“完璧なる執事”が今度は殺人事件に遭遇!? 『鎌塚氏、腹におさめる』倉持裕&三宅弘城インタビュー

インタビュー
舞台
2017.6.16
『鎌塚氏、腹におさめる』三宅弘城&倉持裕インタビュー

『鎌塚氏、腹におさめる』三宅弘城&倉持裕インタビュー

画像を全て表示(11件)

過去3度にわたって公演を重ねてきた鎌塚シリーズが、3年ぶりに復活! 8月5日(土)から上演の『鎌塚氏、腹におさめる』は、完璧なる執事・鎌塚アカシ(三宅弘城)が、ご主人様に尽くすべく奮闘する姿を描いたドタバタコメディだ。生真面目で融通の利かない鎌塚氏が、職務を全うするために様々な無理難題や陰謀に挑むさまが多くの観客から愛されてきた。

最新作『鎌塚氏、腹におさめる』は、何と鎌塚氏が殺人事件に遭遇! 推理マニアの公爵令嬢・チタル(二階堂ふみ)と共に密室殺人の謎に立ち向かう。3年ぶりの帰還に、作・演出の倉持裕&主演の三宅弘城も今から稽古が待ち遠しい様子。ますますパワーアップした鎌塚氏の世界をたっぷりと語ってもらった。

(左から)倉持裕、三宅弘城

(左から)倉持裕、三宅弘城


 

鎌塚アカシには“マヌケ美”のようなものがある。

――3年ぶり4度目の鎌塚氏ですが、ここで改めて本作が誕生したきっかけから教えていただいてよろしいでしょうか。

倉持:着想のきっかけは、カズオ・イシグロの『日の名残り』という小説です。これは生真面目なバトラーが主人公のお話で、とてもシリアスな作品なんですけど、主人公の生真面目すぎるところにユーモアを感じて。これを強調してコメディにしたら面白いなと思って誕生したのが、この鎌塚シリーズです。第1作は2011年なんですけど、すごく反応が良くて、地方公演の最中に「2回目もやりましょう」って話をしていました。

それくらい自分の中で手応えがあった分、逆に2作目、3作目のときはプレッシャーがすごかったですね。特に2作目なんて吐きそうでした(笑)。たくさんの人が期待をしてくださっていたのがわかっていたので、それを超えるものをつくらなくちゃいけないという重圧に潰されそうになっていたんですね。アカシを手放すまいという想いで必死にやっていた2作目、3作目を経て、4作目の今回はそこから解放されたような気持ちがある。たぶんそれは「もうしばらくの間はアカシが自分のそばにいそうだな」という感じがするから。今回は何だかすごくゆったりと構えて作品をつくることができる気がしています。

倉持裕

倉持裕

――今回は、鎌塚氏が殺人事件の謎に挑むというのがポイントですね。

倉持:単純に探偵モノをやってみたいなと思ったんですよ。レイモンド・チャンドラーのようなハードボイルドの探偵ものが好きで、これをコメディとしてやったらどうかという好奇心が出発点。コメディと殺人事件というのは一見すると食い合わせが悪そうですが、被害者の大堀(こういち)さんは殺された後も幽霊になって、あちこち登場します(笑)。陰湿な展開になることはないので、どうぞ安心してください。

――三宅さんは殺人事件が題材と聞いて、どんな感想を抱きましたか。

三宅:単純に面白そうだなと思いましたけど、僕の場合はそれ以上に「また鎌塚をやれるんだ」っていう喜びがいちばん大きかったですね。内容に関しては、もう倉持さんのことを全面的に信頼していますので、特にあれこれ気にする必要はないかな、と。どうやら過去3作とはちょっとテイストも変わるということなので、4回目ではありますけど、また新たな気持ちで鎌塚と向き合えるんじゃないかなとワクワクしています。

三宅弘城

三宅弘城

――“探偵”と聞くと、鎌塚氏が謎解きの長台詞を延々と喋り続けている画が浮かびます。

倉持:まだ具体的には何も考えてないですが、それも面白いですね。アカシがひとりでずっと喋りながら、どんどん脇道に反れていったり、最後の謎解きの場面で、全然解けていないのに、いかに自分が頑張ったかを延々話し続けていったりするのも面白い。まだ構想の段階ではありますが、探偵モノのセオリー通りにやっていこうとは考えています。

三宅:アカシは“完璧なる執事”を目指していますけど、決定的に抜けてることがたまにあったりして、そこが面白い。真面目であればあるほどマヌケさが出てくるというか。言ってみれば“マヌケ美”です。彼の魅力は。そんなアカシが殺人事件で推理するとなったら、きっといろいろ頓珍漢な方向に迷走するんだろうなと思います(笑)。デキるところもダメなところも含めて、過去3作にはなかった新たな面が出てくるはず。そこをしっかり稽古でつくっていければ。

――シリーズを重ねる中で、三宅さんの演じる鎌塚氏に変化や成長を感じるところはありますか。

倉持:1作目のときは尊敬語、謙譲語、丁寧語という敬語の使い方にかなり苦労をされていらっしゃったと思うんですけど、2作目以降はわりと流暢に使いこなせるようになったというか。「存じます」とか「致しかねます」みたいな遠回しな言い方が不自然に聞こえないんですよ。無理して言ってる感じが三宅さんからなくなってきて。そこはひとつ役を捕まえられている表われなのかな、と。

三宅:たぶん1作目のときは、そういう恭しい言い回しを倉持さん自身が使いたかったんじゃないかなと思っています。後の2作と比べてもずっと多用されていましたよね。

倉持:確かにそうかも。1作目の稽古を経て、三宅さんが言うとこうなるんだとか、ここまでの言い回しは芝居の邪魔になるんだなということがわかったりして。三宅さんの演じ方を見て2回目以降は書き方が変わっていったところもある気がします。

三宅弘城、倉持裕

三宅弘城、倉持裕

アカシとチタル、融通の利かない者同士、我を張る感じが面白い

――今回はヒロインとして二階堂ふみさんが登場します。二階堂さんの演じるチタルが探偵で、アカシがその助手としてコンビを組むそうですね。

倉持:チタルは、僕の中にある二階堂さんのイメージをもとに宛て書きをしたキャラクターです。推理マニアなんだけど、探偵としての才能はゼロ。どこかアカシと似ているんですね。二人とも自信があるのに頓珍漢。融通の利かない者同士、我を張る感じが面白いかな、と。きっとああだこうだと押し問答が繰り広げられることになるんじゃないでしょうか。

三宅:二階堂さんとご一緒するのは今回が初めて。小柄なんだけど、すごく力強い女優さんという印象があるので、きっと「魂のケンカ」ができるんじゃないかと楽しみにしています。

三宅弘城

三宅弘城

――アカシとチタルの間で恋が芽生えることも……?

倉持:そうですね。この鎌塚シリーズは男女のバディもの。毎回、ヒロインの女優さんとちょっとしたロマンスが繰り広げられるのが定番なので、今回もきっとほのかな恋が生まれると思います。

三宅:二階堂さんが本当に可愛いんですよ。この間、チラシ撮影でお会いしたときも、本当にお人形さんみたいで。

――前回、ケシキ(ともさかりえ)と落ち着いたように見えたのですが。ともさかさんに怒られませんか?

三宅:そこはもうケシキさんは別格ということで(笑)。

――では、タイトルにちなんで、おふたりの“腹におさめている”お話を聞かせてもらえますか。

三宅:え~。そこは言えないですよ、腹におさめているわけですから(笑)。

倉持:どうでしょうね。よくよく考えれば、演出なんかやっていたら、その連続ですけどね。ひとつの作品をつくる以上、各セクションがいろんな意見を僕に言ってくる。その中で取捨選択するのが演出の仕事ですから、当然腹におさめるものもいっぱいあります!

倉持裕

倉持裕

三宅:役者で言うと何だろう。あるシーンをまるまる飛ばしちゃって、共演者にすごい迷惑をかけたけど、演出家が見ていなかったからバレなかった……というのは、腹におさめるに当てはまりますか?

倉持:その状況を自分だけが知っていたら、腹におさめるになるんじゃないですか。たとえば、誰かが出トチッたのを自分だけが知っていて、それが大御所の俳優だから何にも言えず、自分の腹におさめておこう……とか?

三宅:あ~、あると思います(笑)。

インタビュー中の様子

インタビュー中の様子

――では、最後に鎌塚ファンはもちろんのこと、シリーズ未見の読者に向けて一言いただけたら。

倉持:シリーズものとは言え、おそらく全作をご覧になっている方というのは少数だと思います。毎回必ず初見の方がご覧になっても、すんなりと作品の世界に入っていけるようつくっているので、安心して劇場に足を運んでもらえたら。何せ出だしからアカシのことを“完璧なる執事”って紹介するような舞台です(笑)。誰がどういう人か全部きちんと説明しちゃうので、よくわからないという心配はないと思いますよ。

倉持裕

倉持裕

三宅弘城

三宅弘城

三宅:過去作をご覧になっている方からすれば「出てきた!」と手を叩きたくなる、初めて観る人は「何だそれは」とツッコミたくなる小ネタが満載。だから初めての方も、ずっと観てきてくださった方も、どちらも同じくらい楽しめると思います。美術もちょっとおとぎ話みたいな感じでいいんですよね。時代設定も現代のような、そうじゃないような不思議な感じだし、舞台も日本のような、日本じゃないような、ファンタジックなところがありつつ、きちんとリアリズムがある。それこそ演劇を見慣れていない方にもオススメできる作品です。みなさんお誘い合わせの上、劇場に遊びに来てください!

『鎌塚氏、腹におさめる』

『鎌塚氏、腹におさめる』


インタビュー・文=横川良明 撮影=髙村直希

公演情報
M&Oplaysプロデュース「鎌塚氏、腹におさめる」

作・演出:倉持裕
出演:三宅弘城、二階堂ふみ、眞島秀和、谷田部俊、玉置孝匡、猫背椿、大堀こういち

<東京公演>
日程:2017年8月5日(土)~8月27日(日) 
会場:本多劇場
料金:前売・当日共7,000円 (全席指定・税込)

<名古屋公演>
日程:2017年8月29日(火)~8月30日(水)
会場:日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
料金:前売・当日共 7,800円 (全席指定・税込)

<大阪公演>
日程:2017年9月2日(土)~9月3日(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
料金:前売・当日共 7,000円(全席指定・税込)

<島根公演>
日程:2017年9月5日(火)
会場:島根県民会館 大ホール
料金:S席【一般】6,800円/S席【小中高生】3,700円(全席指定・税込)
       A席【一般】5,800円/A席【小中高生】3,200円(全席指定・税込)
※A席は一部シーン見えづらい場合あり

<広島公演>
日程:2017年9月7日(木)
会場:JMSアステールプラザ 大ホール
料金:料金:7,500円(全席指定・税込)

<宮城公演>
日程:2017年9月13日(水)
会場:電力ホール
料金:7,300円(全席指定・税込)

<富山公演>
日程:2017年9月15日(金)
会場:富山県民会館ホール
料金:7,000円(全席指定・税込)

<静岡公演>
日程:2017年9月18日(月・祝)
会場:静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
料金:S席7,500円 A席6,000円 B席4,500円(全席指定・税込)

公式ホームページ:http://mo-plays.com/kama4/#


 
シェア / 保存先を選択