Nothing's Carved In Stoneインタビュー 現在制作真っただ中の村松&生形が語る、バンドの歩みと在り方
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Nothing's Carved In Stone・村松拓、生形真一 撮影=上山陽介
Nothing's Carved In Stone(以下NCIS)が10月に高松、熊本、新潟をサーキットする対バンツアー『Hand In Hand Tour』(ゲストはASIAN KUNG-FU GENERATION、H ZETTRIO、My Hair is Bad)、11月15日(水)には東京・豊洲PITでワンマンライブ『Live on November 15th 2017』を開催する。9月には9mm Parabellum Bullet、THE BACK HORNとともにスプリット・ツアー『Pyramid ACT』を成功させたNCISだが、今年後半に向けてさらに充実した活動を展開することになりそうだ。
今回は村松拓(Vo/Gt)、生形真一(Gt)にインタビュー。これまでのキャリアを振り返りつつ、ライブに対するスタンス、現在の音楽性、この先のビジョンなどについて語ってもらった。
――11月15日(水)に豊洲PITで行われるワンマンライブ『Live on November 15th 2017』を含め、バンドの現状についていろいろと聞きたいと思っています。いまは新作の制作中ですか?
生形真一:まさにそうですね。新しいアルバムを作ってるんですけど、リズム録りが終わって、いまはギターと歌を録っていて。ギターと歌は並行してやることが多いんですよ。
村松拓:うん。いい感じですよ、今回も。
――前作『Existence』のリリースが2016年12月。相変わらずリリースペースが速いですよね。
村松:そうですね。そんなに落ちてはいないです。
生形:以前は「1年に1枚は出そう」と意識していたんだけど、いまは自分たちのペースでいいかなとも思ってるんですけどね。
――でも、曲作りで行き詰ったりはしてないですよね?
生形:どうだろう? 行き詰ることもあると思うけど。
村松:そうだね(笑)。
生形:さっきの話と矛盾するかもしれないけど、自分たちのペースでいいと思いながらも、わりと無理して作ってるところもあるんですよ。常に動いていないと時間はすぐに過ぎるし――ライブだけでやっていても、2~3年なんてすぐに経っちゃうので。
――2008年に活動をスタートさせて、2016年までに8枚アルバムを発表しているのは、やはりすごいペースだと思います。しかも1作ごとに確実に進化を続けていて。
村松:両方あると思いますけどね。進化しているところもあるし、ぜんぜん変わっていないところもあるというか。いま1stアルバム『PARALEEL LIVES』(2009年)を聴いても「いいアルバムだな」と思います。「いいことを歌ってるな」と思うし、バンドのストーリーが詰まっていて。もちろん1枚1枚変化はしてるし、バンドとしても成長していますけど、やろうとしていることは根本的に変わってないんじゃないかと。
生形:確かにバンドの芯の部分だったり、根本的なスタンスは変わってないかもしれないですね。この4人でやる以上、ロックじゃなくなることはあり得ないし。そのなかで自由にやってる感じというか。
――4人でバンドをスタートさせた時点から、軸になる部分は明確だったんですか?
生形:具体的な音楽性というより、4人とも同じような土壌で活動してきたことが大きいと思います。全員がライブハウスでやってきた人間だし、「いきなりメジャーデビュー」みたいなバンドを経験しているメンバーは一人もいないので。
村松:雑草っぽいというか(笑)。
生形:(笑)。実際、「ひとりだけまったく意見が違う」みたいなことはないですからね、活動に対して。カッコイイと感じるバンドもかなり似てますから。
――なるほど。NCISの音楽性を説明するのが難しいですけど、すごく未来的なカッコ良さがあるロックだと思ってるんですよね。歌謡曲、フォーク、ブルースの要素がほとんどなくて、常に新しい手触りのサウンドを求めているというか。
生形:確かにそうかもしれないですね。
村松:四畳半フォークも聴かないからね(笑)。ブルースもそこまで通ってないですね。
生形:NCISを始めた当初は、ロックのイメージを変えたいという気持ちがあったんですよね。いまもそうかもしれないけど“ロック=古くてカッコ悪い”という印象を持っている人って少なからずいると思っていて。そういう人にも聴いてほしかった。たとえばレディオヘッドって、古いロックのイメージがぜんぜんないでしょ? いまのレディオヘッドの音楽、フォーマットはもはやロックとは呼ばないかもしれないけど、当時もロックファン以外の人たちにも聴かれていたと思うので。ただ、いまはそこまでロックを意識してないですけどね。他のジャンルのテイストを加えたとしても、ウチららしくやれる自信もあるし。
――どんなテイストのサウンドを取り入れても、NCISの楽曲になると。
村松:「何でもやれる」という手応えがあると同時に、「自分たちの芯はどこにあるんだろう?」と再確認、再認識する時期がそろそろ来るんじゃないかとも思っていて。もうちょっとで(バンド結成)10年になるんですよ。最近、お客さんとの関係性を改めて考えるようになったんですよね。「何を求めて俺たちのライブを観に来てくれるのか?」「自分たちがこのバンドに対して、いちばんカッコいいと感じてるのは何なのか?」っていう。お客さんに求められることと、自分たちが思っているカッコ良さが一致していたほうがいい。いまがブレているかの話ではなくて、それを言葉にして確認できるようになる時期がくると思うんですよ。
Nothing's Carved In Stone・村松拓 撮影=上山陽介
――いまは言葉にできないとしても、“オーディエンスに求められていること”や“メンバーが思うNCISのカッコ良さ”は確実に存在するわけですからね。
村松:そう、あるんですよ。4人の頭のなかにあるものがミックスされて、ひとつの絵になるような感覚なんですけどね、それは。
生形:いつも考えてますからね、バンドのことは。いま拓が言ったこともそうだし、もっと現実的なこと、たとえば「来年はどこでライブをやろうか?」ということも考えるし。それはメンバー全員同じだと思います。バンドによっては運営をスタッフに任せたりしてるバンドもいるけど、ウチは自分たちでやってますね。だって、自分たちのことだから。人に任せたことで後悔するのもイヤなので。
――メンバー同士の関係性も変わらないですか?
生形:うん、変わらないですね。もちろん個々に成長はしてるけど、話してる内容はずっと変わらない。これだけ長くバンドをやってると、お互いの性格もわかってるし。意見がぶつかるのは、ライブのセットリストと対バン相手を決めるときくらい?
村松:そうだね(笑)。
生形:対バンを決めるときはめちゃくちゃ時間がかかりますね。「このバンドとやりたい」というポイントが、バンドの状況やタイミングによってみんな微妙に違うので。それがおもしろいんですけどね。「めんどくさい」と思って干渉しなくなったら、バンドは成長しないので。人間関係としては、家族に近いんだと思います。ただの友達というのとも違うし……まあ、不思議な関係ですけどね。
村松:メンバー同士の関係は濃くなってると思いますね。年齢を重ねて大人になっていくにつれて、お互いに任せられる部分も増えてるし、「ここは自分が背負わないと」と思うところもわかるようになって。それぞれが意見を言って、全員一致で物事を決めていくっていうのも、俺ららしいと思います。まあ、リーダーはこの人です。
生形:もともと俺はリーダーをやるようなタイプではないんですけど、なぜかバンドをやるとそうなるんですよね。このバンドでも全員をまとめようとは思っていないし。一番まともなのは俺だと思うけど。
村松:「俺はまとも」と思ってる人ほどまともじゃないからね(笑)。
生形:全員「俺が一番まとも」って思ってるかも(笑)。個性がありますからね、みんな。バンドって大抵、自己主張しないメンバーがいたりするじゃないですか。ウチはそういう人がいないので、ちょっと珍しいのかなって。
――性格やキャラクターもそうですけど、ミュージシャンとしてもめちゃくちゃ個性的ですからね。楽曲も基本的にセッションで作ってるんですよね?
生形:そうですね。各々が曲のもとになるようなネタを持ってきて、それを全員でカタチにしていくことが多いので。俺がデモを作ることもあるし、ひなっちがベースのリフを持ってくることもあるし、拓の弾き語りをアレンジすることもあるし、オニィ(大喜多崇規)が「こういうリズムでやりたい」ってアイデアを持ってくることもあって。手癖にならないように注意はしてますけど、いい感じでやれてますね。
村松:プリプロの段階でいつも「いい曲ができた」と思えるので。
――結成以来、ずっと同じスタジオ(所属事務所が所有するスタジオ)でレコーディングを続けているのも良いのかも。
生形:レコーディングできるスタジオが少なくなってるし、ぶっちゃけ、外のスタジオでやると金がかかるじゃないですか。そういう意味では、スタジオがあるのは確かに良かったかも。いま制作しているアルバムは、いままでとは違うエンジニアと一緒に作ってるんですよ。ずっと手伝ってくれてた人なんだけど、その人にメインのエンジニアになってもらって。音も変化してくると思うし、楽しみですね。
Nothing's Carved In Stone・生形真一 撮影=上山陽介
――ライブについても聞かせてください。キャリアを重ねるごとに激しさを増している印象もありますが、ライブに対する意識も変わってきてますか?
村松:そうですね……ライブに足を運ぶお客さんって、バンドによって色がある気がするんですよ。他のバンドのワンマンを観ても「お客さんはバンドの鏡だな」と思うし。最近はそのことをより意識するようになってますね。ウチのバンドのお客さんに良い影響を与えたいと思うし。俺が考えているのはすごくシンプルで「いいライブをやりたい、いい歌を歌いたい、いい音楽を作りたい」というだけなんですけど、ライブに関していえば、お客さんと完全に一つになって、上り詰めるような感覚になれる日があるんですね。そういうときは自分たちも良い演奏ができてると思うし、お客さんもそれに応えてくれて、それを毎回やりたいっていうだけなんです。もっと言葉を付け足すこともできるんだけど、要はそれだけなんですよね。
生形:うん、俺も一緒ですね。これだけバンドを続けてきて、「この後、何を伝えていくべきか?」って考えると、気持ちしかないだろうなと。自分たちの気持ちをしっかり音にできたら、ライブの頭の一音目からお客さんを引き込めるだろうし、何かを感じてもらえると思うんです。そのためには明日のことを気にせずにステージに立たないといけないなと。よくTOSHI-LOWさん(BRAHMAN)がライブ中に「今日、ここで死んでもかまわないと思ってステージに立ってる」と言いますけど、それは絶対にお客さんに伝わってるんですよ。
村松:うん。
生形:この前、大阪のサマソニでフー・ファイターズを観たときも同じようなことを感じました。デイヴ・グロールが頭からギャーギャー叫んでいて、「この人、明日のことまったく気にしてないな」って。拓ちゃん、ライブ観ながらずっと歌ってたんでしょ?
村松:歌ってたね。デイヴの分まで俺が歌おうと思って(笑)。
生形:俺らもそういうバンドでありたいと思うんです。組んだときは自分たちもどんなライブになるかわからなくて「クールにライブをやる感じなのかな」とかも思ってたんだけど、いざフタを開けてみたら最初のライブから4人とも感情剥き出しでしたからね。自分で言うのもアレですけど、楽曲ではけっこう細かいことをやってるんです。でも、ライブを観てくれた人からは「テクニカルなバンドには見えない」って言われる。それはメンバー全員が感情を出しまくってるからだと思うんです。ライブがいいと言われると、やっぱり嬉しいし。拓の運動量もすごいしね、最近。ライブが終わったあとは動けなくなってるから。
村松:そうだね(笑)。これもBRAHMANの話なんですけど、若いときにライブビデオを観てたら、終演後の楽屋でぶっ倒れて酸素吸入してる場面があって。それがカッコ良かったし、感動したんですよね。そういう経験も根底にあるんだと思います。喉をつぶしてしまったこともあるけど、いつも全力で歌ってるので。
――今年は対バンライブも多いですね。9月にスプリット・ツアー『Pyramid ACT』を、10月には高松、熊本、新潟をサーキットする対バンツアー『Hand In Hand Tour』が行われます。
生形:『Pyramid ACT』は何年か前からやりたいと思っていて、9mmとTHE BACK HORNには対バンするたびに話をしてたんです。それが今年ようやく実現できたということですね。『Hand in Hand』を地方でやるという計画もあったので、たまたま2つのイベントの時期が重なったっていう。
――『Hand in Hand』の対バン相手もすごいですよね。アジカンは以前から交流があると思いますが、H ZETTRIO、My Hair is Badは?
生形:ヒイズミくんには「Adventures」でピアノを弾いてもらって、ライブにも出てもらったことがあって。今回の対バン相手について話したときにもH ZETTRIOの名前がパッと出て来て、これはすぐに全員一致でしたね。俺らとはまったく違う音楽性ですけど、彼らはロックだと思ってるので。My Hair is Badはこの前、初めて会ったんですよ。話してみてバンドの姿勢、言動、音楽に凄くアツいものを感じたし、そして目がキラキラしてました(笑)。
村松:ホントに真っ直ぐでしたね。年齢は関係なく、カッコいいと思うバンドとは一緒にやりたいので。飲み会とかで知り合うよりも、対バンして仲良くなったほうがいいですからね。慣れ合いみたいな感じでやってもしょうがないから。
――NCISは特定のシーンにいたわけでもないし、ちょっと孤高の存在みたいなイメージもありますね。
村松:メンバー個々で仲良くしているバンドはいるけど、NCISとして仲がいいバンドは確かに少ないかも。「誰々と仲がいい」みたいなことをカッコいいとは思ってないですからね。
――そして11月15日(水)には東京・豊洲PITでワンマンライブ『Live on November 15th 2017』を開催されます。今年はどんな内容になりそうですか?
生形:まだぜんぜん話してないんですよ。とりあえず場所だけ決めたんですけど、いまはレコーディングにかかりっきりなので。まあ、ワンマンですからね。好きなようにやろうと思います。珍しい曲もやるかもしれないし。
村松:新曲やるかもしれないです。“かも”ですけどね。
――めちゃくちゃ楽しみにしてます! 最後にNCISのこの先のビジョンについて教えてもらえますか?
村松:このバンドでもっと上がっていきたいですね。20年やったときに、ちゃんと歴史に残るようなバンドになっていたいので。平均年齢は高くなってますけど、精神的には若返ってるんですよ。さっきも言いましたけど「今日しかない」という気持ちでライブをやれるようになっているし、バンドとして強くなっている実感もあって。この先、いろんなことを大きく動かせるタイミングが来ると思っているので、それを虎視眈々と狙ってる感じです。
生形:勝ち負けではないけど、やっぱり負けたくないと思うし。ずっと前を見ながら進んで、「気付いたらすごく遠いところまで来ていた」というバンドでいたいですね。
取材・文=森朋之 撮影=上山陽介
open 17:15 / start 18:00
w / ASIAN KUNG-FU GENERATION
10.07(土) 熊本B.9 V1
open 17:30 / start 18:00
w / H ZETTRIO
10.15(日) 新潟LOTS
open 17:30 / start 18:00
w / My Hair is Bad
11.15(水) 豊洲PIT
open 18:00 / start 19:00
料金:4,000円(税込・ドリンク代別)