第十六沼(だいじゅうろくしょう) 『続ユーロラック沼!(後編)』
沼。
皆さんはこの言葉にどのようなイメージをお持ちだろうか?
私の中の沼といえば、足を取られたら、底なしの泥の深みへゆっくりとゆっくりと引きずり込まれ、抵抗すればするほど強く深くなすすべもなく、息をしたまま意識を抹消されるという恐怖のイメージだ。
一方、ある物事に心奪われ、取り憑かれたようにはまり込み、
その世界にどっぷりと溺れることを
「沼」
という言葉で比喩される。
底なしの「収集」が愛と快感というある種の麻痺を伴い増幅する。
これは病か苦行か、あるいは究極の癒しなのか。
毒のスパイスをたっぷり含んだあらゆる世界の「沼」をご紹介しよう。
第十六沼(だいじゅうろくしょう) 『続ユーロラック沼!(後編)』
た・・・たたりか!?マネージャーの思わぬ手土産
あの後マネージャーの羽田(腸が弱い)は、例の事故物件マンションに引っ越しを無事(?)に終えて東京に舞い戻った。
そして早速ミーティングをしに我が家へやって来た。
その時、うっかり塩を撒かずに彼を部屋に迎え入れてしまったのが凶と出たのか、羽田が帰るなり私は40度もの高熱を出し、一週間も寝込む生活を余儀なくされたのだ・・・。
腸の弱い羽田が持って来た何かが私に憑依したのだろうか、1日で平均8ロール程のトイレットペーパーを消費するほどの悲惨な状態が現在も続いている。
ギネスに申請すべきだろうか。
ユーロラックの総本山にて・・・
さて、前号のユーロラック沼の話を続けよう。
気がつくと一楽さんと私たち家族は、モジュラーシンセショップ「ウーリーズ」の店内に並んだユーロラックの山の前に立ち尽くしていた。
一応、予算を考えて各モジュールを選定していったのだが、モジュールの音をチェックするたび、次から次へとレジカウンターへモジュールの箱が積まれていく。
家族も道連れにする若松氏
あまりの私の豪快な買いっぷりに一楽さんも爆笑しながら見ている。ちょうど予算の2倍ほどを超えたあたりで店員の若松氏があまりの勢いの良さを心配したのか私に近づき
「齋藤さん、まあ一度落ち着いて裏で一服しましょう」
と喫煙に誘ってくれた。
タバコなんて全く吸わないgalcid lenaも不慣れな格好でタバコを吹かしている。
どう考えても、このあとさらにハマり行くであろう
「ユーロラック地獄の底なし沼」
への恐怖に動揺を隠せないようだ。
その様子を見て私はハっと我に返った。
これはマズイ・・・・。
店内に戻ると、気持ちがリセットされたのか、更に次から次へとレジにモジュールの箱が積まれていった。
子供達はお店のお姉さんと大はしゃぎ。子どもたちが初対面の人とあんなにもはしゃぐのを見るのは初めてだった。
これは完全に罠だ!
我々は一楽さんと若松氏の罠にかかっている!
しかし、時すでに遅し。
レジに打ち込まれた数字は当初の予算の3倍を軽く超えていた。
一楽・若松コンビが本物の悪魔に見えた。
してやったり顔の一楽氏と若松氏
ネギを背負って店を徘徊する日々
冷静に考えてみた。(既に買った後だが)
ん??まてよ?
これってTour用に機材を軽減するためのプロジェクトじゃなかったのか?知らないうちに、前のセットよりも増えていないか?このままだと、現在使っているケースにも入りきらないじゃないか!
どうするんだよ!!!!!!
次の日、気がつくと今度は私とlena自らウーリーズに来店していた。軽く、しかもモジュールが沢山入るケースを買いに・・・
カモがネギを背負ってくるとは正にこのことであろう。
これか・・・ユーロラック沼って。
完全に自ら沼にダイブしていた・・・。
この時点では何故か楽しい気持ちしかない。そして、少し大き目のラックを買ったので、埋まりきれない部分がポッカリと穴が空いている状態になっている。
内臓が丸出しの状態だ。これではカッコが悪いどころか、なんか危険だ。いや、穴を埋めたい男の本能かもしれない。あるいはテトリス的なジャストフィット感を求めているのかもしれない。とにかく、穴を埋めなきゃいけない衝動は止めることができないのだ。
更に次の日、(ユーロラック歴3日目)
ユーロラックを扱う専門店である「CLOCKFACE」に私とlenaが居た。社長のリンタロウ氏とタカギさん(前日は「ウーリーズ」にいたのに!)にお出迎えを受け、ユーロラックケースを埋めるためのモジュールを購入した。
もちろん、ケースを埋める為だけでは無い。
必要なモジュールだからこそ買っているわけだ(←完全に言い訳)
購入後、新しいアーティスト写真の撮影するために渋谷の撮影スタジオに向かおうとすると、今度はウーリーズ若松氏から電話が入った。
「齋藤さんが探して居たモジュールがFiveGに入ったみたいですよ!」
なんなんだこの連携感、連帯感は!普通、競合他社の店同士なんだからライバル意識みたいなものとかないのか?CLOCKFACEのリンタロウ氏も来週 若松氏と呑みに行くと言っていたし。
なんなんだ、この仲の良さは!もしかして、みんなで私をハメようとしてるんじゃ無いのか?
CLOCKFACEから急いで渋谷の撮影スタジオに行く前に車をUターンさせ、言われるがままにFiveGに向かい、入手が困難だったモジュールを無事手に入れた。
撮影スタジオには1時間遅れて到着!その場で買ったばかりのモジュールをマウントして撮影に臨んだ。
帰宅後、空いているブランクスペースにモジュールを埋めて行く。ネジ穴の数からHP(ホールポイントというのかな?)と記載されるサイズにピッタリとモジュールが収まる様はとにかく美しい!
カ・イ・カ・ン、、、、❤
脳内計算機が崩壊、もう止められない!
間近に迫っていたcontact渋谷で行われるgalcidのライブ用に新たな機材のシステムを組んでいると、いつも使っているミキサーがあまりにも大きく見えた。
ふとスタジオの隅に目をやると、今まで使用していたカラッポのユーロラックケースが転がっている事に気がついてしまった。
悩む間も無く、夜中にもかかわらずCLOCKFACEのリンタロウ氏に電話していた。
「ユーロラックにマウント出来るミキサーは無いか?」と。
すると即答で「あります。ただ1ヶ月後の入荷になってしまいます」と。すかさず予約をしている横で大蔵省(lena)は呆れた顔で固まっている。この無言、そして無表情は「OK!買って良し!」の合図だと勝手に解釈して即オーダーした。
このユーロラックのミキサーは通常のアナログミキサーの3倍ほどの値段だ。
しかし、美味しい機能が全てついていて、小さくて軽い!!
一応申し上げておくが、このユーロラック計画は、か弱い女性である妻がヨーロッパツアーのためなるべく軽い状態で楽に移動して欲しいという愛情から生まれたものなのだよ。(←完全に言い訳)
CONTACT渋谷でのユーロラックセットのgalcidのGIGは大成功!
今までプリミティブ性だけが際立っていたサウンドに、少しインテリジェントなエッセンスが加わったそのサウンドで、メインダンスフロアーは湧きに湧いた。
galcidは7月からヨーロッパツアーに向かう。それまでにユーロラックマウントミキサーが届けば、完璧な機動力とサウンドを得ることが出来る。
毎日1つずつ増えるモジュール
昨日も、そして今日も一つずつだけどモジュールが増え続けている。
まるで、都市が成長を遂げるように、毎日ラックの様相が変化していくのだ。
面白い。
これは完全に大人のプラレールだ。
気がつけば2週間の間に100万円はゆうに超えていた。
恐ろしい。
本当に恐ろしい沼だ。
時には剣山のような電源でケガをすることも・・・。
電源の向きを間違えるとショートして全部が壊れるという恐怖
しかし、なんだかんだ悪魔呼ばわりして申し訳なかったが、一楽さん、本当にありがとう。それとたった3日でこれだけのシステムを完成に導いてくれた各ショップのみなさん、そしてモジュールを提供していただいたみなさん、本当にありがとう。
ユーロラックを本格的に導入して本当に良かった。
でも、もう買わないよ。多分。
日々増殖しているユーロラック
あなたもまだまだ遅くは無い。
一緒に沼の住人になろう・・・。
日時:2017.7.15 (土)
会場:恵比寿 頭バー
出演者:小林径 / 齋藤久師 / 森田潤 / TAKEYOSHI SHINOKI / Kenji Kimura and more