上田誠「ラブコメ化は僕の中では成功しているので大丈夫!」 舞台『続・時をかける少女』ヨーロッパ企画メンバーにインタビュー
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(左下から)永野宗典、上田誠、石田剛太、左上から諏訪雅、土佐和成
世代を超えて愛され続ける青春小説の名作「時をかける少女」(筒井康隆著/1967年)の続編「続・時をかける少女」(石山透著/1978年)が、SFコメディを魅力的に舞台化する演出家・ヨーロッパ企画の上田誠により2018年2月、東京と大阪で初めて舞台化される。出演は、上白石萌歌、戸塚純貴、健太郎、新内眞衣(乃木坂46)、他。
上田がこのビッグネームの作品とどのように巡り合ったのか、上田および本作に出演が決まっているヨーロッパ企画の面々(石田剛太、諏訪雅、土佐和成、永野宗典)に話を聞いた。
■「時をかける少女」の歴史を紐解く
――『続・時をかける少女』の舞台化のお話が始まったきっかけを教えていただけますか?
上田 ニッポン放送さんの50周年記念企画ということで。以前からよくお仕事させていただいた間柄ですし「何か企画をやりましょう」という話で盛り上がったんです。じゃあどんな作品がいいかなぁ……と考えたとき、もともと知っていて気になっていた「続・時をかける少女」を舞台化するのはどうでしょう?と提案したんです。
タイムスリップものは、自分もこれまでに『サマータイムマシン・ブルース』を書いていますし、目に止まったらできるだけ読むようにしています。そんな中で、「復刊ドットコム」(※絶版・品切れの書籍を読者からのリクエスト投票によって復刊させるサービス)から「続・時をかける少女」が復刊されたんです。「時をかける少女」といえば原田知世さんが出演された映画(1983年)が有名ですが、それよりも前に、NHKで『タイムトラベラー』(1972年)というタイトルでTVドラマ化されています。そして、脚本家の石山透さんによって書かれた新たな続編が『続・タイムトラベラー』(1972年)なのですが、それをさらにノベライズ化したのが「続・時をかける少女」(1978年)なんです。
上田誠
一同 へえー!
土佐 僕らが生まれる前からあったんや。
上田 元の原作者である筒井康隆先生ご本人にも今回の舞台化は許諾をいただけたんです。
一同 取れたんだ!
石田 ということは、筒井康隆先生が舞台を観に来る可能性も……。
上田 なくはない(笑)。
一同 緊張する(笑)。
土佐 ところで、『続』ではどんな話になってんの?
上田 ケンソゴルが帰ってきてね……。
【あらすじ】
主人公・芳山和子はクラスメイト深町一夫=未来人ケン・ソゴルと恋に落ち、彼の開発したラベンダーの香りがする薬で、時空を移動するタイムトラベルの超能力を得るが、ケン・ソゴルが未来へ帰る際、彼に関わるすべての記憶を消されてしまう……。それから月日が流れ、高校生になった和子の前に再び彼が現れ「未来から来た3人の科学者を一緒に探してほしい!」と和子はケン・ソゴルと行方不明の科学者を捜索するはめに…。記憶を失ったはずの和子は、再びケン・ソゴルと時を超え、そしてもう一度彼に恋をする―。
■舞台版『続・時をかける少女』はどんな話になる?
――石田さんがポスター用の撮影をしている衣裳がどこか宇宙船のパイロットのようなデザインでいったい何の役をなさるんだろう、と思いました。
石田 こういう奴がこの物語に出てくるの?と思いました。最初は学園ものっていうイメージがあったんですよ(笑)。
土佐 物語の舞台はどこなの?
上田 これが複雑な話でね。いろいろな時代、いろいろな場所が出て来る。
石田 時空を飛び越えるんだ。
上田 そう。さらに「続」では活劇みたいになっています。元々の「時をかける少女」は学園SF、ジュブナイル(児童向けの読み物)として、つまり小説としての面白さが映えるように書かれていると思うんですけど、「続」はTV版からの続編だから、TV映えするように書かれているんです。
土佐 じゃあ元の「時をかける少女」とはテイストが変わるんだね。青春の甘酸っぱさは残る?それが魅力やねんけど。
上田 残る残る(笑)。成功してるんじゃないかと思います!
一同 おおお!
土佐 あれが醍醐味やねんなあ!
土佐和成
石田 もう成功してるんや! 上田の頭の中では。
土佐 観に来る人はそれを期待するもんな。
石田 あらすじを読んだら「時をかける少女」の最後の場面から「続」に続くようになっているけど…。
上田 そこは原作小説にはなかったんですが、ぼくがアレンジさせてもらいました。
諏訪 いろいろオリジナル要素も入ってるんですねえ。
上田 その辺は、みんなが思っている「時をかける少女」のイメージに近づけたというか。そもそもの原作が「で、“時をかける少女”って何だったの?」というくらい荒唐無稽だったんですよ。バミューダトライアングルで時間漂流したインド人が出てきたり、おばあちゃんが時間をコントロールする機械を触っちゃって胎児になってしまったり……(笑)。
一同 うわー。
諏訪 理論上はありえるの? 時間の論理もはちゃめちゃな感じがするんだけど(笑)。
諏訪雅
上田 未来人は2000年より前には行けないという設定になっているんだけど、和子だけは行けるということになっているんです。原作が書かれたのは1970年代で、和子は20世紀生まれだから20世紀の中は移動しやすいという(笑)。そういう当時ならではの理論みたいなものがあって。けど公演するのは2018年なので、そぐわない部分は今に合わせてアレンジさせてもらってます。
一同 なるほどねー(感心)。
――上田さんはほとんどの作品をオリジナルで書いていらっしゃいますが、他の方の原作を使って舞台化するのはやりやすいものでしょうか?
上田 正直その方が楽しいですよ。自分で作るのも楽しいですけど、より、軽快に作れるんです。『TOKYOHEAD~トウキョウヘッド~』のときも原作があって。
諏訪 いつも原作ありのときは調子がいいですよね。
上田 最低限、原作を読めば作れますから(笑)。それがないとき、自分で最初から作るときは資料を50冊くらい読まないと書けない。原作があればその1冊を足がかりに作れますからプレッシャーは少ないです。
――そうなんですね。ところで「続」はラブ・コメディになるとのこと。ラブは、さきほどの話の中で「大丈夫!」ということでしたが、コメディという点はより一層想像がつかないんです。
上田 あーなるほど(笑)。まあ「続」と付いている時点で、「嘘でしょ!」って僕も冗談みたいに思っちゃったので、そういう突き抜けた力が元々原作にはあって。そして小説のほうは案外シリアスなんですが、それってコメディとも紙一重なので、変換できそうかなーとは思っています。場面が多いので書き割りを使おうかな、とか、「時をかける少女」なので走った方がいいかな?とか(笑)。せっかく若手の方とやるので、スポーティーな舞台にできないかな、とか、そんなことを考えています。
■ヨーロッパ企画流・コミュニケーションの取り方とは?
――今回主人公・芳山和子役を演じる上白石萌歌さん。初共演となりますが、彼女のどんな魅力を引き出してあげたいと思いますか?
上田 やってみないとわからないところですが、大人や未来人などが総力をあげて和子に絡みに行く作品なんですよ。ひたすらふりまわされながらも遭難した未来人を探しに行く和子。かなり大変だと思います。上白石さんはコメディ作品に出るのが初とおっしゃっていましたが、これを機会にコメディを好きになってもらえたらいいですね。この芝居を含めて。
永野 エチュード(即興演劇。ヨーロッパ企画の稽古場ではお約束となっている)もやるの?
永野宗典
上田 もちろんやりますよ!
――(スタッフ)今回、初出演となる方々は『出てこようとしてるトロンプルイユ』を皆、観るそうです。
石田 観てもらって「おもしろい」って思ってもらわないとマズイもんねぇ(笑)。
諏訪 「おもしろいんだけど……これ(自分が)やるんか!?」とか思われたら……。
永野 そう思われそうな芝居ですね、『トロンプルイユ』は。
一同 どうしよう……まずいな……(笑)。
――なんでそこで自信のない発言が飛び交うんですか?(笑)
石田 だって、うちら、上白石さんたちが生まれる前からやってるんよこんな芝居。
上田 上白石さんが生まれたとき『苦悩のピラミッダー』(2000年)をやってたときですしね。
諏訪 健太郎さんが生まれてまもなく(1997年)にぼくらの劇団が始まってる訳だし。
石田 ともかく、僕らの本公演をまずはおもしろいと思ってもらって「今度のはこれよりもっとおもしろくなるからねー」って言い続けていく作戦でいきますね。
――もともとヨーロッパ企画と親和性高めな方だけでなく、今まで全然接点がなかった方々をキャスティングしたことはヨーロッパ企画としてもチャレンジですね。
上田 そうなんです。僕らが本公演をやるときは気心知れたメンバーと、あと客演さんにしても過去に出てくださったことのある人たちを二人くらい加えた座組みでやるんです。それでもコミュニケーションを作りあげるのにそこそこ苦労するんです。楽日までとうとうあの人を掴み切れなかった……とか(笑)。とはいえ、関係性の遠いところから、全体の温度を徐々に上げていくのがプロデュース公演の楽しさの一つでもあります。……でも今回、全員で飲みにいけないんですよ。
土佐 ああ、未成年がおった!
石田 ランチコミュニケーションや!もしくはデザートで!
上田 あとインスタ(グラム)ね。“インスタ映え”する稽古をしましょうか(笑)。
永野 どんな稽古!?
石田 僕は今回、上田くんのサポートに回ることに徹しようと思います。
一同 (笑)。
石田剛太
石田 上田くんが「あの人と喋ってきて」って指令を出すんです。最近はLINEを使ってそういう指示を出すようになってきました。
上田 僕ら、エチュード(即興芝居)で作品を作っていくので、稽古場の早い段階で仲良くなる、遠慮なくやり合える仲になるのが大事だと思ってるんです。
土佐 昔、京野ことみさんと共演したとき(『昭和島ウォーカー』)、仲良くなりたくて、京野さんがハマっていた漫画「ONE PIECE」を2週間で60巻読んだもんね。
上田 台本より読むのが速かったっていう(笑)。
土佐 稽古の最初のほうは、休憩時間の何気ないやり取りも大事だったりしますね。お互いにリラックスできる環境を作ると、役者の素の面白さが芝居に混ぜ込めたりもするので。
■最後に…
――舞台『続・時をかける少女』を観てみようか、と思っている方々へメッセージをお願いします。
上田 今回プロデュース公演ですが、切り口がいろいろある公演って素敵だなと思います。「上白石さんの現役最後の制服姿が観れる舞台」として観ていただいてもいいし、「乃木坂46の新内眞衣さんが出ている舞台」でも「バッファロー吾郎Aさんが出ている舞台」でもいい。
――「SFやタイムワープものと言えばヨーロッパ企画でしょう」という切り口もありますよね。
上田 そう。この分野は超得意なんですよ僕たち。これをきっかけに僕らの本公演に興味を持ってもらえるのも嬉しいですね。…あ、今回も一人何役かやりますよ(突然)。
一同 最後の最後でそれを言うか!(笑)
石田 お盆(舞台)も俺らが回すのか…(笑)。
諏訪 それも人力で(笑)。
諏訪雅、永野宗典、上田誠、石田剛太、土佐和成
もはや京都の一劇団ではなく、公演
取材・文・撮影=こむらさき
■日程:2018年2月7日(水)~14日(水)※13日(火)14:00追加公演決定!
■会場:東京グローブ座
■日程:2018年2月17日(土) ※夜公演追加決定!
■会場:森ノ宮ピロティホール
【高知公演】
■日程:2018年2月20日(火)
■会場:高知県立県民文化ホール オレンジホール
■脚本・演出:上田誠(ヨーロッパ企画)
■出演:上白石萌歌、戸塚純貴、健太郎、新内眞衣(乃木坂46)、石田剛太(ヨーロッパ企画)、諏訪雅(ヨーロッパ企画)、土佐和成(ヨーロッパ企画)、永野宗典(ヨーロッパ企画)、島田桃依(青年団)、中山祐一朗(阿佐ヶ谷スパイダース)、バッファロー吾郎A、MEGUMI
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