モノブライト・桃野陽介 meets Spotify Vol.5「秋の夜長に聴く“夜歌”ソング」
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無類の音楽好きであるモノブライト・桃野陽介が、「音楽ストリーミングサービス 『Spotify』で遊び倒すとこうなる!」を実践していく連載企画『モノブライト・桃野陽介 meets Spotify』。第5回目のテーマは「秋の夜長に聴く“夜歌”ソング」です。
季節の変わり目がきてますね。夏から秋に切り替わるあの感じ。風が冷たくて気持ちいいけど服装のスタンスは夏がっちゃってるもんだから、Tシャツで過ごしているとあっという間に風邪を引く。そこに早く気づいて長袖を用意している人は勝ち組、最高に過ごしやすい季節の到来がやってきます。僕は一番好きな季節が秋だ。夏の終わりの寂しさもあってか哀愁が漂っていて、紅葉に見られる木々が黄ばんでいるレトロ感、○○の秋みたいにプチ大喜利があり、突然変異のように大人気のハロウィンで人々は変装に明け暮れ、とにかく何でもアリだ。そんな秋の始まりに、僕は何をお届けしようかと考えた所、こんなテーマが浮かんだ。ずばり「夜」。秋の特徴として「秋の夜長」なんて言葉があるように、夜が一番長い季節が秋。涼しくて寝やすいからといってグーグー寝るのはもったいない。せっかくの長い夜なんだから、音楽を楽しむのはいかがだろうというイチ提案。今回「夜」をテーマに僕なりの夜に聴きたい音楽を紹介します。
1.Up All Night – ベック
ベック節、炸裂
10月13日に日本先行リリースされるベックのニューアルバム『Colors』から。ベックってアルバムによってガラッと変化する一人プログレな音楽だけど、この曲はベック節炸裂と言いたくなるポップさが詰まっている。出だしのギターの音からすでに変。歌はいつもローファイな気怠さがあるのに聴いてるこっちはウキウキしてしまう。この手玉に取られた感じ、狐につままれた感じがベックの音楽の気持ち良さ。予想を裏切られるんだけどハマってしまう、音楽スターにしか出来ない職人技を感じる1曲。
2.Try, Try, Try – スマッシング・パンプキンズ
静と動が聴こえてくるバンド
僕が知る限り、1番わかりやすい形で静と動が聴こえてくるバンドがこのスマッシング・パンプキンズ。もっと言えば天使と悪魔感。『メロンコリーそして終りのない悲しみ』というアルバムの「1979」という曲以降、この優しい感じの曲が増えていったイメージなんですが、そこからさらに洗練されてこの曲が生まれた感じがします。スマッシング・パンプキンズは夜に一人で聴きたくなる音楽がこの曲に限らず沢山ある。何でなのか考えてみたんですが、曲は優しくてもビリーコーガンの歌い方に狂気を感じるので(時々ガマガエルみたいに「ゲロ~」というような声質になる)、そこが夜中には心地よい。
3.Last Nite – ザ・ストロークス
夜聴くともっとウキウキする
当時はシンプルなロックで見た目も音楽もクールが過ぎていたので、あまりメインで聴いていなかったストロークス。そして男前だし(ただの僻み)。こういう軽快なビートって日中聴いてウキウキするもんだと思ってましたが、実は夜聴くともっとウキウキする、日中も聴けちゃう夜の歌。『Is This It』のアルバムが出た当時、女の子の前でカッコよく自分を紹介したい時は、「ストロークスを聴いていました」。そうこうしているうちに普通に好きになってアルバム集める始末。名曲。
4.Decent Days And Nights – The Futureheads
モノブライト好きな人は好きなはず
ストロークスよりも、どちらかというと僕はこっち派。同じロックンロールだけど決してシンプルではなく、パンクニューウェーブ感と難解な展開で楽しめるフューチャーヘッズ。どちらかというとモテなさそう、それがいい。僕はどう聴いてもカッコ良く感じてしまうので、モノブライト好きな人は好きなはず。2000年代の音楽でも、影響受けるくらいかなり聴き込んだバンドのひとつ。
5.Only Ones Who Know – アークティック・モンキーズ
夜が聴こえる1曲
単音のギターリフと“生意気感”が最高のバンド。中でもこの曲はらしくない曲の感じですが、僕はアークティック・モンキーズのらしくない系楽曲がとても好き。威勢を張っている人の誰にも見せない一人の時の顔が見えるような、意外性と哀愁を聴いている感じがする。そんな顔は必ず夜に現れる。夜が聴こえる1曲。
6.Moving – スーパーグラス
少年が大人のロックを鳴らす
スーパーグラスといえばギャズのもみあげのイメージですが、音楽もあのもみあげくらい太くて濃い。この曲のUKロックとファンクの2面性はめちゃくちゃ気持ちいい。この曲1曲リピートで夜のみならず、夜明けまで聴いていられるくらい楽しい。90年代版「Rock the Casbah」(ザ・クラッシュによる楽曲)といえるような、少年が大人のロックを鳴らす感動と気持ち良さを感じる。
7.The End Of You Too – Metronomy
一人の夜でも踊れる
ときどき夜中にこういうテンションになることがあります。みんな寝ていて連絡もつかない or できなくて、自分だけが起きていてテンションが高い状態。せっかくいいこのテンションをどうにかしたくても出来ない気持ちと、ミニマムな宅録感とテンションの高いビート感がリンクする。この曲なら一人の夜でも踊れる。
8.The Night – School Of Seven Bells
トリップ感のある1曲
80年代を感じる歌の質感と、淡々としたコードとビートがトリップ感あって夜に向いている。夜はまわりが暗いせいか音楽に集中出来てより感じることが出来るので、女性の透き通った声は、気持ちごと連れて行かれる。
9.Spit On A Stranger – Pavement
いつかこんな曲を書きたい
一人の夜に好きな歌を聴きたいと思って選曲しました。この曲は、秋の切ない感じも、慰めてくれる優しさも、前を向いて歩いて行けるような明るさも持っていて、すべてが愛おしい。いつかこんな曲を書きたいし歌えるようになりたい。自分の本質で好きなローファイにたっぷり刺さる、大名曲。好き過ぎて夜泣きする。
10.Come Alive (feat. Toro y Moi) – Chromeo, トロ・イ・モア
ワンナイトラブを探してしまうような
80年代の大人の夜。軟派な気持ちと眠らない夜にワンナイトラブを探してしまうような、とても希望的な気持ちをくれる。家で聴くよりは外に出てイヤホンで聴くとたまらない。つい踊りだしたくなったり、カッコつけてリズムを刻みたくなる。たまにクラブなどで見かける、“この曲俺が一番好きだし一番わかってる感”で独特の乗り方しちゃってるヤツ。多分この曲で僕もそうなる。
11.If I ever feel better – フェニックス
夜のジョギングにもちょうどいい代表曲
フェニックスを代表する名曲。淡々と進んでいくこの歌の洒落っ気が夜に気持ちいい。夜のジョギングにもちょうどいい。お洒落を感じる音楽って全く押し付けがましくなくて、干渉されない感じが聴いていて飽きないんでしょうね。この曲ほど押し付けがましくない曲で、ノってしまう曲ってないかもしれない。絶妙。
12.The Reeling – パッション・ピット
十代の夜の、特別な感じ
この曲は映画でいうと『台風クラブ』のような、若気の至りで夜に飛び出してしまう感じがキュンとする。十代の時の夜中って、起きているだけでも悪い事をしているような、特別な感じがあったと思うんですよね。高校生の時なんか何するわけでもなく友達と公園に集まって話したり、走り回ってふざけたり、アコギ持って歌ったりしてた、そういう青春。そんな夜中に起きる青春をこの曲に感じてしまう。
13.黒い月の夜 – Soul Scream
ノスタルジックな哀愁を感じる
夜にしっくりくる音楽のひとつに、僕の中ではヒップホップがある。ループ感のあるトラックに思いが永遠と語られていく感じが心地いい。特にSoul Screamのトラックは、ノスタルジックな哀愁を感じるのでちょうどいい。友達といても恋人といても一人でも、ぼんやりと漂うように聴いていられる。
14.Something About Us – ダフト・パンク
悩んでいる時は、夜な夜な聴いてしまう
この曲は高3の頃を思い出す。ダフト・パンクの『ディスカバリー』という、僕にとってかなり衝撃を受けたアルバムがリリースされたんですが、その頃ちょうど卒業前で、故郷を離れて専門学校に通い1人暮らしすることが決まっていました。そんな期待と不安MAXの時、眠れない夜をともに過ごした思い入れの強い1曲です。それからは、考え事や悩んでる時なんかは夜な夜なこの曲を聴いてしまうクセがついた。当時の音楽ファンはみんな『ディスカバリー』聴いていたイメージ。松本零士が書いたジャケも衝撃的だったし、このアルバムでダフト・パンクの名が一気に日本に広まりましたよね。一家に一枚級の大名盤。
15.Dear Skorpio Magazine – Neon Indian
コレ聴いたらすごい夜になりそうです。
アルバム『ベガ国際夜学校』からの1曲。邦題のインパクトが凄いアルバムですが、元はチルウェーブの代表的なアーティスト。ただこのアルバムは、いつになく陽気さがあってポップで楽しいアルバムになっています。それこそ2010年代版『ディスカバリー』といっても過言ではないくらい名作。もし夜中の天気予報の曲がこのくらい洒落てたら、毎日夜中に天気チェックするのになって思います。そう! つまり何が言いたいかというと、ダサさをギリギリ交わし、センスでもってお洒落になってしまってるところを聴いて欲しいんです。ギターリフなんかもコテコテなのに、音色やまわりで鳴ってるリズムでもってお洒落に聴こえてるスゴさ。すごい。コレ聴いたらすごい夜になりそうです。
16.Why – Les Sins, Nate Salman
一人でコソコソ聴きたい
先程の「Come Alive」しかり、トロ・イ・モアさんに夜を感じてるんでしょうね、僕は。(※Les Sinsはトロ・イ・モアによるダンス・ミュージックに特化した楽曲制作の際の別名義)今回の夜選曲で気づきましたが、僕は一人で夜を過ごし、存分に音楽に浸りたい傾向にあります。この曲もまさに誰かと共有したいというよりは、一人でコソコソ聴いて「良い音楽聴いちゃってます」という謎の優越感を感じたい。トロ・イ・モアさんはそんな僕をよく知ってくれてます(笑)。
17.Ring The Alarm – Black Dub
「ギターっていろんな音出てスゴいな」
この曲の音のすべてが包んでくる感じがたまらなく気持ちいい。聴いていて音像に襲われる感じと、夜に飲み込まれた街の景色が非常にマッチします。そして「ギターっていろんな音出てスゴいな」っていう、子供みたいに純粋な感想が溢れます。ただ、この曲が気に入ってアルバムを聴くと、びっくりするぐらいこの曲の感じが他の楽曲にない。“なぜこの曲だけなんだ感”溢れるアルバムです(もちろん他の曲も好きなんですが)。
18.One More Robot/Sympathy 3000-21 – ザ・フレーミング・リップス
感傷的な夜も、救われる。
シリアスでありながらドラマチックなナンバー。ザ・ソフト・ブレティン以降バンドサウンドから劇的に変化したザ・フレーミング・リップスの新機軸を当時感じた1曲。今改めてこのアルバム聴いてみるとすごいピンクフロイド的で、聞き応えたっぷり。感傷的になった夜でも、エンディングに向かうにつれて救われる。
19.ヒマの過ごし方 – スチャダラパー
ヒマという、大切な時間。
ヒマという大切な時間を改めて考えさせられる1曲。何もする事がなく眠くない夜なんかはヒマそのものだけど、そんな時間こそ趣味に使ったりしながら、心を人生を豊かにしていくべきなんでしょうね。コロンブスの卵じゃないけど、気づかない身近にある題材で、こんなに考えさせられたこの曲は偉大。
20.Bottle Up And Explode! – Elliott Smith
Eliott Smithは、僕を一人にしません。
夜に感じることの1つとして、1人で起きてるとたまに自分だけが起きていて、みんな眠っているんじゃないかという孤独に駆られることがある。そんな時にとても優しいのがElliott Smith。この声はなんて表現したらいいのかいつも考えてしまいますが、水よりポカリスエットのが吸収率が高くてしっくりきてしまうみたいな感じ。聴いていてすごく人肌を感じられて心地がいい。すべてを失ったとしても、Elliott Smithの歌だけはいつもそばにいてくれて、僕を一人にしません。