相楽樹インタビュー「思っていたものと全然違うものになる」 ルヴォー演出『黒蜥蜴』の見どころとは

インタビュー
舞台
2017.10.14
相楽樹  撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

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2018年1月に開幕する舞台『黒蜥蜴』。本作品は、江戸川乱歩の長編探偵小説で、1961年に三島由紀夫が戯曲化した作品で、三島が残した戯曲の中でも最高傑作のひとつと称されている。宝石商・岩瀬の娘で、物語の鍵を握る早苗を演じる相楽 樹に作品の見どころや意気込みを聞いた。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――『黒蜥蜴』の出演が決まった時のお気持ちを教えてください。

私は小劇場によく出演していたので、日生劇場に立つことは、自分にとってかなり挑戦になると思っていましたし、ぜひやりたいなと思っていました。そして美輪明宏さんの『黒蜥蜴』を見たことがあって、演出のルヴォーさんともお話しする機会があったので、すごくご縁を感じています。決まったと聞いた時は本当にうれしかったです。その後ちょっと不安が混ざってきましたけれど。

――美輪明宏さんの『黒蜥蜴』を見たきっかけと、その時の作品の印象を教えてください。

美輪さんの『黒蜥蜴』を見に行った時は、出演者に知り合いがいたので、その知り合いを目当てに行きました。美輪さんの舞台を見るのが初めてで。演出もありますけど、視覚的にものすごく豪華でした。セットも華やかできらびやかで、皆さんの衣装もキラキラしていて。

そのイメージが固定概念のようにあったので、今回もきっとそういう世界になるかなと思っていたんですが、ルヴォーさんの話を聞いていると、もっとシックなモノトーンのような世界を考えてらっしゃるんじゃないかなと思っています。具体的なセットはまだ分かりませんが、ルヴォーさんの観点から見た『黒蜥蜴』は、美輪さんの『黒蜥蜴』とは違う華やかさで、すごくグロテスクな部分もあって、私が思っていたものと全然違うものになるなと思っています。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――日生劇場という大劇場での舞台はやはり心情の変化はございますか。

舞台の大きさが違うだけで、芝居の発声や見せ方すべてが変わってくると思うんです。私はこれまでなるべく小さく小さく、テレビなどでもできるようなお芝居を目指して小劇場でやってきたんですけど、今回は逆のことに挑戦するわけです。だからと言って大きすぎる芝居をしてもいけないと思いますし、ミュージカルや宝塚などで経験を積まれてきた皆さんにはかなわない部分は絶対にあります。そうではない部分で自分ができることって何だろうと、稽古の中で見つけていけたらいいなと思っています。

――今回演じる早苗役を、どう演じたいですか?

早苗という役は“秘密”があるので、前半と後半で、かなり見方が変わると思うんです。そこをいかに見せるか。私の役は中谷美紀さんか成河さんとお芝居することが多いんです。役者としてずっと見ていた憧れの人で、すごく大好きなお二人なので、そこに負けず劣らず、今の自分だからできる武器を持って、稽古でなんとか作っていけたらなと思います。

――中谷さんや成河さんのお話が出てきました。共演の方の印象を教えてください。

本稽古前にワークショップがありました。たった3日間だったんですけど、一体感がすでに出ているように感じました。何よりも主演の中谷さんが誰にでも気さくに、分け隔てなく、たくさんお話をされる方なんです。アンサンブルの方と役が決まっている人で割れてしまう可能性を中谷さんが初日から取っ払ってくださって、すごく素敵だなと思いましたね。

また、演出家のルヴォーさんもみんなに笑顔で、ちょっと目があうとすぐ話しかけてくださるんです。ルヴォーさんの優しさが全体をいい雰囲気にしているような気がします。今から人見知りせずに皆さんと一緒に居れているので、12月からの本稽古も大丈夫そうな気がしています(笑)。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――ワークショップはどんな内容だったんですか?

本当に楽しいワークショップでした。普通だと、即興芝居をやったり台本を読んで動いたりしますが、ほぼそういうことはなかったんです。キャスターが付いている扉を動かしながら、人が縦横無尽に動き回ったり、誰かを追っている人がいたり、逃げている人がいたり……。いろんな人々がただ蠢いているだけで、すごい絵になったんですよね。ルヴォーさんは実験をしたかったんだと思います。いろんな可能性を広げて、舞台に活かせるかどうか、みんなと一緒に探っていく感じです。ワークショップを受けるというよりは遊んでいる感じでしたね。

何よりもルヴォーさんが一番楽しそうでした(笑)。ずっとウキウキしていました。ルヴォーさんが笑顔でやるから、みんな、その楽しさが伝わって、楽しんでやれたと思います。

――面白そうですね。3日間のワークショップの中で、印象的だったことは何ですか?

冒頭のシーンで黒蜥蜴と早苗の2人のシーンを探りながら作っていきました。そのときに、私は人形のように、すべてを黒蜥蜴役の中谷美紀さんに任せて、愛でられているんです。それを見たルヴォーさんは「黒蜥蜴に操られた人形のように見えたし、悲しげにも見えた」と仰ってくださいました。そこで生まれた感覚を通して、中谷さんと特にセリフを交わすことなく、雰囲気でお芝居をしたのですが、ルヴォーさんは一人ずつお褒めの言葉を言ってくださったんですよ。楽しかったし、うれしかったですね。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――共演者の方々とはどんな話をされたんですか?

プライベートよりもワークショップの話を中心にしていました。ルヴォーさんのワークショップで、二人組になって、一人がみんなが一度も聞いたことない国の言語をただ喋る人を演じ、一人がその通訳を演じました。それで私が一番最初に通訳をやって。「3分クッキングをやりたいと言っています。ほうれん草の茹で方をご紹介します」という話をしたら、中谷さんに「すごいセンスを持っているわね!」と言っていただいて。うれしかったですね。

――製作発表の時に拝見しましたが、中谷さんのお衣装、素敵でしたね。

格好いいですよね。本当に素敵だなぁって思います。帽子に顔がついているんですよ。よく見るとリアルに作られているんです。中谷さんじゃないと似合わない衣装だなと思います。中谷さんだから着こなせますよね。

――相楽さんのお衣装も可愛らしいです。

可愛いですよね。細部までこだわって作ってくださいました。網タイツを履いていて、ちょっと毒のある感じも、早苗っぽくて気に入っています。お嬢様っぽいけど実は……という感じがよく伝わるかな。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――「美」が大きなテーマですが、相楽さんご自身、美しく見せるために意識することは何かありますか?

私が思うのは女性の美しさは、見た目やスタイルもあると思うんですが、所作じゃないかなと思っています。仕草や喋り方など一つで変わります。舞台は空気で全部伝わると思うので、細かいところ、例えば指先まで意識するだけで違いますよね。細かいところまで所作を美しくしていきたいです。共演させていただく朝海ひかるさんを見ていても、すごく動きが綺麗なんです。ワークショップで、いっぱいレクチャーしていただきました。

ルヴォーさんは、ワークショップで、扉を動かす動作一つも「バレエのように」と言っていました。穏やかに滑らかに動くというのがすごく大事なのかなと思いました。この『黒蜥蜴』にあっているんだと思います。私は日本舞踊しかやっていないのですが、日本舞踊も動きはゆったりなので、そういう意味ではすごく波長は近いものを感じていて。せっかく古典的なものなので、ちょっとでもそういう要素を舞台で活かせたらいいなと思います。

――今回は三島由紀夫の戯曲ですが、言いなれない難しさのようなものはあるのではないですか?

三島さんの戯曲はすごく詩的なんですよね。ものすごく言葉の数が多いように思われるかもしれないですけど、ちゃんと読み解いていくときちんと意味があって、詩的でおしゃれなんです。普通の小劇場やドラマの中では、そういうセリフに触れることはまずなかったので、大きな舞台を見て、そういうセリフを喋っている役者さんを見て、ちょっとした憧れはありました。口語的ではないセリフを喋ってみたいなと。なので、すごく今はワクワクしています。勢いでセリフを言わないようにしていきたいですし、台本との向き合い方も考えていきたいです。

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

――三島由紀夫という作家については思い入れありますか?

舞台を観るだいぶ前のことですが、初めて三島さんの本を読んだのが『黒蜥蜴』でした。よく行く喫茶店に『黒蜥蜴』の本が棚にあったんです。何て読むんだろう?と思っていました。その時に全部読んだわけではないのですが、マスターに「“くろとかげ”と読むんだよ」と聞いて、その後たまたま舞台を見て……、そんなつながりがあったので、不思議な感じがしています。

――最後に、見どころや意気込みをお願いします!

『黒蜥蜴』の見どころは明智さんの恋です。壁があるからこそ燃え上がってしまったり、相手を嫌いになるぐらい好きになってしまったり。すごく情熱的なんです。私もワークショップで一部を見せていただいたんですが、中谷さんと井上芳雄さんのお二人のすごく素敵なシーンがあって。中谷さんの艶っぽさがとても素敵でしたし、ワークショップの段階から空気が出来上がっていたので……本番はよりすごいものになると思います。ぜひ見にいらしてください!

相楽樹 撮影=中田智章

相楽樹  撮影=中田智章

メイク=関野里美 
ヘア=KURUSHIMA
インタビュー・文=五月女菜穂 撮影=中田智章

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【動画あり】舞台『黒蜥蜴』製作発表会見レポート 中谷美紀井上芳雄相楽樹朝海ひかる、成河が魅せるデヴィッド・ルヴォー演出の耽美な世界

公演情報
舞台『黒蜥蜴』 

■原作:江戸川乱歩
■脚本:三島由紀夫
■演出:デヴィッド・ルヴォー
■出演:中谷美紀、井上芳雄/相楽樹、朝海ひかる、たかお鷹/成河
一倉千夏、内堀律子、岡本温子、加藤貴彦、ケイン鈴木、鈴木陽丈、滝沢花野、長尾哲平、萩原悠、松澤匠、真瀬はるか、三永武明、宮菜穂子、村井成仁安福穀、山田由梨、吉田悟郎(50音順)
ダンサー:小松詩乃、松尾望​

■公演日程:
東京公演:2018年1月9日(火)~ 28日(日)日生劇場
大阪公演:2018年2月1日(木)~ 5日(月)梅田芸術劇場メインホール


■一般発売:2017年9月30日(土)~
■料金:
東京公演 S席 12,500円 A席 9,000円(全席指定)
大阪公演 S席 12,500円 A席 9,000円 B席 5,000円(全席指定)

■企画・制作:梅田芸術劇場
■問い合わせ(10時~18時):梅田芸術劇場 0570-077-039[東京] 06-6377-3800[大阪]
■公式サイト:http://www.umegei.com/schedule/634/

 

 

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