B級遊撃隊の新作公演は、童話と演歌、さらに唐十郎テイストがドッキング!? ~佃典彦(作)、神谷尚吾(演出)に聞く

2017.11.17
インタビュー
舞台

前列左から・梅宮さおり、山口未知、鈴木理恵子、大脇ぱんだ 後列左から・三井田明日香、佃典彦、まどか園太夫、徳留久佳、神谷尚吾

 

役者8人の輝く個性も炸裂する、B級遊撃隊流 現代の寓話劇

新作としては昨年6月の『満ち足りた散歩者』以来、1年5ヶ月ぶりとなる劇団B級遊撃隊『不都合な王子』が、11月18日(土)・19日(日)の2日間に渡り名古屋の「千種文化小劇場」で上演される。

そこはどこか北の町…
ぐるりと見渡せる小高い丘にある広場
そこにはかつて町を見下ろすように一人の男の銅像が立っていた…
町の人々もそれが誰の銅像なのか誰も知らない…
偉人か英雄か…
誰も知らない…
今はもう崩れ去って台座の上には足首から上は無い…
寂れた広場にはポツンと一人の女…
それは娘盛りを無駄にしてしまった越冬つばめ…


《オスカー・ワイルドの童話「幸福な王子」と森昌子の名曲をミキシングした現代の寓話劇》と銘打たれた今作。名作童話として名高い「幸福な王子」は、宝石や金箔で覆われ、鉛の心臓を持つ銅像となった王子が、足元に降り立ったツバメを介して貧しい人々に宝石や金箔を分け与えてみずぼらしい姿になり、南へ渡らず王子の側に居続けたツバメも命尽きてしまうという、自己犠牲を描いた物語。片や1983年にリリースされた森昌子の「越冬つばめ」は、報われぬ恋に身をやつした女の悲哀がドラマティックに展開される演歌。一見、意外な取り合わせのモチーフは作者・佃典彦の中でどう繋がって物語を紡ぎ出し、それを受け取った演出の神谷尚吾はどのように料理したのだろうか。

稽古風景より

── 今回は「幸福な王子」と「越冬つばめ」を題材にしたということですが、このふたつはどう関わってくるんでしょう?

 以前、「グリム童話を元にして何か書けませんか?」と依頼されたことがあって、グリム童話集を借りたんです。その中に「幸福の王子」が入ってて改めて読んで、ヒドイ話だなと思ったの。売れない劇作家だったり、マッチを落としちゃったマッチ売りの少女だったり、病気のお母さんだったり、不幸な人に(銅像になった王子の目や、腰の剣に埋め込まれている)サファイヤとかルビーを渡すんだけど、それは不公平なわけじゃない? 他にも不幸な人がいる中で、渡す人を選ぶっていうことは。でも、あたかもそれが美しい物語のように思われている話が実は結構好きで。それはなぜ好きかっていうと、芝居になりやすいから。

「モモ」の時もそうだったし(流山児祥が立ち上げた中高年劇団「楽塾」20周年記念公演で、佃がミヒャエル・エンデの代表作「モモ」をベースにミュージカル仕立ての『すももももももモモのうち』を書き下ろした)、この間書いた宮沢賢治の作品もそうだった(「座・高円寺」のレパートリー〈劇場へ行こう!〉で『フランドン農学校の豚』の上演台本を担当)。ヒドイ話なのに、世間では良い話みたいに思われてる。ちっとも良い話じゃないんだけどなぁ……っていう感じがして、じゃあ『幸福の王子』を題材にして書こう、と思った時に“越冬つばめ”の話だからそのままですよ、森昌子の歌は。

── 王子に寄り添って貧しい人たちに宝石を届けるツバメと歌が繋がったんですね。

 そうそう。まどか(園太夫)が演じてる女1が若い時に春を売ったので「お前にはもう春は来ないよ」って言われて、ずっと冬のまま80年生き続けている。実はもうとっくに死んでるツバメなのかもしれないけども、おっちゃんを待つ(佃演じる、リヤカーを引いた紙芝居屋の男1は鉛の心臓を受け継ぎ、サファイヤを女1に託して姿を消す)。そんなことをしてるうちに「娘盛りを無駄にした女」っていうのが僕の中では演歌っぽいなと思っていて、「越冬つばめ」の出だしの歌詞もそうなので、その辺が繋がってる感じ。あとは、唐(十郎)さんの『鉛の心臓』という戯曲があって、そういえば唐さんも書いてるなと思ってそれを読みつつ、「あぁ、やっぱりこんなアングラっぽいのもいいなぁ」と思って。

稽古風景より

── やっぱりそうですか。リヤカーを引いている佃さんとまどかさんのシーンが、唐さんの描く芝居っぽいなと思って稽古を見ていました。

 ちょっと状況劇場の気分で、それにチェーホフの『三人姉妹』をぶつけて、「幸福の王子」と「越冬つばめ」が土台にある、っていう感じかな。

── 神谷さんは佃さんのホンが上がってきた時、どんな印象を受けましたか?

神谷 なんだろう。懐かしいような。野田秀樹の『小指の思い出』のような感じだなぁと思いましたね。

── 状況劇場っぽいとは思いませんでした?

神谷 僕は(北村想の)『寿歌』の方が浮かんだ。リヤカーが出てくると、どうしても『寿歌』になっちゃうんだよね。

稽古風景より

── 今回、演出のポイントにしているところはどんな点でしょう。

神谷 これは毎回なんですけど、激しい芝居にしたいなと思っていて。最近ちょくちょく芝居を観る機会があって、別に非難するわけじゃないですけど、なんとなく成立してしまう芝居が多くて、それにはちょっと違和感があって。でも鄭義信さんの『パーマ屋スミレ』を観て思ったのが、バックボーンをちゃんと出したいし、なんていうのかなぁ、必死に生きる。世の中には不幸があるけど、それでもみんな生きてるんだ、みたいな。生きることに一生懸命なのがやりたいなぁと思ってはいますね。そういうところで今日も叫んだりしたんですけども(笑)。

── 他者に対する感情の表し方について細かく演出されて、檄を飛ばされていましたね(笑)。

神谷 細かいのかなぁ。他の人のやり方はわからないけど。『朝顔』(2017年5月公演)の取材の時にも言ったけど、香港公演の時に初めて演出の仕方がわかったというか、それを踏まえてどうやって見せるかっていうことを考えながらやってるつもりではいるので、ちょっと激しく。『朝顔』の時は内面的なものを内に込めた感じでやったので、今回はそれを表に出して人と人がぶつかり合うというか、そういうのをやりたいなぁと思っていますね。

稽古風景より

── キャスティングは神谷さんが決められたということですが、今回唯一の客演である鈴木理恵子さんを起用されたのは?

神谷 (room16の)『沈澱タイ』(2016年9月・11月公演)を観た時、結構みんな良い役者さんが出てたと思うんですけど、中でも鈴木さんのセリフとか雰囲気が良かったんだと思います。とにかく「良かった!」っていう印象が強かったの。【俳優A賞】(日本劇作家協会東海支部が主催する俳優に対しての賞)は、鈴木さんがダントツで受賞すると思ってたぐらいだったので。今まで女の人の客演を呼んだことはあまりないんですけど、(劇団内部に)これだけ女の子が多くなったので、外部から呼んで刺激があればなぁと思いますね。

── 実際、稽古を重ねられてみて鈴木さんはどんな感じですか?

神谷 滑舌が悪いなぁと(笑)。直せば聞こえるんですけどね。ウチにはいないタイプなので、それはそれで楽しみにして見てますけど。

── 今回は「千種文化小劇場」での公演ということで円形劇場ですが、見せ方で工夫されていることはありますか?

神谷 正面の席から見ると、横とか裏に神経を使ったりするじゃないですか。でもこの前、違う人の芝居を観に行った時に最初のうちはそれを考えてたんだけど、逆に意識しなくていいんだなと思って観てた。あとは思いのほか舞台が広いので、距離感とか。タッパがあるので上手く使いたいなと。

稽古風景より

── それは何か具体的に美術プランなどあるんですか?

神谷 雪が降ります。

── 本当に『寿歌』じゃないですか。

神谷 日本人の好きな感じで(笑)。あと、以前は舞台を下げたりしてたんだけど(円形の舞台部分が昇降できる)、今回はフラットに。そうすると、意外と舞台と客席の通路っの境目があやふやだなぁと思って。それはなんか逆に面白く思えたので。

── どこまでがアクティングエリアで、どこまでが通路かわかりにくいですよね。

神谷 一応明かりで仕切ってはいたんだけど、自分の中の印象と違っていて。曖昧さがいいなぁと思いましたね。

── 演出として今回、特に際立たせて見せたい点などはありますか。

神谷 難しい質問ですね。考えてやってなかったな。僕の演出は基本的に差を作ることだけなので。こっちの役者とこっちの役者との状態の差とか、前のシーンとの流れの差とか、それしかほとんど考えてない。だから差が出ることによって生まれる空気感とか、景色みたいなものを味わってもらえればいいかなぁと思います。


「幸福な王子」に「越冬つばめ」、アングラテイストかと思えば『三人姉妹』も盛り込まれ、おまけ臓器提供の話まで…と、多彩なエレメントと可笑しみがてんこ盛りで、B級流の不条理が存分に楽しめる本作。

アングラ色あふれる佃典彦とまどか園太夫の見ごたえある掛け合い、山口未知と大脇ぱんだの壮絶な姉妹口論、乳飲み子を抱えながらワイルドに立ち回る三井田明日香、唯一まともな人物!? を演じる梅宮さおり、爽やかな佇まいで新風を吹き込む鈴木理恵子、そして情けない男ながら女たちに愛される役どころがなんとも似合う徳留久佳…と、個々の魅力も炸裂。山口未知らが二役を演じる衝撃的な子ども役も必見です‼︎

前列左から・梅宮さおり、山口未知、鈴木理恵子、大脇ぱんだ 後列左から・三井田明日香、佃典彦、まどか園太夫、徳留久佳、神谷尚吾

取材・文・撮影=望月勝美

公演情報
劇団B級遊撃隊『不都合な王子』

■作:佃典彦
■演出:神谷尚吾
■出演:佃典彦、山口未知、徳留久佳、まどか園太夫、大脇ぱんだ、梅宮さおり、三井田明日香(以上B級遊撃隊)、鈴木理恵子

■日時:2017年11月18日(土)14:00・18:00、19日(日)11:00・15:00
■会場:千種文化小劇場(名古屋市千種区千種3-6-10)
■料金:一般前売2,800円、当日3,000円 ユース(25歳以下 前売・当日)2,500円 高校生以下(前売・当日)1,000円 ※ユース・高校生以下は当日年齢を証明できるものが必要
■アクセス:名古屋駅から地下鉄桜通線で「吹上」駅下車、7番出口から北へ徒歩3分
■問い合わせ:劇団B級遊撃隊 052-752-6556(19:00~22:00)
■公式サイト:bkyuyugekitai.wix.com/bkyuyugekitai
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