パリの展示レポート:歴史的遺産をほぼ無料で公開する「文化遺産の日」に、世界遺産 フォンテンヌブロー城を見学
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世界遺産 フォンテンヌブロー城
ヨーロッパでは毎年9月の第三週末は「Journées européennes du patrimoine」(文化遺産の日)となっています。この日は、普段は公開されないような歴史的な遺産が、一般市民にほぼ無料で公開されるというイベント日です。今年で既に34回目を迎え、ヨーロッパ各地で共同開催されています。フランス国内でも1万7千もの歴史的建造物が公開される大規模なイベントです。パリでいうと大統領官邸やパリ市庁など、人気の見学スポットは早朝から行列となります。
パリだけでも充分楽しいイベントなのですが、今年は日帰り旅行もかねてちょっとパリから足を伸ばして遠出してみました。向かったのはパリから55キロ南に位置する、フォンテンヌブローという街。電車でパリ市内からわずか40分の場所にあり、フランスで指折りの広大な森と、その中に建つ世界遺産のフォンテンヌブロー城がこの街のシンボルです。もちろん、この文化遺産の日は、フォンテンヌブロー城への一部の入場をのぞき無料。また、城内外では普段見られないイベントが数々催されていました。
まず、目にはいってきたのは正面玄関入って左のテントコーナー。ここでは、お城の屋根を作る職人さんが、実際の材料と道具を使ってシミュレーション解説をしていました。
通りかかった参加者が興味深く色々となげかける質問に、職人さんも嬉しそうに答えます。
実際にお城に使われているという屋根のサンプル
お城の中庭に抜けると、なにやら動物の鳴き声のようなものが聞こえてきます。近づいてみると、檻の中には3種類の犬達が何十匹といるではありませんか。このコーナーで解説をしている男性に話を伺ってみると、彼は週末に狩りを楽しむサークルの長だとのこと。そして、犬達はウサギやシカ、イノシシなど、捉える動物によって放たれる狩猟犬だということを教えてもらいました。
犬の胴体にはフォンテンヌブローの印である「F」が剃られていました
フォンテンヌブロー城はそもそも、この広大な森の中に位置する城であるために、狩りに興じる代々の王に愛されたスポットとしても有名です。「この犬の中にも、歴代の王に仕えて狩りに携わった犬の血が流れているかも」という話す男性。秋から春にかけてのシーズンに、フォンテンヌブローの森で狩りをしているというこの愛好会メンバーと犬達もひとつの文化遺産として認められており、こうして一般公開されているのだそうです。
フォンテンヌブロー城の中の見学も忘れてはなりません。中でも、この城に代々住んだナポレオンやルイ13世らへ送られた中国からの宝物で埋め尽くされた部屋は見事でした。宝物のなかには、贈り物ではなく戦いによって奪い取った物だという生々しい歴史を感じさせる品もありますが、そんなことも忘れてしまわせるほど美しく、状態の良いものばかりです。
この文化遺産の日には、普段は駐在しない解説員さんの姿も。中国製の陶器をフランスらしくDIYして洋風シャンデリアに仕立て上げた照明があることを解説していただきました。
日本でもこんな風に、文化遺産が一般市民に公開されるイベントがあったらいいのにな、と毎年思わされてしまうこの文化遺産の日。今年も十分楽しませていただきました。
Journées européennes du patrimoine
URL :https://journeesdupatrimoine.culturecommunication.gouv.fr/
フォンテンヌブロー城
Château de Fontainebleau
URL:http://www.musee-chateau-fontainebleau.fr/