KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017、全公式プログラムと見どころを紹介
-
ポスト -
シェア - 送る
ダレル・ジョーンズ『Hoo-Ha (for your eyes only)!』 Photo by William Frederking
ドイツの巨匠からアジアの新鋭まで、EXPERIMENT(実験)精神に満ちた12作品が集結。
京都発のパフォーミング・アートの祭典「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭 2017」(以下KEX)の全参加アーティストと上演作品などの詳細が、5月24日に発表された。ここでは記者会見に登壇したアーティストの声も交えながら、それぞれの作品を紹介する。
関連記事→関西最大の舞台芸術祭「KYOTO EXPERIMENT 2017」参加アーティスト第一弾発表
「KYOTO EXPERIMENT 京都国際舞台芸術祭2017」会見参加アーティスト。左からダレル・ジョーンズ、ハイナー・ゲッベルス、金氏徹平、家成俊勝(researchlight) [撮影]吉永美和子
以前速報でもお伝えした通り、今回のKEXの一部演目は「東アジア文化都市2017 京都」のコア期間事業の舞台部門として開催。そのため中国と韓国のアーティストが、KEX初参加を果たすのが一つの目玉だ。批評家としても活躍し、日本の演劇界とも交流が深い中国のスン・シャオシンは、最新作『Here Is the Message You Asked For... Don't Tell Anyone Else ;-)』(10/20・21)を上演。インターネットや日本のアニメに夢中になっている現代の中国の若者たちの姿を、舞台と客席との境界を曖昧にしながら見せていく作品だ。韓国のパク・ミンヒは、韓国の伝統的唱和法「ガゴク(歌曲)」をテーマにした『No Longer GAGOK: room5 ↺』(10/20~29予定)を上演する。宮廷という狭い世界の中で受け継がれたガゴクのルーツに戻り、マンツーマンに近い極小空間での鑑賞を実現。観客はいくつかの小部屋をめぐり、それぞれの部屋で歌を聴くという趣向だ。
スン・シャオシン『Here Is the Message You Asked For... Don't Tell Anyone Else ;-)』 Photo by Chen Jingnian
それ以外の作品としては、まず国内の若手アーティスト代表として、村川拓也と神里雄大/岡崎藝術座が登場。ドキュメンタリー映像作家の顔も持つ村川は、中国と韓国でリサーチを行い、そこで耳にした会話や風景を元にした新作(タイトル未定・10/27~29)を上演。現在文化庁新進芸術家海外研修制度でアルゼンチンに滞在中の神里は、その間に訪れた南米の国々での体験や旅先で考えたことを、アルゼンチンの俳優とともに舞台化する『バルパライソの長い坂をくだる話』(11/3~5)を上演。ちなみにこれが、海外研修後初の日本公演となる。
村川拓也『国家 - 韓国編』2016 Photo by EEmin
アートと演劇、あるいは音楽と演劇の境界を問うような作品が多いのもKEXの特徴だが、その視点で今年注目なのは金氏徹平、田中奈緒子、池田亮司×Eklekto、そしてハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルンだ。現代美術家の金氏は、自身の映像・彫刻作品を舞台化した『Tower(Theater)』(10/14・15)を上演。同世代の俳優やミュージシャンとのコラボで作り上げるという本作に向け「いろんなものを混ぜ合わせていく内に、それがどんな名前なのか、どんなジャンルなのかわからなくなっていく状態になれば」と意欲を語った。ベルリンを拠点とする田中奈緒子は、インスタレーション・アートに様々な光を当てて影を浮かび上がらせることで、物語性を感じさせる空間を作る『Unverinnerlicht - 内在しない光』(10/20~22)を上演。田中の作品自体は日本でも幾度か紹介されているが、舞台芸術の文脈での発表はこれが国内初となるそうだ。
田中奈緒子『Unverinnerlicht』 © Henryk Weiffenbach
KEX常連アーティストの池田亮司は、スイスのパーカッション集団「Eklekto」とコラボを組んだコンサート『music for percussion』(10/24)を上演。デジタルサウンドの印象が強い池田だが、今回はクラッピングやシンバルなどを使った、完全なアコースティックサウンドのライブとなる。そしてハイナー・ミュラーとのコラボで知られる作曲家&演出家のハイナー・ゲッベルスは、彼の音楽劇の代表作『Black on White』(10/27・28)を上演。舞台上でミュージシャンたちが演奏をしている最中に、ミュラーの朗読音源や様々なパフォーマンスが挿入されていく作品で、ゲッベルスいわく「テキスト、あるいは音楽が上位にあるというヒエラルキーを排除した、音楽の解放、演劇の解放といえる作品」だそうだ。本作はこれが日本初演だが「この作品の中心となる楽器の一つが琴なので、日本で上演できるのが面白い」とも期待を語った。
ハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルン『Black on White』 © Christian Schafferer
その他の海外招へい組としては、トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー、マルセロ・エヴェリン/Demolition Incorporada、ダレル・ジョーンズが登場。主宰のブラウンが今年3月に逝去したトリシャ・ブラウン・ダンスカンパニーだが、今後も活動の継続を表明。演目は未定だが、80年代以降の過去3作品(11/1・2)を上演するという。KEX三度目の登場となるブラジルの振付家&パフォーマーのマルセロ・エヴェリンは、舞踏の創始者・土方巽の著書『病める舞姫』から着想を得た最新作『Dança Doente(病める舞)』(11/3・4)を上演。土方の提唱した「衰弱体」という思想に向き合うと共に、土方の故郷・東北とエヴェリンの本拠地・テレジナとの共通性も反映させた作品になっているそうだ。そしてKEX初参加となるシカゴの振付家&ダンサーのダレル・ジョーンズは、日本で滞在制作した新作(タイトル未定・11/3~5)を上演。ジョーンズいわく「女々しいと言われて育ってきた男の子たちの自己表現、戦いの表現」だという、ゲイクラブ発祥のダンス「ヴォーギング」にインスパイアされたクールなパフォーマンスは、ストリートやクラブのダンスの愛好家をも引きつけるものになりそうだ。
トリシャ・ブラウン・ダンスカンパニー『Trisha Brown: In Plain Site』2016 京都国立近代美術館 Photo by Yuki Moriya
さらに、すっかりKEXの名物となったresearchlightの屋外展示だが、今回の『何もある』(10/14~11/5)は京都市内各所を使ったプロジェクトとなる。ガイドマップには掲載されていない、知る人ぞ知る京都のユニークな場所を50ヶ所ほどピックアップし、そこに看板を建てることでその場所の特異性を伝えるものになるそうだ。メンバーの一人・家成俊勝は「京都は景観条例が厳しいのでどこまでできるかわかりませんが、いろんな人の活動を引き出せるような物を建てられたら面白い。見つけた時に記念撮影してもらえたら」と、その抱負を語った。
researchlight『河童と、ふたたび』2016 Photo by Yuki Moriya
以上の公式プログラム以外にも、山口情報芸術センターが取り組んでいる、最新のテクノロジーを使ったダンスプロジェクト「Reactor for Awareness in Motion(RAM)」の公開プレゼンテーション『RAM CAMP in Kyoto 2017』(10/29)や、30組以上が参加予定のフリンジ企画なども開催される。また地元の小学生たちが、公式プログラムの中から自分たちで賞を決める『The Children’s Choice Awards』も注目。数多くの参加型アートプロジェクトを手がけてきたダレン・オドネル/ママリアン・ダイビング・リフレックスが子どもたちをナビゲーションし、世界各地の演劇祭で好評を得てきた企画だ。KEX最終日には授賞式が開催されるので、その結果も楽しみにしたい。
山口情報芸術センター[YCAM]『RAM CAMP in Kyoto 2017』 Courtesy of Yamaguchi Center for Arts and Media [YCAM]
全公演の
■会場:ロームシアター京都、京都芸術センター、京都芸術劇場 春秋座、京都府立府民ホール“アルティ”、京都府立文化芸術会館、ほか
■
※ハイナー・ゲッベルス×アンサンブル・モデルンのみ、6月24日(土)~7月9日(日)に、イープラスでも先行発売を実施(枚数限定)。