第十四沼(だいじゅうよんしょう)『「事件ですか?事故ですか?」恐怖!事故物件沼!』
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、
その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第十四沼(だいじゅうよんしょう) 『「事件ですか?事故ですか?」恐怖!事故物件沼!』
いちいち気に障る『挨拶しないオバサン』
もう「挨拶しないオバサン」の事はしばらく考えたくない。
あまりの感じの悪さにメンタルやられてきた。
もしかしてこの沼コラムの読者なのではないかという不安さえ出て来た。
あれ以降、よくすれ違うのだが、何百メートル先にいても私のセンサーが確実に「挨拶しないオバサン」を捉える脳設定になってしまったようだ。いろんな変な人たちに会ってきたけど、あれほど邪悪なオーラを出している人にはそうなかなか会えるものでは無い。
犯罪者も被害者も人間・・・感情の沼がそこに・・・
さてこんばんは、齋藤久師です。
前回の『人間考察 断捨離沼!』があまりの衝撃だったらしく、「書籍化しないのか」という問い合わせが殺到しているようだ。誠に嬉しい限りだ。この場を借りて御礼を申し上げたい。
今回は「事件」の話をしよう。
通常生きて入れば、そんな事件を頻繁に体験したり、また知人が巻き込まれたりする事は稀だろう。
しかし、私の場合は脳に事件レーダー受信機を搭載しているため、いち早く事件、惨事、事故の情報が届くシステムになっているのだ。
もちろん、きれい事では無いが、人が亡くなったり、誰かが事故に巻き込まれる事自体、とても心が痛むし悲しい。しかしながら、何故そのような事件に至ったか、そして犯人の心の闇の部分にとても興味を抱いてしまうのだ。彼ら悪人の心情や環境、事件時の精神状態に異常に興味を持っている。
自分と同じ人間が何故人間を殺すという行為に及ぶのか、その深層心理を確かめたいのだ。
そのため、あらゆる事件に関する文献を集めている。これが、私の書斎の事件カテゴリーの中のほんの一部だ。
殺人事件に至るまでには、幾つもの要因が重なり合う。
痴情のもつれ、
憎しみ、
金銭絡み、
感情の爆発、
暗殺など
数え上げたらキリがない。
メディアのからくり、実は殺人事件は年々減っている!
様々な文献を調べてみると、実は昭和に比べると(もっと言うと戦前から)現代では、殺人犯罪は圧倒的に激減しているのだ。
特に少年犯罪(殺人)に関しては信じられないほど減少している事が判明した。
昭和の初期〜中期までは、メディアといえば新聞、ラジオなどしか存在せず、事細かい多くの殺人事件は一々大きく取り上げられなかった。
古くは「津山30人殺人事件」などの大量殺人事件や「阿部定事件」などの猟奇的事件、またTVメディアが発達すると共に「よしのぶちゃん誘拐事件」や「あさま山荘事件」など派手な事件がマスコミによって片寄り気味に報道されるのみで、日常的に行われていた殺人事件は新聞に数行で掲載される程度であった。
しかしインターネットの発達とともに、ほぼ全ての殺人事件が明るみになる現代、情報はあからさまに、詳細、そして派手に報道されるため、殺人事件が増えているように感じているが、実は統計を取ってみると殺人事件は確実に減っているのだ。
「酒鬼薔薇聖斗事件」などまさに代表的な例だ。
センセーショナルな事件には変わりないが、過去にはもっと悍ましい事件が星の数程起きているのが事実なのだ。ただ、それが報道されていなかっただけなのである。
まあ、インターネットや事件関係の膨大な書籍。そのお陰で、ほとんどの事件が私の頭の中にインプットされている。事件現場、犯人、被害者の顔と名前、動機、その後の裁判に至るまで全て覚えている。
まさか!身内が巻き込まれるとは・・・
さて、先日衝撃的な事件があった。
たびたび沼コラムに登場する私のマネージャーの羽田(腸が異常に弱い)の話だ。
彼は、昨年まで東京都内に住んでいたが、一時的に埼玉の実家に帰っていた。そのため通勤時間3時間(往復6時間)という、とてつもない無駄な時間を毎日費やしていた。
本人曰く
「電車でメールの処理をしているんです」
と言う。
しかし私が電話すると、そのつど駅で降りなければならない。帰りの終電も異常に早い。埼玉の実家近辺にはコンビニすら無く、街灯もほとんどない真っ暗な夜道を一人帰る姿を思い浮かべると、悲しいどころか爆笑してしまう。
交通費を考えたら東京に住めばいいのに・・・・と。
その羽田が先日ミーティングのため東京にやってくるやいなや、意気揚々に興奮してこう言った
「ヒサシさん!!!!!遂に東京で物件を見つけました!!!!!!!
しかもヒサシさんの家の近所です!!!!!!!!!!!!」
と・・・。
「どれどれ、その物件を見せてごらん」
と携帯で撮った写真を私に見せた瞬間、私はこのマンションのベランダの構造を良く知っている事に気づいた。
そのマンションは紛れもなく昨年、ある女性がバラバラにされ、そのあと池に遺棄された事件現場そのものだったのだ。
腸の弱い羽田に事実を伝えて脱糞でもされたら困るから黙っておこうとも思ったが、さすがに知っていて後から言う方がよっぽどかわいそうだと思い、私は無言で自分の携帯を出し、その事件の画像(マンションの外観が写っている)を羽田に見せた。
すると彼は、胃のあたりを手で押さえ撫でながら見るみる顔色が青白く変わっていった。しかし、人間というものはおかしな生き物で、パニックになると脳のどこかの動線が切れるらしい。
羽田は急に笑い出し
「マジですか?マジそうですよね!ココっすよね!間違いない!ヒサシさんすごい!!!!」
と爆笑し始めた。
あ・・・コイツ壊れたな、と思った。
私はその事件現場の詳細をよく知っている。
下に駐車場があって、緑色のクラシックなアメ車が停まっている。そして裏口にはゴミ置場に出れる非常階段がある事を。
さらにはエレベーターが2つあり、片方が奇数階、片方が偶数階に止まる事を。
おまけに各階から降りられる螺旋階段、部屋の間取りまで知っているのだ。
一応申し上げておくが、私は不動産業者ではない。
音楽家の端くれだ・・・・。
上記の説明を何の資料も見ないでスラスラと羽田に伝えると
「まさに、まさにその通りです、ヒサシさんの言う通りの構造です。緑の車もありました!」
・・・もう笑うしかない。
彼は事故物件とは知らずにそこを借りようとしていたのだ。
幸い羽田が紹介されたのは事件のあった303号室とは別の部屋だが、事件現場と同じ奇数階。
・・・という事は・・・
犯人が遺体を運んだエレベーターを羽田が常時使うことになるのだ。
ボクは一言、
「せっかく近くに来たのにね〜。ボクは行かないよ」
羽田はガッカリした表情で、
「他も当たって見ます・・・。でも安かったんですよ・・・。」
という。
当たり前だ。
さすが『ウルトラソウル!』羽田の決断
数日後、再度ミーティングが行われた際に羽田は意を決したように、また少しタイミングを見計らうように自ら言葉を発した。
「ヒサシさん、やはりあそこに住む事にしました!」
そうか・・・住むのか・・・。
私は行かない・・・。
絶対に行かない・・・。
友達も来ないだろう・・・。
まあ、でも、寂しくないからいいか。
見えない『友達』がいつでも側にいるし。
あなたもまだまだ遅くはない。
一緒に事故物件の住人になろう・・・。