モノブライト・桃野陽介 meets Spotify Vol.6「ニルヴァーナ外しのグランジ特集」
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無類の音楽好きであるモノブライト・桃野陽介が、「音楽ストリーミングサービス 『Spotify』で遊び倒すとこうなる!」を実践していく連載企画『モノブライト・桃野陽介 meets Spotify』。第6回目のテーマは「ニルヴァーナ外しのグランジ特集」です。
先日モノブライトはツアーを終えました。初心に立ち返ってバンドの演奏自体を純粋に楽しめた、久々に青臭く突っ走れたツアーでした。その時に開場中のBGMとしてグランジ特集を作ってかけていたため、そのまま最近グランジをよく聴いている。初めてニルヴァーナを聴いたのが高校1年生の頃なので、20年ぶりにじっくりグランジを聴いている気がする。改めて聴くとグランジって、ジャンルにはなりきらない、バラバラな音楽なんだよね。でもざっくりとしたイメージはニルヴァーナのような、精神的にはパンク、鳴らす音はハードロックやメタル、そして轟音ギター、そんな感じだ。究極をいえば僕の中のグランジはニルヴァーナの音楽だけでイメージが成立してしまう。それ以外はイメージ外だったりする。
なので、今回はグランジを感じる楽曲を集めると自然とニルヴァーナが見えてくるという、“グランジの不思議体験”をお届け。映画の『桐島、部活やめるってよ』みたいに、人の話だけで本人像が見えてくるみたいな高度なセットリストを作りたいなと思ったので、グランジ特集だけどニルヴァーナを選曲していません。でもこのセットリストを聴くことで、自然とニルヴァーナの音楽が見えてくるような、そして聴きたくなってしまうような……そんな連載回を目指しました。僕のたっぷり染み込んだグランジ愛をお届けします。
1.Today – スマッシング・パンプキンズ
カップルでグランジを聴くならコレ
グランジの中でも一番ロマンティックなのがこのスマッシング・パンプキンズ。色気があって美しい音。本来グランジ特有のギターの轟音要素って拳を突き上げて「ウオー!」となる衝動的な音だと思うんですが、スマパンはそれが美しく聴こえてしまう不思議。静と動がハッキリした展開も声も、すべてがキュンキュンする。カップルでグランジを聴くならコレ。
2.Start Choppin' – Dinosaur Jr.
ギターキッズはマストで聴いて欲しい
グランジにおいてのDinosaur Jr.の好きなところは、圧倒的な轟音感。ギターがとにかく目の前にいる。ボーカルとギターを担当するJ・マスシスが何かのインタビューで「ギターを買うということは歪みを手に入れることだ」みたいな発言をしていて、その言葉に大影響を受けて過ごした10代を思い出す。この曲では、その轟音ギターが生き物のように感じる。聴く度に変化する。僕はこの曲でギターのカッコ良さを知ったので、ギターキッズはマストで聴いて欲しい1曲。
3.Spoonman – サウンドガーデン
ハードロックよりも野蛮で野性的
シアトルグランジの雄といえば、間違いなくこのサウンドガーデン。ハードロックといわれればそう聴こえなくもないんですが、イメージだとハードロックよりも野蛮で野性的。ギミックも多いし曲がひねくれている。ハードロックを基盤にあるのにそれを相反することばっかりやってオリジナルになっている。この曲の特徴であるコードリフというのもグランジ以降主流になっていって、僕の中ではサウンドガーデンとニルヴァーナは“ザ・グランジ”の2強。
4.Brain of J. – パール・ジャム
僕にとっては、大人になって楽しめるグランジ
なんだかんだ先頭に立ってグランジムーブメントを引っ張ってきたのがパール・ジャム。昔から思っていたのは、王道なアメリカンロックの要素がどうもオルタナティブな感じがしないのは、日本人がアメリカンロックを聴かない国民性のせいなんだろうというのが最近の結論。グランジ好きは多いと思いますが、あくまでニルヴァーナのカート・コバーンのようなアウトローでネガティブな部分に惹かれてるというか。ただ、パールジャムって結局良さがわかってしまう。アメリカではティーンエイジャーの代弁者かもしれないが、僕にとっては、大人になって楽しめるグランジ。
5.3's & 7's – Queens of the Stone Age
中毒性がハンパない
デイヴ・グロールが今一番好きなアーティストとしてこのバンドの名を挙げていたのがきっかけで知りました。よくDOESのワタルさんとの音楽談議で熱く話したのを思い出す。アルバム『R指定』は死ぬほど聴いたし、「3's & 7's」が収録された『Era Vulgaris』もめちゃくちゃ聴いた。「ストーナーロック(※)」というジャンル通り、中毒性がハンパない。この曲は、グランジを彷彿とさせるギターリフと、ボーカルであるジョシュ・オムのポーカーフェイスな声にやられる。(※ストーナーとは「麻薬常習者」の意。)
6.Where The Flavor Is – Mudhoney
明らかにふざけている
グランジ史上一番異彩を放っていたのがこのMudhoney。他のグランジとされるアーティストよりも明らかにふざけている。おそらくグランジという音楽を弄んでるため、つかみ所がない。でもそれは音楽として最もピュアでストレートな活動なんじゃないかと思います。誰だって人と同じ事をしたくないし、ハマってる事があるなら素直に真似したい。究極にひねくれた何も気にしないグランジ。恐らくこのコラムの全楽曲を聴いた時に、1番違和感を感じるのがこの曲だと思います。
7.Captain Pungent – Melvins
“変態メタル”があるなら、間違いなくMelvins
僕の思い描く“変態メタル”というジャンルがあるならMelvinsが間違いなく頭に浮かびます。カート・コバーンが敬愛しているということで聴いてみると、パニックを起こします。実際カート・コバーンを崇拝していた高校生の時に聴いてみたら、全然理解出来なかったのを思い出す。でも、好きになるまで聴いて、結果好きになりました。ずーっと聴いてると、気持ち悪いのがカッコ良く聴こえてくるのがMelvinsという音楽の恐ろしさです。
8.Teen Age Riot (Album Version) – Sonic Youth
最高の7分間
これはあまり先入観なしに聴いて欲しい。ひとつ言うなら、最高の7分間。こんなカッコ良くて愛しい7分の音楽を聴いたことが、今のところ無い。
9.Dig for Fire – ピクシーズ
ニルヴァーナ好きが必ずぶち当たる
ピクシーズはどちらかというとパワーポップシーンに影響を与えた存在なので、グランジというジャンルにハマるのかはわからないが、カート・コバーンがAメロとサビの2つで展開していくピクシーズの楽曲構成を真似したと言ってたとか言わないとか。ニルヴァーナ好きがルーツを辿ると必ずぶち当たる音楽であり、このポップさを理解した人はパワーポップへ、理解出来なかった人はラウドロックへ進む。そんな分岐となるアーティスト。この曲はグランジ云々置いといて超好きです。
10.Say It Ain't So – ウィーザー
ウィーザーの楽曲の中で一番グランジ
ウィーザーの楽曲の中で一番グランジを感じる1曲。構成もサビのエモさもグランジなのに、そう感じさせないリヴァースのメロディーセンスとコード感がニクい。
11.I'll Stick Around – フー・ファイターズ
ちゃんとポップでちゃんとオルタナティブ
“グランジよりもグランジ味”なフー・ファイターズの1stアルバムは超名盤。ニルヴァーナでドラムを叩いてたデイヴだからこそ表現出来る唯一無二のグランジ。ちゃんとポップでちゃんとオルタナティブ。
12.Lose Control – アッシュ
無敵状態の疾走感と轟音ギター
スピーディーなグランジ、というものがあるとすればこの曲だと思ったのでチョイス。10代特有の恐いもの無しな無敵状態の疾走感と、轟音ギターが気持ちいい。
13.In Harmony New Found Freedom – Swirlies
このバンドは宇宙人が演奏している
このSwirliesというバンドはあまり紹介されているのを目にしないので、グランジを感じる楽曲を無理矢理探しました。My Bloody Valentineになりたくてシューゲイザーバンドとして始まったのに、回を増すごとにワケがわからない方向にバンドは進んでいくので、それが楽しくて仕方ないバンド。僕はこのバンドは宇宙人が演奏しているもんだと思って聴いています。常に未知数が詰まってるので、曲作りで迷うことがあればコレを聴いて吹っ飛ばす。
14.Everything Flows – Teenage Fanclub
日本におけるスピッツのような
UKロックで同じ時代の轟音をしっかり搔き鳴らしていたTeenage Fanclubは何をやっても暖かい。日本におけるスピッツのような存在だと勝手に思ってるので、是非コレをきっかけに聴いて欲しいバンド。この曲を聴くと昔の夢が沢山詰まった自分を見ている様で、胸が締め付けられる。痛くなる。悲しくなるけど優しくなれる。
15.In The Aisle – Violent Soho
ニルヴァーナとソニックユースが超いい感じにミックス
グランジリバイバルを感じる1曲。とにかく歌をぶちまけてる感じと轟音ギターはまさにグランジ。ニルヴァーナとソニックユースが超いい感じにミックスされたような心地よさ。リアルタイムグランジファンに聴いて欲しい1曲。
16.Get Away – Yuck
実は神なので、もっと沢山の人に聴いて欲しい
こちらはダイナソーJr.とソニックユースの影響を感じる1曲。メンバーの2名が在籍していたケイジャン・ダンス・パーティ時代もカッコ良かったけど、90年代オルタナティブの詰まったYuckはさらに熱い。グランジのノリにセンチメンタルなギターリフで、ティーンエイジファンクラブやピクシーズにも感じる。そんなの最高に決まってるってことを最高にやってのけるバンド。実は神なので、もっと沢山の人に聴いて欲しい。
17.The Fight Song – マリリン・マンソン
怖そうな音やコンセプトを“どポップ”に
マリリン・マンソンがグランジするならこの曲。怖そうな音やタブーとされるようなコンセプトを、“どポップ”に変換出来て、さらにエンタテイメントとしてライブを見せるなんて、天才でしかない。絶対友達にはなれないけど、とても憧れてしまうカリスマ。
18.Song 2 - 2012 Remastered Version – ブラー
こんな曲普通作れない
ボーカルのデーモンがグランジの影響で作ったのではないかと思える名曲。グランジをシンガロング出来るレベルまでシンプルに削ぎ落とした大胆さが気持ちいい。ドラムリフといえるイントロからの爆発力。簡単そうで思いつかないし、こんな曲普通作れない。誰にも出来ないグランジ。良過ぎて恐くなる。
19.未完成ライオット - VerSus Ver. – モノブライト
この曲で日本のロックは変わると思っていました。
精神的にグランジの気持ちで作ったモノブライトのデビューシングル曲。この曲で日本のロックは変わると思っていました。そんな素敵な気持ちが詰まった1曲なので、是非ライブで体感してください。
20.I Want You to Want Me - Live – チープ・トリック
カート・コバーンがやりたかったことが詰まっている
カート・コバーンはチープ・トリックのファンだというのは有名な話なんですが、彼らの音楽を聴いてみてもニルヴァーナに似てると感じたことが、僕は1度もないんですよね。見事に陰と陽というか、真っ2つな関係というか。無いものねだりは誰にでもあって、やりたくても出来ないことって沢山あって、それを感じていたカートは色んな音楽に光を当てていて。そういうカートのピュアな音楽ファンな部分が信用出来るし、僕は好きです。カートが本当はやりたかったキラキラしたポップミュージックが、チープトリックには沢山詰まっている気がしてならない。グッとくる。
▼今月のプレイリスト
「monobright × MONOBRIGHT × モノブライト 2007-2017」
2017年11月28日(火)渋谷WWW X
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