シド バンドが描く新しいビジョン、そしてメンバーの知られざる胸の内とは?【Shinji&ゆうや編】
シド/L⇒R:ゆうや(Dr)、Shinji(Gt) 撮影=大塚秀美
およそ1年7か月ぶりの単独公演、5月12、13日の日本武道館を経て、シドの周囲が一気に騒然としてきた。9月6日には、なんと3年半ぶりとなるニューアルバム『NOMAD』のリリース、その後は11月まで続く全国ホールツアー。武道館で見せた“シドの過去、現在、未来”のさらにその先へ、バンドが描く新しいビジョンとは? そして、過去1年間に感じていた、メンバーの知られざる胸の内とは? 2回にわたって掲載するシド最新インタビュー、その第1回はShinji(Gt)とゆうや(Dr)との登場だ。
個々の活動で見えてきた新しいシドの形というか、今のシドだったらこんなことをやったらいいんじゃない?という発想が出て来たのかも。
――久々の単独公演になった武道館。シドにとって、どんな位置づけのライブでしたか?
ゆうや:意味合い的には、この2日間だけで、14年分のシドと、ここから先のシドを感じてもらえるというものでしたね。ツアーだと、全体で世界観を作っていくんですけど、この2日間だけでそれを伝えたいという姿勢を見せるライブだったと思います。
――手ごたえは、しっかりあった?
ゆうや:ありました。もともとある世界観に乗っかってやるようなものではないと、今回は思っていたので。そういう意識で、リハーサルからみんなやってきたので、それをああいう形で出せたのは、手ごたえあったんじゃないかなと思います。
――Shinjiさんは?
Shinji:単純に、楽しかった。久しぶりのでっかい場所なので、やる前は緊張感とか、大丈夫かな?という気持ちもあって。しばらくやってないと、素人に戻っちゃうというか。でも、やってなかった期間にも、個人練習でスタジオに入ったりとか、ライブを意識した練習をけっこうやっていたので、実際(ステージに)立ってみたら、そこまでガチガチにはならなかったですね。すごく楽しかったです。
――お客さんの顔、見えてました?
Shinji:めっちゃ笑顔でしたね。すごい待っててくれたんだなという感じが伝わってきて、本当にうれしかった。そんなに時間はたってないんですけどね。何年も、というわけじゃないし。
――今だから言えることとして、去年はちょっと、シドの活動をスローダウンさせたいとか、そういう意図があったんですか。
ゆうや:具体的にこうしようみたいなのは、ないというか。シドを休んでほかのことをやろうとか、そういうことでもないし。ここまで空けるつもりはなかったけど空いちゃった、というのが、たぶん一番近いんですけど。もしかしたら、それが良かったのかもしれない。
――というと?
ゆうや:これを今出したいから出すとか、こういう活動がしたいからやるとか、もしかしたらその時は、どストライクが出てこなくて、ここまで空いたということかもしれない。それで、個々の活動で見えてきた新しいシドの形というか、今のシドだったらこんなことをやったらいいんじゃない?という発想が、もしかしたら出て来たのかも。と思ってるんで、いい期間でしたね。
――個人的に、何かテーマはありました? この1年間、武道館に至るまで。
ゆうや:特になかったんですけど、Shinjiと同じように、個人練習でスタジオに入ったりしていて。ここ何年か、スタッフに機材を運んでもらうのが当たり前になっていたので、そういうところから、じんわりと気持ちが変わるというか、今こういう気持ちになれてすごく良かったなと思います。“自分のドラムセットを運ぶのって、こんなに大変だったのか”とか。自分で車を運転して、倉庫に行って、ドラムセットを運んで、組んで、“すごいぞこれは”って。そういうことも思い出したし、武道館はもう決まっていたので、“そこまでにはこうしよう”というものに、徐々に向かっていった感じですね。
――Shinjiさんは、どんなテーマを持って?
Shinji:ゆうやが言ったのと一緒で。俺は基本的に機材オンチで、つなぎ方も全然わかんないんだけど、全部自分でやってみようと思って。シドで使ってなかった二軍みたいな機材を全部家に持って来て、“これ使えるじゃん”みたいな感じで、自分で線を切ってつないだりして。自分で持ち運べる範囲内で、もっといい音作れないかな?ということをやっていて。システムを全部自分で組んで、スタジオに入って、一人で鏡の前に立って弾いてみるみたいな。
――ああ~。
Shinji:それが単純に楽しかったんですね。自分で作ると、ギターにも音にも愛情がもっと生まれるというか。ローディーがいると、やっぱり頼っちゃうところが多かったんで。そういう発見もできて、良かったですね。
シド/Shinji(Gt) 撮影=大塚秀美
アルバムの音、めっちゃいいですよ。スケジュールが詰まってたんで大変なことも多かったですけど、楽しみにしていてほしいです。(Shinji)
――ふたりの話を聞いていると、“初心”という言葉が浮かんできます。
ゆうや:まさにそういうことに、そうしようと思わなくてもなれたということが、一番良かったなと思います。
――それはきっと、このあと話を聞くマオさん(Vo)、明希さん(Ba)も同じじゃないかと想像します。
ゆうや:僕は明希のライブにも、マオくんのライブにも行きましたけど、マオくんに関しては、すごい長い付き合いがあるんですけど、マオくんが別のところで歌ってるのって、全然そういう印象がないから、すっごい不思議で。明希が真ん中で歌ってるよりも、マオくんが俺じゃないドラムで歌ってることに、すっごい不思議な感覚を覚えて、“えーっ!”と思いました。すごい衝撃的でしたね。マオくんの背中しか見たことないから。
――確かに(笑)。
ゆうや:発見もありましたね。お客さんのほうから見てると、“俺の知らないマオくんがいる” “マオくん、こういうこともできるんだ”と思ってみたり。それが活きましたよね、シドに。
――あ、やっぱり。
ゆうや:絶対そうだと思います。
――Shinjiさん。フロント二人のソロ活動は、どういうふうに見てました?
Shinji:マオくんのライブは、アコースティックの特殊なやつを見に行ったんですけど。ヴァイオリンの、スタジオミュージシャンの方と一緒にやっていて、なんかプロっぽいなと思いました(笑)。
ゆうや:そっちの人なのかな?と思うくらいハマっていて、それがすごく不思議だなと。知らない一面を見ると、“もしかしてこんな曲もいけるんじゃないの?”って思うし、実際今はそうなってきてるので。
――これからのシドが楽しみです。というわけで、新曲の話に行きましょう。ニューシングルはTVアニメ『将国のアルタイル』オープニング曲の「螺旋のユメ」で、作曲は明希さん。プレイヤー的には、どんなところが楽しめる曲ですか。
ゆうや:ある種攻撃的というか……何て言うんだろう、こういうのって。トゲとは違う攻撃感があって。
Shinji:切れ味があるよね。ストリングスの感じとか。
ゆうや:攻め攻めな。その感じが前面に出せたほうがいい楽曲だから、それを伸ばしていくアレンジになってると思います。
――明希さんが作った初期の段階では、もっとシンプルな感じで?
ゆうや:一番最初のやつは覚えてないんですけど、(完成形と)遠くないと思います。基本は一緒で、それをシドがいじったらこうなった。ドラム的に言うと、特殊なことをやっていて、バスドラが生じゃないんです。エレドラ(エレクトリックドラム)の音なんですよ。ペタッとした、張り付いたような音で。
Shinji:ギターはバッキングに徹している感じで。箇所箇所で録らずに、一発で録りたいという意識で、あんまり細かく突き詰めてはいないです。クランチっぽいザクザク感というか、勢いがほしかったので、あまりカッチリせずに弾きましたね。
シド/L⇒R:ゆうや(Dr)、Shinji(Gt) 撮影=大塚秀美
――ゆうやさんが作曲した前作のシングル「バタフライエフェクト」の、細部までがっちり組み上がったへヴィロックの骨格とは対照的だなと。あらためて、シドの曲のバリエーションはすごいなと思ったんですけど、アレンジに関しては、作曲者がイニシアチブを取るんですか?
ゆうや:全部そうです。正解がなくなっちゃうんで、委ねるところは委ねないと、どっちつかずの変な色になっちゃう。だから作曲者がイニシアチブを取って、しっかりやっていく。
――明希さんは、この曲のアレンジについて、どんなことを?
ゆうや:この曲がアニメのオープニングに決まった段階で、ドラムに関しての要望があるということで、「エレドラのキックでやりたいんだけど」って。「いいけど、どういうこと?」って聞いて、話し合って、なるほどねと。明希がやりたいならやってみようかって、一回やってみて、こういう形にしてもらった感じです。普通のバスドラと、エレドラと、どっちも試したんですけど、こっちのほうがいいかって。
――曲のスピード感を加速させる、独特な音。アニメにも合ってます。
ゆうや:アニメのオープニング映像を見ましたけど、ばっちりだと思いますね。絵の中にうまく音をはめこんで、相乗効果を出してる。アニメのテーマをやる時はいつも思いますけど、今回もすごかったです。
――今回、ジャケットのデザインも、アニメの世界をかなり意識していて。
ゆうや:俺らには、あんまりないテイストですよね。火の粉が散ってる感じ。お城も、外国の感じだし。
――そして未来の話につなげます。9月6日に、3年半ぶりのニューアルバムのリリースが決定しました。今、制作中ですか?
ゆうや:ほぼほぼ終わりました。明日、最後の歌録りがあるだけで。
――今、言える範囲で、どんなアルバムになっているのか聞かせてください。
ゆうや:すごいこだわりの詰まった……武道館もそうだったと思うんですけど、未来のシドを見せられるように作り上げたアルバムなので、個人的にすごく思い入れが強いです。今までが弱いというわけではなく、いろんな方面の思いがあります。楽曲がどうこうだけじゃなくて、すべての面において、すごく強いこだわりのあるアルバムですね。
――過去の集大成というよりは、未来を向いている?
ゆうや:そうです。間違いないと思います。“チャレンジしたシド”という感じでしょうか。新しいかどうかは聴き手が思うことで、前と一緒だよと言われるかもしれないですけど、でも自分たちとしては、いろんな挑戦をしているので、聴いてもらいたいですね。今までは、一つのアルバムの中で同じエンジニアさんとやることが多かったんですけど、今回は違うエンジニアさんを何人も入れてるんですよ。4人だよね?
Shinji:そんなにいたっけ?
ゆうや:入れてる。それだけでも、サウンド感が全然違うので。そういう意味でもチャレンジだったし、それを理解してくれることを願いつつ、こだわりがすごくあるんで。
Shinji:音、めっちゃいいですよ。初めての人と関わったことが大きくて、すごくいい音を、早く作れたんですよ。昔だったらすごい時間がかかったものが、パッといい音が作れて、さくさく進んだ。スケジュールが詰まってたんで、大変なことも多かったですけど、音が良かったおかげで、進行もうまくいって。すごくいい音なので、楽しみにしていてほしいです。
シド/ゆうや(Dr) 撮影=大塚秀美
ホールはよく見えるから、9月のゆうや、10月のゆうや、11月のゆうやを、ぜひ見に来てくれたらと思います(笑)。(ゆうや)
――そして、さらにその先には、ツアーが待ってます。9月23日キックオフ。
ゆうや:楽しみですね。ただ、今回のアルバムは凝りすぎてるんで、今からけっこう不安です(笑)。どの時期からちゃんとおさらいを始めようかな?って、最近ずっと思ってました。早めに手馴れさせておかないと、できなくなるんじゃないか?と思うぐらい、凝ってることが多いので。
Shinji:次の曲をやったら、前の曲を忘れるよね。
ゆうや:忘れちゃわないと、できない。レコーディングではそこまで馴染んでなくて、発想をそのまま音に移したんですけど、ツアーだと手馴れてないと絶対ダメだから。早めに練習を始めないと、本当に覚えきれないんですよ。
Shinji:ツアーは、最終的に、仕上げるものかもしれないけど。やっぱり1日目から……。
ゆうや:バシッ!と行きたいよね。2DAYSではなくて、ここしかやらないという公演も多いから。バシッ!と決めないと。特に初日のインパクトはすごい大事だと思ってるんで、決めたいですね。
Shinji:武道館で「バタフライエフェクト」をやってみて、緊張感が面白かったんですよ。ツアー初日は新曲ばっかりなんで、その緊張感を楽しみに変えて、ガチガチになりすぎないように、準備していきたいです。
ゆうや:演奏しちゃったら終わりだよね。なんか。
――え、どういうこと?
ゆうや:意識的な問題なんですけど、ライブで“演奏”をやっちゃったらおしまいだなと思うんですよ。
Shinji:徹しすぎちゃいけない。
ゆうや:そうそう。“演奏”はリハーサルの時でいいんですよ。一生懸命やるのは。ライブはやっぱり、演奏だけじゃない。そうなりがちですけどね、新曲は特に。でもやっぱり、魅せていかないと、というのがあるので。
――アルバム、ツアー、楽しみにしてます。最後にファンのみなさんへ、メッセージを。
ゆうや:まず「螺旋のユメ」をたくさん聴いてもらって、アルバムもマジで期待しててほしいし、そこからのツアーも、久しぶりのホールツアーで、めちゃ楽しみなんで。ホールの良さって、“ゆうやが見切れないこと”だと自分で思ってるんですけど(笑)。ライブハウスだと、ドラムって見えないじゃないですか。
Shinji:そこまで見切れるところで、やってないでしょ(笑)。
ゆうや:やってないね(笑)。でもホールはよく見えるから、9月のゆうや、10月のゆうや、11月のゆうやを、ぜひ見に来てくれたらと思います(笑)。
取材・文=宮本英夫 撮影=大塚秀美
2017年8月2日発売
【初回生産限定盤(CD+DVD)】KSCL-2943/2944 ¥1,500+税
初回生産限定盤
通常盤初回仕様
期間限定通常盤
iTunes:https://itunes.apple.com/jp/album/id1258095953?at=10lpgB&ct=4547366323337_al&app=itunes
レコチョク:http://recochoku.com/s0/rasennoyume/
Mora:http://mora.jp/package/43000001/4547366322088/
アルバム『NOMAD』
2017年9月6日発売
【初回生産限定盤A(CD+DVD)】KSCL-2951/2952 ¥3,611+税
【初回生産限定盤B(CD+写真集)】KSCL-2953/2954 ¥3,611+税
【初回仕様限定盤(CD)】KSCL-2955 ¥2,870+税
※詳細後日発表
9/23(祝・土) 松戸・森のホール21 開場16:00/開演17:00
9/24(日) 松戸・森のホール21 開場15:00/開演16:00
10/1(日)福岡市民会館 開場17:00/開演18:00
10/8(日)厚木市文化会館 開場17:00/開演18:00
10/12(木)オリックス劇場 開場17:30/開演18:30
10/15(日)新潟テルサ 開場17:00/開演18:00
10/21(土) ベイシア文化ホール(群馬県民会館)開場17:00/開演18:00
10/27(金) 東京国際フォーラム ホールA 開場17:30/開演18:30
11/3(祝・金)神戸国際会館 こくさいホール 開場17:00/開演18:00
11/4(土)ロームシアター京都 メインホール 開場17:00/開演18:00
11/7(火)大宮ソニックシティ 開場17:30/開演18:30
11/11(土)日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 開場17:00/開演18:00
11/12(日) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール 開場15:00/開演16:00
11/21(火)中野サンプラザホール 開場17:30/開演18:30
11/23(祝・木)東京エレクトロンホール宮城 開場17:00/開演18:00
11/25(土)わくわくホリデーホール(札幌市民ホール) 開場17:00/開演18:00
【料金】
¥7,300(全席指定・税込)
※4歳以上有料
【一般発売日】
松戸~群馬公演 2017年8月26日(土)
国際フォーラム~札幌公演 2017年9月30日(土)