スタッフが半ば強引に連れ去るようにしてしまったのだ。周辺は一気に静まり返った。
呆然とするジャック・スパロウズ 撮影=村田 由美子
連れ去るようにしても、それを拒んでファンにサインを続けることがほとんどのジョニー・デップ。「何か体調に異変でもあったのでは?」と、姿を見つめていたファンは必死に分析をしていた。灼熱地獄だった日差しはおさまり、辺りはすっかり夕暮れとなっていた。
夕暮れのシンデレラ城 撮影=村田 由美子
しかし、しばらく経つとすぐに、近くにいたもの同士で写真の交換会がスタート。『パイレーツ・オブ・カリビアン』という、同じ“映画”を好きなもの同士がすぐに仲良くなれるのは、レッドカーペットの魔法だろうか。片言の中国語や英語、日本語を交えて交流を行うこの姿こそ”映画”の力を存分に感じさせる光景のひとつだ。現場は「ジョニー・デップには会えなかったけど、オーランドにも、ジェフリーにも、ハビエルにも会えた!」と、喜びを噛み締めるファンたちで溢れていた。
こうして幕を閉じた『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』ワールドプレミア。最後に少々、切ない展開が起きたとはいえ、新シリーズの幕開けとしてファンの情熱を取り戻すには充分の展開だったといえる。この上海を皮切りに、フランス・パリ、アメリカ・ロサンゼルス……と世界プロモーション・ツアーを展開していく一行。ジョニー・デップは現場での問いに「日本にも行くよ!」と答えたが、最後の地としてジャパンプレミアが実現することを、ディズニー・マジックに祈ろう。
撮影=村田 由美子
映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』は、7月1日(土)より全国ロードショー。
取材・文・撮影=村田 由美子
監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ(『コン・ティキ』)
脚本:ジェフ・ナサンソン(『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』『ターミナル』)
製作:ジェリー・ブラッカイマー
<キャスト>
ジョニー・デップ:ジャック・スパロウ
オーランド・ブルーム:ウィル・ターナー
ハビエル・バルデム:キャプテン・サラザー
ジェフリー・ラッシュ:ヘクター・バルボッサ
カヤ・スコデラリオ:カリーナ・スミス
ブレントン・スウェイツ:ヘンリー・ターナー
ケヴィン・マクナリー:ジョシャミー・ギブス
ポール・マッカートニー 他