ミュージカル『レ・ミゼラブル』マリウス役の海宝直人が2017年公演の見どころを語る~9月から大阪・フェスティバルホールで上演

インタビュー
舞台
2017.8.11
『レ・ミゼラブル』合同取材会にて(撮影/石橋法子)

『レ・ミゼラブル』合同取材会にて(撮影/石橋法子)


今年日本初演から30周年を迎え、全国主要4都市をめぐるツアーが開幕中の世界的ミュージカル『レ・ミゼラブル』。19世紀初頭のフランス動乱期を舞台に、ひとつのパンを盗んだ男ジャン・バルジャンがたどる数奇な運命を描き出す。当時の社会情勢や民衆心理を克明に捉え、絶望の淵から希望を見出だす壮大な愛と感動の群像劇だ。2015年公演に続き2度目のマリウス役を射止めた海宝直人が、東京公演の合間を縫って来阪。9月のフェスティバルホール公演に向けた合同取材会で、2017年公演の見所を語ってくれた。

「今回のマリウスは僕の中にある、男らしく情熱的な一面が生かされています」

ーー2015年につづきマリウス役でのご出演です。

前回が初めての出演で、決まったときはすごく嬉しかったですね。駅のホームで合格の電話を受けたのですが、思わず行きたい方向と逆の電車に乗ってしまいました(笑)。それほど僕にとっては特別なことでした。とにかく子役時代からずっと大好きで、これまで何度もオーディションに挑戦してきた憧れの作品だったので。今回は2度目の出演ということで、前回「もっとできたはずだ」と思った部分を深めつつ、演出補のエイドリアン(・サープル)からは、マリウスに新たな色を加えたいと言われました。作品全体を通しても情熱的なパッションを求められ、音楽的にもテンポアップしたり、熱量が増えていることを感じて頂けると思います。

海宝直人

海宝直人

ーーマリウス役について、具体的にはどんな要望が?

1幕でコゼットと恋に落ちる場面では内向的にならず、もっと鮮やかな感情表現をして欲しいと言われました。フレッシュで情熱的なマリウスだからこそ、2幕での悩みや苦しみがお客様にダイレクトに伝わるのだと。新鮮なアプローチだったので、新しいマリウスに出会えた感覚がありましたね。同じ役で新たなチャレンジができるのは幸せなことですし、日々演じていても楽しいです。

海宝直人

海宝直人

ーー海宝さんが考えるマリウス像とは?

この作品のファンの方は、多くの方がエポニーヌに共感されていて、マリウスに対しては「ひどい男」だとか、なかなか厳しいご意見が多い(笑)。でも僕は、彼に人間的な魅力をすごく感じています。劇中では、恋や大切な仲間の死、新たな人との出会いまで色々なことに遭遇するんですね。人生で今までに味わったことのないようなことを、物凄く凝縮された濃度で経験していく。その成長の過程が、人間としての面白味に溢れていて魅力的だなと。最終的にはコゼットを守って未来につないでいく役割を果たすキャラクターだと思います。

ーー演出補のエイドリアンには、ご自身とマリウスの共通点も指摘されたそうですね。

もしかしたら今までのマリウスは、柔らかくて少し”優男”のイメージがあったかもしれません。でもエイドリアンには前回、「直人の中に男性的でパワフルな一面を見たので、既存のイメージにとらわれることなく、もっと自分の信じたものを表現してくれれば良いんだよ」と言われて。役作りで悩んでいたものがひとつ腑に落ちたところがあって、そこからは自分なりのマリウス像を作っていけるようになりました。

海宝直人

海宝直人

「コゼットとのシーンでは生身の人間同士の反応をよりリアルに表現しています」

ーーマリウス役は内藤大希さん、田村良太さんとのトリプルキャストです。

田村良太さんとは前回に引き続き、内藤大希さんとは過去に他の作品でご一緒したことがあり、ふたりとは仲が良い。グループラインもあって、稽古中は例えば「カフェ・ソング」とか、心情的にも奥深い曲なので相談したり、互いの役作りについて感想を言い合ったりしていました。それぞれの持ち味が違うので、トリプリキャストであることが刺激でもあり、励みにもなりました。

海宝直人

海宝直人

ーー恋の相手コゼット役も生田絵梨花さん、清水彩花さん、小南満佑子さんの三人です。

2017年のマリウスが、情熱的でパワフルで感情もオープンであるため、コゼットもリアルで現代的、決して奥ゆかしい”お人形さん”ではないですね。そこに演じ手それぞれの個性が加わるので、三人とも全然違いますね。ここで気持ちが動いて、ここで目が合うのかとか。三者三様に細かく芝居を変えて作っているので、何度も観られる方はそのあたりの違いにも注目して楽しんでもらえると思います。

海宝直人

海宝直人

ーーふたりが恋に落ちる場面も、これまでとは違った印象に?

お互い感情表現がダイレクトになっている分、いわゆるロミオとジュリエットのようなおとぎ話のようなラブシーンではないですね。緊張したり、もっと良く見せたいと思ったり。生身の人間同士の反応がよりリアルに、ちょっとコミカルにも描かれている。前回とは大幅にシフトチェンジしている部分もあるので、どの場面にも新鮮に楽しめる部分があるんじゃないかな。

海宝直人

海宝直人

ーー今年は、日本初演30周年記念公演としても話題です。長く愛される理由はどこにあるとお感じですか。

「誰かを愛することは、神様のお側にいることだ」と劇中歌の歌詞にもありますが、それがこの作品のすべてを表していると思います。原作が生まれた時代から現代まで、争いは絶えずそれは悲しいことですが、そういう人間の本質を描き出している作品なので、いつの時代にも響く作品になっている。普遍的な祈りや人間たちの思いが、それぞれのキャラクターに投影されていて、観る年代によっても感じ方や共感するキャラクターが変わってくる。そこも深いなと思います。何より、色褪せない音楽の素晴らしさ。オープニングでバーンと音が鳴った瞬間、物語にガッと引っ張ってもらえる。いつ聴いても気持ちが高ぶる、なにか特別なものが宿った作品だと思います。

海宝直人

海宝直人

ーー9月にはフェスティバルホールにお目見えします。

初めて立つホールなので楽しみですね。前回公演で初めて大劇場でソロを歌う役割を担わしていただき、役者として大きな経験になりました。この役に出会えたからこそ、『アラジン』などその後の出演作に繋がりました。マリウスは役者人生に大きな影響を与えてくれた、思い入れの強い役ですね。また演出家も言っていますが『レ・ミゼラブル』は決して停滞することなく前に進み続けるのがコンセプト。各地で開幕するたびにそれが最新版の演出というつもりで、僕らも毎回新鮮な気持ちで挑んでおります。大阪公演もその意気込みですので、ぜひぜひ劇場でお会いできれば嬉しいなと思います。

海宝直人

海宝直人

取材・文・撮影=石橋法子

公演情報
ミュージカル『レ・ミゼラブル』
 
■作:アラン・ブーブリル&クロード=ミッシェル・シェーンベルク
■原作:ヴィクトル・ユゴー
■作詞:ハーバート・クレッツマー
■オリジナル・プロダクション製作:キャメロン・マッキントッシュ
■演出:ローレンス・コナー/ジェームズ・パウエル
■翻訳:酒井洋子
■訳詞:岩谷時子
■プロデューサー:田口豪孝/坂本義和
■製作:東宝
■公式サイト:http://www.tohostage.com/lesmiserables/

■配役:
ジャン・バルジャン:福井晶一/ヤン・ジュンモ/吉原光夫
ジャベール:川口竜也/吉原光夫/岸祐二
ファンテーヌ:知念里奈/和音美桜/二宮愛
エポニーヌ:昆夏美/唯月ふうか/松原凜子
コゼット:生田絵梨花/清水彩花/小南満佑子
マリウス:海宝直人/内藤大希/田村良太
テナルディエ:駒田一/橋本じゅん/KENTARO
マダム・テナルディエ:森公美子/鈴木ほのか/谷口ゆうな
アンジョルラス:上原理生/上山竜治/相葉裕樹
ほか
 
<東京公演>(公演終了)
■会場:帝国劇場
■日程:2017年5月25日(木)初日~7月17日(月・祝)千穐楽
*プレビュー公演 5月21日(日)~5月24日(水)

 
<福岡公演>
■会場:博多座
■日程:2017年8月1日(火)初日~8月26日(土)千穐楽

 
<大阪公演>
■会場:フェスティバルホール
■日程:2017年9月2日(土)初日~9月15日(金)千穐楽

 
<名古屋公演>
■会場:中日劇場
■日程:2017年9月25日(月)初日~10月16日(月)千穐楽

■『レ・ミゼラブル』日本公式サイト http://www.tohostage.com/lesmiserables/

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