異色のジャンル横断型インストバンド・Yasei Collective その素顔と最新作の聴きどころを紐解く

2017.5.22
動画
インタビュー
音楽

Yasei Collective 撮影=風間大洋

画像を全て表示(7件)

Yasei Collectiveとは一体何か? 近年はジャズフェス、ロックフェス、ライブハウスからブルーノートなど大人の場所に至るまで、神出鬼没の活躍ぶりで知名度も評価もぐいぐい上昇中。メンバーのルーツにあるジャズ、ロック、ファンク、ヒップホップ、エレクトロなどを縦横無尽にミクスチャーしたサウンドは、バカテクなのに心地よく、ポップなのにどこかストレンジという、うっかりはまれば抜け出せない魅力的なものだ。ACIDMANの事務所・FREE STARに所属する異色のジャンル横断型インストバンド、最新作にして最高の自信作『FINE PRODUCTS』について大いに語る。

――SPICEとして、ACIDMANはよく取材させてもらってるんですよ。大木社長は厳しい人ですか。

松下マサナオ:いや、全然。基本的に優しいよね? 

別所和洋:で、時にいきなり厳しいみたいな。「おまえらまだ全然だから」とか言われて。

松下:「さーせん……!」みたいな。

――社長ですねえ。ちなみにFREE STARにはどういう経緯で?

松下:2013年に出した結成5周年のアルバム(『so far so good』)に(ACIDMAN・浦山)一悟さんが入ってくれて。その音源を聴いた大木さんからのオファーで、「事務所決まってんの?」「いや、自主でやってます」「良かったらうちに来ない?」という流れで、しごくシンプルな感じでした。

――はたから見ると、若干意外な感じもあったんですけどね。畑が違うというか。

松下:そこが良かったんじゃないですか? インストだし、全然違うものがやりたいって大木さんも言ってましたし。

別所:同じようなバンドを入れても面白くないからって。

松下:かといって俺らも、ジャズバンドでも、ジャムバンドでも、ロックバンドでもない、全部に広げてる感じなので、そこがちょうどハマったのかな。音楽的な部分は全部自由にやれと言ってくれてるんで。すごくありがたいです。

――それから2年近くたちますが、いろんなジャンルというか人脈というか、グッと広がった感じはあります?

別所:もう少し前から徐々に、という感じですね。

松下:この3年ぐらいかな。世界が変わっていく感じというか、知り合うはずもなかった人や、僕らがずっと聴いてた人が、たまたまヤセイを聴いてくれてたりとか、そういうことが結構あって。それも誰かしらの紹介だったりするんですけど。

Yasei Collective 撮影=風間大洋

――もともと、ジャンルの越境を目指していたバンドですか。

松下:そうですね。やりたいことがバラバラすぎて、“せーの”で音を出した時点で、純度は高いけど内容はバラバラみたいな音ができるだろうなと思ってたんで、それをそのまま続けてる感じです。ギターロックやろうぜとか、みんなが同じ方向を向いてるバンドではなくて、ルールを設けて、それを守りつつ好きなことをやるという感じに近いです。

――ちなみに、それぞれがこのバンドの持ち込んでいる特色というと?

斎藤拓郎:エレクトロっぽい音色はもちろんあると思うんですけど、メロディを作ることも多くて、そのメロディがわりと日本人ぽいなと自分では思っていて。そこは大事かなと思ってます。

別所:僕がバンドにもたらしてるものでいうと、ジャム・セクションでのソロと、ハーモニーの整理ですね。二人(松下&中西)が作るビートがあって、曲を作るのはだいたいこの人(斎藤)なんですけど、それに対して僕がどういうコードを当てていくか。そういうところですね。

中西道彦:人が出さない音をひたすら出し続けること。普通のベーシストではないというか、ヤセイに特化して言うと、ギターがギターっぽいことをしてないし、僕が本来ギターがいる空間を埋めたりとか、そのせいでローがなくなっても僕はあんまり気にしてなくて。それも音楽のテクスチャーの一つだし、スリルがあるほうが好きです。バンドの中では、かき回し役になってるところはあるかもしれない。

松下:アメリカの音楽学校に行っていた2年間が、僕の音楽のやり方を決定的に作ってくれたんですね。ただ盲目的にやるんじゃなくて、目的を持って遂行していくための作業が練習だという考え方で、それをバンドにもたらすのが僕の役割だと思ってます。ドラムがうまいのは当たり前なんですよ、このバンドをやるなら。何をうまいと言うかは別として、僕にとってはできて当たり前。まずは高いスキルをキープして、プラス、この人たちがずっとモチベーションをキープできるだけの、「難しい、チクショー、でもやりたい」と思えるように、エモーショナルになれるエサをどんどん与えるという。

――ああ~。それって、エサという言い方はちょっと語弊あるかもしれないけれど、リスナーに対しても与えてることじゃないですか。“難しそう、でもなんかかっこいい、理解したい”と思わせるような。

松下:まあ、言葉は難しいですけどね。それが啓蒙なのか、洗脳まで行ってしまうのか、そこはよく話すんですけど、それ以上を求めるとわかんないでしょ?というところまで行かないと、逆にみんな聴いてくれないところもあって。でもそれだけだとただマニアックなことをやってるだけで、マニアックなことをやるんだったら誰とでもできる。それをポップなもの、ロックなものに昇華する時に拓郎のセンスが必要だし、オシャレだなと思わせるためには別所のコード感が必要だし、その二つだけあっても、ここ(松下&中西)のビートがないと、ただのかっこいい日本のバンドになっちゃうんですよ。でもこの二人がいることで、“あいつら海外でもやれるんじゃないの?”っていう希望が見えてくる。そこがいいバランスで、今回のアルバムではむちゃくちゃきれいにパッケージされてると思います。

――わかりやすい。その通りだと思います。

松下:とてもじゃないけど、むっちゃポップで全曲聴きやすいなんて言えないですよね。でもその中に、耳ざわりのいい曲があって、ジャムっぽい曲もあって、ヒップホップ・テイストの強いトラックとか、今のLAシーンのトップの奴らがやってることとか、いろんな要素があって。総じて、今俺らが“せーの”で出せる音しか録ってない。そこが大事なところだと思います。

Yasei Collective 撮影=風間大洋

――このアルバム、構成が面白い。曲があって、短いインタールードが入っての繰り返し。

松下:ミニアルバムなんですけど、ボリュームがあるみたいな。

――最初からこういう作りにしようと?

松下:いや、曲を作っていって、本当に今回はバラバラだなと。どこかで接着剤的なものを作ろうということで、インタールードは全部1日で作りました。あとはレコーディングで音を詰めて2ミックスに落として、コンプをかけてわざと音を汚したりして、インタールード感を出して。曲というよりは、完全にトラックですね。でも今回のツアーでは、「Interlude-3」をジャム・チューンにしてやろうと思ってます。ファンキーで、絶対好きな人が多いと思うので。変拍子でけっこう難しいんですけど、それを変拍子に聴こえないようにやるのが僕らの得意技なので。

中西:一番最初に自主で作ったアルバム(2010年『POP MUSIC』)が、同じような作り方なんですよ。曲の間を、トラックではさむという。

松下:今聴いてもかっこいいよね。曲は若いなって感じがするけど、トラックはかっこいい。

中西:それに対する、2017年時点の回答みたいな感じになってるのかなと。僕はとにかく、今回のアルバムはラフだと思ってるんですよ。変に詰めるところを詰めない。パッとやって、その空気や勢いがちゃんと録れてる。圧迫感がなくて、そこがすごく好きです。前作は僕がミックスしていて、ちょっと納得いかないところもあったんですけど、今回は音を出すだけで良かったので、気持ち的にもすごく楽で。個人的にもラフだし、風通しが良かったと思います。

別所:僕も似たようなことを思ってました。前の作品よりも自由に動くところが増えたというか、具体的にはソロ・セクションが増えたり、ライブっぽいアルバムかなと思いますね。個人的にもいいテイクが録れたと思うし、ジャズが好きな人にも聴いてもらいたいです。

――音色も多彩で、とてもカラフル。たとえば「Uncle S」のソロは、ジャズのインプロの一番おいしいところだなと思って聴いてました。

別所:この曲は、大学時代によく聴いていたジョシュア・レッドマンのエラスティック・バンドとか、そういう影響も大きいのかなと。おととしぐらいにProphet-6というシンセを買って、いいなと思う音を出せるようになってきて、ローズ(エレクトリック・ピアノ)の質感と、遠いんだけど近いというか、シンセは電子楽器だけど、あたたかみがある感じがするんですよね。それがローズの質感とマッチして、特に「Uncle S」はその混ざり方が楽しい曲かなと思います。あと「HELLO」では速弾きを頑張ってるんで、そういうところも聴いてもらえれば。

――リード曲の「HELLO」は面白いです。聴いて、“トライアスロンみたい”って思いました。競技がどんどん変わっていく感じ。

別所:言いえて妙ですね(笑)。

松下:ほんとね、その通りですよ。俺、トライアスロンやってます(笑)。曲の中で「次はこの競技だろ」って。ずーっと休めなくて、最後、やっとロックに戻って来る。

――ヤセイの曲って、聴いてるとイメージがパッと浮かぶんですよ。その次の「Shinkado」は、“千鳥足で世界一周”(笑)。なんか、いい気分でふらふらしながら、いつのまにか世界一周しちゃってるみたいな楽しい曲。僕の勝手なイメージですけど。

中西:面白い(笑)。ありがとうございます。

――斎藤さんは、今回のアルバムの出来映えについては。

斎藤:解放感と言うか、ナチュラルに自分たちを出しているイメージがあります。前作がわりと詰めたんですね、“ここでこの音を入れて”って、わりと一直線に。今回は視野を広げて、肩に力を入れないで作って、録って、聴いてても全然疲れないですし。次にどうなるかわからないですけど、バンドとしては過渡期的な、変化をし始めた最初の作品なのかなと思ってます。

――斎藤さんはギターもシンセも弾きますけど、ギタリストの意識の方が強い?

斎藤:自分はギタリストというよりは、ギターを使う人みたいな。

松下:それをギタリストと言うんじゃないの(笑)。

別所:言わんとしてることはわかるけど。ギターは道具に過ぎないみたいな?

斎藤:そんなに愛着はないです。

Yasei Collective 撮影=風間大洋

――うはは。そんなこと言っちゃっていいのか(笑)。

松下:どう考えても、ギターよりアンプとかエフェクターのほうが好きだもんね。だってこの二人(斉藤&中西)、海外に行く時にサオを持っていかないんですよ。現場のでいいって、エフェクターだけ持って行く。そりゃあギター・マガジンもベース・マガジンも、呼びにくいわ(笑)。

中西:僕は好きなエフェクターが一種類あるんですけど、それを4個持ってて、2個は改造してて、その写真をこの間ベース・マガジンに載せてもらいました。サオじゃなくてエフェクターの写真を(笑)。オクターバーなんですけど、それだけは絶対持ってくんですよ。あとシンセ・ベースと。

――「Pitout」のインプロは、ギターがすごくいい音で鳴ってます。メロウで、繊細で。

斎藤:ありがとうございます。僕もジャズを勉強したんですけど、全然弾けなくて……その出がらしみたいなものですけど。

別所:言い方悪すぎるんじゃない? 出がらしをレコーディングしちゃったの(笑)。

松下:あの曲はそもそも、ジャズの殿堂のピットインというライブハウスが新宿にあって、僕らも一回出たことがあるんですけど、そこに昼の部というのがあって。通称“昼ピ”という――すごいんですよ。若手のジャズメンがそこで全てをさらけ出すような熱い空間があって、“そこでやってそうな曲をやろうぜ”と。この音楽、絶対マニアックだなぁみたいな。

――ニュアンスはわかります。

松下:俺は聴いてて超楽しいんですよ。だから昼ピはけっこう見に行ってたんですけど、ほんとマニアックなんです。その場のお客さんは、まずどこまで内容理解しているかはわからない。そういう曲がやりたくて、「Pitout」は決めのフレーズが一つあるだけで、あとは全部自由。だから新宿ピットインの昼ピに尊敬の念を込めて「Pitout」。

別所:これが絶対わからないという人がいることもわかってるんですけど、でもこの音楽も俺らを形作っている大切なものなんだよという意味で。

斎藤:むちゃくちゃ楽しかったです。

別所:出がらしだけどね(笑)。

松下:出がらしでマニアック(笑)。でもこれも俺らの一部です。

Yasei Collective 撮影=風間大洋

――僕はプログレの文脈で解釈しましたけどね。キング・クリムゾンを彷彿とさせるような。プログレ者はきっとはまるんじゃないか?と。

松下:なるほど。僕が唯一聴いてたプログレがキング・クリムゾンなんですよ。『RED』とか最高ですよね。それ以降のプログレは僕としては全然ダメで、フュージョンになっちゃうから。速弾きとか、変拍子とか、様式美だけにとらわれたフュージョンって苦手なんですよ。影響を受けた時期もありますけど、いろいろ通ってきた結果として、やっぱり違うなって。

別所:……適宜、カットしていただいて。

松下:全部使っていいですよ。

――使わせていただきます(笑)。このアルバムはジャズ者にもプログレ者にも、ファンク、ロック、エレクトロ好きにも、入り口がたくさんあるので。そういう意味ではまったくマニアックじゃないですよ。音楽好きにはきっとフィットする場所があると思います。って、僕が言ってもしょうがないですけど。

松下:僕が言ったことにしてください(笑)。でも本当に今回のアルバムは、結局多ジャンルになってるんですけど、それゆえに間口は広いし、全部がディープなんですよ。本気でやってるから。ファンキーとかじゃなくて、本当にファンクをやろうとしてやってる瞬間があったり、80'sで行こうぜと言ったら、Aメロだけは完全に80’sとか、ドラムンベースの要素を入れるんだったら、ガチンコ研究したあとで俺らが消化したドラムンベースを入れたりとか、そういう作業をどの曲でもしてるので。そこで決めているのは、“せーの”で録ること。音を足さない。オーバーダブ一切なし。それをライブでそのまんま聴けるんで。しかもライブだと、さらにエモいという。そこが今回のアルバムで、一番うまくいったところですね。

――まさに。みなさん、ぜひライブに確かめに来てほしいですね。

松下:これ本当にやってるの?って、ライブを見に来てくれればわかります。“だから言ったじゃん!”って(笑)。


取材・文=宮本英夫 撮影=風間大洋

Yasei Collective 撮影=風間大洋

リリース情報
『FINE PRODUCTS』

Yasei Collective『FINE PRODUCTS』

2017.05.24Release
DDCZ-2157 ¥2,000+税
<収録曲>
1.  HELLO
2.  Interlude-1
3.  Shinkado
4.  Interlude-2
5.  Pitout
6.  Interlude-3
7.  Uncle S
8.  Interlude-4
9.  Quinty

【インストアイベント情報】
5/28(日)@埼玉熊谷モルタルレコード2 階
OPEN 18:30/START 19:00
http://mortar.cart.fc2.com/
7/3(月)@タワーレコード新宿店 7F イベントスペース
START 21:30
http://tower.jp/store/kanto/Shinjuku/event

 

ツアー情報
『Yasei Collective Live Tour 2017 "FINE PRODUCTS"』
6/10(土)@伊那GRAMHOUSE(長野)
OPEN 18:00/START 19:00
W:Manhole New World/No Gimmick Classics

6/16(金)@甲府・桜座(山梨)
OPEN 19:00/START 19:30
W:勝井祐二(Vln)+U-zhaan(Tabla)
VJ:mitchel
OA:古谷淳(Pf)

6/17(土)@名古屋HeartLand(愛知)
OPEN 18:00/START 19:00
W:egoistic 4 leaves
OA:AWA

6/18(日)@宇都宮studio baco(栃木)
OPEN 18:00/START 19:00
OA:keshiki

7/01(土)@静岡Freakyshow(静岡)
OPEN 18:00/START 19:00
W:Sardine Head
OA:HUMANAME

7/2(日)@アメリカ村CLAPPER(大阪)
OPEN 17:30/START 18:00
W:neco 眠る
DJ:DAWA(FLAKE RECORDS)

7/15(土)@佐賀ロレッタ(Loretta)(佐賀)
OPEN 19:00/START 20:00

7/16(日)@長崎Ohana Cafe(長崎)
OPEN 20:00/START 21:00

7/17(月/祝)@熊本NAVARO(熊本)
OPEN 19:00/START 20:00

★TOUR FINAL
7/22(土)@新代田FEVER(東京)
OPEN 18:00/START 19:00
W:WONK
DJ:荒内佑(cero)
OA:MONO NO A WARE
ADV¥3000/DOOR¥3500
席種:全自由

  • イープラス
  • Yasei Collective
  • 異色のジャンル横断型インストバンド・Yasei Collective その素顔と最新作の聴きどころを紐解く