DOTAMAが髭を剃り、ダンスを踊る!? 舞台『TOKYO TRIBE』伊藤今人(梅棒)×植木豪×DOTAMAインタビュー
(左から)DOTAMA、伊藤今人、植木豪
漫画家・井上三太の人気コミックが原作で、9月から東京・愛知・大阪の3都市で舞台化が決まった『TOKYO TRIBE』。架空都市"トーキョー"に生きる若者たちの日常、愛、友情を過激かつオシャレに描いた作品は、2014年には園子温により映画化もされた。舞台化にあたり、演出を手掛ける梅棒主宰の伊藤今人、ブレイクダンスを始め俳優・デザイン・作詞作曲など幅広い才能を持つ植木豪、独自のラップミュージックで注目されるDOTAMAの3人に作品の魅力を聞いた。
架空都市トーキョーにはいくつもの「トライブ」が存在し、各々の街を縄張りとし日々生きている。トライブのひとつ、シヴヤSARUのメンバーである海(遠山晶司)も、いつものように仲間達と変わりない日々を送っていた。そんな中、かつて海の親友だったメラ(SHUN)が率いるトライブ、ブクロWU-RONZの手によってSARUのメンバーが凄惨な死を迎える。シヴヤSARUリーダーのテラ(KEN THE 390)は暴力による事態解決を禁じたものの、そのテラ自身もめらの手によって殺害されてしまう。そして、海とメラの過去に関係するスンミ(宮澤佐江)。シヴヤSARUとブクロWU-RONZの抗争……生み出された火種は再びトーキョー中を巻き込んだ抗争へと発展していく。
ーー稽古がついに始まったそうですが、率直な感想を教えてください。
今人:マジこんな豪華なメンツで舞台やるんだなと思って、“ドキワク”しました。稽古初日は僕がコンセプトと、演出プランを説明して、難しい舞台なんだよというのをお伝えしました(笑)。少しだけ人を動かして、それを元に僕が発想を深めて行って、これからにつなげていって……という段階ですね。
植木:"ドキドキ、ワク"だったかな。緊張感の方がちょっと強かったですね。久々に朝、遅刻する夢で起きて……緊張すると見るんですよ(笑)。実際に稽古場に行くと、今まで画面を通じて見させていただいた人達ばかり。やっと会えたという方がたくさんいました。うれしかったです。
DOTAMA:“ワクワク”出来ないくらい“ドキドキ”してました。舞台は初参加で、右も左も全然分からなくて。お話を頂いたのが3、4月くらいだったんですけど、正直言うとそこからずっと不安を抱えてここまで来て……。でも、稽古で実際使う音楽を聞いて、それに合わせてどういう動きをするのか、今人さんからお話を聞いたら一気に”ワクワク”に変わりました。ただ、自分は全然ド素人なので、色々ご指導頂けたら嬉しいです。
ーー『TOKYO TRIBE』はアニメ化もされ、映画化もされ、いよいよ舞台化です。原作との違いはどの辺りなのでしょうか?
今人:お話として違うところはいくつかあります。漫画もアニメも映画もこの『TOKYO TRIBE』は、僕らのよく知っている渋谷や池袋などがバイオレンスな描写で出てくる。いつも行っている街へのシンパシー、違和感、ずれ、そういうものの重ね合わせが面白いと思うんですね。アニメや映画はそれを実際の風景と重ね合わせながらできるけど、舞台はそれができない。そこはすごく難しいと感じています。時間の経過や場面転換がある中で、1時間半ぐらいの作品に仕上げなくてはいけないのも大変ですね。舞台ならではの壁です。やり方を工夫して頑張らないといけない分、原作とは違った表現になってくると思います。
伊藤今人
ーー舞台版だと「ハラヂュク」が出てくるそうですね。着想はどこから得られたのですか?
今人:構成に入ってくださっている家城啓之さんのアイディアです。「シブヤ」と「ブクロ」の2つの争いにしようとした時に、別のトライブを入れたいよねという話になったんですね。その2つの間に位置していることも理由の一つですが、今回はダンサーを使って表現をしていくので、いろんなダンスのスタイルがある中で、場所と明確に結びついているのは「原宿とブレイクダンス」なんです。それ以外のところで、一定のダンススタイルと場所が根付いている地域ってあんまりないですよね?
植木:うん、そうですね。
今人:ストリートダンスのカルチャーをすごく大切にしているコミックでもあるので、相性がいいのではないかということで、家城さんがブッ込んでくれました。
DOTAMA:原作を読めば分かるんですが、「シンヂュク」には巖(いわお)という兜をかぶったリーダーがいたり、装甲車が出てきたりして、ミリタリー要素が強い、すごく重厚なトライブに描かれているんです。「ハラヂュク」のトライブはブレイクダンスの達人たちで、より舞台らしい、フットワークが軽いイメージになったと素人ながらに思いました。
植木豪
ーーだから植木さんが「ハラヂュク」のメンバーなんですね!
今人:そうですね。任せておけばいいと思っています(笑)。日本のブレイクダンスの生き字引、レジェンドですから。
植木:もうちょっと上たくさんいますけどね(笑)。年齢的には40超えて、「ハラヂュク」のリーダーだと思います。僕は大阪のブレイクダンサーで、ストリートでずっと踊っていた。そして、東京に出てきて、最初は代々木公園で踊っていました。1999年ぐらいかな。自分の魂的には「ハラヂュク」感は感じています。齟齬もなくやらせていただけると思っています。僕らの世代のブレイクダンサーって、オールドスクールのジャンルを全てやっていた。今みたいにカテゴリー別にやるのではなく、あれもこれもやっていた時代なので、そういう色が今回出せたら面白いんじゃないかなと思っています。
今人:そうですね。基本的には今を表現しますけれどね。
植木:そうそう、役の設定年齢を言われた時ドキドキしたんですよ。23〜25歳ぐらいかなと言われた時に、僕41歳なので、頑張ろうと思いました!(笑)
今人:DOTAMAさんだって、十代ぐらいの……
DOTAMA:えぇ! 絶対嘘でしょそれ!(笑)
今人:DOTAMAさんに書記長を演じていただく上で、あまり髭……大人を出してもらっちゃうと、「何このチームに憧れているんだ」となっちゃうので(笑)、多少若返ってもらおうかと思っています。
DOTAMA:髭を剃っていただく可能性があります、とは伺っております。
DOTAMA
ーー書記長という役柄に関してはいかがですか?
DOTAMA:僕は園子温監督の『TOKYO TRIBE』映画版にも出させてもらったことがあります。YouTubeの公開オーディションに受かって、出演させて頂けて。その時のセリフは一言二言でしたが、それだけですごく有り難かったです。今回は書記長ということで、「やったー!出世したぞー!」という感じです。本当に感謝しております。だからこそ頑張らなきゃと思っています。書記長はシリアスなストーリーの空気の転換になる人物なので、全力で頑張ります。
ーー映画版と舞台版だとやはり違いますか?
DOTAMA:舞台の模型を実際に拝見したり、脚本を見て思ったのは、架空のトーキョーという都市の世紀末感……情報があふれ返っていて、若者がやんちゃしている街という原作にあった空気感が、舞台版にもしっかり出ていると思いました。さらに今回は音楽がドンと前に出てくる印象です。映画版もヒップホップの楽曲は出て来ましたが、今回、昔の曲でも今の曲でも、カッコイイヒップホップの曲がたくさん出て来て、メチャクチャ上がりました。そこが映画版より、さらにパワーアップした魅力だと。
ーー音楽の話が出たので、音楽について伺います。実際はどんな選曲になるのでしょうか?
今人:1曲だけテーマソングはオリジナルですが、基本的には既存の曲ばかりです。僕らのやっている梅棒のスタイルは、シーンごとにJ-POPをかけていくんですが、そのやり方をある程度踏襲させていただきます。ラッパーの方もたくさん出るので、ラップヒストリーのようになっていますよ。
DOTAMA:そうですね。
今人:今話題のラッパーの方、ダンサーの方、少なからずそこに精通しているヘッズの方が見に来て下さると思うので、そういう方でも、「このシーンをこの曲でこういう風にやるんだ!」とアガっていただけるような選曲を音楽監督のKEN THE 390さんとお話をしました。僕はそんなにラップヒストリーに詳しいわけじゃないのですが、色々バランスをとりながら、昔のやばい曲もあれば、ヒップホップ好きもポップス好きもアガっていただけるような曲、ここ何年間で流行った曲もあります。セットリストを聞いているだけでも楽しいと思いますね。全部で20曲ぐらいです。
DOTAMA:稽古が始まる前は、海外のヒップホップが中心なのかなとなんとなく考えていたんですが、オール・ジャパニーズ・ヒップホップだから、まさに「トーキョー」にふさわしい選曲だと、勝手ながら思いました。誰もが知るクラシックだったり、アンセムだったり、トレンドの曲もある。プレイヤーの視点で見ても、リスナーの視点で見ても絶対面白いと思います。
今人:『TOKYO TRIBE』をやる以上、そこはこだわったかもしれないですね。サンプリングで海外の曲が入っていたりしますけど、基本はジャパニーズ・ヒップホップです。
(左から)植木豪、伊藤今人、DOTAMA、
ーー振り付けに関しては、梅棒さんも植木さんもされるそうですね。
今人:そうですね。あと、Beat Buddy Boiのメンバーもいます。オールドスクール、ヒップホップの振り付けをお願いして、梅棒はジャズになりますけれど、それぞれ違ったところでの強みがあるんです。ある程度イメージをお渡しして、ご自身の強みが出るように、相談しながら作っていきたい。まぁ、オールドスクールに関しては豪さんが(笑)。
植木:こういうのが多いんですよ(笑)。僕は結構乗っかっていこうと思っていたんですけど……、得てして僕らって「これやりたい!」ということが多いんです。Bボーイとかポッパーとかどちらかというとソロ中心の踊りなんですよね。でも今回は、それだけじゃなくて、キャラクター、チームの立ち位置、みんなのチーム感は出そうと思っています。お客さんは、俺たちがソロをばんばんやると想像していると思うけど、ちゃんと設定の中で、チーム感を出さないといけないと思っています。
ーーなるほど。ダンスのジャンルも越境しつつ、チーム感も出すということですか?
今人:基本的にはトライブごとのカラーでダンスを組んでいますが、クロスオーバーしていく部分もある。トライブごとでダンスを分けた上での、面白いクロスオーバーを狙っていく、という意味です。あとは何と言っても、DOTAMAさんのダンスですよね。
DOTAMA:……ん!?
今人:DOTAMAさんのダンスは見せ場ですよね。誰も踊るとは思っていないので。
DOTAMA:サプライズですか?
今人:でも、無きにしも非ずだと思っています。
DOTAMA:自分は普段歌わせてもらっているだけなので……テンパってます。
植木:DOTAMAさんが踊ったらお客さんアガるでしょうね。
今人:効果的に入れたいなぁ。書記長が仲間になりたくて、同じ振りを踊ろうとしているんだけど……っていう可愛さを出せたらなと思う。でもマイク取ったらバチバチみたいなね。
DOTAMA:ラッパーのステージでの動きって、普通のボーカリストの方よりも情報量の多いことをやっていると思うんです。密度のある歌詞を歌いながら、身振り手振りで表現する。全く役に立たなかったら申し訳ないんですけど、体を使って表現するタイミングがある場合は全力で頑張ります。
植木:キター!(笑)
ーー最後に一言お願いします。
DOTAMA:自分は舞台のド素人です。今回、参加させて頂く初舞台が『TOKYO TRIBE』で本当に感謝しています。足を引っ張らないように全力で頑張ります。現時点、脚本を拝見しただけでもとても面白いので、是非皆さん、足を運んでみて頂けたらうれしいです。
植木:僕は、舞台を10年近くやっている中で、こういうジャンルの方が集まるっていうことがなかったんですよね。10年前に舞台に出た時なんて、カンパニーにBボーイは僕ひとりぼっちだったりしたんですが、今はこんなにいるのがうれしくて。それぞれのジャンルを好きな方が別々に見に来ると思うんで、舞台の可能性を感じてもらったり、違うジャンルを好きになってもらえるような舞台にしたいなと思っています。
今人:ラップの世界だったりダンスの世界だったり、才能豊かな方々が集まりました。素材が一級品。ダンサーやラッパーのスキルが存分に発揮されて、かつ、もともとそれぞれのジャンルのコアなファンが来ていただいても十分に楽しめる、テンションが上がるような内容になっていますので、ぜひ見にいらしてください!
インタビュー・文・撮影=五月女菜穂
原作:井上三太(『TOKYO TRIBE 2』)
構成:家城啓之 演出:伊藤今人(梅棒)
振付:梅棒/Beat Buddy Boi/植木豪
音楽監督:KEN THE 390
テーマソング:MIYAVI vs SKY-HI「Gemstone」
出演者:梅棒(伊藤今人/遠山晶司/遠藤誠/塩野拓矢/櫻井竜彦/楢木和也/野田裕貴)、
Beat Buddy Boi(SHUN/Toyotaka/RYO/SHINSUKE)、植木豪、宮澤佐江、當山みれい、大野愛地、魚地菜緒、YU-YA、ACE、DOTAMA、KEN THE 390
《東京公演》
日時:2017年9月29日〜10月8日
会場:TSUTAYA O-EAST
《名古屋公演》
日時:2017年10月11日、12日
会場:Zepp Nagoya
《大阪公演》
日時:2017年10月21日、22日
会場:松下IMPホール