火田詮子、咲田とばこらによって名古屋で上演された朗読劇『ホタラ綺譚(パナス)余滴』が、本場沖縄へ

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2017.11.10
 朗読劇『ホタラ綺譚(パナス)余滴』in 沖縄 チラシ表

朗読劇『ホタラ綺譚(パナス)余滴』in 沖縄 チラシ表

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作家自身の構成でシマコトバの魅力が立ち上がる、1日限りの里帰り上演

昨夏開催された「あいちトリエンナーレ2016」の特別連携事業として〈七ツ寺共同スタジオプロジェクト〉により上演された朗読劇『ホタラ綺譚(パナス)余滴』(詳細はこちらの記事を参照)。その沖縄公演が、まもなく11月12日(日)に琉球大学内で行われる。

『ホタラ綺譚(パナス)余滴』(2003年 講談社刊『ゆらてぃくゆりてぃく』収録)は、小さなシマを舞台に、飢餓や海の氾濫、子どもたちの失踪とナガムリン(流れ者)の出現、そして集団舞踊にいたる人々の自然と寄り添う営みが、シマコトバを織り込んだ不思議な物語として語られていく、沖縄在住の作家・崎山多美の作品。

「方言を尾ヒレのように日本語にくっ付けることでなんとなく地方のアイデンティティを主張してみせる、というのではなくて、異質なコトバとコトバの関係を異質なままに立ち上がらせ、「私」なりの小説のコトバとしてどうにか想像(創造)したい、「シマコトバで、日本語をかきまぜながら小説を書いてみたい」と、創作に取り組んでいる作家だ。

昨年9月の初演では『ホタラ…』の全文を名古屋のベテラン女優、火田詮子咲田とばこ(劇団ジャブジャブサーキット)が朗読。伊藤みづめ安藤鮎子の踊り、高宮城実人による三線の生演奏、嘉手苅志朗の映像、そして全体の構成と音楽を港大尋(作曲家・ピアニスト・シンガーソングライター)が務め、途中休憩を挟み3時間超の上演が行われた。

2016年9月「七ツ寺共同スタジオ」での初演より。車座になって演者を囲み、村の広場で語り部の話を聞くようなスタイルの客席で上演された  撮影/山崎のりあき

2016年9月「七ツ寺共同スタジオ」での初演より。車座になって演者を囲み、村の広場で語り部の話を聞くようなスタイルの客席で上演された  撮影/山崎のりあき

今回の沖縄公演ではメンバーが一部変更し、琉球舞踊の中堅として評価の高い東江裕吉、東京や名古屋を中心に活躍するピアニスト山田亮を新たに迎え、作者である崎山自身がテキストをカットして再構成。途中休憩を挟んだ2部構成による約2時間の上演に圧縮されるという。

シマコトバに馴染みのある方もない方も、共に落ち着きのある魅力的な声の持ち主である二女優の朗読と音楽、踊りや映像といった重層的な表現に加え、土地特有の雰囲気なども五感で感じながら、一夜限りの特別なひとときを過ごしてみては? 沖縄近辺の方はもとより、旅行でお立ち寄りの方などもぜひご高覧を!

初演時のアフタートークより。中央が作者の崎山多美  撮影/山崎のりあき

初演時のアフタートークより。中央が作者の崎山多美  撮影/山崎のりあき


【崎山多美PLOFILE】
さきやまたみ●1954年11月3日生まれ。沖縄県西表島出身。琉球大学法学部卒。1979年「街の日」で新沖縄文学賞佳作、1988年「水上往還」で九州芸術祭文学賞受賞、1989年「水上往還」で第101回芥川賞候補、1990年「シマ籠る」で第104回芥川賞候補。作品集に『くりかえしがえし』(1994年)、『ムイアニ由来記』(1999年 いずれも砂子屋書房)、『ゆらてぃくゆりてぃく』(2003年 講談社)、『月や、あらん』(2012年 なんよう文庫)、『うんじゅが、ナサキ』(2016年 花書院)、エッセイ集に『南島小景』(1996年)、『コトバの生まれる場所』(2004年、いずれも砂子屋書房』。最新刊に『クジャ幻視行』(2017年 花書房)


文=望月勝美
 
公演情報
七ツ寺共同スタジオプロジェクト
朗読劇『ホタラパナス(綺譚)余滴』in 沖縄


■作:崎山多美
■朗読:火田詮子、咲田とばこ(劇団ジャブジャブサーキット)
■踊り:伊藤みづめ、安藤鮎子、東江裕吉
■演奏:高宮城実人、山田亮
■映像:嘉手苅志朗[監修:水上の人プロダクション、山城知佳子]
■構成:崎山多美、二村利之、篠田竜太

■日時:2017年11月12日(日)17:00 ※15:00よりプレトーク 鼎談「共鳴する〈島〉の身体と言葉」(崎山多美、二村利之、喜納育江)を開催。1時間程度を予定。予約不要。
■会場:琉球大学 研究者交流施設・50周年記念館 多目的室(沖縄県中頭郡西原町千原1)
■参加費:資料代として2,500円(予約優先)
■アクセス:那覇市内モノレール「首里」駅からタクシーで約20分(約1,500円)または、那覇バスターミナル「旭橋」から路線バス、那覇バス[97]・琉大北口行(「琉大付属病院前」下車)ほか
■問い合わせ:090-3074-7612(親川/沖縄) hotara.nanatsudera@gmail.com
■公式サイト:
https://www.facebook.com/hotara2017​(予約フォームあり)
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