宝塚星組トップスター紅ゆずるに聞く、マサラ・ミュージカル『オーム・シャンティ・オームー恋する輪廻ー』この夏大阪へ!
『オーム・シャンティ・オームー恋する輪廻ー』合同取材会にて(撮影/石橋法子)
2017年1月に東京国際フォーラムを熱気溢れるインドパワーで席巻した宝塚歌劇団星組トップスター紅ゆずる。そんな大ヒットインド映画を舞台化したマサラ・ミュージカル『オーム・シャンティ・オーム ―恋する輪廻ー』がこの夏、一部キャストの装い新たに大阪の梅田芸術劇場メインホールで上演される。1幕は70年代、2幕は現代のインド映画界を舞台に、紅は冴えない脇役俳優と、現代に生まれ変わったスター俳優の2役を演じる。合同取材会で、作品の魅力について語った。
「スターを夢見る脇役俳優と、わがままなスター俳優の2役をコミカルに演じます」
ーー2016年11月の星組トップスター就任後、プレお披露目が東京での1月公演『オーム・シャンティ・オーム ―恋する輪廻ー』でした。
ほんとうにお客様の拍手がすごくて、ありがたさと同時に「よし!」とますます気合いが入りました。お客様からの押し上げられるようなエネルギーに、生の舞台の醍醐味を実感しました。東京公演はお正月シーズンでもあり、観たくても観に行けないという関西のお客様の声も多かったので、今回大阪公演が決定して嬉しく思います。再演ですが主要メンバーが様変わりするので、新作を作るような感覚ですね。再演の前に、宝塚大劇場でのお披露目公演『THE SCARLET PIMPERNEL』を挟んでいますので、また新鮮な気持ちで取り組んでいきたいと決意をあらたにしています。
紅ゆずる
ーー演じるのは、人気女優のヒロインを助けようと事故で命を落とす70年代の脇役俳優オーム・プラカーシュ・マキージャーと、その生まれ変わりで現代のインド映画界に君臨するスター俳優オーム・カプールの2役です。
1幕のオームは、スターになりたいがどうすればいいかのかが分からない脇役俳優。突っ込みたくなるようなタイミングで「やっぱり僕スターになるよ」などと言い出す様子が”のび太”くんのイメージです(笑)。それが2幕のオームになると、急に苦労を知らないわがままな御曹司となって登場する。典型的な嫌な性格ですが、同時に可愛げもないとダメだと思うので、東京公演はコメディっぽく間をとって演じていました。今回はどう演じようか、新たな気持ちで役作りをしています。
ーーオームやヒロインに絡むプロデューサーのムケーシュも癖のある男です。大阪公演でこの役に挑む七海ひろきさんには、どんな悪役像を期待しますか。また、他の出演者に期待することは?
オームから見たムケーシュは、”悪代官”のイメージ(笑)。”どこまで根が腐っているんだ!”という感じが欲しいですね。また、麻央(侑希)さん演じるオームの親友パップーは根拠のない自信に満ち溢れていて、1幕はとくにオームが周囲の人々に翻弄されて物語が進みます。1人1人がしっかりとキャラクターを際立たせ、みんなが個性的であってほしいと思います。
紅ゆずる
ーー原作はインド映画ブームの火付け役となった名作映画ですが、改めて舞台版の本作の魅力はどこにあるとお感じですか?
このような作品だと一概にお答えできないほど、色んな場面が盛り込まれている点です。些細なきっかけで盛大なナンバーが始まったり、小柳先生特有のホロリとさせる場面も多く、かと思えば急におののくような展開になったり。緩急の付け方が唐突なので役作りで悩む部分もありましたが、東京公演の際に小柳先生と、前後のつながりよりも、場面ごとに”本当”を見せるのが正解ではないかと話し合いました。もちろん自分なりの理由づけはしますが、お客様に楽しんでいただくことを第一に演じようと決めました。深く掘り下げる謎解きモノや、途中を見逃したら分からなくなるというお話でもないので、気楽に楽しんでいただけるのが、この作品の最大のエンターテインメント性だと思います。面白い場面ではぜひ声を出して笑ってほしいですね。
紅ゆずる
「拍手と笑い声に客席との一体感を感じる。自分の殻を作らず、色んな作品に挑戦していきたい」
ーートップ就任から半年が経ちました。
今の立場になって、最近は私が下級生を直接注意することはなるべく控えるようにしています。以前は、先頭をきってあれこれと指示を出していましたが、そうすると中堅の子たちの顔が立たなくなってしまうと思います。中堅が責任を持って下級生をまとめることで組の序列が保たれる。そこに気づいてからは、周りのその日の雰囲気をよく観察するようになりました。でもみんなとの関係自体に変わりはなく、ワイワイ騒ぐときは一緒に騒いでいます。星組は”こんなことで笑えるの!?”というくらい、ちょっとしたことで笑いが伝染するので、楽しいですね。それが、お稽古になるとピタッと笑いが止んで真剣になる。オンとオフの切り替えがハッキリしているのも星組の魅力のひとつだと思います。
紅ゆずる
ーー宝塚大劇場お披露目公演『THE SCARLET PIMPERNEL』の潤色・演出を担われた小池修一郎先生が「笑いを取りながらもスターとしての気品を損なわない、稀有な存在」と評するように、紅さんが登場すると、つい笑いを期待してしまいます(笑)。
大阪のお客様は面白いと笑ってくれますが、面白くなかったら本気で笑ってくださらないので、生の舞台だと、あ、今のはダメだったのかと、ものすごくよく分かります(笑)。やはり笑い声や拍手を聞くと劇場がひとつになっていると感じられるので、どんな作品でも最後には明るい気持ちになって帰っていただきたいと思います。中には「自分は笑われたくない」と、コメディに抵抗を感じる人もいるかもしれませんが、私は笑われるのではなく”笑わせる”という考えです。お客様に笑って頂くことは技術的にはすごく難しいので、自分にとっても挑戦だと感じています。ただ、紅ゆずるに笑いのイメージを固定化させたくはありません。自分の殻を作らなければ、作品ごとに次はどんな一面を?と、色づけしやすいのではないかと、これからも様々な作品に挑戦したいと思います。
紅ゆずる
ーー話題を集めた2017年「ドリームジャンボ宝くじ」のCM出演や、2018年秋には紅さん率いる星組の「第三回 宝塚歌劇台湾公演」も発表されました。宝塚歌劇を代表する活躍にもスポットがあったっていますね。
宝塚歌劇の歴史と伝統に傷をつけてはならないという気持ちがいっそう強くなりました。2013 年の台湾公演では電工掲示板を使ったお客様の応援がすごく印象的でした。掲示板に中国語や日本語で「とにかくがんばれ!」というようなメッセージが流れていて、そんなアピールの仕方もあるのかと驚きました。その後も台湾の方が日本まで観に来てくださっていて、ファンレターもたくさんいただきます。下級生にとって海外公演での経験は貴重ですから、メンバーに入れるのはすごく名誉なこと。私自身、並大抵の任務ではないぞと肝に命じつつ、一方で楽しむことも忘れたくありません。本番までにしっかりと組の体制を整えて、誇りと責任を胸にみんなと力を合わせて朗らかにいきたいですね。
紅ゆずる
取材・文・撮影=石橋法子
■日程:2017/7/22(土)~2017/8/7(月)
■脚本・演出:小柳奈穂子
■公式サイト:http://kageki.hankyu.co.jp/revue/2017/omshantiom2/index.html