超詳細&動画で公開!映画『LOGAN/ローガン』ヒュー・ジャックマン&ジェームズ・マンゴールド監督会見レポート

2017.6.1
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左から、ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マンゴールド監督

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5月25日、ザ・ペニンシュラ東京で映画『LOGAN/ローガン』の来日記者会見が行われた。主演のヒュー・ジャックマンとジェームズ・マンゴールド監督は、会見の質疑応答を通じて作品への思いを語っている。

『LOGAN/ローガン』は、アメリカン・コミックおよびその映画化『X-MEN』シリーズの人気キャラクター“ウルヴァリン”ことローガンを主人公とした、シリーズ3作目の映画。日本公開に先駆けて全米では3月3日に公開され、3日間で8530万ドル(約97億円)を記録。アメコミ映画では初となるベルリン映画祭での上映や、全米批評家サイト・Rotten Tomatoesのトップ批評家による評価で92%(5月24日付)を獲得するなど、興行・批評の両面で支持されている。ジャックマンが17年間にわたって演じてきたウルヴァリンを引退することでも話題の同作だが、それ以上にアメコミ映画としては珍しいR-指定のレーティングを受けていることも注目されている。果たして、異色のアメコミ映画にどのような思いを込められているのか。同作の企画段階からともに歩んできたジャックマンとマンゴールド監督が会見で語った熱い思いを、動画とテキストで以下にレポートする。

 



マンゴールド監督:毎回、日本に来るたび素晴らしい時間を過ごしてます。昨夜(レッドカーペット)もこの作品を日本の皆さんと一緒に楽しむことができて、とてもたくさんの刺激をうけました。『X-MEN』、ウルヴァリン、そしてヒュー・ジャックマンの演技に対しご支持を頂き、ありがとうございます。

ジャックマン:(日本語で)コンニチハ!ニホンニキテ、トテモウレシイデス!もう何度来たか覚えていないくらい日本に来ています。おそらく、世界中で一番訪れている国が日本だと思います。日本が大好きで、ジム(マンゴールド監督)も日本が好きです。昨夜は大勢のファンと一緒に過ごして、ツアーの最後の地として完璧でした。同時に私にとっても、17年間演じてきたウルヴァリンの旅の終わりが東京になりました。FOXチームのジェシーほか皆さんに感謝します。『LOGAN/ローガン』についてみなさんとお話できるのをとても楽しみにしております。先ほど楽屋で日本語を練習したときには、ジェシーに100点満点中90点と言われたんですが、今のは60点くらいでしたね(笑)。

左から、ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マンゴールド監督


――ウルヴァリンはジャックマンさんの代名詞とも言えるキャラクターだと思います。これで最後にしよう、引退にしよう、と思われた瞬間はいつですか? そして、最後に演じられていかがでしたか? 

ジャックマン:『ウルヴァリン: SAMURAI』も日本で撮りましたが、あの映画の直後にマンゴールド監督とこの映画(『LOGAN/ローガン』)の話を語りあいました。どういう方向性で撮るかということを。そして、この映画は(ウルヴァリンの)最終章に最もふさわしい終わり方だと思いました。例えば、最高のパーティーをやっている中で、いつそこを出るのか?というのは非常に難しい判断が必要だとは思いますが、マンゴールド監督だからこそ、僕は一緒にやって、こういう終わらせ方をしたいと思ったのです。今回の作品が最後になるので、とにかく最高のものにしたい。そして、ただのシリーズの中の1本ということではなく、新鮮でより深いものを作りたかった。ですから、2、3年くらい前から終わりにすることは決めていたのですが、今はとても平和な、幸せな気分で感謝しています。出来上がった作品を観たときには安堵感を覚えました。監督に世界最高の贈り物を頂いたような、私が思っていた以上の出来になりましたので、今は大変に満足しています。

――日本でも、Instagramにアップされたジャックマンさんの迫力あるアフレコ映像が話題になりました。作品への意気込みが反映されたからなのでしょうか?

ジャックマン:特にこの映画だからという訳ではなくて、他の俳優さんも同じように(アフレコを)やっていると思います。Instagramの投稿は、みなさんに「こうなっているんだ」ということに興味を持っていただけるのではないかな、と思ったのです。2、3テイク撮った後に、エンジニアの方に「録音ボタンを押してからぼくの姿を撮ってくれないか?」とお願いしました。これは自分のためだけに撮っておこう、初めは思っていたんですが(笑)。アフレコはすごく汗をかく、すごい運動量の作業なんです。でも、これは僕だけじゃなくて、俳優みんながやっていることだと思いますよ。

ヒュー・ジャックマン


――17年間ウルヴァリンを演じてきたことは、ジャックマンさんにとってどんな経験になりましたか?

ジャックマン:イギリスの演劇界には、トレヴァー・ナン卿という有名な演出家がいらっしゃいます。イアン・マッケランさんやパトリック・スチュアートさん、ジュディ・デンチさんの演出をずっとされている方です。ぼくが『オクラホマ!』という作品をイギリスの王立劇場で演じていたときに、彼に「舞台をずっとやっている俳優は、5つのルーツになる作品・役を持つものだ」と言われたんです。たぶん、ナンさんは「君にとって、『オクラホマ!』がそのルーツの一つだよ」と言いたかったのだと思いますが、こうやってキャリアを振り返ってみると、ぼくにとっては『LOGAN/ローガン』こそがのルーツなのかもしれません。もしかすると、僕にはその一つしかルーツがないのかもしれませんが、『LOGAN/ローガン』は僕にとって、キャリアにおいてだけでなく、人生における大きな喜びであり、光栄な特権であり、そして感謝すべき役だと思います。実は、最初の『X-メン』のときには、ぼくは『X-MEN』のコミックを読んだこともなければ、聞いたこともなかった。ウルヴァリンという動物(クズリのこと)が実際にいるということも全く知らなかったです。これだけ長く演じることになったのもまったく驚きです。今回は最後の作品なので、決定版にしたいと思いました。私にいつか孫が出来て、「おじいちゃん、どの『X-MEN』を観ればいい?」と聞かれたときに、誇りをかぶったDVDを出してきて、「これを観ろ」と言えるような、そんな作品にしたかったんです。実際にそうなったと思いますし、私にとってマンゴールド監督は最高の脚本家であり、俳優にとって本当に最高の監督だと思います。

ジェームズ・マンゴールド監督


――マンゴールド監督は、ジャックマンさんと3回目のタッグだと思います。監督として、最後のウルヴァリンを撮ることになった感想を聞かせてください。

マンゴールド監督:この作品に取り組むときに、これはヒューと私の共通の見解なのですが、まず(ウルヴァリンという)キャラクターが映える作品にしたい、と思いました。そうすると、いわゆる従来の伝統的な作り方を壊さなければいけないと思ったのです。例えば、従来の映画でしたら、彼がこの世の終わりを救う、惑星の危機を救う、どこかの街を救う、もしくは彼自身を救う、というようなことが描かれると思います。しかし、私はそういう作品は作りたくなかったんです。今の映画は、救出ものであったり、強い悪役が出てきたり、紫色に塗ってカラーコンタクトを付けた役者が出てきたり……というような作品が多い。でも、この作品に関しては、キャラクターを称えるために違った作品にしたいという思いがあった。ヒュー・ジャックマン自身もそれを求めていましたし、私もそれを求めていて、お互いが同じ思いでいました。経済的にも、体制的にも、一度何かが作られると、同じようなものがどんどん複製されるということになります。私たちも、「前作でこういうことがあったから、それに沿ってこういうものを作る」ということになりがちです。でも、この作品については、そういうようなものを解放する、とにかく今までとは違ったものにしたいと思いを持って臨みました。そして、毎日「ほかの作品ではどうやってこの問題を解決したか」と問いかけて、あえて違った形で解決するんだ、という思いで作りました。

――ローラを演じたダフネ・キーンさんについて、お二人の印象を聞かせてください。

マンゴールド監督:私は、素早く、直感的に役者を感じ取ることが多いんです。非常に幸いなことに、私は人生の中で大変優れた役者さんたちと一緒に仕事をさせていただいて、非常に贅沢な経験をさせてもらいました。今私のとなりにいる紳士(ジャックマン)もその一人ですが。本当に偉大で素晴らしい役者たちとの経験がありますので、(役者が)どういった人なのかもすぐわかるんです。作品で、どういった人をキャストとして選ぶのか、という時にだいたいわたしが役者さんに求めるのは、その方の思考力です。例えば、その俳優の顔を撮影しただけで、言葉を話していない状態でも何を思っているのかをちゃんと伝えることができる人、思考や考えていることをカメラを通して見える人を求めています。こういったことは、私から教えることは不可能なので。ダフネのお父さんがマドリッドからiPhoneで(ダフネを)撮った映像を観たのですが、その時の彼女の目からは、言葉を発していなくてもとても活き活きしたものが伝わってきたんです。今回のこの作品では、ダフネをカメラがとらえる時間が長いということもあるので、注目も彼女に集まる。ですから、彼女の感じていることが観客にも伝わる。彼女がセリフをあまり話さないということには、そういった意味が込められていたのです。本当に彼女は素晴らしい、才能のあふれる役者です。

ヒュー・ジャックマン


ジャックマン:それは素晴らしい質問だと思います。というのは、まず、監督が脚本も書いているのですが、こういうシナリオを書くこと自体……最初はチャールズとぼくの役が書かれていて、ダフネの役は追加されたものなんです。この映画のテーマは家族や愛なので、やはりこの役は必要なんです。ウルヴァリンにとって、20人と戦うのは簡単なことで、人を愛する、家族を持つ、つながりを持つのは非常に大変なことなんです。なので、11歳の女の子が出てくるのは素晴らしいアイデアだと思ったんですが、「どこでそんな子を見つけられるんだ?無理じゃないか」とも思いました。ウルヴァリンの激しさや怖さを持っていて、でもセリフはほとんど無くて、でもだんだんと心を開いて色んな人生体験をしていく。そして、三人で車で旅に出る。ぼくは48歳ですが、これは俳優としてもの凄く高いハードルだと思いました。彼女は11歳でそれを楽々とやってのける、献身的な女優さんです。この役は非常に重要だったので、彼女を見つけたということが奇跡だと思います。

――二人の男性がメキシコ系アメリカ人の子どもを助けるという設定は、今のアメリカの隠喩になっていると思いました。『ウルヴァリン』のシリーズは、いつもマイノリティへの迫害にフォーカスしていますが、どうお考えですか?

マンゴールド監督:私たちがこの作品を作りはじめたころは、ちょうど大統領選の期間でした。通常、私は自分の素材を準備するときに、世相を盛り込むようにしています。例えば、この映画で子どもたちが「USA!」と叫ぶシーンがありますが、あれは撮影当日に加えました。作品にそういったことを反映させることには、常に備えるべきだと思うんです。非常に悲しいことに、今の映画はからっぽな、空虚な作品が多い。世相を反映していたり、問いかけるようなものが「大胆だ」と思われるような状況になっているんです。私としては、常に世相は反映すべきだと思います。今の映画の多くはそうではなく、口の中に入れるとアメのようにすぐに溶けて、後には何も残らないようなものが多い。私はそういう作品を作ることに興味がないですし、作品自体が何か反映していたり、何か挑発的であったほうがいいと思います。今、多くのシリーズものや大作は、どんどん人を眠らせるような作品になっていると思います。

 

ヒュー・ジャックマン

 

ジャックマン:今思い出したのですが、ちょうど大統領選のディベートで(トランプ氏が主張するメキシコ国境の)壁の話が初めて出たころ、当時の脚本の中に“壁”の話があったんです。まだ誰もその話をしていなくて、トランプ氏が初めて口に出したころにすでに私たちの脚本の中に壁の話はあったんです。私たちがSF的なこと、未来に起きることとして書いていたのを、誰かがリークしたのかな、と思ったほどです。これは、マンゴールド監督が政治的なことを考え、世の中を非常によく見渡しているということの証拠だと思うのです。また、映画に『シェーン』が出て来ます。この映画は非常にシンプルな善対悪の物語なのですが、この映画の中盤にも主人公が「牧畜業者が我々の土地に入ってきて、川の流れが変わりつつある。時代が変わりつつある」というようなセリフを話すシーンがあります。これも、シンプルな物語の中に、急に大きな世界観というか、世相を反映したものを監督が上手く盛り込んでいるということなんです。

――本作はR指定(米国では17歳未満の鑑賞は保護者の同伴が必要、日本では15歳未満鑑賞不可)であることに大きな意味があると思いました。R指定となってよかった点はなんでしょうか?

マンゴールド監督:もちろん、多くのファンが色々な制限のかかっていないウルヴァリンを最後に見たい、とう望んだということもあります。私自身が、R指定にしようと思った理由があります。今回は「R指定でいきたい」ということを、製作を始める前にスタジオに伝えました。実際にR指定を獲得しようと思ったのは、大人向けの作品を作りたかった、ドラマを撮りたいという思いがあったからです。ちょっとみなさんに理解していただくのは難しいかもしれませんが、事前に「R指定でいきたい」ということをスタジオに伝えずに進めると、万人に受け入れられるものとして作ることになる。脚本を書くときにも、9歳から40歳までも楽しめるものにしなければならなくなります。

 

でも、最初にスタジオに「今回はR指定でいきます」と伝えていれば、「これは子どもに対して売ることのない作品だ」と理解してもらえる。その結果、私がとても自由になれるんじゃないか、と思いました。これは、暴力描写ですとか、言葉使いだけでなく、私のアイデアを自由に使うことができるということです。例えば、本作には冒頭にヒューとパトリック・スチュワートが約7分会話するシーンがあります。これは子供向けの作品だと、1分半くらいに縮められてしまうと思います。なぜなら、子どもには6分半近くも二人の中年男性が自分の身体の衰えについて話すシーンは我慢できないからです。そういう風に、すべての要素が変えられてしまうことになる。今回私にとって大切だったのは、とにかく子ども向けではなく、“成熟した作品を作る”ということだったんです。

左から、ヒュー・ジャックマン、ジェームズ・マンゴールド監督

 

マンゴールド監督:一つ補足したいのですが……本作を世界中で公開してきましたが、時期的に、ここ日本が最後の地域ということになりました。これまで沢山の上映を経験してきましたが、これだけ大人のテーマでありながら、この作品には一切物議が起きていないんです。その理由は、私が思うにこの作品がとてもハートに溢れているからだと思うのです。演技自体もそうですし、ヒュー・ジャックマンも、パトリック・スチュアートも、ダフネ・キーンも本当にハートの溢れる演技をしているから、そうなったのだと思います。私自身も子を持つ親なので、暴力的な作品であっても、愛や犠牲を肯定するような作品を観てもらいたいのです。今の子ども向けの作品は、殺戮や殺人があったり、物欲主義だったり、別の文化を侵略したり、お金がテーマになっているものがとても多い。そういう作品よりも、暴力的でも温かみのある作品を観るべきだと思います。そういった意味で、この作品は正しく、ハートのあるものになっていると思うのです。

映画『LOGAN/ローガン』は上映中。

作品情報
映画『LOGAN/ローガン』
 

監督:ジェームズ・マンゴールド  
出演:ヒュー・ジャックマン、パトリック・スチュワート
配給:20世紀フォックス映画
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