「オール東京藝大」で臨むスペシャルイヤー 『東京藝術大学 130周年記念事業』記者発表会をレポート
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左から、東京藝術大学副学長 岡本美津子、ヴァイオリニスト 諏訪内晶子、東京藝術大学学長 澤和樹、 日本画家 松井冬子、東京藝術大学副学長 松下功
日本が世界に誇る美と知の拠点、東京藝術大学。明治20年の創立以来、世界トップクラス水準の教育研究を展開し、各界で活躍する芸術家を数多く輩出。総合藝術大学として揺るぎない地位を確立してきた。
そして今年の10月、東京藝大は創立130周年を迎える。この節目の年を記念し、「チャレンジする東京藝大~感動を呼ぶ芸術~」をテーマにした展覧会や演奏会など、様々なプロジェクトが半年にわたり実施される。東京藝大が“藝大ファミリー”を集結させ、藝大パワーを発信していく130周年記念事業。6月9日に開かれた記者発表会での内容を基に、その全貌を明らかにしていく。
卒業生も大集合で、藝大パワーが炸裂する
130周年事業のロゴは学内公募で選ばれた在学生のデザイン
記者発表会で学長の澤和樹が繰り返し口にした「オール東京藝大」というキーワード。これは、130周年事業を、在校生や教員に限らず卒業生やその他関係者と幅広い層に参画を呼び掛け、実施していくことを示している。この「オール東京藝大」の強力な助っ人として、OB・OGを含む関係者から公式アンバサダーが選ばれており、日本画家の松井冬子、ヴァイオリニストの諏訪内晶子、狂言師の野村萬斎、そして俳優の伊勢谷友介とそうそうたるメンバーが顔をそろえている。
アンバサダー就任について、諏訪内は「多くの方々に素晴らしい芸術に触れてもらいたい」と語り、松井は「在校生に良い刺激を与えられれば」と意気込みを語った。
アンバサダーは今後も増える可能性もあるとのこと。さまざまなジャンルの第一線で活躍する彼らがどういう形でプロジェクトに関わっていくのか、注目である。
半年がかりで演奏会や展覧会が開催される
130周年事業で計画されている主要プロジェクトの一つが、『「GEIDAI 130 ARTS」プロジェクト』である。実行委員会が主体となり特別に企画した展覧会、演奏会を行う「スペシャルプログラム」、教員、学生、卒業生などが企画・実地する「応援プログラム」、毎年開催されている展覧会・演奏会から選定した「公式プログラム」の3つで構成され、130周年の機運を高めていく。
特に注目すべきは、培ってきた資産と人材が一堂に会し、6月を皮切りに約半年をかけて実施される「スペシャルプログラム」だ。このプログラムでは、これまでの130年の歴史を振り返るのみならず、その業績を現代の視点から改めて見つめなおし、未来に向けた芸術の果たすべき役割などを考察する絶好の機会と位置付けている。
具体的には、東京藝大フィルハーモニア管弦楽団・日本チリ国交樹立120周年記念公演や、大規模なコレクション展『藝「大」コレクション パンドラの箱が開いた!』、戦時下の芸術に光を当てる『戦没学生のメッセージ~戦時下の東京音楽学校・東京美術学校』、各国の壁画を通じてシルクロードをたどる特別企画展『素心伝心 クローン文化財 失われた刻の再生』などが予定されている。ほかにも、藝大茶会、メディア・アート展示、記念音楽会などが企画されているとのこと。
さらに、2020年の東京オリンピックに向けて、海外の芸術大学を招聘し、芸術交流のあり方について多角的に検討する『5大陸 アーツサミット』を来年の1月に予定している。東京藝大は、芸術教育、芸術発信の場において世界を牽引していく立場を目指しており、世界各地から優秀な人材を集めることや、学生と卒業生が世界各地の芸術活動の場で活躍するためにグローバル・ネットワークの基盤を整備していくことをねらいとしている。
藝大だからこそできるスペシャルプログラム
東京藝大の特色のひとつに、美大と音大がひとつに集約されている点が挙げられる。旧制専門学校の「東京美術学校」と「東京音楽学校」が統合して設立された歴史からきているが、このような2つの芸術が共存している国立大学は世界的に見ても珍しいそうだ。本来なら別々の場で学ぶ両者が同じ校舎に通っている風景は、藝大ならではの個性でもあり、強みでもある。さまざまな企画が順次とり行われていく『「GEIDAI 130 ARTS」プロジェクト』の内容にも、その強みを感じることができる。
芸術の最高学府として君臨しつづける東京藝術大学。その圧倒的なパワーをこの機会にぜひ体感してみてほしい。
実行委員会が主体となり特別に企画した展覧会、演奏会を行う「スペシャルプログラム」、教員、学生、卒業生などが企画・実地する「応援プログラム」、毎年開催されている展覧会・演奏会から選定した「公式プログラム」で構成。
公式サイト:http://130th.geidai.ac.jp/