「平田オリザ演劇展vol.5」4都市で上演

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2015.9.15
『忠臣蔵・武士編』(2014) ©青木司

『忠臣蔵・武士編』(2014) ©青木司

“日本人とは何か”が見える、短編5作品を一挙に上演。

日本の現代演劇に大きな変革をもたらした「現代口語演劇」を確立し、最近は処女長編小説『幕が上がる』が「ももいろクローバーZ」主演で映画化され、モノノフたちの間でもファンを増やしているという「青年団」の平田オリザ。彼が得意とするのは、様々な人たちの日常的な対話を通して、その背後にある人間関係や社会問題を浮き彫りにしていく群像劇だが、一方で少人数の短編作品も数多く手がけている。そんな平田の短編5本を一挙に上演する「平田オリザ演劇展vol.5」が、伊丹、善通寺、松山、東京の4都市で開催される。

平田オリザ

平田オリザ

「群像劇は私が一番力を発揮できますが、それだけをやっているとセリフを書く力が萎えてしまうので、2年に1本ぐらいは少人数の会話劇を意識して書いています」とは平田。普段の長編はシリアスな物語が多いけど、短編だと意外なほどコメディタッチな作品もある。ただこの中には上演時間わずか30分の作品もあり、単独公演で上演することがなかなか難しいので、「演劇展」という形にしたそうだ。過去には東京と東北でも同じスタイルで上演し、関西&四国に持っていくのはこれが初の試みとなる。

『この生は受け入れがたし』(2013) ©青木司

『この生は受け入れがたし』(2013) ©青木司

『この生は受け入れがたし』は、1996年に青森の劇団「弘前劇場」との合同公演で上演した作品。東北の大学にある寄生虫の研究室を舞台に、寄生虫を愛する人たちのユニークなエピソードを見せるとともに、様々な“寄生”の関係についても考えさせるという異色の喜劇だ。目黒寄生虫館の創設者が見に来て「これで日本も安心です」などと書かれた長い手紙をいただいた、というエピソードも。

『走りながら眠れ』(2013)

『走りながら眠れ』(2013)

『走りながら眠れ』は、実在のアナキストである大杉栄&伊藤野枝が「甘粕事件」で虐殺される、その最期の2ヶ月の生活を淡々と見せる二人芝居。1992年に上演した後に封印されていたが、2011年に19年ぶりに再演されて好評を呼んだ作品だ。平田お得意のワンシーンワンカットではなく時間が幾度か飛んだり、政治性が割とあからさまだったりと、彼の芝居の中ではかなり珍しい作品でもある。

『忠臣蔵・OL編』(2014)

『忠臣蔵・OL編』(2014)

『忠臣蔵・武士編』は、日本人にはおなじみの仇討物を下敷きに、藩主の切腹を知らされた藩士たちが、この後の身の振り方をどうするか議論する会話劇。1999年に100人ものエキストラが出演する野外劇として上演した作品を、男優7人の会話劇にリライトしたものだ。その後劇団内で、様々なシチュエーションを実験した結果、最も面白かったという『OL編』が、2003年に発表されている。どちらもグダグダした会議から、日本人の意思決定のプロセスを鋭く描いた作品。特に『武士編』を演出した文学座の故・戌井市郎は「今まで出会ったもので一番面白い戯曲」とまで言っていたそうだ。

『ヤルタ会談』(2014)

『ヤルタ会談』(2014)

『ヤルタ会談』は、落語家・柳家花緑に平田が書き下ろした新作落語を、2002年に舞台用に改訂したもの。第二次世界大戦末期に、アメリカのルーズヴェルト&イギリスのチャーチル&ソ連(ロシア)のスターリンの3ヵ国のトップが行った首脳会談の模様を、ブラックユーモアたっぷりに描いた風刺劇となっている。その内容のために、世界史の授業と連動した公演が行われるなど、毎年どこかで上演される人気の作品だ。

様々なスタイルの演劇が楽しめるだけでなく「全作品を観てもらうと“日本人とは何か”というのが少し見えてくるのではと思います」と平田。時に皮肉を込めて、時にお茶目な視点で、過去&現代の日本を俯瞰的に見据えた5作品。どれを観ても、平田の作劇の妙にうなると共に、日本人とは? 日本とは? について想いをめぐらせることになるはずだ。

 

公演情報
青年団『平田オリザ演劇展vol.5』​

伊丹公演:10月9日(金)~12日(月・祝)◇AI・HALL(伊丹市立演劇ホール)
善通寺公演:10月16日(金)~18日(日)◇四国学院大学ノトススタジオ
松山公演:10月21日(水)・22日(木)◇シアターねこ
東京公演:11月5日(木)~18日(水)◇こまばアゴラ劇場
 
作・演出:平田オリザ(全作品とも)
※上演作品、出演者は回によって異なる。松山公演は『走りながら眠れ』『忠臣蔵・武士編』『ヤルタ会談』のみ上演。詳細は公式サイト http://www.seinendan.org/ でご確認を。 
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