10年を共にした s**t kingzの軌跡と未来「想像できないようなところに飛びこみたい」
s**t kingz 撮影=小川星奈
s**t kingz(シットキングス)はshoji, kazuki, NOPPO, Oguriの4人によるダンスチームで2007年10月結成された。ダンスで無限のストーリーを紡ぎ、国内のみならず海外でも高い人気を誇り、アメリカ・カリフォルニアにて開催されたダンスコンテストBODY ROCKにおいて、2010年・2011年と二年連続優勝を果たすなど唯一無二のダンスチームとして活動し、今年の10月に結成10周年を迎えた。10周年のアニバーサリーライブとして11月に『10th anniversary show in Billboard』と題し、東京、大阪でのビルボードライブを開催する。そんな4人に、それぞれのルーツや個々の活動、お気に入りの音楽やチーム、そしてこれからについても話を聞くことができた。
——まずはそれぞれのダンスとの出会いについて、原点となったダンスのジャンルを教えて下さい。
kazuki : 兄貴が小学校のときに「ダンスを始めたい」と言い出して、自分も真似をして始めました。「エアロビをやっていた先生がストリートダンスをやり始めたらしいからダンス習おう」ということになって。何ダンスなのかよくわからなかったんですけど(笑)。 でもスタートとしてはロックダンスをしていたのは覚えています。
Oguri : 高校1年生のときにダンスを初めて生で観る機会があったんです。それで、調べてみたら近くにダンススタジオがあったので、ぜんぜん興味のない友達を連れて見学に行きました。「あ、これはやるしかない」と思って通い始めたのがいわゆる「初心者コース」で、毎週いろんなジャンルのダンスのベーシックを教えてくれるんですね。その中で「ロックダンスかっけぇ!」と思ってやり始めました。思春期の男子はロックダンスにハマりやすいんですかね(笑)。
kazuki・Oguri 撮影=小川星奈
NOPPO : 僕が小学生のころに妹が先にダンスをやっていて、そのダンススクールに見学に行くと男の子もいたので「男の子もやってるんだ、やってみようかな」と思ったんです。でも、うちの家は「習い事はひとつまで」と決まっていて、すでに算数の塾に通っていたんですけど、お母さんに「算数の塾やめたいし、ダンスやりたい」と言って(笑)。 入りはやっぱりロックダンスでしたね。
shoji : もともと運動音痴で、ダンスとかカッコ良いことに憧れをもちつつも、「そういうキャラじゃないな」と思って踏み込めなかったんです。だけど、大学に入るタイミングで「大学デビューするなら今しかねぇ」と思って、ダンスサークルに入りました。ダンスにはいろんな種類があることを知って、クラブにいろんなショーを観に行ってみたらレゲエにドハマりして。なので、始まりはレゲエですね。レゲエは曲ごとにステップがついていて、それをみんなで踊るので、クラブイベントに行きまくって、新しいステップを習っていきました。
——レゲエというと、開脚してお尻を激しく振るイメージがありました(笑)。
shoji : もっとステップ的なものもありますし、男性が女性を抱きかかえて踊ったりとか。思えばけっこう過激な入り口だったかもしれないです(笑)
NOPPO・shoji 撮影=小川星奈
——s**t kingzの4人が出会うきっかけも、クラブにあったのでしょうか。
shoji : そうですね。もともとNOPPOとkazukiは一緒に踊ってたんですけど、俺とOguriはバラバラに活動していて、クラブでそれぞれのパフォーマンスを観て「カッコ良いな」と思っていました。
Oguri : イベントでよく一緒になるんで顔見知りだったので、普通に話したりする関係性でした。当時は、所属チームを越えたごちゃ混ぜユニットを組むのも流行っていたんで、「今度はこの人と踊ろう!」と声をかけ合ったりして、楽しんでましたね。
—— 4人はロック、レゲエがルーツとのことですが、チームとして集った時のダンスの方向性は、どのようにして固めていったのですか?
kazuki : 僕がYouTubeでアメリカのダンサーの動画を観て、作品にテーマやストーリー性があるようなパフォーマンスだったんですけど、それに刺激を受けて。「こういうのを日本で一緒にやらない?」とみんなを集めたので、やりたい方向性は決まっていました。ショーを作るにも「どうしよう?」と困ることはなかったですね。
——みなさんはs**t kingzの活動以外にも、アーティストのライブダンサーを務めたり振付を提供されたりしていますが、今までお仕事を共にしたアーティストで、印象に残っている方はいらっしゃいますか?
kazuki : 初めて4人全員でバックダンサーを務めた大知(三浦大知)とか。あと、全員でバックダンサーをやりつつ、振付まで深く関わらせてもらったのはBoAちゃんが初めてでしたね。4人で一緒に考える時間がたくさんありました。
Oguri : 4人でバックダンサーをしたり振付したりするのが、s**t kingzを結成したときのひとつの夢ではあったので、それが叶ったときは嬉しかったですね。
kazuki・Oguri 撮影=小川星奈
——アーティストの振付をする際には、どういうことを意識していますか?
shoji : s**t kingzにお願いしてくれた理由を考えますね。今までそのアーティストがやってきたものと同じ方向性でいいのであれば、s**t kingzにはお願いしてこないだろうし。何か新しいスパイスを入れたくて、そこにs**t kingzがハマるだろうと思って依頼してくださることが多いので、「どういうことがしたいのかな?」というのはすごく意識して作ります。
——個人的に、NOPPOさんが担当されたw-inds.の"Backstage"の振付が好きなのですが、トロピカルハウスという新しいジャンルの音楽に、どのようにしてダンスがついたのかが気になりました。
NOPPO : 曲調が楽しく季節も夏だったので、硬くなく動きがあるようなイメージで、みんながノリやすいようなテンポ感を目指しました。あとは、w-inds.がカッチリとした振りを踊るのは観たことがあったので、柔らかくラフなw-inds.も観てみたいなと思って作りました。
——チーム以外にも個々で活動をされていると思うのですが、それがチームに活かされることはありますか?
shoji : 個々がいろんな現場で勉強して吸収したものを反映させるということはあると思います。振付に限らず、ダンサーとして関わっていたら、そのアーティストのライブの作り方だったり。4人がバラバラに学んできたものが、常にs**t kingzにとっての新しい刺激になっているように思います。
——s**t kingzとしてパフォーマンスする時に使用する楽曲は、どのように決めていますか?
Oguri : それぞれ持ち寄って、みんなに響けば使うといった感じですね。
NOPPO : 衣装が先に決まっていて、それに合わせて音楽を選ぶ場合もあるので、いろんなパターンがありますね。
kazuki : やりたいことが決まっていて、それに合わせて曲を選ぶとか。逆に、この曲で踊りたいから曲に合うネタを作るとか。
——ただ楽曲に合わせて踊るだけではなく、パフォーマンスに物語があるのがs**t kingzの持ち味だと思うですが、どのようにシナリオを考えているかも気になります。
shoji : 前回の単独舞台(『Wonderful Clunker-素晴らしきポンコツ-』)では、『テルマエ・ロマエ』の作者であるヤマザキマリさんに手掛けていただきましたが、それ以外は基本的にみんなで話し合って考えています。
——なるほど。s**t kingzはソウルやジャズなどに合わせて踊っているイメージが強くありますが、普段はどんな音楽を聴いてますか?
Oguri : 僕はジャズ聴きますね。そんなに詳しくないんですけど、ちょっとオールディーズな感じというか、スウィングジャズ的なものがけっこう好みだったりします。
——スウィングジャズを聴きながら日常生活を送っていらっしゃるんですね。
Oguri : そういうラジオかけたりしますね。
s**t kingz 撮影=小川星奈
——お洒落ですね〜!
Oguri : でしょ〜!!「お洒落だな〜」に酔いたいっていうのが7割くらいです(笑)。 「俺こんなジャズ聴きながらコーヒー飲んでる〜」みたいな。
全員: ははは(笑)。
kazuki : 俺は音楽ぜんぜん聴かないんです。家ではテレビを垂れ流しにするのが好きで、それも笑い声が聞こえるようなバラエティー番組なんですけど。それをBGMに流しとくくらいな感じで、わざわざ曲をかけたりはしないですね。
NOPPO : 俺はハマったアーティストの曲を半年〜1年くらいずっと聴いています。音楽プレーヤーでも、その曲の再生回数だけハンパないっていう(笑)。 ずっとRickie-Gが好きで、春でも夏でも秋でも冬でも聴いてますね。
Oguri : NOPPOが自分で作る作品にもRickie-Gさんの曲を使ってるよね。
—— マイルドな曲調が、NOPPOさんのダンスにとても合いますね。
shoji : 俺は、そのとき関わっている仕事によって変わるんですけど、自分たちの舞台やショーの練習をしているときは現場で洋楽ばかり流れているので、自由時間は邦楽を聴いています。逆にアーティストのツアー中だったり振付を作っていて日本語の曲ばかり聴いているときは、自由時間には洋楽を聴きます。「今は本当に何も考えたくない!」というときは、子どもといっしょにEテレ(NHK教育テレビ)の子ども向けの番組で流れる曲を聴いて、無になるっていう。完全に別モードです(笑)。
——これまでにダンスを用いてさまざまな企業とコラボレーションされたり、PRムービーに出演されたりと活躍が多岐に渡るs**t kingzですが、これから挑戦してみたいことはありますか?
shoji : s**t kingzはこれまで、特別な経験をたくさんさせてもらったと思っていて。前に「s**t kingzの今後に向けて、明確な目標を決めよう!」という話し合いがあったんですが、けっきょく「想像のつくものを目標にするのはつまらないね」という結論になったんです。この10年間、自分たちが想像もできなかったことがそのときどきにいろんなチャンスが巡ってきて実現して、それが面白いチームなのかなと思って。例えば海外でワークショップをしたり、舞台をやったり、今年の夏にはいわゆるロックフェスにダンスチームとして出演したり、もうすぐビルボードライブで公演をやることとか。これからも、想像していなかったことに飛び込んで、どんどんチャレンジしていくグループでありたいなと思います。
shoji 撮影=小川星奈
——11月に東京と大阪のビルボードライブで行われる単独公演では、生バンドの演奏に合わせてのパフォーマンスです。
shoji : そうですね。曲のアレンジが出来上がって、より良いものにしようとバンドさんと話し合っているところです。
Oguri :やっぱり生バンドは楽器の生の振動が直接体に入ってきて、自分の体も一緒に「鳴ってる」みたいな感覚が味わえます。 自分たちが作り出した別世界を観せるというよりは、お客さんを巻き込んでいっしょにワイワイしちゃおう! というところがあるので、完成されたものを観るというよりは、一緒にライブをするような感覚で、楽しんでほしいなと思います。
shoji : これまでにパフォーマンスした楽曲も踊るので、s**t kingzのことを昔から知ってくれていた方にも楽しんでもらえると思うし、10年間のすべてが凝縮されたようなステージになるので、s**t kingzを最近知った方にもこのビルボードライブを通してs**t kingzの10年間を知ってもらって、ここから先をいっしょにスタートできたらと思います。是非、観ていただきたいです!
——わかりました! ビルボードライブ公演楽しみにしています。今日はありがとうございました!
s**t kingz 撮影=小川星奈
取材・文=Natsumi. K 撮影=小川星奈