良い歌発掘ライブイベント『エスカミ』初回は、神田莉緒香、湯木慧ら女性SSWの魅力が詰まった一夜に
神田莉緒香
SPICE×SPACE SHOWER TV presents エスカミ Vol.0 2017.10.13(金) 下北沢ReG
がなかなか取れない、人気アーティストのライブはもちろん楽しいに決まっているけれど、これからシーンを賑わせてくれるであろう、すでに感度の高いファンの間では噂になって“ザワザワ”している新人、新鋭アーティストのライブほどワクワクするものはない。新しい才能に出会えた喜びと、その剥き出しになった生々しい才能をライブハウスという狭い空間、至近距離で感じるドキドキ感、こんなに贅沢な時間はない。
そういう意味では、「SPICE」と「SPACE SHOWER TV」、2つのメディアがタッグを組んで仕掛ける“良い歌”発掘ライブイベント『エスカミ』は、非常に大きな意味のある、意義のあるライブイベントだ。『エスカミ』とは、SPICEとSPACE SHOWER TV、両方の頭文字である「S」と、ネクストブレイクを期待するアーティストを意味する「NEXT COMING」から名付けた「S/S COMING(エスエスカミング)」の略称。今後の活躍が期待される新人アーティストの発掘だけにとどまらず、早耳の音楽ファンにいち早く「今」聴いてほしいアーティストが出演するという意味が込められている。
その記念すべき初回が10月13日、無料招待のファン200人を集めた「Vol.0 特別編」として下北沢ReGで行われ、TOMOO、ロザリーナ、湯木慧、神田莉緒香の4組の女性シンガーソングライターが熱い競演を見せてくれた。
トップバッターはTOMOO。凛とした声で、声そのものの“佇まい”に惹かれる。ピアノ、ドラム、ベースという編成で、彼女が弾くピアノと歌を、リズム隊の豊かな音が広がりを持たせて伝えていく。日常の風景、心模様を独特の視線で切り取った歌詞を、ポップに、ときにロックに聴き手にぶつける。美しいバラード「泳げない」はどこまでも切なく、胸に迫ってきた。この日、19時半に重要な告知をするとSNSで予告していた通り、11月15日にタワーレコード限定の2ndミニアルバム『Blink』をリリースすること、それを引っ提げたツアーを12月から行い、ファイナルは12月19日に渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催することをステージ上で発表。「地下鉄モグラロード」「POP’N ROLL MUSIC」など7曲を披露してくれたが、フルサイズのライブが観たくなる素晴らしいステージだった。
ロザリーナの声も強さと儚さを感じさせ、一度聴くと忘れられないインパクトがある。お笑い芸人・キングコング/作家の西野亮廣が手がけた絵本『えんとつ町のプペル』のテーマ曲を歌うなど、すでに各方面から話題を集めている次世代のシンガーソングライターだ。彼女の大きな瞳のエキゾチックな顔立ちと声から感じるファンタジーな世界観は、歌詞から感じるリアルな世界とを行き来しているような、不思議な感覚を与えてくれた。10月3日にリリースした1stシングル「音色」など、自らギタープレイを披露したりもしながら5曲を届けてくれたが、どの曲も美メロで、ソングライティング力も出色といえる完成度であった。
湯木慧
SPICEにちなんでか、「スパイシーな夜にしましょう」と「万華鏡」を歌い始めた湯木慧は19歳のシンガーソングライター。6月からは3か月連続で個展&ワンマンライブを行ってきた彼女は、音楽を作る際には色と絵が一緒に浮かんできて、それを同時に表現するという、まさにアーティストだ。情感ほとばしる歌とゆるいMC、かわいらしいルックスのギャップが強烈で、そのメリハリに惹きつけられる。「沖縄の唄」「魔法の言葉」など6曲を披露し、最後は「目に見えるものが信じられなくなったら聴こえる音を頼りに、強く光の方へ進んで生きたいです」と「存在証明」を歌い、強烈な光を残した。なお、この曲のMVはバンタンデザイン研究所の学生と制作したという。
湯木慧
神田莉緒香
トリを務めたのは神田莉緒香。リリースを重ねる度に新しい世界を見せてくれる、そのエモーショナルなピアノと歌は、ライブで圧倒的な強さを見せる。キュートさの向こうにスケール感が存在する声だ。だから、かわいらしい声に惹かれて彼女の世界に入っていくと、いい意味で裏切られ、逆に深い感動の世界にいざなってくれる。この日はロックナンバーからバラードまで5曲を披露。途中、客席からお題をもらい、即興で曲を作って弾き語りで披露するという、メロディメーカーとしての才能も見せてくれた。11月1日には赤坂BLITZでのワンマンライブを控えており、レコーディングにも参加している凄腕ミュージシャンと彼女のピアノと歌との競演が話題を集めている。
『エスカミ』が掲げる“良い歌を発掘する”というコンセプト通り、今回の「Vol.0」では4組のアーティストが心に残るメロディ、言葉、歌を届けてくれた。今後も“今、絶対観た方がいい”アーティストたちの競演が楽しみだ。
取材・文=田中久勝 撮影=風間大洋
2017.10.13日(金)下北沢ReG
TOMOO
1.What's UP ?
2.Stiff & Ardent
3.地下鉄モグラロード
4.泳げない
5.スーパースター
6.POP'N ROLL MUSIC
ロザリーナ
1.Good Night Mare
2.モウマンタイ
3.長い夜
4.ドレスコード
5.音色
湯木慧
1.万華鏡
2.カワード
3.沖縄の唄
4.魔法の言葉
5.傷口
6.存在証明
神田莉緒香
1.星
2.大きくて小さい世界
3.即興
4.走れハリネズミ
5.愛と叫びたいんだ