ホリエアツシのロックン談義 第4回:GRAPEVINE・田中和将
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田中和将 / ホリエアツシ 撮影=伊藤惇
軌道に乗って早くも第四回『ホリエアツシのロックン談義』です。
今回のお相手は初の先輩、デビュー20周年を迎えたGRAPEVINEのVo,G田中和将さんです!
GRAPEVINEはストレイテナーを始めた当初から尊敬するバンドであり、今もなお僕にとって圧倒的な存在であります。
今年の対バンツアーにも名古屋で誘っていただき、過去には名曲「スロウ」を、今回は「光について」をGRAPEVINEの中に入って歌わせてもらいました。
声の相性が良いと言ってもらえた、エモーショナルなハーモニーに痺れました。
そして、9月6日にリリースとなったニューアルバム『ROADSIDE PROPHET』では、ルーツと新しさと歌心が渾然一体となり、更なる名曲達が鳴り響きます。
そんな日本のロック界に希望を繋ぐ人、田中さんの人となりを探る、体当たり対談です。 ――ホリエアツシ
僕にとってGRAPEVINEは特別(ホリエ)
――お2人の出会いからお聞きしていいですか。
田中:微妙に世代が違っていて。でも似たようなキャリアといえばキャリアやんね?
ホリエ:GRAPEVINEはデビューから20周年ですよね?
田中:今年でデビュー20周年。
ホリエ:僕らは来年で結成20周年です。
田中:そうか、少し俺らの方が先輩なんやね。
ホリエ:僕らの5年先輩になります。
田中:最初に会ったのはいつだったかね?
ホリエ:たしかGetting Betterの――
田中:ああ、片平(実)関係かな。片平はそういう意味では一役買ってるところがあって。世代の違う人たちを繋げる橋渡し役みたいなところあるよね。
ホリエ:たぶん、渋谷のO-EASTであったGetting BetterのイベントにGRAPEVINEが出るからということで観に行って。その打ち上げで初めて挨拶したんじゃないかな。
――それは何年前くらいですか?
ホリエ:10年前くらいですかね?(正確には2008年6月開催)
田中:でも俺はあんまり覚えてないなぁ。
ホリエ:酔っぱらってたんじゃないですか?(笑)
田中:そうなのかなぁ(笑)。
ホリエ:その後、吉祥寺あたりで一席みたいな機会もあったと思います。花見とか。
田中:お互いのことを認識はしていて、なんとなくそういうところに居合わせるみたいな感じだった。
ホリエ:実は某共通の友人の結婚届に、見届け人として僕と田中さんの判が押されたんですよね。
田中:そうそう。この2人を信頼してくれてるのかもしれないし、他にいなかっただけかもしれない(笑)。別に何かあっても俺らが害を被るわけではないんやろうけど、ちょっとした責任は感じるね。
――判子同士のコラボレーションがあったんですね(笑)。
田中:ある意味ガッチリ繋がってるな(笑)。
ホリエ:どちらかと言うと、僕は5年くらい上の先輩バンドって斜に構えて聴かない方だったんですよ。実際、僕らの5年くらい下の世代のバンドたちもストレイテナーを聴いてなくて。5年先輩との距離感って、自分たちも既にインディーズでライブをやっているなかで、売れていくちょっと上の人たちみたいな感じで。もっと上の先輩だったらただの憧れしかないんですけどね。例えばTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとか。でも、僕にとってGRAPEVINEは特別で。
田中:なんとなくわかる気がする。でも俺はそんなことなかったかもしれんなぁ。俺らの5年上っていったらどのへんになるんかな。それこそTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかGREAT3とかTHE GROOVERSとかシアターブルックとか……俺はむしろけっこう好きやったなぁ(笑)。
ホリエ:僕もその世代には素直に憧れてました。
田中:ホリエくんから見ると10年くらい先輩になるもんな。5年くらい上の先輩って、ちょうど大阪から上京する前にリアルに目指していた人たちで。お手本になるというか、洋楽的要素を持つバンドが出てきた世代という印象があるから。
歳を取ることに関しては楽しんでるほう(田中)
――ホリエさんがGRAPEVINEを好きになったポイントってどういうところですか?
ホリエ:ある日、洋楽志向の強いバンドばかり出る深夜の音楽番組を観てたら、そこでGRAPEVINEが特集されたんですよ。「鳴り物入りでデビュー」みたいな感じで、スタジオでレコーディングしてる場面とか、ちょっとインタビューを挟んでいたんですけど、それを観てカッコいいなと思ったのが最初ですね。一緒に対バンしたときに歌わせてもらった「スロウ」とか、めちゃくちゃ好きでした。……という単純にファンっていうのもありつつ、インディーズの無名な頃に僕らを発掘して応援してくれてたマニアックなバンドファンの子たちの中で、1番好きなバンドが「GRAPEVINEが好き」って言う子が多かったんですよ。GRAPEVINEって言われたら「わかるわ」みたいな(笑)。全然好きじゃないバンドを言われたら「はぁ?」ってなってたんですけど(笑)。
――GRAPEVINEは後輩からリスペクトを表明されることが多いんじゃないですか?
田中:近年は確かにそう言ってもらえることがちょいちょいあって、すごくうれしいんですけど複雑でもありますね。どんどん歳を取ってるんやなって(笑)。でも、歳を取ることに関しては楽しんでるほうだとは思います。
ホリエ:ただ、GRAPEVINEってちょっと近寄りがたいイメージがありますよね。
田中:それもよく言われる。社交性の無さによるところが大きいような気がするんですが……同世代のバンド同士って仲よしだったりするじゃないですか。例えばデビュー当時にイベントでよく一緒になったり、そういうなかで横の繋がりが生まれると思うんですけど、僕らはあんまりなかったんですよね。当時はイベントで一緒になったりしても、僕らは社交性がないですし、メンバーの年齢がバラバラだったりもして。かつ大阪から来てるっていうのもあって、なかなか横の繋がりができなかったんですよね。まわりを見渡しても大阪出身のバンドが少なくて。ちょっと先輩だったらウルフルズ、ちょっと後輩だと――京都やけど、くるりが出てきたくらいで。なかなかコミュニティーを作れなかったですね。
――でも、コミュニティーを形成したいとも思ってなかったんじゃないですか?
田中:そう、する気もなかったですし。
ホリエ:GRAPEVINEは自分たちだけで飲んで荒れてるバンドっていうイメージがあって。外に向かって荒れてるんじゃなくて中で荒れてる(笑)。
田中:確かに、そんなイメージを持たれてるなら入ってきにくいよね(笑)。
ホリエ:だから好きでもあんまり近寄らなかった感じはあったかもしれないです。僕はちょいちょい酒の席で田中さんと一緒になれてうれしかったんですけど。
田中:確かにこの前もテナーと対バンやったけど、ホリエくん以外の他のメンバーとはほとんど話してないな。
ホリエ:テナーもわりと内向的な感じなんですよ。
田中:そう、こっちからも言わしてもらえば、テナーもわりと対応が心ない感じで(笑)。ホリエくんも含めて絶対に本心で喋ってないなっていう雰囲気が全体的にある。
ホリエ:いやいや!(笑)
田中:言ってくれるのはうれしいけど、ビジネスライクな感じ(笑)。
ホリエ:本心ですよ!(笑) 一生追いつけない感じがやっぱりありますから。
田中:嘘や(笑)。あんま褒めないでください。すでにいろいろ追い越されてます。
本番前に飲むのはやめました(田中)
――田中さんは今もよく飲んだりする後輩はいないですか?
田中:ほぼいないですね。結婚も早かったですし、すぐに付き合いが悪くなりまして。飲みに誘われても「もう飯食って風呂入っちゃいました」っていうことが何度もあると、だんだん誘われなくなる。強いて言うなら光村(光村龍哉/NICO Touches the Walls)くらいかな。
ホリエ:光村は僕らよりも下の世代なんですけど、田中さんとすごく仲がいいんですよね。
田中:なぜかウマが合うんですよ。
――甘え上手なんですかね?
田中:そうかもしれない。
ホリエ:あんまり「先輩、先輩」って感じで敬ってこないですよね。そこがいいのかもしれない。
田中:ある意味、生意気なんでしょうけど(笑)。
ホリエ:でもあの顔で生意気だったらべつにいいじゃないですか(笑)。
田中:あの才能であの顔で偉そうなら、まぁしゃーないかなって思うよね。
――確かにNICO Touches the Wallsは音楽的にもGRAPEVINEと通じるところがありますよね。
ホリエ:彼らもGRAPEVINEのこと大好きでしょうね。
田中:うれしい話ですけどね。
――ちゃんとDNAが継承されている。
ホリエ:あと、最近だとGLIM SPANKYもGRAPEVINEが好きって言ってました。
田中:それはうれしいなぁ。GLIM SPANKYは高野(勲)さんも手伝ってるよね。
ホリエ:この前、一緒に「GRAPEVINE好き飲み」しましたもん。
田中:そこに呼んでよ(笑)。
――この2人で飲みに行ったことはないんですか?
ホリエ:2人だけでっていうのはないですね。
田中:そのうちしようや。
――ホリエさんは酔うとどうなるんですか?
田中:そんなに変わらない印象かな。
ホリエ:あんまり変わらないとは言われますね。次の日、具合が悪くなるだけで。田中さんは酔い方すごいですよね?(笑)
田中:俺はアカンか(笑)。そういう意味でも敬遠されるのかもしれない。
――どういう感じになるんですか?
田中:キレたりはしないですし、普通に楽しくなるんですけど。……絡んだりしてる?
ホリエ:絡みはしないですけど、目が据わってますよね(笑)。で、すごく不思議なことに田中さんは飲んだ状態で歌っても何の影響もない感じなんですよね。
田中:いやいや、そんなことないよ。一時期までは「飲んでも歌えるな」って自分でも思ってたんやけど、ある日すごく反省して。同録を聴いても本人はすごく気持ちよさそうに歌ってるんやけど、めちゃくちゃ(歌声が)後ろに溜まるんよね。これは演奏しにくいことこの上ないだろうなって。だから本番前に飲むのはやめました。
――以前はライブ前にけっこう飲んでたんですか?
田中:わりと飲んでやってましたね。
ホリエ:前に対バンしたときもリハーサルが終わって飲みに出てましたよね。本番前にベロベロになって、ウィスキーのビンを持って楽屋に帰ってくるんですよ(笑)。
田中:そんなこともあったかもしれない。それでいいと思ってたことを反省しますね。たぶん適量があるんですよ。適量で飲んですごくよかった日もあったから、飲んでライブやってたんですけど、それってあくまでピンポイントなんですよね。飲んでやってよかったことは10本のうち1本しかないはずなのに、その1本のよさを求めてまた飲んでしまう。そういうことが続いてたんだと思うんですけど、なかなかそうは上手くいかない。
――ホリエさんはライブ前に飲むこともありますか?
ホリエ:フェスや弾き語りだとちょっと飲んでからライブすることもあるんですけど、ワンマンとかはさすがに2時間くらいあるから飲まないですね。前に田中さんがベロベロの状態で弾き語りしているところを観たことがあって、溜まってても弾き語りだから気にならないんですよ。確かに時間の使い方がめちゃめちゃゆっくりしてましたけど(笑)、ギターのタッチとかも完璧なんですよね。
田中:確かに弾き語りは迷惑をかけるメンバーがいないっていうのは大きいかもしれないね。あとは弾き語りって緊張するじゃないですか。それもありますね。
田中和将 撮影=伊藤惇
GRAPEVINEは新しさを求めてる感じが常にある(ホリエ)
――田中さんから見たストレイテナーの音楽的な印象を聞かせてください。
田中:最初の印象しては、めちゃくちゃ洋楽的なバンドが出てきたなという感じで。90年代以降の洗練されたロックな感じがあって、さらにグッドメロディーっていう印象がずっとありますね。あとライブを観ると演奏が鉄壁で「これは!」って思います。観るたびにホリエくんの歌がセクシーになってる気もします。
――それを聞いてどうですか?
ホリエ:声の出し方は30歳を迎えてから変化しましたね。20代のときは、とにかく力んでいたので。
田中:そのよさもあるんだと思うんですよ。でも、それを超えてくるとまた1つ見つかる歌い方があるよね。
――田中さんも年齢によって歌い方は変わってきてます?
田中:そうですね。最初のころはもっといろんな考えに憑りつかれていたと思います。「こうしたほうが個性的なんじゃないか」とか、あるいは「こうしたほうが今風なんじゃないか」とか。
ホリエ:GRAPEVINEは新しさを求めてる感じが常にあるんですよね。もちろん、古い音楽が好きなのも伝わるんですけど、それを今っぽいサウンドに昇華してるんです。僕らはけっこう90年代後半から2000年代ぐらいの洋楽の影響が強いんですけど、GRAPEVINEはルーツにブルースやカントリーもありつつ、それを最新のモードと融合させてハイブリッドにしている。かつGRAPEVINEもグッドメロディーなんですよね。
田中:まぁ、そこはがんばってやっているつもりではあるんですけど、なかなか難しいですよ。
ホリエ:普通はメロディーまで洋楽っぽくしがちなんですけど、GRAPEVINEの曲はメロディーが急に邦楽っぽくなったり、コードも邦楽っぽい移り変わりをすることがあって。それがまた真似できないところなんですよね。ニューアルバムもGRAPEVINEならではのオルタナティブな感じがすごくあってカッコよかった。
田中:あんまりトレンドを追っかけるのも年甲斐がないなっていう気はしていて。新しいものを取り入れるって言っても、むやみやたらにそうするのは若作りしているようでカッコ悪いなって、この10年くらいで思い始めて。それまではなんでもかんでもアンテナを高くしておかないとヤバいみたいな気持ちがあったんですけどね。ここ最近はそこまでじゃないというか、チョイスして新しい音楽を聴いてるところがある。かつ何か打ち壊すような要素がほしいですね。どこか居心地が悪いようなものというか。基本的に洋楽的志向ではあるんだけど、どこかに勘違いがほしいというか、茶化してるような、ふざけているような、皮肉っているような意地悪な部分が重要なのかなって気がしています。
ホリエ:GRAPEVINEはいつも新譜に期待を持って聴かせてくれる先輩バンドなので。
田中:……今日、僕を褒める会じゃないですよね?(笑)
ホリエ:でも20周年のお祝いでもありますから(笑)。本当に、GRAPEVINEに憧れを抱いてたとしても、GRAPEVINEみたいな洗練された音楽を作ってるバンドっていないから。例えばNICO Touches the Wallsはそこを通ってもっと土臭いエモーショナルさがあって。それもカッコいいんですけど。
田中:ホリエくんたちの世代は洋楽をもっとスマートに取り入れてる感じがするんですけど、光村くらいの世代になるともっとこんがらがってるんじゃないかと思いますね。和の感じもすごくあるし。
ホリエ:サザン(オールスターズ)感もありますよね。
田中:たぶん光村は桑田(佳祐)さんが好きなんやと思う。
ホリエ:僕らは邦楽も通ってるんですけど、自分のバンドに向かうときは完全に切り捨ててやってたところがありますね。
田中:きっと世代的にも邦楽を取り入れたらダメだみたいな感じがあったんだよね。
ホリエ:あったんでしょうね(苦笑)。
田中:例えば、Suchmosってめちゃくちゃ絶妙なバランスやなと思っていて。DJの使い方も僕らの世代から見るとちょっと懐かしいんですよね。それが今また新鮮に聴こえるのはいろんな音楽が混ざり合った結果だと思うんですよ。若いバンドでも、もっと完全に英詞で歌っていて、サウンドプロダクションも洋楽に寄せてるような人たちもいるじゃないですか。
――海外のインディーポップ然としているバンドとか。
ホリエ:そこがムラ化しちゃうともったいないなと思うんですよね。
田中:コミューン化しがちやもんね。でも、例えばUSインディーの動きにもそういう傾向があったから、その雰囲気も含めて取り入れてるんじゃないかって気がするんですけどね。それは悪いことじゃないし。洋楽を聴くから偉い/偉ないって話になってくると論調がおかしくなってしまいますけど、今の若いバンドは洋楽的な人たちはたくさんいると思いますね。その一方で、30代前半ぐらいの人たちが1番洋楽を聴かない世代なんじゃないかなという印象があって。ストレイテナーも含めて日本にカッコいいバンドがいて、その影響を受けたまま洋楽に触れずにきた世代なのかなと。例えばMr.Childrenやスピッツのようにロックバンドがミリオン・セラーを連発していた時代があって、そこから日本のバンドシーンってガラパゴス化したと思うんですよ。ちょっと前のクールジャパン云々とかもそうですけど、価値観がアニメ化していって、ロックバンドもそっちに寄せていったと思うんですよね。そこには洋楽要素は必要なかったというか。
ホリエ:洋楽っぽいインディーバンドもたくさんいるんだけど、それと同時にオーバーグラウンドではその流れが今も進行中ですもんね。
田中:なかなかその流れは打破できないと思いますね。べつにそれが悪いことでもないでしょうし。
アウェーでライブやるのが楽しい(田中)
――ストレイテナーはフェスなどに出ていて、自分たちがカウンター的なポジションにいるという認識ですか?
田中:そのあたりは俺も聴いてみたかったところで。ウチのバンドは世代的にも音楽的にもライブパフォーマンス的にも、大きな邦楽フェスとはちょっと距離が生まれてるなと思うんやけど、ストレイテナーはけっこう出るやん?
ホリエ:難しいなって思うときはありますね。初見でストレイテナーのライブをフェスで観た人がどう思うかっていう。果たして、いい音楽を聴きたいとか、新しいバンドに出逢いたいとか、そこを求めてお客さんがフェスに遊びに来てるのかな?っていう疑問はあって。だから初見のお客さんに向けた選曲やパフォーマンスを心掛けながらも、常に自問自答してる感じです。妥協はしないけど、でもなるべく開いたパフォーマンスを心がけるようになりましたけどね。
――フェスでバンドを知ったお客さんがワンマンのツアーに来る導線ってあると思いますか?
ホリエ:あったらいいなっていう希望でしかないですよね。
田中:もちろんゼロではないと思いますよ。フェスの雰囲気を楽しむために来る人たちのなかにも、ライブを観て思ってもみなかった感情になる人たちはいるはずやけどね。
ホリエ:フェスもこれだけ増えてきたら、ある程度お客さんもどのフェスに行くか選ぶようになったと思うんですよ。お客さんの傾向がフェスごとに変わってきている。意外とめっちゃホームだなと思うフェスもあって、「このフェスに僕らを求められる要素があったんだ」みたいな(笑)。逆に全然人が集まらないときもあって。
――フェスが細分化したからこその気づきというか。
田中:めちゃくちゃ増えたもんね。でも俺は基本的にアウェーが好きで。自分たちはこういう音楽性だし、みなさんの求める一体感を否定するようなパフォーマンスをやり続けてきたので(笑)、ある程度その感じが認知されたというか。「GRAPEVINEはこういうもんだ」ということを踏まえたうえで来てくれてる人が多くて。うちのお客さんじゃなくても、それでも興味がある人が観に来てくれてると思う。そういう意味でも、アウェーでライブやるのが楽しいんですよね。
韻を踏みすぎると歌詞が覚えられなくなる(ホリエ)
――お2人の歌詞の考え方についてもお聞きしたいんですけど。田中さんは田中文体とも言うべき筆致があって。早い段階からそれを確立したと思うんですけど。ニューアルバムも冴えわたっていると思いました。
田中:ありがとうございます。歌詞を書くモチベーションは曲がそこにあるから、ということが一番ですね。
ホリエ:メロディーがある状態で歌詞を書くんですか?
田中:そう。最近は亀井(亨)くんの曲が多いんですけど、自分も曲を持っていくこともありますし、ジャムセッションで作るときもあって、その曲が基になっていろんな映像やイメージみたいなものが出てくる。それだけのことですね。それ以外はないですよ。
――読書からインプラントされることは?
田中:気になった言葉やおもしろいと思った文章の仕掛けをメモに取ることはあります。でも、基本的に詞を単独で書くことはないですね。その行為は僕のなかではタブーとされていて(笑)。
――ある意味で一番恥ずかしいことっていうか。
田中:そうそう、音がないのに詞を書くなんてどういうことやねんって思う(笑)。
――でも、歌を作ることは続けている。
田中:歌モノっていっても、例えば歌の部分が30秒だけでもいいと思うんですよ。お客さんがそれを喜ぶかどうかは別としてね。例えばイントロ、ギターフレーズ、サウンドが歌以上にストーリーを持っていく部分は多々あるじゃないですか。そこを含めた歌であってほしいんですよね。ホリエくんの歌詞は、entの最新作を聴くと、1人でやっているのもあるのかもしれんけど、アブストラクトな印象があって。ストレイテナーの歌詞はバンドなのでもうちょっとわかりやすく展開がエモくなっていたり、サビでパーンって開けるようになっていたりするけど。entはもうちょっと抽象的だったり心象風景を感じられるなと。
ホリエ:僕はもともとけっこう辻褄を合わせがちというか、1枚の絵になってないとダメなタイプなんですけど、それを壊したいっていう気持ちがあって。田中さんの歌詞を読んでると、「何を言ってるかわからないけどここがすごく大事なんだろうな」って思うポイントはあって、僕もそういう歌詞を書きたいんですけど、どうしても自分でメロディーを書いて歌詞を乗せていると、Aメロから辻褄を合わせてしまうというか。韻の踏み方にしてもそうだし。
田中:作り方としては同じですけどね。僕の場合は、韻とかは悟られないで踏みたくなるというか。3年くらい経って「ここで韻を踏んでたんや!?」っていうふうにしたくて。
ホリエ:ただ韻を踏みすぎると歌詞が覚えられなくなるんですよね。
田中:「どっちが1番やったっけ?」ってなるよね。
ホリエ:あとあまりにも(意味を)含ませすぎると、時間が経つと何を含んでいたのかを忘れちゃう(笑)。
――ホリエさんの英詞と日本詞のバランスは音ありきのところがあるんですかね?
ホリエ:そうですね。基本的にまず英語っぽい発音でメロディーを作って、出来たメロディに日本語を乗せていくんですけど。でも、どうしても日本語にするとダサいなって感じたときは思い切って英詞にします。英語だと難しい表現の仕方がわからないぶん、思ってることをシンプルな言葉でストレートに書くようになりますね。日本語だとなかなかシンプルにはいかないので。
――田中さんは日本語表現を貫く意識が強くありますよね?
田中:そうですね。何曲か英詞に挑戦したことがあるんですけど、ホリエくんが言ってたようにシンプルになるんですよね。その感じがしっくりこなくて。もちろん、英詞で歌うことが魅力になるんですけど、それは俺のやることじゃないなって思ったんですよね。英詞で歌って洋楽に寄せている邦楽を聴くくらいなら、もともと聴かんわっていう気持ちになっちゃう。わざわざ邦楽を聴くんやったら邦楽的なところを感じたいから。だから英詞を書いているときに本末転倒だなと思ったんですよね。
俺の人生、消去法かもしれん(田中)
――ホリエさんはストレイテナーの『COLD DISC』のリリース時のインタビューで、邦楽的表現を意識したと言ってましたよね。
ホリエ:そうですね。ダイレクトな感情を歌うことを意識してます。歌詞についてもさっき言ったように、含ませすぎて何を含んでいたか分からないってならないように、曲ごとに歌いたいテーマを掲げようって意識しました。
――今もまだそういう意識がありますか?
ホリエ:ありますね。逆にentの英詞は絶対日本語では歌わないような乗せ方を意識していて。
田中:そこが洋楽的なんやろうね。
――別のアウトプットがあるのも大きいですよね。
ホリエ:精神的にはそうですね。「なんでそんなに音楽ばっかりやるの?」って思われるかもしれないですけど……無趣味なんですよね。
――田中さんは?
田中:無趣味ですね。でも、音楽ばっかりでもないというか、あんまり音楽に腐心したくないタイプなのかもしれないですね。もちろん、一生懸命やるんですけど、あんまり音楽音楽してる感じになりたくないというか。でも、趣味を持つ憧れはあるから、そろそろいい大人やし何か始めようかなって思ってるところなんやけど。ただ、おそらくそれが癒しになるだとか、はけ口になるみたいなことを求めてやり始めるようではダメなんやなって思うんよね。そこに何かを求めたらダメな気がする。
ホリエ:田中さんって消去法の性格ですよね?(笑)
田中:そう。俺の人生、消去法かもしれん(笑)。
ホリエ:僕もどちらかというと消去法の人生ですね。
田中:そう考えると俺らは音楽があってよかったね(笑)。
――田中さんはいわゆるソロプロジェクトに対する興味はないんですか?
田中:ないですね。ホリエくんを見てると、おそらくやりたいことがたくさんあって、自分のなかにアイディアなり表現欲求みたいなものが溜まるからアウトプットが必要なんやと思うんですよね。ストレイテナーでできない部分がentで出るのかもしれないですし。僕は溜まっていかないんですよね。
――それはバンドを始めたときから一貫してますか?
田中:そうですね。ただバンドが好きだったっていうだけの話です。
バンドのロマンみたいなものを背負ってる感覚はある(ホリエ)
――GRAPEVINEはほぼ1年に1枚ペースでアルバムをリリースしてますよね。
田中:無理もしてますよ。1年に1枚アルバムを出してると前の作品と地続きになるんですよね。大きく変わることはなくて。だから何か少しでも自分たちで飽きないものを見つけて作っていくのが大変。しかも緩やかな変化だから、なかなかそれを人に分かってもらえないというか。
――『BABEL, BABEL』と今作はけっこうな振れ幅があると思いますけどね。
田中:それは『BABEL, BABEL』がちょっと特殊だったんですよ。
ホリエ:『BABEL, BABEL』からは1年半くらい空いてますよね?
田中:それは意図的にずらしたんです。ここ最近似たような時期にアルバムをリリースしていたので、プロモーションを寒い時期にやって春からツアーという流れがあって。それが飽きたなって。たまには違う時期にツアーやりたいなと思ったんです。
――でも、20年で15枚のアルバムっていうのはなかなかないですよね。
田中:空くのが怖いんですよ。休みたくないというか、長い休みをもらうと何をしていいかわからなくなりそうで。無趣味やしさぁ(笑)。
――最後に、お互いの今後に期待したいことを語っていただけたら。
ホリエ:ニューアルバムがカッコよくて安心したし、うれしいなって思いますね。対バンしたときも言ったんですけど、GRAPEVINEが前にいてくれる感じがうれしいんです。さっきのフェスの話もそうですけど、自分たちの音楽が世の中にどれくらい必要とされているか、悩むときがあるんですね。でも、GRAPEVINEがいると勇気づけられる。
田中:ありがたい言葉ですね。ストレイテナーは、ロック市民権が薄れてきているなかで、いわゆるロックバンドとしてのカッコよさが素敵なんだって提示しているバンドだと思うんです。だからきっと若者も付いてくるでしょうし、その感じをずっと維持してもらえればうれしいなって思いますね。
ホリエ:今はロックバンドがロックバンド然としてない風潮がありますもんね。
田中:べつにそれが悪いわけでもないだけに否定したいわけでもないんだが……寂しいというかね。ストレイテナーを見るとロックバンドはカッコいいって気持ちにさせてくれるのは間違いないので。
ホリエ:僕らはバンドのロマンみたいなものを背負ってる感覚はあるんですけど、GRAPEVINEには音楽としての希望みたいなものを担ってほしいというか。
田中:自分的には何とも言えないけど、でももうちょっとがんばんないとね。……まぁ、がんばってもしょうがないところもあるけどね(笑)。
取材・文=三宅正一 撮影=伊藤惇
発売中
20th Anniversary Limited Edition
通常盤
1. Arma 2. ソープオペラ 3. Shame 4. これは水です 5. Chain 6. レアリスム婦人 7. 楽園で遅い朝食 8. The milk(of human kindness)9. 世界が変わるにつれて 10. こめかみ 11. 聖ルチア
(DVD) 「GRAPEVINE VIDEOS 2017 ~ 20th Anniversary Limited Edition ~」
GRAPEVINE STUDIO LIVE 2017 /「Arma」music video /
GRAPEVINE DOCUMENTARY 20 YEARS LATER
20th Anniversary Limited Edition封入特典
10月7日(土) 新潟LOTS OPEN17:30/START18:00
10月8日(日) 長野CLUB JUNK BOX OPEN16:30/START17:00
10月14日(土) Kobe SLOPE OPEN17:30/START18:00
10月15日(日) Live House浜松窓枠 OPEN16:30/START17:00
10月21日(土) 熊本B.9 V1 OPEN17:30/START18:00
10月22日(日) 鹿児島CAPARVO HALL OPEN16:30/START17:00
10月27日(金) 岡山YEBISU YA PRO OPEN18:30/START19:00
10月28日(土) 松山サロンキティ OPEN17:30/START18:00
11月5日(日) 札幌ペニーレーン24 OPEN16:30/START17:00
11月11日(土) 盛岡Club Change WAVE OPEN17:30/START18:00
11月12日(日) 仙台Rensa OPEN16:30/START17:00
11月18日(土) 福岡BEAT STATION OPEN17:30/START18:00
11月19日(日) 広島クラブクアトロ OPEN16:30/START17:00
11月23日(木・祝) 名古屋ダイアモンドホール OPEN16:30/START17:30
11月24日(金) NHK大阪ホール OPEN18:15/START19:00
11月26日(日) 金沢EIGHT HALL OPEN16:30/START17:00
12月1日(金) 東京国際フォーラム ホールA OPEN18:00/START19:00
(
ライブハウス公演
発売中
スタンディング4,800円(税込、整理番号付、ドリンク代別)
9月23日(土)発売
全席指定5,400円(税込)
2017年10月18日(水)発売
【初回限定盤デジパック仕様】TYCT-69121 3,000円(税抜)+税
【通常盤】TYCT-60109 3,000円(税抜)+税 ※通常盤は初回限定盤が終了し次第の出荷になります
▼収録曲
「Farewell Dear Deadman」
「KILLER TUNE」
「Melodic Storm」
「REMINDER」
「ROCKSTEADY」
「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」
「SENSELESS STORY TELLER SONY」
「SIX DAY WONDER」
「TRAVELING GARGOYLE」
「シーグラス」
「シンクロ」
「冬の太陽」
▼参加アーティスト(敬称略・順不同)
ACIDMAN
ASIAN KUNG-FU GENERATION
9mm Parabellum Bullet
go!go!vanillas
THE BACK HORN
the pillows
SPECIAL OTHERS
back number
My Hair is Bad
majiko
MONOEYES
ストレイテナー
■『PAUSE ~STRAIGHTENER Tribute Album~』特設サイト
http://sp.universal-music.co.jp/straightener/pause/
デジタルシングル「月に読む手紙」
2017年9月8日(金)配信リリース
※『シャープさんとタニタくん』(リブレ刊)テーマソング
■iTunes:http://po.st/it_st_tsuki
■レコチョク:http://po.st/reco_st_tsuki
『BROKEN SCENE TOUR 2017 AW』
・日程によりワンマン公演、2マン公演と内容が異なります。
・ゲストバンドは後日発表します。
11月4日(土)宮城 仙台 Rensa
[開場] 17:00[開演] 18:00
11月14日(火)東京 赤坂 BLITZ
[開場] 18:00[開演] 19:00
11月18日(土)新潟 LOTS
[開場] 17:30[開演] 18:00
11月25日(土)福岡 DRUM LOGOS
[開場] 17:15[開演] 18:00
11月26日(日)広島 CLUB QUATTRO
[開場] 17:00[開演] 18:00
12月2日(土)大阪 Zepp Osaka Bayside
[開場] 17:00[開演] 18:00
12月3日(土)香川 高松 festhalle
[開場] 17:15[開演] 18:00
12月12日(火)東京 新木場 STUDIO COAST
[開場] 18:00[開演] 19:00
12月17日(日)北海道 札幌 ファクトリーホール
[開場] 17:00[開演] 18:00
12月23日(土)名古屋 Zepp Nagoya
[開場] 17:00[開演] 18:00
[価格] 4,500円(税込・D代別)※18歳以下、当日、身分証提示で¥500キャッシュバック。
[プレイガイド]