浦島坂田船、摩訶不思議で狂おしい夜宴――『Happy Halloweeeen　浦島坂田幽霊船～コスプレしてLOVE（恋）♡～』をレポート

Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船～コスプレしてLOVE(恋)♡～
2017.10.29（sun）　両国国技館

深き冥界へ繋がる扉が開くと、彼らはこぞってイタズラをしに現世へと繰り出し始める。驚くような出来事に、信じられないような光景たち……。摩訶不思議で狂おしい、夜宴の模様をここに再現してみよう――題して、『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船～コスプレしてLOVE（恋）♡～』。このたび、ハロウィン当日を直前に控えた10月29日の両国国技館にて行われたこのイベントは、そのタイトル通りに一夜限りのプレミアムな企画として、浦島坂田船……ではなく、浦島坂田幽霊船の主催により開催された一大パーティーだ。

ちなみに、念のため。浦島坂田（幽霊）船とは浦＝うらたぬき、島＝志麻、坂田＝となりの坂田。 、船＝センラによって構成されたボーカルユニットであり、この前日にあたる28日は同会場にて『浦島坂田船 SUMMER TOUR 2017 ～THE FINAL～』が大盛況のうちに終了していたことを、ここに参考情報として記しておきたい。

なお、今宵のライブにおいてはいわゆる諸注意アナウンスが流された際、その締めくくりに「あなたの前に幽霊が現れるかもしれません。襲われないようにお気をつけを」との一言が添えられていたのだが……ふと気付くと、確かにアリーナの客席エリアでは、既に鎌を持ち黒装束に身を包み不気味な仮面をつけたナニモノかたちが、幾人も不穏に蠢いているではないか。
もしや、これは？ どうやらオーディエンスも、この粋なフェイントの持つ意味には気付いていたようだったが、程なくしてナニモノかたちがアリーナから消え去り、いよいよ場内と舞台が暗転してイベント本編が始まると、まずはDJ・Linia氏のプレイとシンクロしながら、ゾンビスタイルのダンサー勢がステージ上を所せましと大跋扈。

そして、場内がどよめき始めたちょうどのタイミングで、舞台センター奥より4つの人影がリフトアップしてくると、そこには猫耳をつけ化け猫のように見えるうらたぬき、ゾンビポリス姿の志麻、魔法使いの装いでキメたとなりの坂田 。、チャイナ服でキョンシーポーズをみせるセンラの姿が！ ここぞとばかりの選曲で「Mrs.Pumpkinの滑稽な夢」と「Happy Halloweeeen」を歌い踊ることにより、この怪奇なる夜宴を先導し始めた浦島坂田幽霊船の面々に対し、ここで割れんばかりの歓声と嬌声が、これまた思い思いの仮装をしてこの場に集っていた観客たちから、これでもかと浴びせかけられたのは言うまでもない。

続いて、ステージから高く炎がたちのぼった「ゴーストルール」などでさらに場内を沸かせた彼らだったが、なんとこの日のライブでは中盤にてハロウィンの主旨に即した、朗読劇なるものが繰り広げられることに。最終的に、物語は彼ら4人が亡霊たちが死闘を演じた末に辛くも勝利するのだが、その引き換えとして浦島坂田幽霊船は“大炎上”。なかなかの絶妙なトホホ感が漂う内容で、ここでは思惑通りに観衆からの笑いを誘うことに成功していたようだ。

さらに、このあとには幕間映像としてTV番組『めちゃイケ』の人気コーナーであった『単位上等！爆走数取団』を完全オマージュしたVTRがステージ上の巨大ビジョンを通じて放映されるくだりもあり、場内からはより大きな爆笑の渦が巻き起こったのだった。とはいえ、何も彼ら4人は決して“普通にオモロイお兄ちゃんたち”などではあるはずもない。今宵ばかりは浦島坂田幽霊船と名乗っていようとも、あくまで彼らの本分は歌うことにほかならず、このライブでは後半戦においてソロコーナーを設けることにより、そもそもひとりひとりが独立したシンガーであるということを、個々に体現していく場が設けられていたのである。
また、うらたぬき＆となりの坂田。のツインボーカルによる「すきなことだけでいいです」と、志麻＆センラのツインボーカルによる「#嘲笑ポラロイド」においては、両国国技館内をゆうゆうと周遊するトロッコが登場して、広い場内の隅々にまでファンサービスをしながらのパフォーマンスが実現。

手を替え品を替えしながら、エンターテイナーに徹する彼らの姿に、今宵この場に詰めかけた6000人はいずれも歓びと満足と楽しさしか感じていなかったに違いない。

「今日はさ、最初あの黒装束の人たちの中に俺らが混じっとったの、めっちゃ面白かったよな(笑)。「うぇーい！」って、皆とハイタッチみたいのしたりして」（となりの坂田。）
「いや、でもね。ちょっとバレてたよ。歩いてるときに、なんか雰囲気的にちょっと「アレ、うらたじゃね？」みたいな感じになってたもん（笑）」（うらたぬき）

こうして最後にはネタバラシもしつつ、本編ラストはポジティブなメッセージ性を持った最新アルバム『Four the C』収録の「Carry Foward」にてフィニッシュ。そのうえで、アンコールではギターロックアレンジの施された「千本桜」とTVアニメ『スタミュ』の第2期OPとしても広く認知されている「SHOW MUST GO ON !!」にて、浦島坂田幽霊船による『Happy Halloweeeen 浦島坂田幽霊船～コスプレしてLOVE（恋）～』は、みごとすぎる華々しい大団円を迎えるに至ったのだった。

「本当にありがとうこざいました！ ようやく体調も回復しまして（注・今夏の浦島坂田船としてのツアー中に彼は体調を崩して入院し、ここに来て復帰していた）、これからまた４人体制で活動していきますので、皆さん宜しくお願いします！！」（志麻）
「最高に楽しかったです。ありがとうございました！これからも頑張りますので、ヨロシク！！」（センラ）

ところで。もともとハロウィンとは、古代ケルト収穫祭から発祥したもの。そういった意味では、今回の浦島坂田幽霊船による素敵な秋祭りもまた、我々にとって多くの収穫を与えてくれたことになるはずだ。Happy Halloweeeen！

文＝杉江由紀　撮影＝小松陽祐（ODD JOB）、岡本麻衣
 

浦島坂田船ツアーファイナルのレポートはコチラ⇒http://spice.eplus.jp/articles/155338