9回目を迎える長野県松本市発の野外フェス「りんご音楽祭」をオーガナイザー・古川陽介が語る

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2017.9.22


松本から日本の音楽シーンに新たな刺激を与え続ける『りんご音楽祭』

 長野県松本市は街づくりの柱として“三ガク都”を打ち出している。日本でもっとも古い小学校の一つとされる旧開智学校、地域発展の起爆剤として誘致され、数多くの著名人を排出した旧制松本高等学校に代表される「学都」。日本の岳人たちが憧れてやまない槍ヶ岳や穂高連峰をはじめ3000メートル級の峰々が連なる北アルプス、東方の美ヶ原の大地を控えた「岳都」。子供の才能を伸ばし、世界に素晴らしい音楽教育の輪をひろげ数々の著名な演奏家を輩出してきたスズキ・メソードの発祥の地であること、世界的な指揮者・小澤征爾のもと世界屈指の演奏家たちが競演する「セイジ・オザワ 松本フェスティバル」に象徴される「楽都」だ。

 この「楽都」に、新たな息吹を芽生えさせたのが、日本の音楽シーンにおける新しい可能性を模索し、訪れる音楽ファンの思いや感覚を大事にしたアーティストをラインナップしていると評判の高い野外フェス、『りんご音楽祭』だ。僕も3回ほどお邪魔しているのだけれど、その顔ぶれを眺めて驚くことも少なくない。まあ僕の音楽に関する知識がその程度だと言われれば、まさにその通りで否定する要素はまったくないのだが、名前を知らないアーティストばかりなのだ。それでも市内の高台にあるアルプス公園から吹き降ろしてくる風とともに届く熱気と歓声(それはりんご音楽祭に参加したときの記憶がざわめきとして体内に湧き上がってくるのかもしれないが)に誘われて、新たな出会いへの期待にワクワクしながら足を運ぶのだ。

 あふれる緑に囲まれながら、りんご、そば、おやき、わさび、きのこ、いなごと長野県民には親しみのある単語で名付けられたステージを好きな音楽を求めてはしごしていくのは、なんだか、ハイキングの新たなあり方を提案されたようで楽しい。ビールも美味い。

 こんなことを書いている程度の音楽ファンなので、『りんご音楽祭』はもちろん全国の音楽フェスの撮影を担当したりもしている大好きな知り合いのカメラマン・平林岳志に、『りんご音楽祭』の仕掛け人で、dj sleeperとしても活躍している「瓦RECORD」オーナー・古川陽介に聞いてもらった。音楽好きをうならせる『りんご音楽祭』の秘密・秘けつをここに紹介したい。

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

“今もっともフレッシュで、聴いてみたい”アーティストのブッキングに注力

 「お客さんとの強い信頼関係じゃないでしょうか」と古川は語り始めるーー

 それは僕自身がいろいろなイベントで真剣に遊んでいるからこそ、今お客さんを熱くできるアーティストと出会えるんです。耳の肥えたお客さんにも、もっとライトなお客さん(←僕はここだ、居場所があった)にも共感していただける“今もっともフレッシュで、もっとも聴いてみたい”アーティストをブッキングしているつもりです。もちろんそこに正解はないけれど、遊びまくっている僕が感じ取った“旬”をブッキングすることに注力しているんです。「『りんご』へ行けば、よくわからないけど、ヤバいアーティストが出てる!」とおっしゃってくれるお客さんも多い。その最前線の鮮度を期待してくれているお客さんが『りんご音楽祭』を支持してくれているんです。信頼関係を大事にするという意味では、そこは絶対に裏切らない。ここにすべての結果が付いてきているのかなと思います。

 僕自身は常々「いい音楽って、もっと売れるべきだ」と思っています。僕の中で「『りんご音楽祭』はJ-POPフェスだ」という認識が強くあって。でもそれはメジャーで人気のアーティストたちをただ売れるからと店先にたくさん並べるということではなく、「こういう人たちが、こういう音楽が日本を引っ張っていく、J-POPとして根付いていってほしい!」という思いを重ねているんです。僕はたくさんのアーティストを観る中でも「POPSとして成り得るかどうか」を一つの評価軸として大切にしています。そこに普遍性があるか、と。だから自分自身がすごく好きだったり、かかわりたい人がいても、精査してdopeすぎる人は『りんご音楽祭』という枠組みではあまり誘ってないですね。

 昨今音楽不況と言われて久しいけれど、金銭的な事情もすごくシビアです。これからはより自然淘汰が進んでいくでしょう。今はそういう音楽シーンの始まりで、だからこそ逆に若手だったり、埋もれていた才能に日が当たるようになってきた。これってすごく良いことです。どメジャーではないところで良質なアーティストとの関係性を築いてきた僕らだからできることもあるんだということです。音楽を発信する側、受信する側、双方をつなげる。こういうことも『りんご音楽祭』を運営している中で求められているんだと、ものすごく肌で感じています。

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

『りんご音楽祭』2016年の様子 写真提供:りんご音楽祭実行委員会

全国のライブハウスでのオーディションで若い、地域のアーティストを発掘

 実は『りんご音楽祭』では、音楽シーンの未来を担う人気アーティストを発掘するべく、オーディション企画として『RINGOOO A GO-GO』を実施している。今年の場合は、4月から3カ月半をかけて18都市のライブハウスで79回も開催しているというから、すごい。すごいなあ。

 これまで、日本武道館でのワンマンライブを成功させた「水曜日のカンパネラ」を筆頭に、「CICADA」「Tempalay」「プププランド」「MONO NO AWARE」「The Wisely Brothers」「大比良瑞希」「Orland」「箱庭の室内楽」「原田茶飯事」「CHAN-MIKA」「ローホー」「Slow Riddim & Good Times(2016グランプリ)」「ささきりょうた(2015グランプリ)」「夕暮れの動物園(2014グランプリ)」「ノンブラリ(2013グランプリ)」など、現在の音楽シーンを担う名だたるミュージシャンが参加している。このあたりなら50歳の僕にもわかる。古川の話はますます説得力を増していく。

 『RINGOOO A GO-GO』という企画を始めるにあたっての動機はいくつかあるんです。ちょっと昔であれば、各地のライブハウスにメジャーのスカウトマンが必ず足を運んでいた。僕が運営する「瓦レコード」にだって、月イチくらいでそういった人たちが来ていました。でも音楽不況と言われる時代になって、まずスカウトマンが各地方都市からいなくなったんです。しかも各社一斉に。そんなスカウトマンに変わるべく、僕たちが各地に行ってオーディションをやる意義があると思っています。だからこそ「ウチだけが見つけられる」アーティストを紹介できるし、『りんご音楽祭』としての差別化ができている。

 それに全国各地を回るうちにわかったんですが、やはり地域ごとに根づいている音楽シーンが当然いろいろあって、その中で、そのアーティストがどのように立ち居振舞いをしているのかがクリアに見えるようになったんです。これがかなり侮れない。自分のホームとなる場所で、どういう仲間とかかわりがあり、どんなシーンの流れがあるのか? その中でほかのバンドやお客さん、ライブハウスなどとどんな関係性を持てているのか? そのアーティストのポテンシャルを推し量る上でもそこが大事なことだと気づけたんです。だからすごく負担は大きいけれど、出演者さんにも集客ノルマを負担してもらったりして、各地を回って『RINGOOO A GO-GO』を行っているんです。すごく気合が入っています。

 おう、なんかドキドキしてくるじゃないか。そんなすごい活動をしている人が松本にいるのか。や、彼がすごい人なのは聞き知ってはいたけれど、業界の下支え的なことも地道にしていたんだなあ。素晴らしい活動だ。もちろん『りんご音楽祭』を一緒に支えてくれる仲間たち、天気というどうにもならないリスクを抱えるイベントへ理解してくれる周囲について感謝の言葉を語っていたことも付け加えておきたい。この記事の最後に、今年の『りんご音楽祭』の見どころを聞いてみた。

 今回は常連とも言えるようなアーティストさんたちを意識的にお声がけしなかったんですよ。来年、10年目を迎えるので、おなじみのアーティストさんたちにそのメモリアルを飾ってもらいたい、という気持ちもあるので。そういう意味ではニューフェイスを増やしたつもりです。ピチカート・ファイブ時代から、常に渋谷を中心としたシティカルチャーをリードする野宮真貴さん、New Optimism(ハトリミホ from CIBO MATTO)、台湾から落日飛車 (Sunset Rollercoaster)、革新的和太鼓バンドのGOCOO+GoRo、それから最近では若手実力派のDJ moe、東京インディシーンの顔となった感があるD.A.N……。これらのアーティストたちに共通しているのは、まず「ライブが良い!」ということです。僕は基本的にライブを観てからアーティストをブッキングさせてもらっているんです。僕は国内のパーティ、ライブ、フェス、さまざまな場所に足を運んでいます。同じような立場の人間の中でも、僕は「日本一、観ている」という自負もある。そうやってアーティストの1回、1回のパフォーマンスを観ていると実は ”今の音楽の流れ”が見えてくるんです。今のお客さんが求めているもの、それを常に意識しているのですが、今回もきっちり反映できるものとなりそうです。

 さ、おいしいお酒、美味しい秋の食べ物、街中さほど遠くない距離には温泉もあるよ。そして何よりも素晴らしい音楽を楽しみに、松本にいらしゃい。天気も良さそうだ!

りんご音楽祭2016ダイジェストムービー

 
イベント情報

りんご音楽祭2017

■日程:2017年9月23日(土)・9月24日(日)
■会場:長野県松本市アルプス公園
■出演アーティト・タイムテーブルは、こちら
■時間:23日10:00~21:00、24日9:00~20:00/雨天決行・荒天中止
■チケット:
通し券13,800円/1日券7,500円、グループ(4名分)通し券53,000円/1日券28,500円
キャンプ券15,000円/3泊4日(9月22日~24日宿泊)、1張(3.5m×3.5m以内)当たり
※キャンプ券は1枚でテント1張が利用可。1人1枚必要なわけではありません。詳細はHPで。
■問合せ:りんご音楽祭実行委員会(瓦RECORD内)
Tel.090-9345-3240
メール info@ringofes.info

りんご音楽祭公式サイト:    http://ringofes.info/

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