吉田羊もゾクゾクの絵画鑑賞! 『怖い絵』展記者発表会より見どころをレポート

2017.6.6
レポート
アート

『怖い絵』展ナビゲーター・音声ガイドを務める女優・吉田羊

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今年の夏、「恐怖」から新たな絵画鑑賞の可能性が広がりそうだ。名画の隠された恐怖を読み解き、大ベストセラーとなった美術書『怖い絵』シリーズの刊行10周年を記念して、著者の中野京子氏を特別監修に迎えた『怖い絵』展が、兵庫県立美術館と上野の森美術館で開催される。5月30日に開催された記者発表会より、ナビゲーター・音声ガイドを務める女優・吉田羊のコメントも交え、気になる展覧会の内容をご紹介しよう。

「恐怖」に焦点をあて、絵画を深く味わう

これまで日本の美術教育では、「見て感じる」ことを良しとしてきた。しかし、本来画家が作品に込めた意味が正しく理解されないまま、「よくわからない」と絵画鑑賞を諦めてしまう人も少なくない。この傾向に疑問を抱き、「読む」絵画鑑賞を提唱した美術書ーーそれが作家・ドイツ文学者の中野京子氏が2007年に出版した『怖い絵』である。「恐怖」に焦点をあて、作品の時代背景や物語といった知識から絵画を紐解いた同書はベストセラーとなり、これまでシリーズ化されてきた。

本展は中野氏自らが特別監修を務める。シリーズで紹介された人気作に加え、新たに選び抜いた作品群からなる約80点あまりを6つの章で構成。想像力を掻き立てるヒントや解説とともに、鑑賞体験ができる展覧会となる。

「恐怖を知らない人はいません。そこにテーマをあて、最終的には絵画を深く味わってもらいたい。かつて夏目漱石が(今回の目玉作品である)《レディ・ジェーン・グレイの処刑》を目にし、血しぶきのシーンまで見えたと書いています。背景を知ることで、そうしたことが可能だということを知ってもらえる展覧会。ぜひ多くの人に参加してもらえれば」と中野氏は語った。

本展特別監修を務める中野京子

ロンドン・ナショナル・ギャラリーの至宝、奇跡の初来日!

本展の注目作は、著書の表紙にもなったロンドン・ナショナル・ギャラリーの代表作である、ポール・ドラローシュ作《レディ・ジェーン・グレイの処刑》だ。イギリスの初代女王としてたった9日間の王位についた後、16歳という若さで処刑された不遇の少女。その最後の姿を描いたこの大作は、一時行方不明になり美術史から姿を消すという波乱の歴史をたどり、今日では同館の代表作となっている。なかなか貸し出しを許されないことで有名だったようだが、今回晴れて初来日を果たすに至った。

一見すると、美しい白い肌の少女が細密に描かれ、処刑の場面を思わせる血の描写は見当たらない。しかし、その物語を知り、描かれたモチーフや人物の様子に再注目することで、この一瞬後に起こる惨劇が想像され、奥深い恐怖がじわじわと迫ってくる作品だ。

ポール・ドラローシュ 《レディ・ジェーン・グレイの処刑》 1833年 油彩・カンヴァス ロンドン・ナショナル・ギャラリー蔵 Paul Delaroche, The Execution of Lady Jane Grey, ©The National Gallery, London. Bequeathed by the Second Lord Cheylesmore, 1902

その他にも、ターナー、モロー、セザンヌといったヨーロッパ近代絵画の巨匠の作品をはじめ、近世から近代にかけてのヨーロッパ各国から油彩画や版画、約80点が集められる。

ハーバート・ジェイムズ・ドレイパー 《オデュッセウスとセイレーン》 1909年 油彩・カンヴァス リーズ美術館蔵 ©Leeds Museums and Galleries (Leeds Art Gallery)

ジョン・ウィリアム・ウォーターハウス 《オデュッセウスに杯を差し出すキルケー》 1891年 油彩・カンヴァス オールダム美術館蔵 ©Image courtesy of Gallery Oldham

吉田羊もハマった、ゾクゾク絵画鑑賞

記者発表会後半には、本展のナビゲーター・音声ガイドを務める女優・吉田羊が登壇。

吉田羊=絵画好きというイメージは全くないと思っていたので、(ナビゲーターに抜擢され)正直びっくりしました。私自身、絵の正しい見方がわからず、絵画鑑賞からは遠のいていたのですが、中野先生の『怖い絵』を読んですごく面白かったんです。(知識を得てから見ると)たった今見ていた絵が全然違って見える。これは面白いなと思いました」

そう話す中、「吉田羊なりの怖い絵」をテーマに描いたスケッチが登場。「絵心は0点」とはにかみながらも、「洋服店の店員さんに『最後の一点です』と言われると『買います』と即答してしまう、自分の弱さが怖い」とスケッチの内容を解説した。

最後に「自分の感性だけでは補いきれないものを知識から得ることで、絵の解釈の可能性が広がります。『怖い』という好奇心を入り口に、その絵が持つもう一つの顔を知り、絵画鑑賞の新たな楽しみ方を発見してもらいたいです」と、来場者へメッセージを送った。

自らが思う「怖い絵」を解説する吉田羊

本展は2017年7月22日(土)から9月18日(月・祝)まで兵庫県立美術館にて、10月7日(土)から12月17日(日)まで上野の森美術館にて開催される。ゾクゾクする絵画体験を楽しみに待ちたい。

イベント情報
『怖い絵』

<兵庫会場>
会場:兵庫県立美術館
会期:2017年7月22日(土)~9月18日(月・祝) ※月曜休館(9月18日は開館)
開館時間:午前10時~午後6時 (金・土曜日は夜間開館、午後8時まで)※入場は閉館の30分前まで
:一般/1,400円(前売り1,200円)、大学生/1,000円(前売り800円)、70歳以上/700円(600円:団体のみ)高校生以下/無料
<東京会場>
会場:上野の森美術館
会期2017年10月7日(土)~12月17日(日)※会期中無休
開館時間:午前10時~午後5時(※入場は閉館の30分前まで)
:一般/1,600円(前売り1,400円)、大学生・高校生/1,200円(前売り1,000円)、中学生・小学生/600円(前売り500円)、小学生未満/無料
展覧会オフィシャルサイト http://www.kowaie.com/